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仕事で英語(ルー語)を使ってはいけない

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出典:「(日めくり)きょうのルー語 (カレンダー)」(PHP研究所)

3月25日、親友Yの係長昇格を祝って、仲の良い後輩Yも含めて3人で祝勝会を行った。私の記事にも何度か出てきた親友Yであるが、新人時代からの付き合いであり、本当に優秀な漢だ。私は心から尊敬している。

そんな優秀な親友Yが、私より4年遅れて(私も遅い方だったが)、課長に昇格した同期もいる中で、恐らく同期200人の中でほぼ最後に係長に昇格する。これは元メーカーの人事評価がめちゃくちゃ適当に行われていることの証明であり、現在の業績低迷の根本原因だろう。

さて、その親友Yがありがたいことに私の記事を読んでくれているようだ。その話をしていたら、こんなリクエストがあった。

「前に会社で英語を連発してた奴に、お前はルー大柴か、って怒ったことがあっただろう。あれを是非書いて欲しい」


英語(ルー語)連発の優秀な後輩にイラッ

私が大阪を追い出されて、神奈川に転勤した後の話だ。私は会社のほぼ全機種に搭載される最新の画像処理LSIの開発メンバーに加わっていた。その仕事で結果を出したことで、何とか新しい部署での信頼を築くことができた。

そして、最新の画像処理LSIの制御仕様(モーターやレーザーを動かすタイミング、パワーを細かく決めて、マシンの精密な動作を実現する設計図)を担当することになった。

制御仕様は、作成したら社内のソフト開発部署に渡して、制御仕様に基づいたソフトウェアを開発してもらう。そこでソフト開発部署と制御仕様の作成スケジュールについて打ち合わせすることになった。そこに、ソフト開発部署から私より2年早く係長に昇格した超優秀と評判のエースが出てきたのだが・・・(なお、以下の打ち合わせは10月15日に行われた)

エース「こちらとしましては、制御仕様のファーストを、11月のエンドにはエントリーしたいんです。内容はアバウトで良いので、11月のビギンにはウォントで欲しいんです。11月のエンドはマストですね」

私「・・・制御仕様のファーストって何だ?」

エース「制御仕様の初版のことです」

私「・・・(今から作るのは初版に決まってるだろ)内容はアバウトで良いとは、こちらはどこまで対応すれば良い」

エース「値とか式とか間違っていても良いので、中身が埋まってれば良いです」

私「(怒)・・・よし、わかった。中身が間違っていても良いんなら、今この場で制御仕様の初版を発行してやる。今から空のExcelファイル名を制御仕様書:初版と変更するから、それで良いな」

エース「え〜、困ります」

私「何でだ?値とか式とか間違っていても良いんだろ、じゃあ空でも同じだよな

エース「いや、そこはこれまでのファーストのレベルをキープして欲しいんです。そうじゃないとテーマリーダーが怒るし、エントリーできないです。レベルはウォントで良いので」

私「さっきからエントリーとか、ファーストとか、レベルとか、ウォントとか。日本語を喋れ

エース「つまり、11月のビギンにはこれまで通りの制御仕様書の初版をウォントで欲しいんです。そうしないとエントリーできないんです、困ります」

私「(直ってない)エントリーというのが何を指してるのか良くわからんが、それはソフト開発部署の都合だろ。こっちには全く関係の無い話だ。私に、いつまでに、何をして欲しいのか、具体的に要求しろ」

エース「ですから、制御仕様の初版を、内容は値とか式は間違っていても良いんですけど、でも空は困りますけど、11月のビギンにはウォントで、エンドにはマストで欲しいんです」

私「・・・わかった。11月30日に、その時点で可能な範囲の式と値を書いて、渡す。それで良いな」

エース「え〜困ります。できれば11月ミドルに欲しいです。最悪エンドでも良いですけど、30日は遅いです」

私「(怒)じゃあ、ウォントとか言うな!仕事を頼む時は具体的な要求をしろ。いつまでとは日付で、何をして欲しいとは項目と品質を言語化して、明確に説明しろ」

英語(ルー語)は何かを誤魔化したい時に使用してくる

結局、制御仕様は11月25日に、章立てだけ決めて、内容は前身機種の内容を使い回すという、何の意味があるのかわからないものを作成して渡すことになった。

この話を親友Yと話したら、親友Yもソフト開発部署と全く同じ打ち合わせがあったようで憤慨していた。

親友Y「うちのソフト開発部署は、ソフトの設計を外部社員に委託してるだろ。恐らく、その業務委託の依頼がエントリーなんだろう。制御仕様書が届かないと、エントリーできず、外部社員を遊ばせることになる」

私「こっちには全く関係の無い話だな。ソフトウェアが必要になるのは翌年の3月。だから3月からソフトの設計日数を逆算して要求すれば良いはず。制御仕様の作成は1ヶ月は掛かる。ソフトの設計も同じくらいのはず。俺は1月までに制御仕様書を作成する日程を想定していた」

親友Y「そのソフト担当者は何も理解していない。だから、明確な依頼ができない。そして、明確な依頼をしたら、依頼した内容で問題が発生したときにソフト開発部署の責任になる。だから曖昧な言葉を駆使して、責任のありかを分散しようとしている

私「なるほど。エレキ開発部署に要求した内容と納期で作成したソフトウェアで、試作機に間に合わなかったり、動作に不具合が有ったら、ソフト開発部署の責任になる。だが「いつものレベルとスケジュール」で依頼して問題があったら、エレキ開発部署に責任転嫁できる」

親友Y「その通り。だから、俺は打ち合わせで英語の使用を許さない。ビギン、エンド、ウォント、マストとか言ってきたら、「お前はルー大柴か」と説教してるよ

あなたの職場のルー語使いに要注意。仕事ではQCDを明確に

確かに私も、良く知らないことにや面倒なことは曖昧なお願いをしたくなる。

食事で入った店では「何かオススメを」と言うし、母親に「今日の晩御飯は何が良い?」と聞かれたら「何でも良い」と言ってきた(そしてピーマン入りのラーメンが出たら文句を言う)。美容院に行ったら「適当に良い感じでお願いします」と言ってる。

だが、それは相手に「上手いことやってくれるだろう」と期待と責任を押し付けているということだ。

仕事の現場では、数億〜数百億のお金が動き、何十・何百人を巻き込んで業務を進めていかなければいけない。そこで求められるのは、業務のQCD(品質・コスト・日程)を明確にして、その約束を確実に守っていくことだ。

そんな中で、自分が何をすれば良いのかわかっていない奴は、自分の業務のQCDを何とか曖昧にして、問題が起きた時に自分の前の工程に問題があったことにしようとする。

そのために、ビギン、エンド、ウォント、マストといった英語を駆使してあやふやにするのだ。なお、他にも「トータル」「アサップ(as soon as possible)」「ペンディング」「オープン」「クローズド」なんて言葉を使う奴は要注意だ。

もちろん、日本語だから良いという話では無い。ビギンを「初旬」、ウォントを「可能ならば」、トータルを「総合的に判断」、アサップを「なる早」と置き換えても同じだ。

ビジネスでは、母親に晩御飯をお願いするような甘えは許されない。松屋で食券を買うが如く、目的地まで電車の切符を買うが如く。自分がやるべきことを機械でも判断できるように要求し、受け取った業務を確実に遂行しなければいけない。

あなたの職場に、仕事を依頼するときにルー語使いになっている奴はいないか?もしそいつと仕事をするときは、誰が見てもわかるように業務のQCDを決めよう。

もし、どうしてもルー語を駆使して業務のQCDを曖昧にしようとする奴がいたら、最大限自分に有利な提案をしよう。「晩御飯は何でも良い」と言われたら「空っぽのお皿」を提供してやれば良いのだ。

しかし、私の元メーカー、特にソフト開発部署は本当にルー語使いに溢れていた。本当に優秀なYはそんなルー語使い達より低い資格・給料で頑張っているのだから、理不尽な話だ。

なお、元メーカーは2016年度3月期の決算がバッドコンディションだ。私もアラームしている。そこで、ハートをデビルにしてエールをセンドしたい。

元メーカーよ。いい加減にホワイト。リバースしたければ、ヒューマン制度をチェンジして、フレンドYのようなエクセレントなパーソンをライトにバリューするのがマストだよ。アーリーしないと、一寸先はダークだよ。


※この記事は、2017年03月29日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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