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東芝さん、上場廃止でいいじゃない

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出典:YouTube 東芝公式CM 4K有機ELレグザX910 /「ひきたつ色」篇

東芝の苦悩が収まる気配を見せない。米原子力子会社ウエスチングハウスの巨額損失を巡って上場廃止の危機に瀕している東芝であるが、遂に2度目の決算発表の延期となった。

東芝の経営陣は決算発表の代わりに「今後の東芝の姿について」との説明資料、上場廃止を回避するために必要な書類(内部管理体制確認書)を15日に再提出すること、綱川智社長の記者会見などを発表し、上場廃止に必死になっている。(参考:日経新聞

だが、敢えて言おう。

東芝さん、上場廃止でいいじゃない。


日本を代表する名門企業・東芝

東芝は創業のルーツを江戸時代のからくり人形や和時計にまで遡る歴史ある企業だ。そして、東京証券取引所が終戦後に取引再開した1949年に上場した529社のうちの1社であり、戦後の日本経済を支えてきた超名門企業である。

東芝はピーク時の売上は7兆円を超え、500社を超える子会社と20万人に迫る従業員を抱える超巨大企業であった。テレビ、半導体、白物家電、事務機器(東芝テック)、医療機器、エレベーター、鉄道車両、などなどあらゆる工業分野を網羅しており、私たちの生活には欠かせない企業だった。

実際、私も東芝の名機・HDD&DVDレコーダー RD-Z1(2005年)を未だに愛用しているし、事務機器メーカー時代はライバルである東芝テックの製品を分解したりと、常に意識する存在であった。

そんな東芝が現在の苦境に追い込まれているのは、2006年に買収した米原子力子会社ウエスチングハウスが最大7000億円もの巨額損失を出した上、その理由が正確に把握できていないためである。

マスコミ・有識者は「原子力事業への進出が失敗だった」の大合唱であるが、私はそうは思わない。

「原子力事業への進出というチャレンジは評価するべき。しかし、撤退がお粗末だった」と思う。

2006年時点では原子力事業は有望

アゴラでも池田信夫氏が書かれているが、2006年時点では原子力事業は成長産業であった。東芝のプレスリリースが残っているが、

「2020年までに世界の原子力需要は約1.5倍に拡大するものと予想されています。欧米では新規建設を再開する機運が高まり、中国をはじめ高い経済成長を続けるアジア地域では多くの新規建設が計画されています。」

となっている。

当時の世界のエネルギー事情はBRICSといった新興国の台頭もあり、CO2削減のエネルギー開発が至上命題であり、原子力は有望なエネルギーであった。現在、蓮舫党首が脱原発を主張している民主党も、2009年に政権交代した時のマニフェスト

「エネルギー自給率を2030年に30%、2100年には50%とします」「原子力利用については、安全を第一としつつ、エネルギーの安定供給の観点もふまえ、国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組みます。」

となっている。

原子炉の建設は成長産業ではあったが、1基につき1000億円以上掛かる巨大事業であり、参入障壁は高い。東芝の資本力を持って巨大な成長産業に参入し、さらなる成長を図るのは当時は合理的な経営判断だったと思う。

ただ、2011年の福島第一原発事故後、状況は一変した。世界中で原子力発電に対する規制が強化され、新規の原子炉建設のコストが増大してしまった。結果論で、2006年の東芝の経営判断が間違っていたと言うことは簡単であるが、私はそう言いたくない。

東芝の問題は、ウエスチングハウスの巨額損失が明らかになった後、後手後手の対応になっていることだ。

東芝は上場廃止して、一からやり直そう

ウエスチングハウスの巨額損失の問題が浮上したのは2015年4月のことである。それから2年経とうとしている現在も、同じ問題で騒ぎ続けている。

東芝のウェブサイトでは「不適切会計問題への対応について」というページで、延々と問題の経緯をまとめている。私はこのような非生産的な資料作りに奔走している社員の苦労を思うと、なんともやるせない気分になる。

その間「チャレンジ」と言う言葉も流行ったが、東芝の経営陣は何とか責任を回避しようと、他の健全な事業を売却し、利益を収奪し、帳尻を合わせようとしてきた。その結果が今日の債務超過、上場廃止危機である。

私は過去に「日本企業を瀕死に追いやる、「助け合い」という絶対の正義 」との記事を書いたが、東芝はまさにこの記事のお手本のような「助け合い精神」を発揮し、全てが沈みかけている。

発表されている再建案では、高収益事業である半導体(メモリ事業)の一部を売却することになっている。今後の展開次第では、メモリ事業の全てを売却することになるかもしれない。そうしたら東芝に留まらず日本企業で唯一、半導体事業で世界と戦えているメモリ事業という有望な成長産業を失ってしまい、東芝の復活は幻に終わるかもしれない。

東芝の経営陣は、自身の保身と歴史ある企業というプライドのため、上場廃止を避けるべく必死になっているように見える。だが、私はそんなプライドは捨ててしまえば良いと思う。

近年、経営危機に陥ったシャープは「経営陣も続投」という甘言に乗り、鴻海への売却を決めた。しかし、出資額を1000億円以上減額されるなど、翻弄され、結局は買い叩かれてしまった(参照:MAG2NEWS 嶌信彦氏「【買収劇の裏側】結局、シャープは何を得て、何を失ったのか?」

中途半端な再建策はシャープの二の舞になりかねない。東芝はJALのように経営破綻を受け入れるべきだ。

JALは経営破綻後、京セラ名誉会長の稲盛和夫氏の元、わずか2年で劇的な復活を果たした。上場廃止前は営業利益率±3%前後で黒字と赤字をウロウロしていた低迷企業が、営業利益率15%強の高収益企業に生まれ変わった。

何度も書くが、東芝の経営陣は経営悪化の責任を取ならければいけないが、ウエスチングハウスの買収という決断を恥じる必要は無い。そして経営陣の唯一にして最大の仕事は責任を取ることだ、そのために高い給料を貰っているのだ。

つまり、東芝の経営陣は

みなさん!いよいよお別れです!

日本を守る東芝連合は大ピンチ!

しかも、巨額損失最終形態へ姿を変えたウエスチングハウスが、東芝経営陣に襲い掛かるではありませんか!

果たして、日本経済の運命やいかに!?

東証上場伝最終回!『上場廃止で大勝利! 希望の未来へレディ・ゴーッ!!』

と堂々と宣言し、新たなスタートを切って欲しい。


※この記事は、2017年03月15日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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