IT・メディア

NHKのネット受信料は放送法違反

投稿日:

出典:Wikipedia 日本放送協会

6月26日、NHKは2019年から開始を検討している地上波とネットの番組同時配信において、ネット配信の利用者に地上波受信料と同額(2ヶ月2520円)のネット受信料を課す案を発表した。(参照:毎日新聞

「ネット受信料なのに世帯単位で徴収するって、IDの管理どうするつもりやねん」とか、「2ヶ月で2520円って、Amazonプライムの2ヶ月800円の3倍以上じゃねーか」とか、色々ツッコミどころが多すぎる。

だが、一番の問題はそもそも「ネット受信料」なるものを勝手に定義しようとしているNHKの姿勢だ。

ネット受信料は、現行の放送法に違反している。


NHKは無線電波を使用する放送局と定義されている

NHKは受信料の徴収の根拠として、放送法を錦の御旗として高々と掲げている。

NHKのWebサイトでは、「NHKを見ていないので、支払いたくない」という質問に、

「放送法では、NHKの放送を受信できる受信機を設置した者は、NHKと受信契約を結ばなければならない」と定めています」と放送法を根拠に回答している。

最近では、あらかじめテレビが設置されていたレオパレスの入居者にまで受信料を徴収しようとして、裁判で争い、勝訴している。(参照:日経新聞

それ程までに受信料の徴収に凄まじい執念を見せているNHKだから、当然、放送法は隅から隅まで熟知している事であろう。

その放送法であるが、第15条で日本放送協会(NHK)について、こう定めている。

「協会は、公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行う」

ここで記載された基幹放送とは耳慣れない言葉であるが、これも放送法第2条第2項に定められている。

「基幹放送とは、電波法の規定により放送をする無線局に専ら又は優先的に割り当てられるものとされた周波数の電波を使用する放送」

まあ、要するに東京タワーやスカイツリーから発信する、無線電波を利用した放送の事である。当然、インターネットはこの基幹放送の対象外である。

NHKでインターネット配信をする場合、「本放送の補完」でなくてはならない

というわけで、現行の放送法においては、インターネット配信は放送では無い。インターネットを通じて提供できるのは、放送法第20条第2項第2号に定められた「理解の増進のための情報」である。

「理解の増進のための情報」とは、NHKの番組を直接では無く、それの理解を助けるための補完情報である。NHKでは「2号受信料財源業務」もしくは「2号有料業務」と呼んでいる。

「2号業務」は実施基準を明確にし、総務大臣の許可が必要と定められている。NHKは現在の実施基準をWebで公開しているが、まあ主にNHKオンデマンド(月額972円で見逃し番組を視聴)について定めたものだ。あくまで補完業務であるため、事業費も各年度の受信料収入の2.5%までと定めている。

では、このNHKオンデマンドを延長して、NHKの番組同時配信を始めた時、ネット受信料:月額1260円を徴収する事に、どんな問題があるのか。

まず、そもそも同時配信は、番組の「理解の増進のための情報」では無く、本放送そのものである。これは放送法に定められた「本放送は無線電波」との定義に反する。そのため、放送法ではNHKのインターネットで番組同時配信そのものが禁じられていると解釈できる。

実際、TBSの武田社長が「インターネット業務を本来業務と言い切ったことに大変な違和感を感じる」と苦言を呈している。

また、NHKはネット受信料について「地上放送などの受信料をすでに払っている世帯は、ネット同時配信を利用しても無料」とする方針だ。つまり、ネット同時配信を利用するために同じ月額1260円を支払いながら、実質の追加負担0円の世帯と、追加負担1260円の世帯が誕生する。

これは放送法第20条第10項第3号「特定の者に対し不当な差別的取扱いをするものでないこと」に違反している可能性がある。

NHKは放送法を遵守するか、時代に合った放送法の改正を

つまり、NHKがインターネットで番組を同時配信し、ましてや地上波と同額の受信料を徴収する事は、放送法に違反する可能性が高い。

これまで散々、放送法を盾に裁判を起こしてまで受信料をもぎ取ってきたNHKには、是非とも現行の放送法を遵守していただき、インターネットでの番組同時配信は止めていただきたい。

もっとも、時代を考えれば、インターネットでの配信に移行すする事は自然だ。私はそのために放送法を改正するのならば賛成だ。

そして、その際は是非とも時代に合った受信料規定の改正をお願いしたい。

現行の放送法第64条で定められた「受信設備を設置した者は、受信についての契約をしなければならない」とは、全国に向けて電波でテレビ放送を流しているものの、誰が受信したか特定する事ができないため、「設備の設置=契約の意思有り」と定めたアナログ時代の規定だ。

現在のデジタル放送では受信者を特定できるのだから、契約自由の原則に基づき、「契約の意思を示したものは、受信についての契約をしなければならない」と定めるべきだ。要は、スクランブル放送にしろという事だ。

実際、ネット受信料では契約者だけから徴収する方針であるようなので、NHKの方針とも合致した至極真っ当な改正であろう。

その際に、地上波とインターネットのセットパックにするなり、バラ売りするなりは自由にすれば良い。

もっとも、Amazonプライムで月額400円で3万本近い番組が視聴できる時代に月額1260円という価格設定をしたり、「地上波より安くするとテレビよりもネットでの視聴が増えてしまう」という謎の意見が強いNHKの経営陣に、時代に合わせた改正案が期待できるとは思えないが。

-IT・メディア

author : 宮寺達也

オススメ商品
                                                                                                 

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

NHKがスクランブル化しても、受信料収入はそんなに下がらない

出典:Wikipedia 日本放送協会 5月25日、ワンセグ携帯を持っている男性がNHKに対して受信料の支払いの義務は無いと争った裁判で、水戸地裁はワンセグ携帯を持っているだけでも契約義務があるとの判 …

スポンサーへの抗議・不買運動に感じる違和感。これからの抗議を考えよう

出典:テレビ朝日公式サイト 8月6日にテレビ朝日で放送される番組、「ザ・スクープスペシャル ビキニ事件63年目の真実」が放送前から大炎上している。 この番組は年に1回、8月の終戦記念日あたりに太平洋戦 …

FAXは滅びぬ ! 何度でも蘇るさ !

出典:写真AC 森友学園の問題で「昭恵夫人付きの官僚が森友学園にファクスを送付した」と聞いた時、「ああ、やっぱりまだファックスって現役なんだなあ」としみじみと感じた。 アゴラでも常見陽平氏が「いまさら …










 




2017年10月
« 9月    
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031