政治

厚生労働省の「若者って本当に損なの?」に論理的に反論する

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出典:厚生労働省・いっしょに検証!公的年金

池田信夫氏がブログで厚生労働省の年金マンガを紹介されていた。

この年金マンガは以前からネットで内容が酷いと話題になっていたものである。池田氏は第11話に出てくる、

「お年寄りのおかげで今の若い世代が豊かに暮らしていることを考えると、受け取る年金に差があったとしてもそれだけで若者が損とは言えないと思いませんか?」

という箇所に警鐘を鳴らしており、

若者はこのマンガをちゃんと読んで理論武装したほうがいいと思う。君たちが老人の「1億円ローン」を払わされる理屈だから。

ツイートされた。

私は36歳であるがまだ若者と自負しているし、まさに多額の年金支払いをしたものの将来は雀の涙しか年金を受け取ることのできない世代である。このまま厚生労働省の理屈に飲まれることの無いよう、論理的に反論したい。

結論から言うと、「公的年金の世代間格差は、日本国憲法第14条・法の下の平等に反するため、許されない」である。


ネットで話題の厚生労働省の年金マンガ

池田氏が紹介された厚生労働省の年金マンガは、実はもう3年前から「いっしょに検証!公的年金」という厚生労働省の公式サイトで公開されている。

開設当初からネットでは話題(ほとんどが批判であるが)になり、様々なまとめ記事ができている。

年金の「世代間格差」、本当にないのか 厚労省年金マンガに「色々ひどい」と反発

厚労省が出した年金マンガが予想以上にひどいと話題に

年金の「世代格差」はない?厚労省の年金マンガにツッコミ多数

【酷い】厚生労働省の漫画が非難殺到で大炎上!「(年金制度のために)結婚してたくさん産めばいい」

厚生労働省のマンガ「今の日本は老人が作ってきた。年金に差があるのは当然ね」

ちなみに池田氏は最初の J-CASTニュースの記事にて、

『所得増や相続などを考えると、世代間格差は大きくない』というのが厚労省の見解。賦課方式は『同時代の助け合い』だから、もともと世代間格差という概念がない。若者は自分で反論を考えてみよう

とコメントされており、2年前から同じ問題意識を持たれていたことがわかる。

第11話も3年前から公開されているのだが、ここ最近になって改めて「若者が損とは言えないと思いませんか?」の箇所がフューチャーされたようだ。

池田氏がブログに「今のゼロ歳児の負担は、今の60歳の世代より約1億円多い」と記載されたように、公的年金の世代間格差は最早手が付けられないレベルまで悪化している。

この世代間格差について、まだ大きく問題視するマスコミ・政治家は少ないが、ネットの議論では確実に声が大きくなってきている。

厚生労働省は昔は「100年安心、世代間格差は大きくない」と主張していたが、流石に誤魔化し切れなくなってきたのか、

「公的年金は世代間の助け合いであり、そもそも損得の問題では無い。金額に差があったとしても仕方が無い」

と、「そもそも世代間格差という問題が存在しない」と答えをはぐらかすようになったのだ。

この厚生労働省のはぐらかしは、池田さんも「このマンガを論破するのは、意外にむずかしい」ツイートされたように、結構厄介だ。

こちらは「負担に1億円も差があるなんて、大問題だ」と主張しても、「そもそもお金の差は問題ではありません」と問題そのものを無かったことにされているからだ。

まるで「お前、勉強ばっかりしやがって。嫌味なやつだな」と言われたら、「いやー、勉強できても全然モテないよ。人生は勉強じゃないよ」と誤魔化してきた私の中学生時代のようではないか。

真っ先に思い出したのは、「人工透析患者は自業自得」

さて、「若者が損とは言えないと思いませんか?」を読んで真っ先に思ったことが、

「まるで、年金を貰えない若者は今の時代に産まれた自業自得、とでも言われているようだな」

ということだ。すると、当然思い出すことがある。元フジテレビのアナウンサーである長谷川豊氏が「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!」(注:今はタイトルが変更されています)というブログを書いて大炎上し、全ての仕事を降板になったことだ。

この記事の問題点は散々に指摘されてきたが、改めて整理すると、

病気になることは様々な要因が関係しており、同じように健康に気を付けていた人でも、病気になったりならなかったりする。個人がどうしようもないことに対して、行政が「自業自得だからあなたは助けない」「あなたは頑張ってきたから助けてあげる」と線引きすることは大変危険であり、許されない

というところであろう。

公的年金の「若者と老人で、金額に1億円も差があるなんて」という問いかけに対しての厚生労働省の「お年寄りのおかげで今の若い世代が豊かなんだから」という回答は、

「老人は日本のために頑張ってきたんだから、年金で楽をして良い」

「若者はまだ日本のために頑張っていないのだから、年金で苦労しても仕方が無い」

と言っているのと同じだ。だから「若者は自業自得と言われている」と感じたのだろう。

そして、この考え方には大きな問題がある。「若い世代を豊かにしたから年金を多く貰ってもOK」という考えは、「老人の中でも、若い世代のために頑張って来なかった人は年金が少なくても仕方が無い」「若者の中でも、企業に成功したりと若者を豊かにしてきた人は年金を多くしよう」という理屈に繋がる。

これでは公的年金によって、「富めるものはますます富み、貧しいものはますます貧しく」なってしまうではないか。こんな思想が誰もが老後を安心して暮らすための公的年金の思想に一致するわけがない。なんて不平等な考えだ。

そうだ。厚生労働省の主張は、「法の下の平等」に反するんだ。

日本国憲法第14条第1項「すべて国民は、法の下に平等である」

日本国憲法第14条では、

第1項 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

と規定されている。

厚生労働省の「お年寄りのおかげで今の若い世代が豊かなんだから、受け取る年金に差があったとしても損とは言えない」という回答は、この憲法第14条違反である。

実際に、私たちは先人が作って来られた社会インフラ・資本、テクノロジーの発達、教育、政治体制といった財産があるからこそ、世界でも有数な先進国の一員として安心して暮らすことができている。それに感謝と尊敬の念を抱くのは全くその通りだと思う。

しかし、そのような「政治的、経済的又は社会的関係」によって差別をされない権利が憲法第14条によって、私たちにはある。

私たちのために頑張ってきたご老人、現在大活躍している若者だけでなく、若い時代に貧乏であったため税金をほとんど支払っていなかったご老人や、まだ何も成し遂げていない若者も、公的年金の負担において差別されてはいけない。

そして何よりこれから産まれてくる赤ちゃんは、産まれた瞬間から1億円の負債を抱えているのだ。

私たちはまだ選挙権やネットでの発信を通じて、公的年金の運用に意見を述べることができている。しかし、まだ何も言えない赤ちゃんに負債を抱えさせる差別を許してはいけないと思う。

親の資産、才能、容姿、病気、身体の障害、過去の努力、生まれた時代、etc

人には自分でコントロールできること、できないことを含めて、様々な因子によって今の自分を構成している。それが個性である。

現在、公的年金はその人の個性を見て、負担額に大きな差をつけている。

個性を差別せず、誰もが同じ権利を保障されることが「法の下の平等」のはずだ。厚生労働省には、是非とも日本国憲法第14条をしっかりと見直して欲しい。

公的年金は、今の時代を作ったご老人も、今を生きる若者も、これから産まれてくる赤ちゃんも、みんなが法の下に平等であるべきだ。

-政治

author : 宮寺達也

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