環境

豊洲市場に関する科学的な安全は完全に決着がついた

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出典:東京都中央卸売市場Webサイト

3月19日、豊洲市場の土壌汚染対策等に関する専門家会議の第5回が開催された(資料はこちら)。そこで地下水モニタリング調査の再調査の結果が明らかになった。前日にはマスコミに一部情報がリークされていたように、「最大で基準値100倍のベンゼン」という結果であった。この結果を受けて「やはり豊洲市場は汚染されているのか?」という不安の声が出てきているが、私の結論は全く逆である。

再調査の結果によって、豊洲市場の地下の汚染状況が明らかになり、科学的に安全であることが確定した。

これで豊洲市場は法律的にも科学的にも全く問題無いことがはっきりしたため、私はひとかけらの不安も無く、安心して豊洲市場のオープンを待つことができる。

どうかこの記事を読んで、皆様も豊洲市場への不安を払拭していただきたい。


汚染物質の濃度上昇は、地下水管理システムが稼働したため

1月に公表された第9回地下水モニタリング調査の結果は、汚染物質が急激に上昇し、最大で基準値79倍ものベンゼンが検出されたと騒動になった。

専門家会議は測定ミスが有った可能性を指摘し、結果を暫定値とし再調査を行うことになった。

このとき、第9回で急激に汚染濃度が上昇した理由として、

・2016年10月から稼働した地下水管理システムの影響により、地下水が移動したため

・第9回地下水モニタリング調査にミスがあり、間違った測定データになったため

と大きく2つの仮説が上がっていた。

このどちらかなのか?もしくはその他の理由で汚染物質の濃度が上昇しているのか?1月の時点ではその原因を特定することができていなかった。それが科学的に残された課題であった。

誤解しないでいただきたいのは、「基準値79倍ものベンゼン」が科学的に安全か、危険かを議論していたのでは無い。1月の専門家会議で平田座長は「地下水を使うわけではない。(有害物質が含まれる)土壌が飛散することもなく安全に問題はない」と説明している。基準値100倍程度のベンゼンでは、地上にある豊洲市場の安全は全く問題無い。

そして、再調査の結果は

・汚染濃度が高かった29地点を再調査。ベンゼンは最大で環境基準の100倍、ヒ素は同3.6倍を検出した。環境基準が不検出であるシアンを18地点で検出した。

・第9回以降に測定方法が変更されたが、作業内容には問題が無く、暫定値であった第9回の結果を正式な値とする。

となった。

そのため、第9回モニタリング調査以降、環境基準を超える汚染物質が検出された理由は、地下水管理システムの稼働による影響と判断された。

これは1月の時点で、専門家会議でも、また多くの有識者が指摘していた可能性であり、特段に驚くことではない。

汚染濃度が高い場所は平成20年に調査された豊洲市場地下の汚染状況と一致している。僅かに残っていた汚染物質が、地下水管理システムの稼働による地下水の移動に伴って動いたということである。

これまで専門家が見落としていた未知の汚染物質が発覚したわけでも、汚染の除去に失敗したわけでも無い。汚染対策は土壌汚染対策法が定めた安全基準をしっかりと満たすレベルに対策されており、舛添前都知事が宣言した安全基準を十二分に満足している。

だが不可解な測定方法の変更

しかし、結果的に問題の無い測定方法と明らかになったが、第9回以降の測定方法の変更は不可解である。

専門家会議が開催される前に「パージから地下水を採水する時間を、第8回目までは1日以上空けていたのに、第9回調査と再調査は当日に実施した」(NHKニュースより)との情報が明らかになっており、第9回調査と再調査の測定結果を信頼して良いのか、問題になっていた。

この点について専門家会議は「パージ終了から、1時間、24時間、48時間で比較したが、大きな差は無かった」と明らかにしている。これにより、第9回調査と再調査の結果は特に問題が無いことになった。

しかし、第9回調査は「パージ水(地下水では無く、井戸に溜まった雨水などの別の水)」を直接測定していたり、パージから30分と極端に短い時間で測定したりと、不適切な測定が混じっているのは確かだ。

パージ水を直接測定するのは、まず測定する対象を間違えているため論外である。本来はこの時点で第9回調査の結果は全て破棄されてもおかしくない。昔、母親にクリスマスプレゼントに「シャーロック・ホームズの本」をお願いしたら、 「ズッコケ三人組の推理教室」を買ってきてもらったくらいの間違いである。

また、採水までの時間が極端に短いと地下水の水位が十分に回復せず、採水した試料に泥が混じる恐れがある。こうなると、測定中に泥の中の汚染物質が拡散するので、非常に高い濃度を検出する恐れがある。

東京都は「環境省のガイドラインには沿っている」と回答している。だが第9回調査の結果は、第8回までの結果となぜ違ったのかが問題視されていたのである。この場合、再調査では第8回までと測定方法を揃えないと比較できないのは当然である。

再調査の結果から、環境基準を超える汚染物質が地下水に残っていることははっきりしたが、その値が100倍なのか、もっと低いのか、それはまだはっきりしていない。

これは東京都のガバナンスの問題であり、しっかりと改善して欲しい。

でも環境基準の100倍の汚染は不安だ、という方へ

そして法律的に安全基準を満たしていると言っても、やはり「環境基準の100倍の汚染物質が地下に有る」と言われれば、不安を覚える人もいるだろう。

だが、安心して欲しい。大丈夫である。

まず、地下の汚染物質は地上には全く影響しない。豊洲市場の建物は厚さ35~45cmのコンクリートで汚染物質を遮断している。土壌汚染対策法が定めた安全基準は厚さ10cmのコンクリートなので十分に厚くて、安全だ。

また、ベンゼンは揮発性なので地上の空気を汚染するという不安もあるかもしれない。これも大丈夫だ。

地下水内のベンゼンが揮発したとしても地下ピットで遮断される。ほとんどありえない仮の仮の話だが、地下水中のベンゼンが気化した大気がコンクリートをすり抜けてきたとしても、大気中の環境濃度に達するには環境基準の1000倍の濃度が必要になる。地下水の環境基準100倍のベンゼンは、1桁少ない安全な値である。

そして最も重要なことは、これから汚染物質は減っていき、将来的にはほとんど無くなってしまうということである。

今回、汚染物質の濃度上昇の原因となった地下水管理システムであるが、これは地下水の水位を下げるためのものである。「盛り土」がニュースになった頃、地下ピットに水が溜まっている映像を見た人も多いだろう。地下水管理システムはこのような溜まった地下水を排水し、水位を下げるためにある。現に、2月になって地下ピットの水が全て無くなったことを東京都は公表している(参照:朝日新聞)。

まだ目標であるA.P1.8mまで水位は下がっていないことは課題であるが、地下水管理システムはなんとかその役割を果たそうと稼働している。

そして、地下水管理システムのもう一つの重要な役割が、排水する地下水の浄化である。

地下水管理システムにより、地下水は飲めるほど綺麗になっている

豊洲市場に流れる地下水は、地下水管理システムによって厳格に管理されている。地下水の汚染物質を取り除き、環境基準(排出基準)を満たすまで綺麗にしてから下水道に排水する。さらにアルカリ性も中和しているので、環境に与える影響を最小限にしている。

地下水管理システムの稼働により、豊洲市場の地下に残った僅かな汚染物質が移動して、地下水モニタリング調査の結果に影響を及ぼした。これが専門家を含めて予想外だったことは確かだ。

しかし、地下水モニタリングの結果はあくまで参考であり、豊洲市場の安全性には影響しない。これは先ほど書いたように、舛添前都知事により安全宣言が出ている。

そして、地下水管理システムの下水道に流す地下水を綺麗にするという役目だが、その効果は抜群だ。

「私は豊洲市場の魚を食べたい」でも書いたが、東京都は地下水モニタリングとは別に、地下水管理システムでも地下水の水質をモニターしている。その水質調査の結果は排出基準どころか、環境基準値を下回っているため、豊洲市場から流れ出す地下水は飲んでも良いレベルに奇麗である。このまま地下水の排水と浄化を続ければ、いずれ残った汚染物質も無くなるであろう。

まとめると、豊洲市場の地下には、僅かな汚染物質が残っている。しかし、それは地上に上がって来ないし、もし仮に上がって来ても問題無い程少ないし、下水道に流す地下水は飲んでも良いレベルに綺麗である。つまり、何の不安も存在しない。

資料:東京都ウェブサイト
( 豊洲市場の水質調査及び空気測定の結果について地下水管理システム地下水管理システムの稼働状況 )

豊洲市場は法律的にも科学的にも安全。完全に決着がついた

第5回の専門家会議によって、豊洲市場の科学的な安全は完全に決着がついた。平田座長も「地上は大気の実測値を見ても安全。地下も対策をすればコントロールできると思う」と安全であることを強調している。

そもそも、今まで科学的に謎であったのは、「何故、急激に数値が上昇したか?」である。仮に上昇した数値が本当であったとしても安全に問題が無いことは1月からわかっていた。

しかし、科学的な安全の問題と同時に、「石原元都知事が環境基準まで綺麗にすると約束した」と言う、法律的な安全の問題も議論になっていた。これも1月からの議論の中で、宇佐美典也氏がまとめられたように「豊洲市場に関する法的な問題は完全に決着がついた」。

(もちろん、今回のタイトルは宇佐美氏へのリスペクトを込めたオマージュである)

これで、豊洲市場は法律的にも科学的にも安全であることがはっきりした。完全に決着がついた。

そして、法律と科学以外に安心を求める必要は無い。みんな、安心して豊洲市場の美味しい魚を食べようよ。

何より、これ以上に豊洲市場の安心を求めたら、とても不毛な争いしか生まないだろう。

法律的にも科学的にも安全で納得しないならば、必ず「築地市場と比較して安全・安心か?」という議論になる。

私は2011年に晴海で朝9時からの研修が有った時、大阪から出張研修であったので前泊して(本当は始発の飛行機で間に合ったのだが)、築地市場で朝食を食べたことがある。あの美味しい海鮮丼は忘れられない。

その愛すべき築地市場を貶めて、豊洲市場の安心を求めるのはあまりにも悲しい。

人にも建物にも土地にも市場にも、歴史があり、寿命がある。築地市場はその寿命を迎えたのだから、ゆっくりと休ませてあげたいと私は思う。そして、豊洲市場で新たな水産市場の歴史を築いて欲しい。

早く豊洲市場の魚が食べたーい。


※この記事は、2017年03月20日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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