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Huluはただ値上げをすれば良かった

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出典:Hulu公式サイト

アメリカ発の動画配信サイト、Hulu日本版が5月17日のリニューアルに伴うシステム移行で不具合を多発し、大炎上している。(参照:ITmedia NEWS

動画が再生できなかったり、動画再生が途中で止まってしまったりと「動画配信サイト」の根幹に関わる不祥事であり、ユーザーは大迷惑である。

私もHuluのユーザーであるので「大丈夫だろうか?」と心配していた。だがまあ、私は心が広いし、エンジニアなのでシステム刷新に伴う不具合の苦労は良く分かる。多少の不具合くらいでは怒らないでおこう。むしろ不具合を発見して、公式サイトに報告しようとさえ思いながら、仏の心でサイトを開いた。

すると不具合に遭遇する前に、そもそも動画の再生が出来無くなっていた。新システムはHDCP対応モニタを必須としており、私の愛用モニター「FlexScan L997」はHDCPに対応していないので、そもそも観る事が出来なくなっていたようだ。

「良かった、私は動画再生の不具合に遭遇しなかった」

って、んなわけねーだろ。ちゃんと月額の料金をしっかりと払い、なんの著作権違反も犯す気の無い善良なユーザーが、そもそもサービスの利用を拒否されちゃったよ。激おこぷんぷん丸ですよ。

というわけで、私も解約してやろうと怒っているが、Hulu日本版はなぜこのような事をしたのか、どうすれば良かったのか考えてみたい。


Hulu日本版はコストダウンをしたかった

そもそも特にユーザーから不満の上がっていなかったHuluがなぜこんな下手なリニューアルをしたのか、アゴラ執筆者でもある松本孝行氏が解説記事を書かれている。

なぜhuluはリニューアルをする必要があったのか

この記事の中で松本氏は、

「Hulu日本法人は赤字17億8,900万円を解消するべく、独自システムにする事で、Huluアメリカ本社へのシステム使用料・契約料をコストダウンしようとした」

と推測されている。今回のシステムリニューアルは特に新しい機能が追加されたという事は無いし、ドメインが「hulu.jp」から「happyon.jp」に変わるというデメリットしか無い変更まで加えている。

「これまでのドメインを継続するにはHuluアメリカ本社との契約が必要である」という記事も出ているので、かなり確度の高い推測だと思う。

確かに売上高163億3,770万円に対して、赤字17億8,900万円は大きな数字だ。何らかのテコ入れが必要なのは確かだ。

しかし、その対策としてコストダウンとはつくづく日本企業の悪いところが出たと思う。

Hulu日本法人は、ただ月額料金を値上げするだけで良かったのだ!

月額100円、料金を値上げするだけで万事OKだった

Hulu日本版の料金は月額933円(税抜き)である。会員数は151万2,000人(16年12月末)であるので、年間169億円の売上が期待できる。決算の数字とも一致しているので、未払いの幽霊会員もほとんどいない、健全な経営だ。

さて、会員数は151万2,000人で赤字が17億8,900万円ならば、月額料金を100円UPし、1033円にするだけで問題は解決だ。18億1440万円の売り上げが経費ほぼゼロで実現できる。赤字脱却、万々歳だ。

いや、値上げしたら会員が嫌気を差して退会してしまう、そんなのダメだ!

と思う人もいるだろう。実際、Hulu日本法人の中にそう思った人がいるから値上げをせず、コストダウンを行なったのだろう。

しかし、Huluユーザーとして私は思う。私は今回のシステム変更(HDCP必須で見れなくなった)で退会しようと思っているが、月額料金が1033円に値上げされても退会しようとは思わなかった。

<理由1>

まず、Hulu日本版の料金933円は安い。強豪のNetflixの同クラスのサービス・スタンダードプラン(画質:HD)の料金は月額950円であり、Huluより高い。値上げをしてもやはりNetflixと大差無い値段であり、即退会に繋がる程の不満にはならないだろう。

<理由2>

そもそも、既存ユーザーは月額933円以上の価値をHuluに認めるから料金を払っていた。なので、値上げの余地があるのだ。

これはビジネスの現場で良く誤解される事なのだが、「商品価格=ユーザーが感じる価値」であり、それ以上上げたら価値が無くなってしまうと思っている人がいる。

いや、「商品価格=ユーザーが感じる価値」でしか無いなら、ユーザーは現金を手元に置いておいた方がお得では無いか。現金ならば何にでも交換できるが、商品は交換し辛い。

ユーザーは、現金を手元から失う不幸よりも商品を入手する幸せが大きいと思うから、現金と商品を交換してくれるのだ。

つまり、新規ユーザーはともかく、既存ユーザーはHuluに933円以上の価値を感じているのだ。だからわざわざ契約し、自分の手元から毎月933円を失う事を許容しているのだ。

これはつまり、Huluの既存ユーザーにはまだ値上げの余地がある事を示している。Huluは「人気映画やドラマ40,000本が見放題のオンライン動画配信サービス」である。これをTSUTAYAでレンタルしようとすれば、1本100円、1万本のDVDとして、100万円に相当する。まあ全部見るわけではもちろん無いが、私としては月額2000円払っても良い魅力的なサービスだ。

コストダウンは誰も反対しにくい

というわけで、Hulu日本法人は自らのサービスの魅力を信じて、100円の料金アップをユーザーにお願いするべきだった。しかし、そんな簡単な事をせず、わざわざお金を掛けて新システムを構築し、コストダウンを図ったのは何とも日本企業らしいと思う。

(品質を下げない)コストダウンは、ユーザーに迷惑を掛けず、会社の利益をUPさせるため、ちゃんとやればみんなが幸せになる。そのため、「コストダウンし利益をUPさせよう」との提案は非常に反対しにくい。コンセンサスを重視する日本企業ではこうした「みんなが何となく反対しにくい」意見が非常に採用されやすい。

もちろん、コストダウンにはリスクもある。しかし、コストダウンに伴うリスクは今回のシステム変更のように人と時間を掛ければ解消できるため、事前には問題になりにくい。

Hulu日本法人でも、もちろん「料金UPして赤字脱却」という提案はあっただろう。しかし、そのリスクは「ユーザー減少」といった致命的なリスクであり、しかも事前にチェックする事は困難だ。そのため上司の「リスクは大丈夫か?」という指摘に反論しにくい。

みんな賛成では無いが反対でも無いという消極的なコストダウンをまずやってみるのは、日本企業のあるあるだ。

こうして、Hulu日本版はみんなが微妙な思いを抱えながらシステム変更という無謀なチャレンジを行い、見事に大炎上したわけだ。

もちろん月額料金を値上げした場合、ユーザー離れが起こった可能性はある。しかし、今回の大炎上によるユーザー大量退会よりは遥かに少なかったであろう。

おまけ:個人的動画配信サービス採点

私は、Huluだけでなく、Netflix、Amazonプライムビデオの3つの動画配信サービスを網羅している。それを、今は幻のシャープ製IPS液晶パネルを搭載した、史上最高に目に優しいPCモニター:「FlexScan L997」で鑑賞している。

その実体験から各動画配信サービスを採点してみた。まだ使った事の無いという方は是非とも参考にして欲しい。

Hulu 総合31点
料金:9点(月額933円、税抜き)
動画数:9点(日本テレビの番組が中心だが、アニメ、国内ドラマ、海外ドラマを幅広く取り揃えている。ただし、オリジナルコンテンツはほとんど無し)
使い勝手:5点(今回のリニューアル前は9点。プレイヤーの操作、動画の検索はかなりやり易い。HDCP必須は致命的な欠陥)
画質:8点(720PのHDに対応しているが、DVDよりちょっとマシくらいの画質)

Netflix 総合37点
料金:9点(月額950円、税抜き)
動画数:8点(アニメ、海外ドラマを幅広く取り揃えているが、他と比較すると見劣りする。オリジナルコンテンツはドラマ:火花など、どんどん充実している)
使い勝手:10点(動画の検索、A.I.によるオススメ、プレイヤーの操作、どれを取っても使いやすい)
画質:10点(HDはBlu-rayとまではいかないが、地デジより綺麗。4K対応のプランもあり、文句無し)

Amazonプライムビデオ 総合34点
料金:10点(年会費3,900円、税込。その安さ圧倒的!)
動画数:10点(アニメ、国内ドラマ、海外ドラマ、旧作から最新作まで圧倒的な本数。しかもオリジナルコンテンツも、話題のドキュメンタルや内村さまーず等、充実している)
使い勝手:7点(通常のAmazonサイトの一部になっているので、はっきり言って使い辛い。動画を探すのは一苦労。プレイヤーも微妙。)
画質:7点(HD対応になっているが、DVDと同程度の画質。回線も混んでおり、良く途中で止まる。4Kもあるようだが、知らん。)


アゴラに掲載されました(2017年05月25日)

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author : 宮寺達也

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