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NHKがスクランブル化しても、受信料収入はそんなに下がらない

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出典:Wikipedia 日本放送協会

5月25日、ワンセグ携帯を持っている男性がNHKに対して受信料の支払いの義務は無いと争った裁判で、水戸地裁はワンセグ携帯を持っているだけでも契約義務があるとの判決を下した。(参照:東洋経済オンライン

ワンセグ携帯への受信料支払いについて、NHKは支払い義務があると頑なな態度であるが、昨年8月にはさいたま地裁で「契約義務は無い」との判決が出ており、司法の判断も揺れている。

水戸地裁の裁判では「携帯電話は一定の場所に置いておらず、放送法に定められた受信設備の設置ではない」と主張しており、なかなかの神学論争に発展している。

「設置しなければOKなら、テレビも持ち上げたら受信料払わなくて良いのかな」

「つーか、今どきワンセグなんて見てるやついるのか?」

と様々な思いが駆け巡ったが、受信料のニュースを聞くたびに私は思う事がある。

「法律で決まってるから、テレビを買ったら受信料を払ってください。なんて古臭いやり方は止めて、受信料を払わない人はNHKが映らないようにすれば良いのに」


NHK出身の池田信夫さんが主張するスクランブル化

このニュースを見た私が

「設置」か「携帯」かとか神学論争の前に、もうワンセグなんて誰も見てないだろ

ツイートしたところ、池田信夫さんから

受信契約を強制する受信料制度そのものが憲法違反だという訴訟が、最高裁で審理されている。NHKに対する国民の支持率は高いので、受信料などという変な制度に頼らないで有料放送にすべきだ。

とのRTをいただいた。

この池田さんが言う「有料放送にする」とは、地上波デジタルのスクランブル機能を使って、受信契約を結ばない視聴者に対してNHKが見れないようにする事である。

私は常々、視聴者の意思に反して強制的に契約を結ばされるNHKの受信契約は、「契約自由の原則」を犯す悪質なものと思っている。

「契約自由の原則」とは、民法で直接の規定は無いものの、第90条(公序良俗違反の法律行為の無効)や第91条(任意規定と異なる意思表示)などが根拠とされている。(参照:マネー百科

また、憲法第13条「個人の尊厳」第29条「財産権」も根拠としており、法治国家である日本に住む私たち皆が有する権利だ。

なお、NHKと契約を結びたく無い人によって訴訟が起こされており、もうすぐ最高裁で憲法判断が示される予定だ。(参照:日経新聞)一審・二審と受信料の支払いを命じる判決が出ているのであまり期待はしていないが、注目している。

さて、私はこのようにNHKの受信料制度には不満を抱えているので、さらにこうツイートした。

スクランブルにしない理由がわかりません
既存の支払者は何も困らず、見たい人は払うようになり、見たくない人は払わない。誰も困らず、受信料収入はUPするでしょう

すると、池田さんから

地上波にスクランブルをかけたら、何も考えないで受信料を自動振込で払っている(大部分の)国民が振込を止めるからですよ。世の中の「定期購読」モデルの最大の収入源は、何も考えない人。

とまたRTをいただいた。

確かに、「強制だからと」「決まりだから」と何も考えずに、またイヤイヤながらNHKを見ていないのに受信料を払っている人も多いだろう。スクランブル化すれば、大量の解約者が出る事は間違いない。

しかし、池田さんがおっしゃるように「NHKに対する国民の支持率は高い」。スクランブル化すれば解約者が出ると同時に、これまでNHKを見ているけど支払いを拒否していた人が契約する事もあるはずだ。

実際にスクランブル化すればどうなるのか、様々な情報を元にシミュレーションしてみた。

NHKがスクランブル化した場合の受信料収入シミュレーション

まず、NHKの受信料を確認する。受信料には地上波契約(2ヶ月:2,620円)と、BS放送が見れる衛星契約(2ヶ月:4,560円)がある。各種割引制度があるので、各世帯が同じ金額を払っているわけでは無いが、ここは単純化のため決算情報から平均化する。

また、現在のNHK契約者数は地上波契約2249万世帯、衛星契約2067万世帯である。総務省によると日本の世帯総数が5340万世帯であるので、未納世帯が1025万世帯となる。

そして、近年の訴訟も辞さないNHKの徴収強化の成果なのか、契約数は順調に増加している。2016年には支払率が78.2%になり、過去最高を記録している。特に高額な衛星契約の伸びが顕著であり、10年前の1200万世帯から倍増近くまでUPしている。今や、総数の47%が衛星契約である。

この契約世帯が受信料を払ったら、総額は8265億円になる。だが、NHKの決算によると2016年の受信料総収入は6789億円であり、8割程度になっている。これは大口割引や未払いの影響と推測するが、スクランブル化後もこの影響は変化無いとする。

以上のデータを元に、スクランブル化を実施した後の受信料収入を推定して見た。

まず、地上波契約からはかなりの離脱者が出てくるだろう。私はこの離脱者を3割程度と推定する。

NHKの発表によると「北海道・東京・京都・大阪・兵庫・福岡・大分・沖縄」の8県以外は、全国平均の78.2%を上回っているとのことだ。これは地方のローカル局は民放の数が少ないが、47都道府県全てを網羅しているNHKの強みだろう。(私の故郷の富山県は朝日テレビ、テレビ東京系列が無い。そのため、甲子園を見るにはNHKしかなかった)

都心の単身世帯を中心に離脱者が増えるだろうが、地方では根強い人気があるため、過半数が離脱するような惨状にはならないと思う。NHKは視聴率40%を超える紅白はもちろん、16%強のニュース7、「あまちゃん」以降安定して20%強を叩き出している朝の連続テレビ小説、ちょっと低迷気味だが「真田丸」で平均16.6%を記録した大河ドラマ等、人気のコンテンツがたくさんある。

地上波契約は、元々不満の無い層が50%、そこに人気番組を見たいから契約を継続する層を連続テレビ小説の視聴率をベースに20%と仮定し、70%が契約し続けると推測する。

そして高額の衛星契約であるが、これはほとんど減らないと推測する。そもそも、わざわざBSアンテナを設置したり、ケーブルテレビと契約する世帯はテレビ視聴にアクティブであり、自発的な意思でNHKと契約していると考えるのが自然だ。

もちろん、民放のBSが目的であり、NHKのBSには興味が無いという人もいるだろう。しかし、NHKはBS1とBSプレミアムと2チャンネルも保有しており、「通販番組ばっかり」と揶揄されるBS放送においての貢献度は高い。また2018年にはBS 4K放送も始まり、BSの魅力はUPする。この10年でNHKの衛星契約が倍増している事を考えても、これからも契約者数は増えていくだろう。スクランブル化して離脱者が出たとしても、契約者増が相殺するだろう。そのため、現在の100%が契約し続けると推測する。

そして、現在の未払い1025万世帯である。これは地上波契約と同じ考えで、人気番組を見続けたいから新たに契約を結ぶ世帯が増えると推測する。その率は同様に20%とする。

以上の推測を踏まえ、スクランブル化の前後でNHKの受信料収入がどう変化するか計算し、グラフ化してみた。

図1 スクランブル化による受信料収入の変化

受信料収入はそんなに下がらない、NHK経営陣はビビらなくて良い

私の試算の結果は、スクランブル化をした事によって、NHKの受信料総収入は6769億円から6321億円に下がる。400億円近い減収になる事は確かだが、そんなに極端に下がったという印象は無い。

NHKの決算によると、2016年の決算では200億円の予算残があるので、正味の予算不足は200億円である。スクランブル化により予算は確かに不足するが、全国で毎日嫌な顔をされて苦しんでいる集金人を雇う必要も無くなるし、裁判を起こす必要も無くなるのでコスト削減になる。実質、収支はほとんど変わらないのでは無いか。

何より、スクランブル化すれば国民の不信感が解消され、支持率はさらに高まるだろう。それに、良い番組を作成して、収入増に繋げるというインセンティブが生じる。「あまちゃん」や「真田丸」のような良質な番組を作成すれば、自ずと受信契約は伸びていく。

さらに言うならば、収入6321億円は十分に多い。現在、民法No.1の座を不動のものにしている日本テレビの売上高が4148億円である。NHK職員の年収1200万円が高すぎるという思いもあるし、大した経営努力もせずに、これだけの大金が黙っていても入ってくる時点で文句言うなと思う。

NHKは現在のようにお上の威厳を傘に来て訴訟で一般庶民を脅しながら受信料を確保するのではなく、スクランブル化して良質な番組を作る努力の結果によって受信料収入を得るようになって欲しい。

少なくとも、今の番組のままでも大して受信料収入は下がらないのだから、NHK経営陣はビビらずにスクランブル化を決断して欲しい。

ちなみに私はマジでNHKの番組は見ないので、スクランブル化されたら契約する気は無い。だが、メジャー2ndがアニメ化されたら、契約しても良いと思う。

 

参照:NHK受信料の窓口日本放送協会決算平成28年度末受信料の推計世帯支払率総務省統計局日本テレビ決算資料

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author : 宮寺達也

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