商標

日本維新の会の商標を阻止したのは民主党の原口議員

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出典:イラストAC

「日本ファーストの会は商標法違反でアウトかも」の記事をアゴラに掲載いただいたところ、大変な反響をいただいている。

中学校の同級生から深夜にメッセンジャーで「若狭さんの新党について記事書いて」と言われたので張り切ってしまい、ついつい朝4時まで書いたため徹夜になってしまったが、書いて良かった。

しかし、反論や批判の意見もたくさんいただいた。特に多かったのが、「過去に民進党や日本維新の会の商標は却下されたのだから、日本ファーストも問題無い」という意見であった。

この意見自体が間違っているわけでは無い。私も前回の記事で「ドクター中松氏の商標が絶対に認定される」とは書いていない。

ちょうど良いテーマだと思ったので、政党名と商標の関係について解説したい。


国会議員が多数所属する有名な政党名は第3者が商標にできない

近年で新党を結成する前に、政党名が商標出願されているとして話題になった事例は2つだ。

1つ目は、「日本ファーストの党」を商標出願しているドクター中松氏が2011年12月16日に「日本維新の会」の商標を出願した例である。

2つ目は「商標モンスター」として悪名高い、ベストライセンス株式会社の上田育弘氏が2016年3月11日に「民進党」の商標を出願した例である。

いずれも日本維新の会・民進党が正式に結党する前の商標出願であったので、「商標が登録されたら、政治活動に影響が出るのでは」と言われていた。

結論としては、ドクター中松氏の「日本維新の会」の商標は知財高裁まで争ったが却下され、上田育弘氏の「民進党」の商標は審査もされずに塩漬けになっている。

現在は民進党が出願人となった「民進党」、日本維新の会が出願人となった「日本維新の会」の商標が登録されており、何の問題も無くなっている。

これは、政党名を第3者が商標出願しても、2つの「商標を認められない規定」に違反するためである。

商標法第4条第1項6号 「公益に関する団体であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なもの」は商標登録を受けることができない

商標法第4条第1項7号 「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができない

さらに、商標法第4条第3項によって「商標出願時には6号違反、7号違反では無かったとしても、登録の審査時点で違反になれば、商標登録を受けることはできない」と解釈されている。

民進党の場合は、正式な結党が2016年3月27日であり、その時点ではまだ上田育弘氏の商標は審査中である。また民進党は「政治資金規正法により規制を受けているため営利団体では無い」「国会議員が多数所属しており、公的な団体である」「全国で知られる著名な団体である」ため、6号の条件を満たしている。そのため、民進党の商標を第3者が取得することはできなかったのだ。

さて、ではドクター中松氏の「日本維新の会」の商標も同じ理由で却下されたと思っている人が多いが、実はちょっと違うのである。

ドクター中松氏を阻止した民主党・原口一博議員のファインプレー

ドクター中松氏が「日本維新の会」の商標を申請したのは、2011年12月16日。特許庁に拒絶されたのが2012年8月16日である。

日本維新の会が結党したのは2012年9月28日である。政党名が発表されたのも直前の9月8日だ。8月時点では政党名は「大阪維新の会」であり、まだ国政進出は噂レベルであった。

では、どういう理由で「日本維新の会」の商標が却下されたのか。知財高裁の判決文によると「日本維新の会の文字は、2011年に設立された日本の政治団体の名称と認められる」との事。

私も何のこっちゃと思ったが、2011年2月23日に当時の民主党・原口一博議員が中心となって立ち上げた「日本維新・V-democrats」、通称「原口グループ」の事である。もちろん、その後の日本維新の会とは無関係である。

私も今回調べるまで全く記憶に無かったが、そういえば、当時は「〇〇維新」が雨後の筍のように乱立していた記憶がある。

この「原口グループ」のおかげでドクター中松氏の商標は拒絶され、知財高裁まで争うことになった。そのため、審査の時間が長引き、判決が下った2014年には橋下氏率いる日本維新の会が政党として存在していたので、改めて6号違反として却下されたのである。

なお、2011年には正式な政党として日本維新の会は存在していなかったので、この時の拒絶理由は7号「公の秩序又は善良の風俗を害する」違反である。民主党の政治家では無いドクター中松氏が、すでに存在する民主党の政治団体の名称を商標登録したら、社会に迷惑であるという事であろう。

なので、日本維新の会の商標については、原口グループが無かった場合、認められていた可能性がある。そして、日本維新の会の名称が決まった2012年9月8日前に登録されていれば、簡単に取り消しになるとは限らない。

登録後の商標であっても商標取消訴訟は可能であるが、長い時間が掛かるし、100%勝てる保証は無い。政党にとって政党名は命であり、万が一にもリスクを負う事は難しい。そのため、日本維新の会は名称変更を迫られていた可能性がある。

日本維新の会は、原口一博議員に感謝するべきところだろう。

「日本ファースト」の商標は却下される可能性もあるが、そもそもリスクを負う名前がマズイ

ちなみにドクター中松氏は「日本維新の会」の商標こそ却下されたものの、「東京都維新の会」「平成維新の会」の商標は取得済みである。

これらの政党は近い名前こそあれど、実際に存在していない。今回、ドクター中松氏が出願している「日本ファーストの党」も同様である。

「日本ファーストの党」はまだ存在していない政党であり、また若狭氏が立ち上げた政治団体は「日本ファーストの会」である。そのため、このまま若狭氏が国政政党として日本ファーストの会を立ち上げたとしても、完全に文字が一致しないので認められる可能性がある。

また、ドクター中松氏の商標が登録される前に政党として正式に立ち上がら無い場合、6号違反とはならず商標が登録される可能性が高い。

また、商標登録前に日本ファーストの会が国政政党として結党しても、国会議員5名程度のスタートが予想される。国会議員62名でスタートした日本維新の会と比較して、「著名では無い」と判断される可能性もある。

したがって、日本ファーストの会が政党になったとしても、ドクター中松氏の商標が確実に却下される保証は無い。そして、ドクター中松氏の商標は「印刷物」を含んでいるので、日本ファーストの会が略称として「日本ファースト」という印刷物を製作した場合、ドクター中松氏の商標を侵害しているとして訴えられる可能性がある。

改めて、私はドクター中松氏の商標が絶対に認められるとは言っていない。このまま日本ファーストの会が国政政党として大々的に立ち上がらないと、ドクター中松氏の商標が認められる可能性が高く、その場合に日本ファーストの会は巨大なリスクを背負うことになる。それは得策では無いので、小池都知事と若狭氏は名称を変更するべきと言っている。

実際、若狭氏はツイッター

私が設立して昨日発表した「日本ファースト」なる政治団体の名称につき、一部の人に誤解がおありなので申します。これは、あくまで「輝照塾」という政治塾を運営する政治団体の名称であって将来設立される新党の名称ではありません。新党の名称は国民目線で、親しみのある名称がよいと思っております。

と表明した。商標以外にも色んな指摘が来た上での考えであろうが、どうやらドクター中松氏の商標とぶつかる可能性は下がったようだ。

改めて、政党名は勝手に商標登録される可能性は低いが、ゼロでは無い。新党を結党する時は、勝手に出願される前に素早く自ら出願するべきだ。実際、民進党も日本維新の会も、問題発覚後に速やかに自らの政党名の商標を出願し、登録している。

ちなみに記事の反響として、面白い情報をいただいた。けいたくんさんによると、都民Fの商標は小池都知事が個人で出願しているとの事だ。

私も確認したが、本当であった。商願2017-020202「都民ファーストの会」(出願者:小池 百合子)となっている。

商標が出願された2017年2月20日は、小池都知事が特別顧問に就任する4月28日より前であり、その時は無関係であったはずだ。

一知事が、議会の一会派の政党名を勝手に出願するなんて事があって良いのだろうか?都議選中は代表に就任していたが、今はまた特別顧問に戻っている。実態はともかく、法的には第3者の可能性があるのではと思うのだが。

特許庁の判断が楽しみである。

参照:弁護士ドットコム商標登録専門サイト牛木内外特許事務所


アゴラに掲載されました(2017年08月10日)

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author : 宮寺達也

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  1. 大池 より:

    法律の専門家である弁理士の先生の意見や弁護士の先生の意見を聞きたいと思った。

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