お笑い

テレビ千鳥「DAIGO’Sキッチン」は2019年お笑い界最大の発明

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出典:テレビ千鳥「大悟の手作り料理でおもてなし」

1月6日から仕事始めの人も多く、これで正月休みも一段落って感じである。

そんな正月休み、私は富山の実家に帰ってゴロゴロしていた訳だが年末年始のテレビ番組って子どものころから全く変わっていない。去年のM-1の記事にも書いたけど、紅白歌合戦はもちろん、箱根駅伝、そして代わり映えしないお笑い番組のラッシュ。小学校の頃から同じテレビを見ているんじゃ無いかと錯覚に陥ってしまう。

出演者もウッチャンナンチャン、ダウンタウン、明石家さんま、ビートたけし、ナインティナイン、、、顔ぶれがずっと同じ。島田紳助がいなくなったとか、笑っていいとも!が終わったとか、多少の変化は有ったけど20年~30年続くお笑い番組はまだまだ沢山ある。

ウッチャンナンチャンやダウンタウンは20代でゴールデンの看板番組を持つ事ができたのに、私と同世代のお笑い芸人はまだ若手を自称してひな段に陣取っている。もっと若いお笑い芸人による新しい笑いが見たいと常々思っている。

年末年始はそんな思いを抱きながら2019年のお笑いを振り返っていたのだけど、1つ、「これは発明だ」と思わせる凄いお笑いが有った。それが12月22日、M-1グランプリ直後に放送されたテレビ千鳥の「DAIGO’Sキッチン」である(なお記事の最後にこれまでのレシピを載せているのでご活用ください)。

お笑いに特許はないけど、もしあったら間違いなく特許取れたと確信するほど新しく進歩した2019年お笑い界最大の発明である。

DAIGO’Sキッチンはお笑いの常識を覆す発明

DAIGO’Sキッチンとはテレビ朝日系列で月曜深夜1時56分から放送中の「テレビ千鳥」の一企画である。テレビ千鳥は千鳥の初の全国ネット冠番組である。

テレビ千鳥は基本的に大悟がやりたい企画にどんどんチャレンジしていく番組である。「面白キャラを作りたい」とか「どうしても海が見たい」とか大悟が無茶な事を言い出し、それを実際にやってみて上手く行ったり行かなかったりを楽しむ企画が多い。

基本的なフォーマットはイッテQとか(終わったけど)めちゃイケとかに代表される企画兆戦系の王道バラエティである。とはいえ深夜2時放送の30分番組であり大掛かりな兆戦というより大悟が手近なロケでふざけるのを楽しむという内容が多い。

関西に住んでいた人には常識であるが、千鳥と言えばロケである。様々な場所に繰り出してはふざける大悟とそれを例えツッコミでいさめるノブの掛け合いは最高である。

DAIGO’Sキッチンもそんな大悟がふざけるだけのなんてこと無い企画の1つとしてスタートした。第1回目はテレビ千鳥のレギュラー放送が始まって8回目、5月20日に「大悟の手作り料理でおもてなし」というタイトルであった。

タイトルが示す通り「DAIGO’Sキッチン」の名前は企画そのものではなくちょっとしたお遊び程度のパクリだった。料理をした事が無い大悟が手も洗わず、レシピも見ず、酒やタバコをしながらふざけて適当に料理する様をノブが面白おかしくツッコむという内容だった。

大悟がふざけて適当に何かを行う様をノブがツッコむというフォーマットはこれまでに幾らでもあるありふれたものだ。私はDAIGO’Sキッチンの第1回を見始めた時はいつものテレビ千鳥だとしか思っていなかった。当の千鳥もスタッフもそこまで期待して力を入れていなかったと思ってる。

全てが劇的に変わったのはラスト5分である。

大悟が適当に作ってるから成功するはずが無いと思っていた料理が全て、しかもめちゃくちゃ美味いのだ。

大悟のふざけっぷりに笑っていたはずが最後はノブのリアクションに大爆笑してしまった。しかも感動を同時に覚える心地よい笑いである。

これは従来のお笑いのセオリーに反している革新的なお笑いである。

お笑いの基本はボケ(失敗する、常識からズレた事をする)とツッコミ(失敗やズレを訂正する)である。

DAIGO’Sキッチンの前半は大悟が常識からズレた料理を行いそれをノブが訂正するというベーシックなお笑いである。そして普通のお笑いならば出来上がった料理に「マズい」とノブがツッコんで終わるはずだ。実際、「水曜どうでしょう」のシェフ大泉は料理がマズいというオチで終わっている。

DAIGO’Sキッチンは大悟がふざけて料理をしているように見えたのにその料理が「めちゃくちゃ美味い」というオチなのだ。このオチに至るまでの企画全体の構成は、大悟がちゃんと料理をしたから料理が美味いというものだ。言ってしまえば、当たり前の事をやって当たり前の事が起きただけだ。

構成だけで見るならば料理の鉄人、チューボーですよ、ビストロスマップとやっている事が同じなのだ。でもそれらの料理番組で出来上がった料理が美味しい事に笑ったりはしない。料理でなくてもイッテQなどのチャレンジ系の企画ではチャレンジの過程で笑いが起きる事は有ってもチャレンジ成功に笑ったりはしない。

なぜなら出演者も視聴者もチャレンジの成功を目指しているのでその結果と期待にズレが無いからである。しかしDAIGO’Sキッチンはノブも視聴者も料理が失敗するのではと思いながら見ており結果と期待にズレがある。この違いこそDAIGO’Sキッチン最大の新規性である。

さらに細かく分析するとDAIGO’Sキッチンの笑いの構成は3つに分けられる。まず従来のお笑いのセオリーに沿った「大悟がふざけて料理するのをノブがツッコむ」パターンである。そして「ノブが『実は正しい大悟の料理方法』を間違っているとツッコむズレを視聴者がツッコむ」パターンである。さらに「料理が美味しくないのではとズレた不安を持っているノブと視聴者を料理の美味さがツッコむ」パターンだ。

このようにDAIGO’Sキッチンは大悟のズレ、ノブのズレ、視聴者のズレという3つのズレが複合的に重なり合った笑いになっている。この複合的な笑いを生み出す最大の立役者が「予測できない料理方法で結果の予測を困難にしながら、最高の料理を作り上げる大悟の天才性」に有るのは間違いない。

DAIGO’Sキッチンは「失敗して正す」というお笑いのセオリーから真逆の「成功して正す」という全く新しいお笑いを誕生させてしまった。

私は自身の発明発掘法をまとめたパテント思考で「発明を閃く時は、まずセオリーを逆にしてみる」事を提唱している。そうする事で従来に無い全く新しい発想が生まれるのだ。そういう意味でもDAIGO’Sキッチンはパテント思考に沿った、全く新しい発明である。

また料理も本当に斬新で発明と呼んでも良いレベルだ。特にすき焼きカレーの発想は天才過ぎて料理としても間違いなく全く新しい発明である。

お笑いに特許制度があるならDAIGO’Sキッチンは間違いなく特許を取得している。

DAIGO’Sキッチンは何よりも千鳥の魅力が余すところなく引き出されている

特に2019年は吉本芸人の闇営業とそれを巡る吉本のゴタゴタでお笑い界にとっては苦難の年だった。そんな年にDAIGO’Sキッチンという新しいお笑いが生まれたのは救いを感じる。

そしてDAIGO’Sキッチンはその企画の新しさだけでなく千鳥の魅力を存分に引き出す事ができているフォーマットというのも素晴らしい。

千鳥の魅力が最大限に発揮されるのは、2人が伸び伸びと掛け合っている時だ。

大悟がとにかくふざけまくってノブが一生懸命岡山弁を駆使して例えツッコむ。この掛け合いこそ千鳥の魅力である。千鳥のロケが面白いのはロケが得意と言うより、他の演者がいないので大悟とノブだけの掛け合いが存分に堪能できるからだ。

DAIGO’Sキッチンでは料理の最中にとにかく大悟がふざけまくるのでノブはこれでもかとツッコむ事ができている。これが他の料理番組には無い、調理中の時間すら笑いに変えている面白さだ。

そして料理を食べた時のノブと大悟の反応もまた良い。ノブは調理中のツッコミは忘れて素直に大悟の料理を褒めまくる。そして大悟が「純粋に点つけて」という採点依頼に「100点、100点、120点、500点じゃ」と本当に料理が美味しいという評価と大悟への友情を感じさせる評価を行う。

そして美味しそうに食べるノブを見て、ノブからの最高の採点結果を受けて、嬉しそうに笑う大悟。

2人が繰り出す笑いだけでなく2人の友情も感じる事ができてなんか凄い得した気分になる。

ここまで千鳥の魅力を引き出す事ができた企画は他に無い。これまではロケこそ千鳥と思っていたが今後は間違いなくDAIGO’Sキッチンこそ千鳥である。

しかしテレビ千鳥のスタッフはDAIGO’Sキッチンの魅力に気付くのが遅すぎた。最初のテレビ千鳥で好評だったのがノブが1000万円の高級車を購入する買い物企画だったため、その後もノブがメインとなる事が多かった。その流れでせっかくの8月15日のアメトーーク枠のスペシャルにノブがLemonを歌うという企画を放送し大スベリしてしまった。

あの時のスペシャルをDAIGO’Sキッチン第3弾にしておけばとスタッフは後悔しているに違いない。

大学時代から千鳥を見ていたファンとして感動が止まらない

私は千鳥がまだ関西でも知名度が無い時代、2002年ごろから千鳥の事を応援している古参の千鳥ファンである。

千鳥は2003年、2004年とM-1に出場して知名度を増したけど、2年連続最下位に終わってしまった。あの頃「今度のM-1はまだ無名だけど千鳥ってコンビが来るで」と周りに千鳥のアピールをしていたファンとしては複雑な思いであった。

ちなみに2003年のM-1グランプリの後に難波でアルバイトしている後輩から「店に大悟がやって来てやさぐれて飲んでました」と言う報告を何度か聞いている。

そんなM-1の活躍と縁が無かった千鳥がM-1の放送直後にスペシャル番組をできるのだから感慨深いものがある。

なおその後、千鳥は関西での活躍を続けて2012年に東京に進出した。だけど東京進出後は完全に低迷していた。アメトーークなどに出演して余裕を持ってエピソードトークをできる時は良いのだけど、他の演者がちょっと絡むと緊張してしまい委縮してしまっていた。特に大悟が委縮してしまった後に、大悟にツッコむ事ができなくなったノブが1人で何とかしようと慣れない無茶をしさらにスベるという悪循環だった。

ノブ小池に改名したり「帰ろか千鳥」で自分からボケに行ってスベっているノブの姿は痛々しかった。

しかし地獄の8本撮りと自虐する初の冠番組「いろはに千鳥」でまたロケを始めた事によって2人ならではの掛け合いが徐々に復活してきた。それから笑神様など活躍の場を広げ、「クセが凄い」がブレークし、今の大活躍に至っている。

大悟もノブも今ではすっかり東京のテレビにも慣れて他の演者にも臆する事無く絡んでいっている。そんな姿を見ると安心する。本当にもうちょっとで大阪にUターンする所だったのだから。

今ではすっかりブレークして安定して番組に出るようになったけどもっともっと飛躍して欲しい。そのために必要なのが看板企画である。

めちゃイケのオファーシリーズ、みなさんのおかげの食わず嫌い王決定戦、ぐるナイのゴチ、イッテQの登山・お祭り男、長く続く看板企画を持つ事はお笑い芸人のトップになるためには必須である。

テレビ千鳥ではそれを探し続けるかのように様々な企画に挑戦していたが、その答えこそDAIGO’Sキッチンであると言って良い。正直どこまで料理のストックが有るのか不安になるが、それもまたDAIGO’Sキッチンを見る時のスパイスになる。

DAIGO’Sキッチンは間違いなく令和を代表するお笑いになる。

<DAIGO’Sキッチン レシピ一覧>

「大悟の手作り料理でおもてなし」(2019年5月20日深夜1:56)

1品目 【これ飯のおかずになんじゃねって茶碗蒸し】

2品目 【絶対に今まで混ぜてはいけないと思っていた貝に豚肉をほりこんだら結局うまかった汁】

3品目 【15年前に大阪の番組で上沼さんが作っているのを見たパスタ】

4品目 【高校生が夜食の時に作るめちゃくちゃうまい丼】

「DAIGO’Sキッチン2」(2019年7月1日深夜1:56)

1品目 【どの国にもなかった奇跡のスープ 夏バージョン そうめん入り】

→なぜかレシピ無し

2品目 【卵って1人1個って概念崩そうよ 冷た~い茶碗蒸】

3品目 【わしが子どもの頃にステーキステーキ言うてたらオカアが背中丸めて焼いてくれたイモステーキ】

4品目 【うまいもんにカレーぶちこみゃあそりゃうまいカレーになるに決まっとろうじゃろうがカレー】

「テレビ千鳥SP DAIGO’Sキッチン クリスマスSP」(2019年12月22日夜10:10)

1品目 【茶碗蒸しって美味しいの分かってるけどなんか薄いよね だったら濃いの作っちゃえばいいじゃん テリヤキ茶碗蒸し】

2品目 【牛タンて焼いてばっかじゃんもう飽きちゃったじゃあ揚げればいいじゃん タンカツ】

3品目 【美味いもんだけ入れて炊きゃあ美味いスープができるんよ】

4品目 【上沼さんが12~3年前にテレビで作ってたうどん】

5品目 【部活終わった後にコレ出してくれりゃ良かったのに飯】

参照:テレビ千鳥公式サイトテレビ千鳥公式Twitter千鳥 (お笑いコンビ) – Wikipedia

                   
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author : 宮寺達也



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