7月25日、東京オリンピック・パラリンピックの組織委員会は選手村の交流施設「ビレッジプラザ」を作るための木材を、無償で提供する自治体を全国から公募すると発表した。
その結果、「日本一金持ちの東京なのに」「林業振興のためにも普通に買え」「メダルの金属に続き木材もタダとは、なんてセコイ五輪」「木材がタダで、経済効果もタダ」「乞食か」「みんな丸太は持ったな!!行くぞォ!!」等々、ネットは批判の嵐である。
私自身は、実はこの木材の公募自体はそこまで筋の悪いアイデアだとは思っていない。しかし、批判が殺到する理由は良くわかる。
東京都は1兆円を超える無駄遣いをしているんだから、そんなに金が余ってるなら他県にも払ってやれよ、という感情だ。
選手村ビレッジプラザの木材の無償提供の公募は、単体で見ればそれほど悪く無い
東京オリンピック組織委員会が無償での提供を募集した木材は、選手村「ビレッジプラザ」を建設するためのものだ。
ビレッジプラザとは、花屋・雑貨店等の店舗、カフェ、メディアセンター等が配置され、チーム歓迎式典が開催されたりする大会期間中の選手の生活を支える施設である。なお、この記事のアイキャッチ画像がビレッジプラザの内観イメージである。
このビレッジプラザは立候補ファイルの段階から木材を使用する事が決まっていた。組織委員会によると、オリンピック招致決定後、全国の自治体から木材の提供の申し出が有ったと言う。
オリンピックや世界選手権のような大規模な大会では、多くのボランティアを動員して大会を運営する。また、東京オリンピックではすでに大会のメダルを製作するために「都市鉱山」と呼ばれる不要になった携帯電話や小型家電から回収した金属で大会メダルを作る事業を始めている。
このように、東京都や組織委員会からすると、可能な範囲で無償の協力を申し出る事は初めてでは無い。何より、ボランティア募集や都市鉱山ではあまり批判の声は挙がらなかった。
そのため、組織委員会が「全国各地の自治体から『無償でも』と申し出があった。双方に利益があるのだが」と困惑のコメントを出したのは、まあわかる気がする。
何より、今回の木材の提供は「公募」である。タダで木材を提供するのが嫌な自治体は参加しなければ良い話だ。別に損を強要されたわけでは無い。
なので、私も「木材の無償提供を公募」という案件そのものにはそれ程問題を感じてはいない。
批判が殺到した理由その1。凄い上から目線
しかし、都市鉱山では批判が挙がらなかったのに、木材の無償提供では批判が挙がった理由は良くわかる。
1つ目は、東京都・組織委員会の「上から目線」である。
ビレッジプラザの木材提供者公募では、
・自治体から木材を借りる
・オリンピック・パラリンピック後は「木材が大会施設で使われたことを証する文言(“Used in Village Plaza”の予定)の表示を付けて、返却する
・返却された木材は、各自治体の公共施設などでレガシーとして活用
となっている。
これだけ読むと、ただ無償で木材を提供させるだけじゃなくて、自治体にも利益があるように配慮しているようだ。
だが、この「木材にはオリンピック・パラリンピックで使った証拠を書いて返して挙げる。嬉しいでしょ?」と言わんばかりの「配慮」が、何とも上から目線で逆に失礼だ。
まだ「何もお礼できないけど、木材が余っている自治体は助けてください」と言った方が批判は少なかったかもしれない。
「お金は出せないけど、名誉は挙げるよ」との姿勢は、まるで江戸時代に各大名の力を削ぐために、江戸城建設や各河川工事を命令した「手伝普請」の再現である。
「地方は日本の首都・東京のためにタダで協力しろ。名誉な仕事だから良いだろ?」と受け止められるようなやり方に違和感を覚える人が多かったのだろう。
まさに「同情するなら金をくれ」である。
批判が殺到した理由その2。東京都は1兆円も無駄遣いしてるのに
そして、この2つ目の理由が最も大きいと感じている。
それは「東京都は小池都知事になってから、1兆円も2兆円も無駄遣いしてるんだから、木材の値段くらいはした金でしょ。こっちにもお金出せよ」という理不尽な感情だ。
ビレッジプラザに必要な木材は1900立法メートルである。これは新国立競技場に相当する規模だ。最新の製材価格(http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/mokuryu/kakaku/attach/pdf/index-12.pdf)を見ると1立法平方メートル当たり、杉:5万7千円、ひのき:8万円である。
これらから単純に計算するとビレッジプラザに必要な木材の価格は、およそ1億3千万円である。
これまでにもブログで散々書いてきたように、小池都知事になってから豊洲市場移転とオリンピック準備の遅れで1兆円とも、2兆円とも何の意味も無い、ただただ無駄遣いをしている。
これからがほんとうの地獄だ・・・小池都知事の豊洲市場移転案がヤバイ
小池都知事の豊洲・築地市場両立で何円損すると思ってるの〜「2兆円」
予算総額6兆9540億円にも上り、1兆円もドブに捨てるお金持ちの東京都様が、今さら「木材を買うための1億3千万円が出せません」とはおかしな話だ。
まるで、使いもしないブランド物の高級バッグ、洋服、化粧品等を買い漁っているほどお金に余裕がある同僚に、「ごめ〜ん、節約したいからお弁当半分頂戴。お返しは私の笑顔」とでも言われてるような気分だ。
個人的にこんな事を言われたら、グーパンチしてしまいそうな気がする。この感情こそが、「東京五輪で木材の無償提供を公募」というニュースを見たときの多くのネット民の感情だろう。
私は「木材の無償提供を公募」単体では、悪く無い話だと思う。例えば、これが災害で苦しむ自治体からの申し出であったら、喜んで拡散するだろう。
だが、今の東京都は最も「無償提供」をお願いしてはいけない立場だ。特に豊洲市場移転を無意味に延期し、補償金だけで昨日も今日も明日も、毎日6575万円をドブに捨てているのだから、その2日分のお金で木材買えよって思うのである。
参照:NHK NEWS(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170725/k10011072751000.html)、毎日新聞、東京五輪組織委員会Webサイト、キャリコネニュース