教育

生徒会長選挙で嫌いなやつに敗北した。絶望が、俺を強くした(中編)

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出典:黒部市立桜井中学校公式サイト

前回の記事はこちら

「宮寺、男子副会長に立候補してくれないか」

先生から予想外の言葉を聞いた私は動揺しつつも、必死に頭を巡らせ、言葉を紡いでいた。
(俺を男子副会長にしたいということは、俺以外の誰かが生徒会長に立候補しているということか。そして、先生は生徒会長選挙で俺が負けると思っている。だが、男子副会長に立候補している生徒はいないから、俺に会長選挙を降りて副会長になってくれということか)

私「先生、僕の他に生徒会長に立候補するやつがいるんですか?」

先生「Tが立候補すると言っている。Sは生徒会を続ける気は無いようだ。なので、生徒会をやる気がある男子生徒はTと宮寺だけだ。先生は、宮寺も生徒会長としてふさわしいと思うが、宮寺は頭が良いから副会長として生徒会長を支える方が向いていると思うんだ」

私「わかりました。ちょっと考えさせてください」


見えてきた生徒会長選挙を巡る教師陣の思惑

先生から副会長に回れと言われたことは、はっきり言ってショックだった。「頭が良いから副会長に向いている」なんて、とってつけた言い訳だ。全く心に響かなかった。先生が、ずっと必死に勉強を頑張っていて成績学年トップ3の座を不動のものにしていた私よりも、嫌いなTの方が生徒会長になって欲しいと思っている。そう考えてしまって、悔しかった。

だが、色々と解せないこともあった。S君が生徒会を続ける気が無いとしても、それならば他の候補者を探せば良いはず。実際、副会長のO先輩のように、1年生時に生徒会を経験していない生徒が立候補することはよくある。2年生の役員は5人必要で、1年生役員(3〜4人)が全員続投しても、そもそも足りないからだ。

なので、私は生徒会選挙の現状がどうなっているか、調査することにした。友達への聞き込みを中心に情報を集めたら、おおよその背景が理解できた。

まず、S君が生徒会を続ける気が無いこと、さらにはNさんも続ける気がないことがわかった。このままでは、次の生徒会では生徒会経験者がT君と私の2名だけになるので、何としてもこれ以上経験者が減ることは避けたいのだろう。

次に、2年生男子からU君が副会長(男)に立候補を検討していること、1年生男子からは1人だけが副会長(男)に立候補することがわかった。しかし、U君は生徒会役員はもちろん、クラス長の経験も無い。友達もあまり多い方では無いので、U君が副会長(男)選挙に出た場合、1年生に負ける可能性が高い。

つまり、このまま私が生徒会長に、U君が副会長(男)に立候補すれば、1年生が副会長(男)になる上、2人しかいない生徒会経験者のどちらかが無役になる。

未経験の1年生が副会長になる。貴重な戦力である2年生の経験者が無役になり力を発揮できない、それどころか嫌気が差して生徒会を辞退するかもしれない。教師陣にとっては扱いにくい生徒会になるだろう。

どう考えても、私が副会長に回るべき。だがしかし・・・

そして、私とT君が生徒会長選挙で1対1の勝負をした場合、どっちが勝つだろうか。残念なことに、先生の予想通り、私が負ける可能性が高い。

生徒会長選挙は1年生から3年生の全校生徒が投票するが、生徒会役員の経験者同士での一騎打ちならば、1年生と3年生の票はほとんど同数に割れるだろう。なので、勝敗は2年生の票をどっちが多く取るかで決まる。そうなったら、私が不利だ。

チャラ男のT君は友達が多いし、女子の人気が高い。何より出身小学校もT君は2年生徒200人の半数近い100人弱を占める、最大派閥の三日市小学校出身だ。それに対して私の出身である荻生小学校の出身は35人、しかも男子は15人だ。同じソフトテニス部の同級生にも三日市小学校出身が多く、「悪いけど、会長選挙はTに入れるちゃ」と言われていた。

そうやって状況を整理して、私が取るべき選択肢と、その結末が見えてきた。

1. 私が生徒会長に立候補する

私かT君のどちらかが生徒会長になり、副会長(男)が1年生になる。残念なことに、T君が勝利する可能性は高そうだ。

その場合、私は無役になる。私はT君が嫌いだし、1年生の下で働くのはプライドが傷つく。しかし、生徒会を投げ出すつもりは無かった。

しかし、私とT君の仲は全く良く無い、ぶっちゃけお互い嫌い合っていた。副会長(男)が1年生になり、T君が生徒会長、2人しかいない生徒会経験者の私が無役になれば、生徒会はほとんどT君の独裁になるだろう。

なお、可能性は小さいが、私が生徒会長になるとしたらどうだろう。やはり、副会長(男)は1年生だ。この場合、T君が面白く無いのは当然だ。生徒会を辞退する可能性が高い。

私が生徒会長に立候補したら、どう転んでも生徒会が一丸となって力を合わせて大きな仕事をやり遂げるのは難しい。「丸坊主の校則を廃止する」ような、大きな実績を望むのは厳しそうだ。

2. 私が副会長(男)に立候補する

この場合、T君が生徒会長になり、副会長(男)が私になる。

流石に副会長(男)選挙で負けることは無いだろう。ポッと出の2年生男子ならまだしも、生徒会役員の経験者と1年生男子の一騎打ちなら、3年生票はほぼ確保できる。

2人の生徒会経験者が要職を占め、未経験の2年生、1年生を引っ張っていく。私とT君が嫌い合っているのは変わらないが、選挙で勝った負けたという遺恨も無いため、お互い気を遣いながらもそこそこ上手くやっていくだろう。

「丸坊主の校則を廃止する」ような大きな実績は難しくても、それなりに仕事をこなしていくだろう。教師陣にとっては、最も望ましい生徒会に間違いない。

以上のように状況を整理したら、どう考えても私が副会長(男)選挙に回った方が、良い生徒会になる。だからこそ、先生もそうしてくれと私にお願いしたのだ。

また、私にとっても生徒会長選挙で、よりにもよって大嫌いなT君に負けて一生ものの悔しさを味わうより、副会長(男)選挙に勝つ方が良いに決まっている。

大嫌いなT君に1対1で負けたら、立ち直れないかもしれない。ドラゴンボールで孫悟空がピッコロ大魔王に負けるとか、ダイの大冒険で勇者ダイがフレイザードに負けてレオナ姫を殺されるとか、あってはいけない悔しさを味わうだろう。

そうだ。期待値を計算したら、副会長(男)選挙に出る方が圧倒的に良いはず。

学校のためにも、自分のためにも、どう考えても私が副会長(男)選挙に回るべきだ。何度計算しても、その答えは変わらなかった。

なぜ私は生徒会長にこだわるのか?

理屈では、計算では、私が副会長(男)選挙に回るべきだ。しかし、決心がつかない。なぜだ?

自分の心に問いかけるように、そもそもなぜ生徒会長になりたかったのかを考えた。

・生徒会で実現したいこと

私には2年目の生徒会で実現したいことがあった。それが「コートの自由化」であった。

富山は雪国だ。冬は毎日のように雪が降り、登校はサバイバルだ。そんな環境であるのに、コートが学校指定のものしか使ってはいけなかったのだ。

オシャレしたい女子はみんな、学校指定のダサい黒コートに身を包んで登校してくる。男子はもっと悲惨で、学校指定のコートが超ダサい上(戦時中の兵隊服みたかった)、ほとんど生産していないので入手困難だったのだ。男子生徒はみんな寒さをこらえながら、冬でも学ランだけで登校していた。

私は生徒会長になり、この校則を変えたかった。しかし、そのためには私が副会長(男)だったとしても特に問題無いだろう。うーむ、これが決心がつかない理由では無さそうだ。

・友達に良いところを見せたい

私が生徒会長になったら、友達に良いところを見せられる。だが、別に喜んではくれないだろう。

私の友達は、生徒会長だからとかどうかで、友達の良し悪しを判断するようなちっちゃい奴らじゃ無い。うーむ、これも決心がつかない理由では無さそうだ。

・家族に良いところを見せたい

私には2つ下の弟がいる。私が生徒会長になって3年生になったら、1年生として入学してくる。入学してきた弟に、生徒会長として祝辞を述べる姿を、全校集会で演説する姿を見せたかった。「俺の兄ちゃん、生徒会長なんだぜ」と自慢させてやりたかった。

弟だけでなく、私のことを神童と信じて疑わない祖母、そして両親、姉(全員、桜井中学校卒)にも「あなたの家族は桜井中学校の生徒会長なんだよ」と自慢し、喜ばせたかった。
そして、自分の卒業式で、弟と母親の前で堂々と答辞を読む姿を見せたかった。

これは恐ろしく個人的な願いだ。だが、決して譲れない願いだった。

そうだ。だから決心がつかなかったのだ。私は家族を喜ばせるため、特に弟に「カッコ良い兄の姿」を見せるため、生徒会長になりたいのだ。

兄の戦い

しかし、生徒会長になれる可能性は小さい。少なくとも家族は「副会長選挙に受かった」と報告すれば、生徒会長になったのと同じくらい喜んでくれるだろう。無理に生徒会長選挙に挑んで落ちるよりよっぽど良い。

何より生徒会長選挙に落ちたら、1年生の副会長よりも役職が低いダサい姿を弟に見せることになる。そうなるくらいだったら、副会長としての兄の姿を見せた方が良いのでは無いか?

いや、違う!

私の弟は、1年生の副会長よりも役職が低い兄の姿をダサいと思うだろうか?まあ多分、そうだろう。中学生に上がったばかりの弟に、そう思われても仕方が無い。

だがしかし、例え一時期弟にダサいと思われたとしても、弟のために全力で生徒会長選挙に挑むことこそが、本当にカッコ良い兄としての在り方ではないか。

あいつの兄ちゃんは、勝算が小さいからといって勝負を投げ出し、大人の都合のために自分の夢を捨てて、小さく納まるような男では無かったはずだ!

「弟のためにカッコ良い姿を見せたい、そのために勝算が小さい勝負にも挑む兄で在り続ける」ことが、弟に、本当にカッコ良い兄の姿を見せるということだ。

こうして、私は決心した。立候補日の1週間前に先生の元を訪れ、「生徒会長選挙に立候補します」と伝えた。

勝算は小さい。負けた後のリスクも大きい。負けたら立ち直れないくらいショックを受けるだろう。学校にも迷惑を掛ける。だが、最後の最後まで決して諦めない。

兄の戦いが始まる。

-教育

author : 宮寺達也

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