商標 著作権

「マリカー」商標、任天堂の異議却下。今後の展開は ?

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出典:YouTube 今日は19台が連なる楽しそうなレンタル公道カートの「マリカー」

任天堂が株式会社マリカーを提訴したことについて、「任天堂の真意」を解説した記事で、株式会社マリカーが「マリカー」の商標を保有しており、それに任天堂が異議を申し立てていたことを書いた。

私はその記事で、「だが、心配はいらない。株式会社マリカーは商標法に違反しており、他人の尻馬に乗るような商標は認められない」と書いた。

しかし、読売新聞によると、「任天堂は特許庁に異議を申し立てたが1月に却下された」とのことだ。

これについては、正直に予想外であった。私の予想が外れたことについては、不明を恥じるしかない。申し訳ございません。その上で、株式会社マリカーの商標の情報を改めて精査し、今後の展開を考えたい。


「マリカー」という略称は広く認識されていないと、特許庁は判断

まず、商標:第5860284号「マリカー」の異議申し立ての経緯を整理したい。

これは「標準文字商標」と呼ばれるものであり、文字のみにより構成される商標である。そして、商品・役務(サービス)は「自動車、二輪自動車、自転車、その部品及び附属品」になっている。

まあ要するに、「マリカー」というタイトルで「公道カート」のサービスを提供できるのは株式会社マリカーだけですよ、ということである。

しかし、「マリカー」と言われれば任天堂の大人気ゲーム「マリオカート」の略称であり、「マリカー」=「任天堂」と勘違いする人が多いだろう。

商標法第4条第1項15号では、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は商標を受けることができないと定められている。

任天堂は、「マリカー」は「マリオーカート」と混同する恐れがあり、「マリカー」の商標は無効だ、と特許庁に異議を申し立てた。これが2016年9月27日である。

そして2017年1月26日、特許庁は「(マリカーという略称は)広く認識されているとは認められない」と異議を退けた。

つまり、任天堂が株式会社マリカーを提訴した2月24日には、もう異議申し立ては決定していたのである。私が記事を書いたときには、見落としたのか、まだ情報が更新されていなかったのか、異議却下は認識していなかった。私は任天堂は提訴と並行して商標の異議申し立てを進めていると思っていたが、それは間違いだった。

任天堂は、商標の異議却下を受けた上でなお「マリカー」が不正競争および著作権侵害をしており、勝ち目があると判断し、提訴に踏み切ったということであった。

なお、「マリカー」と言われたら、「マリオカート」を連想するのが私は常識と思う。しかし、今回審査した特許庁の審査官は違ったようだ。

商標の異議申し立ては、商標法第43条の3で「3人又は5人の審判官の合議」とある。1人の審査官が独断で決めたというわけでは無いが、審査官も人間なので、結構判断は揺れることがある。特許や商標を出したことがある人ならば、審査官次第でかなり判断に差があることは知っているだろう。

当然、任天堂もまだ諦めてはいない。異議申し立てが却下された場合、不服を申し立てることはできないと決まっている。しかし、まだ無効審判という手段で、商標の無効を訴えることができる。読売新聞の記事でも「特許庁へ無効審判の請求や知財高裁への提訴を検討している」とあるので、「マリカー」の商標がどうなるかは、まだわからない。これについては、今後の推移を見守りたい。

「マリカー」は、不正競争防止法違反で阻止できるか?

さて、では任天堂と株式会社マリカーの裁判は、これからどうなっていくのか?

まず、任天堂はたとえ商標が止められなくても、「マリカー」という名前の阻止を諦めないだろう。

プレスリリースでも「当社が製造販売するレースゲームのシリーズとして広く知られる「マリオカート」の略称である「マリカー」という標章をその会社名等として用いており」と言及しており、あくまで「マリカー」は任天堂のものであり、勝手に使わせないという強い意志を感じる。

そして「不正競争行為に該当する」と書いているので、これは不正競争防止法第2条に違反していると考えているのだろう。

不正競争防止法では、第2条第1項1号「他人の商品と混同を生じさせることの禁止」がある。これはiMac事件(ソーテックがe-oneというiMacそっくりなPCを作ったら、裁判で負けて販売停止になった事件)などで適用されたものである。(参照:Timesteps

株式会社マリカーのサービスは任天堂のマリオカートそっくりであり、お客さんが任天堂の公式サービスと誤解する可能性がある。(ゲームと公道カートは違うと言う反論は当然あろうが)よって、第2条第1項1号に違反している可能性がある。

また、第2条第1項2号「他人の著名な商品や類似のものを使用、提供することの禁止」に違反しているとも考える。これは簡単に言うと、「著名(全国的に、誰でも知っているようなもの)にフリーライドすることを禁止している」と言うことである。

過去には「アリナビック事件(アリナビックA25という、アリナミンA25そっくりなビタミン剤を販売したら、裁判で負けた事件)」などで適用されたものである(参照:児島特許事務所サイト)。

第2条第1項2号のポイントは、「マリカー」という名称が「全国的に、誰でも知っているような、著名なものかどうか」である。特許庁の異議申し立てでは認められなかったが、「マリオカート」は歴代販売本数2000万本を超えた超ビッグネームである。過去の判例からも認められる可能性は高いと考える。

不正競争防止法違反が認定されれば、「マリカー」という名前で公道カートのサービスを提供することはできなくなる。任天堂はUSJで公式なリアルマリオカートを企画していそう(参照:TechCrunch)であり、無許可の公道マリオカートは阻止したいはず。こちらも任天堂法務部がどんな主張をするか、今後の推移を見守りたい。

株式会社マリカーは、意図的に任天堂のマリオカートと誤解されることを狙ったか?

しかし、この問題は肝心の株式会社マリカーの動きが止まったままである。報道機関に声明(参照:レスポンス)を発表した後、公式サイト(http://maricar.co.jp/)は白紙のままだし、twitterの更新も1月27日で止まっている。

今後の裁判では、株式会社マリカーが意図的に任天堂のマリオカートと誤解されることを狙ったかどうかが焦点になるので、反論なり、もっと情報を出して欲しいと思う。

しかし、twitterで思いっきり「マリオカート」と書いているリツイートを連発してるのを見ると、「絶対、マリカー=マリオカートって認識してるやん」と叫びたくなる。。。

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※この記事は、2017年03月10日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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