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「正しい」では無く、「合理的」な甲子園を議論しよう

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出典:写真AC

第99回全国高校野球選手権、いわゆる夏の甲子園が始まっているが、1回戦のカードが全て終了した8月12日にちょっとした騒ぎが起きた。

翌日の2回戦から登場する山口県代表の下関国際の坂原秀尚監督が、インタビューで「文武両道あり得ない」と語ったのだが、「昭和過ぎる」「古臭い根性論」「携帯解約って、刑務所か」「長時間練習は間違い」とまあバッシングの嵐になったのである。

で、試合は三本松(香川県)と対戦し、4対9で敗北した。インタビューでは、

「三本松さんの選手、甲子園(球場)でカキ氷食ってましたよ。うちは許さんぞと(笑い)」

とも語っていたので、「カキ氷食ってる高校に負けた」「時代遅れの高校が負けるのは当然」「文武両道あり得ない高校が負けて気分良い」などとまたしても批判の的になってしまった。

私は勝ち負けで高校野球のあり方を議論するのはおかしいと思うし、何より「僕が考えた最高に正しい甲子園」を議論しても、お互いの正義がぶつかるだけで決して解決しないと思う。

議論するべきは、「正しい」甲子園では無く、「合理的な」甲子園だ。


「文武両道あり得ない」を勝ち負けで議論したら、「あり得ない」の勝ち

私が下関国際の試合が終わってまず思った事は、

「暑い中、最後まで良く頑張った。お疲れ様」

である。どんな背景があろうが、甲子園に出場している球児に罪は無い。頑張っている球児の敗北を喜ぶのはとても失礼だと思う。

なので、下関国際の敗退を嬉々としてツイートする事は大人げない行為だと思う。それに下関国際が敗退した事で「昭和の根性論や長時間練習の神話が敗北した」とに語っているが、それもおかしいと思う。

高校野球はあくまで高校の授業が終わった後の部活動の一環である。それがどうあるべきかは、学校教育と部活動のあり方、高校生の将来、高校生自身の気持ちをしっかりと考えるべきだ。甲子園の勝ち負けで議論するべきものでは無いと思う。

下関国際は負けたから間違っていたという人は、勝利したら認めたかというとまず違うだろう。試合前から批判していたのだから、勝っても批判していたはずだ。ならば、負けて「そら見たことか」と批判する事に意味が無いし、全力でプレーした球児に失礼だと思う。

何より、勝ち負けで練習方法を正当化すると、下関国際より遥かにえげつない大阪桐蔭が大正義になってしまう。

・3年間寮生活
・練習は週7日
・携帯電話は所持禁止
・親に会えるのは2カ月に一度
・寮は外出禁止。楽しみは1カ月に1度の“コンビニ旅行”

これが春の選抜を制し、1回戦も圧勝した、現在日本最強の高校である大阪桐蔭の練習である。どう見ても下関国際を遥かに上回る「文武両道あり得ない」だ。

なので、勝ち負けで練習方法を議論したら、結局「文武両道あり得ない」の勝ちだ。

そもそも、甲子園に出場する高校は大半が私立になってしまい、全国から集まった野球エリートが猛練習を行なっている。「文武両道あり得ない」は表立って喋らないだけで、ほとんどの甲子園出場高校の本音だろう。

僕の考えた「正しい」甲子園を議論しても無意味

そもそも「文武両道あり得ない」の議論に感じた違和感として、「僕の考えた正しい甲子園と違う」という価値観が見えることである。何というか、周りが悪役を設定して、勝ち負けに夢中になる時点で甲子園の罠に嵌ってると思う。

批判した方の多くは、「近代的で、効率の良いトレーニング」「軍隊的で無い、球児の自主性を尊重した」練習方法を「正しい」と考えている。

私はそもそも、「正しい」「間違っている」で甲子園を議論するのが危険だと思う。

例えば今回批判された下関国際が横浜や大阪桐蔭のような強豪校に勝利し、ルーキーズのように「野球が下手な不良集団が、猛練習でエリート高校に勝利する」と言ったストーリーになったら、大絶賛されたのでは無いだろうか。

実際、下関国際は「坂原監督の就任前に部員の集団万引が発覚し、山口大会の抽選会直前で出場停止処分になるなど荒れ放題だった野球部」なのである。

また甲子園では「昭和的な根性練習」と並んで、「野球エリートの越境入学」も良く批判されている。では、相手高校がスポーツ漫画に出てくるような「才能が有り過ぎて全く練習しない、態度の悪い全国から集まった野球エリート集団」という強豪校に下関国際が勝利したらどうだったのだろう?

やはり手の平を返して、「猛練習でエリートを倒した」と絶賛されていたのでは。

私は高校野球部の練習や指導法はルールの範囲で自由で有り、周りがどうこう言う話では無いと思う。球児も15〜18歳であり、分別のわからない子供では無い。周りからは理不尽に見えても、強制だったとしても、自分で選んで行動した結果だと思っている。

「文武両道あり得ない」の議論は、結局は大勢の「僕の正しい甲子園」のぶつかり合いだ。今年の甲子園では下関国際が悪役になったが、新たな悪役が登場すればコロッと正義に転じてしまう。

そんな宗教戦争の果てに、本当に球児のためになる議論ができるとは思えない。

「合理的な」甲子園を議論しよう

なので私は「正しい」甲子園を議論しても不毛なので、現在の甲子園の問題点を洗い出し、球児の利益になるように改善する「合理的な」甲子園を議論していきたいと思う。

実際、PL学園で前人未到の甲子園20勝を挙げたレジェンド・桑田真澄氏は「球数制限」「甲子園の日程を1ヶ月に拡大」と言った合理的な案を披露している。

私はこのような球児の目線に立った合理的な改善案が広がる事で、「根性論で長時間練習」や「文武両道を無視」と言った悪習が自然と無くなっていくのがあるべき姿だと思っている。

なので、最後に私の考える合理的な全国高校野球のルールを披露したい。

1. 全国6大ドームで同時開催

福岡、京セラ、名古屋、東京、西武、札幌の6つのドーム球場で、同時に試合を開催すれば良い。2日だけで48試合をこなせるので、圧倒的に試合日程に余裕が出る。プロ野球も屋外球場が6つ残っているし、毎日試合する必要も無くなるので、支障は生じない。

何より、炎天下の甲子園よりも遥かに快適であり、球児の熱中症や怪我の心配が減る。

どうしても甲子園を聖地と思う人が多ければ、準決勝くらいからは甲子園で試合をすれば良い。

2. 出場校を128校に

15歳の高校生が親元離れて、遥か遠くの高校に越境入学するのは、甲子園に出場できる高校が限られているからだ。特に強豪リトル・シニアリーグを抱え、超有望選手を余るほど抱えている大阪からは出場機会を求めて全国に球児が散っていく。

なので、出場校を現在の49校といった、大阪と神奈川と富山で枠が同じ1校という明らかにアンバランスな状態を解消しなければならない。かと言って出場校を絞ったら球児が可哀想なので、思い切って2倍以上の128校に増やせば良い。大阪や神奈川と言った実績のある都道府県は、思い切って8校や16校の枠を与えれば良い。

6大ドームで同時開催すれば、日程にも余裕ができるので試合の消化も可能だ。そうすれば、越境入学しなくても地元で甲子園出場を目指す球児が増えるだろう。

 

いかがであろうか。この2つの改善案が実現すれば、甲子園のあり方は劇的に変わるだろう。何より全試合テレビ中継が不可能になるので、過度な甲子園人気が収まり、普通の全国大会に近づいていく事が大きいと思っている。

私はできるだけ野球に青春を捧げる球児の思いを否定したくは無い。あくまで大人が汗を掻く事で、球児に安全で、気持ち良く野球をプレーして欲しいと思っている。

参照:NHK 甲子園日刊ゲンダイNHK NEWS WEB夕刊フジスポーツ報知

-スポーツ

author : 宮寺達也

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