教育

大学はそもそも「高等教育」なのか?

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出典:Wikipedia 大阪大学

5/3の憲法記念日。安倍首相がビデオメッセージで、憲法9条に第3項を追加して「憲法に自衛隊を明記する」と述べたことは大きな話題を呼んだ(参照:産経新聞)。9条の改正反対派、抜本的改正派、第3項追加の賛成派に別れて、喧々諤々の議論になっている。

しかし、あのビデオメッセージでは「子供たちがそれぞれの夢を追いかけるためには、高等教育についても、全ての国民に真に開かれたものとしなければならないと思います」とも発言しており、こちらにももっと注目するべきだ。

これまでも維新の党を筆頭に与野党通じて主張されてきた「大学の授業料の無償化」に安倍首相も賛成のメッセージを寄せたことになり、今後、「大学無償化」に向けて一気に議論が進んでいく可能性が高くなった。

私自身、大学に進学したことによって成長できたからこそ、今の自分があると考えている。何より、限りある税金はこれからの日本を支えていく子供達にこそ投資するべきだと思っている。

しかし、「大学無償化」が子供達のためになるとはどうしても思えない。そのため、これからの高等教育はどうあるべきか、考えていきたい。


大学に進学したのは就職に有利だから

そもそも私がなぜ厳しい大学受験に挑んで、いわゆる難関国立大学と言われる大阪大学に進学したかと言うと、「高校卒業してすぐやりたいことも無いし、将来の就職に有利だから」である。

改めてこうして文字にすると、非常にダサいと思うが、これがほとんどの大学受験者のリアルだと思う。

実際、私は大阪大学(正確には大学院)を卒業した結果、たった一回の面接を受けただけで大手の事務機器メーカーに採用されることができた。年収700万円を超える企業に就職できたことによって、それからはほとんどお金に困ることなく生活できている。

日本の平均年収が420万円と言われる中で、平均年収700万円を超えるような待遇をしてくれる企業の採用は、ほぼ大学卒業以上を条件にしている。実際、一緒に入社した本社採用の同期は全員大学卒か大学院卒であった。

独立行政法人労働政策研究・研修機構によると、高校卒の生涯年収は2億4千万円であり、大学・大学院卒は3億1千万円となり、7千万円も高くなる。

非常にダサい考えだったとはいえ、私が大学を卒業したことは実際に私の収入を大きくアップさせている。しかし、それは私が大学・大学院で学んだ6年間で、7千万円の価値のある成長を果たしたからであろうか?

大学教育の4年間で、勉強の実力は劣化した

「教育」とは辞書を引くと、

ある人間を望ましい姿に変化させるために、身心両面にわたって、意図的、計画的に働きかけること。知識の啓発、技能の教授、人間性の涵養 (かんよう) などを図り、その人のもつ能力を伸ばそうと試みること。

とある。

つまり、大学を卒業した私は、4年間の大学教育によって大学が意図したように能力が伸びているはずである。それも、生涯年収7千万円アップに値するような伸びを示したはずである。

確かに、高校卒業時の私と大学卒業時の私を比較すれば、随分成長したなとは思う。高校卒業以来会っていない友人が私を見れば、セルゲームを前に精神と時の部屋での修行を終えた孫悟飯を見たように

「あ…あれが宮寺か……!! 見違えた……」

「……なんだ!? あいつ…… …あれは宮寺…!? いや…雰囲気が少し違う……  …ごく自然にあの状態でいやがる……」

とでも言ってくれたに違いない。(多少、誇張あり)

しかし、それは大学の授業のおかげでは無いと思う。毎日のようにしんどい練習をこなし、先輩、同期、後輩、七帝のライバル達と真剣に向き合い、切磋琢磨していたソフトテニス部の経験が大きかったと思う。

勉強も頑張ったとは思うが、高校卒業時より劣化していると思う。何よりの証拠に、入学試験を解いたら、受験時より点数は下がっているだろう。

入学時点より勉強の実力を劣化させて、卒業生を世に送り出す組織を「教育」機関というのは無理がある。

そうだ、そもそも大学は「高等教育」の場では無いのだ。

私は、大学の本来の在り方も教育の場ではなく、「自発的な修学」の場だと思う。

「修学」とは、学問をおさめること。学んで知識を得ること、と辞書にはある。

大学は役に立つかどうかはわからないが、様々に面白い学問、知識、出会いに満ち溢れている。「暇を持て余した若者の遊び」場として、4年間の自分探しをするには良い所だと思う。

もっとも、我が母校である大阪大学について言うならば、大阪大学の授業は本当にしんどかった。よく噂で聞くような、出席さえしていれば単位が貰えるとか、代返してもバレないとか、テストは持ち込みOKだから楽勝とか、そんなことは全く無かった。

朝8時50分からの始まる90分授業×4を毎日しっかし受講し、ノートを取り、テスト前は徹夜で勉強してようやく「可」を取れるという感じであった。

関西では「京大は単位が降ってくる、神大は単位が落ちてる、阪大は、、、掘っても掘っても出てこない!!」との格言がある。自分でも良く留年せずに卒業できたと思う。

それでも大学入試を解き直す自信は無いし、高校時代より勉強したとも思っていない。私の勉強の実力は大学4年間で劣化したのだ。他の大学ならばもっとではないか。

今もなお健在な大学卒業というブランド

そんな大学で勉強の実力を下げた私が、いわゆる一流企業に就職できたのは「ブランド力」に他ならない。

正しいか間違っているかは置いておいて、現実として日本企業の平均年収トップ100に載っているような企業は、新卒採用を通じて大学卒業者を最優先に採っている。

難関大学を卒業したということは、実際に使える人材かどうかはわからないが、「使える人材のはずだ」というブランド力が非常に高いのだ。

そう、ジャンプの人気漫画が実写映画化されるように、月9の新作ドラマが発表されるように、キムタクが主演するように、その内容を確かめる前に大学卒業者は企業からある程度の信頼を得ている。まさに7千万円のブランドだ。

これを池田信夫さんは「シグナリング効果」(能力があると見せる効果)であると言い、クジャクの羽と同じで、それ自体は無駄であり、「大学バブル」であると厳しく指摘している。

そして、大学バブルはすでに崩壊の様子を見せている。大学進学率が54.7%にも達した現在、大学卒業したというだけで簡単に一流企業には入れなくなっている。

実際に、私のような理系学部では20年以上前から大学卒業だけでは教授推薦を貰うことができず、ほとんどが大学院に進学する学歴インフレが起こっている。しかも、大学院にまで行って掴んだ教授推薦でもあっさり面接に落ちたりする。(実際に、私も一社落ちている)

ネットを見れば、新卒で一流企業を応募しまくって100社落ちたという学生の嘆きをたくさん発見できる。

「大学無償化」は貧しくて大学に行くことのできない若者を救済し、より良い収入を得ることのできる人材に育ってもらい、貧困の連鎖を止めたり、国の税収を増やすことにあるはずだ。

しかし、既にバブル崩壊気味の大学入学者を、無償化によってこれ以上増やしたらどうなるだろう?

大学無償化でバブルは弾ける

恐らく、大学卒業者が圧倒的に増えるため、企業は大学卒業者だからといって簡単に採用しなくなるだろう。そして、学生はそれに対抗するため、理系だけでなく、文系も大学院進学者が増えるだろう。

しかし、大学院卒業者もさらに増えてしまうため、企業は大学名はほとんど見なくなるだろう。企業は大学名以外の方法で志望者の絞り込むを模索し、高校名やセンター試験の点数を見て、採用を判断するようになるだろう。(もう既にそうなっているとも聞いているが)

まさに大学バブルの崩壊だ。バブルはいつまでも続かないからバブルなのだ。テラフォーマーズが大爆死したように、月9が最低視聴率を連発するように、キムタク主演の無限の住人が大コケしたように。

結局、大学が生徒の実力を伸ばす「高等教育」の場所で無い以上、大学を卒業したら生涯年収7千万円UPとは「限られた一流企業への入社枠」の奪い合いでしかない。高い年収を出してくれる企業の総数が増えない限り、その入り口部分をどういじったところで何も変わらない。

そして、本来ならば就職していた若者が4年間ないし6年間を学生として過ごすことは、その間得られていたはずの収入がゼロになる上、「両親からの生活費の仕送り」の期間が長引いてしまう

大学無償化は、これからの若者の収入を増やしたり、子供を持つ両親の金銭的負担を少なくするためにあるはずだが、私にはどうにも逆の結果が待っているようにしか思えない。

なので、私は「高等教育の無償化」には賛成するが、そもそも高等教育とは呼べない「大学の無償化」には反対である。

-教育

author : 宮寺達也

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  1. […] 前回の記事で大学無償化への反対意見を書く中で、「卒業時に入学試験を解けなくなっているような大学は、教育機関とは呼べない」と書いたところ、かなりの反響をいただいた。 […]

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