出典:Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作Twitter
2019年に大変な話題を集めた前澤友作氏のツイッターお年玉キャンペーンだが、いつの間にか2020年正月に第2弾キャンペーンが開催されていた。2019年の1億円を上回る、100万円が1000人に当たる総額10億円キャンペーンである。
🎍謹賀新年🎍
【総額10億円】#前澤お年玉 100万円を1000人にプレゼントします!
100万円で皆さまの人生がよりハッピーになりますように。
応募方法は僕のフォローとこのツイートのリツイート。締切は1月7日23:59まで。
企画趣旨や当選条件などはYouTubeで説明してます。 https://t.co/kBgwwmJoaP pic.twitter.com/1Fr0Vq4i6Z
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) December 31, 2019
私は去年も参加しなかったし今年も参加するつもりはない。思う所は多々あるがまあどうお金を使おうが個人の自由だなとしか、というスタンスであったが、ちょっと明らかに間違ってるなという発言が前澤氏から飛び出した。
前澤氏は2020年のお年玉キャンペーンを「ベーシックインカムの実験」と発言したのだ。
前澤氏のお年玉企画は当選者が100人から1000人に増やそうが、決してベーシックインカムではない。定義そのものが決定的に間違っているので「小規模な」「個人でできる」ベーシックインカムと呼ぶ事もできない。
冷静に評価するとして、これは「貴族の遊び」と言うしかない。
23円のために品性は売れないと参加しなかった2019年の前澤氏のお年玉企画
2019年1月5日に、当時のZOZOTOWN社長の前澤友作氏が100名に100万人が当たる総額1億円のお年玉キャンペーンを発表した時はかなりの衝撃だった。
ZOZOTOWN新春セールが史上最速で取扱高100億円を先ほど突破!!日頃の感謝を込め、僕個人から100名様に100万円【総額1億円のお年玉】を現金でプレゼントします。応募方法は、僕をフォローいただいた上、このツイートをRTするだけ。受付は1/7まで。当選者には僕から直接DMします! #月に行くならお年玉 pic.twitter.com/cKQfPPbOI3
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) January 5, 2019
2019年のお年玉キャンペーンは3日間しか応募期間がなかったにも拘わらず、433.8万リツイートとリツイート数の世界記録を達成し、その間に前澤氏のフォロワー数も応募者の分だけ増えて600万人を超えてしまった。
こんな単純な方法でここまでのバズを起こせるとは。ツイッターの広告単価は1エンゲージメント100円が目安なので、433.8万リツイート・130.2万いいねのツイートは最低でも5億6400万円以上の広告効果が有った事になる。
広告としてはこれ以上なくシンプルな方法で、圧倒的に黒字で大成功である。
なんで今まで誰もやらなかったんだろうと驚き感心してしまった。広告の発明である。
ただし僕自身は一切に参加する気が無かった。まず単純に「品が無い」と思ったのである。なんというか、クラスに金持ちでいけ好かない奴がいて「俺に媚びたら1万円やるぞ」とでも言われたような気分であった。
そして実際に「〇〇しますから100万円ください」と前澤氏に媚びまくったリプ、引用RTが殺到していた。それを見た僕はHUNTER×HUNTER第2話のクラピカよろしく「品性は金では買えないよ」と言いたかったものだ。
擁護する人は「抽選で当たるんだから宝くじと一緒」と言っていたが、どう考えてもそうなるはずが無い、せっかく100万円を配るなら当選した事、前澤氏を好意的に紹介してくれる人を選ぶだろうと思っていた。
そして実際の当選者100人は100万円の使い方を事前に公表していたアカウントばかりであり、100万円の当選をツイッターで発表し前澤氏の宣伝に協力していた。
「抽選だから」と擁護していた人はそれでも「お金をどう使うか自由」と強弁していたが、本心ではだったら応募しなかったと思っていたのでは。
だってRT数が433.8万で当選者が100人だから、当選額の期待値は23円である。
僕は23円のために「品が無い」企画に参加する趣味は無い。そして「23円で前澤氏に媚びる人」と思われたらイメージダウンは必至である。心の底から参加しなかった自分が正解だったと確信していた。
ベーシックインカムは「無条件で」「全ての国民」に生活資金を配布する事が絶対条件
そんな2019年のお年玉キャンペーンを経て、前澤氏は2020年もさらにスケールアップしたお年玉企画を繰り出してきた。ZOZOTOWNの社長を辞めた時に売却した株のお金があるためか、1000人に100万円と総額10億円である。
2019年のキャンペーンは総額1億円で広告効果5億6400万円なので、総額10億円の出費は赤字覚悟のスケールアップだ。しかも2019年の批判ポイントだった「事前にそんな条件は言っていないのに、前澤氏に媚びた人だけ当選した」というポイントも踏まえ、
とルールをツイッターに明記してきた。ここまでなら単なる宝くじでも良いのかなと思っていたが、それを全部台無しにしたのがベーシックインカム発言である。
皆さん、想像してみてください!
『仮に、毎月8万3千円(年間約100万円)があなたに無条件で政府から支給されたら、あなたの暮らしや仕事はどうなりそうですか?』
ずばり #前澤お年玉 で僕が実験したいことは「ベーシックインカム、前澤個人でやってみた」です。(つづく)
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) January 2, 2020
ベーシックインカムとは所得保障政策の一種である。政府が全ての国民に対して最低限の生活を送るのに必要とされているお金を支給するというものだ。
ベーシックインカムは不可能か可能かとか、ベーシックインカムの副作用とかそういう話はしない。ただただベーシックインカムとして絶対の定義が「全ての国民」にお金を支給する事である。
反政府団体の人、不良、クソ上司、真面目で貧乏な人、100億円の資産家、IT企業の社長などなど、「お前にはお金あげたくない」と思う人や「お前にはお金必要ない」と思う人も含めて全員に配布するのがベーシックインカムである。
ベーシックインカムの理念は、「どんな人であっても」生きていくだけなら問題無いので誰もが自分のやりたい創造的な活動に従事し、社会保障と経済活動を両立させるというものだ。そこに恣意的な人の選別は絶対に有ってはいけない。それが近代社会の鉄則である「基本的人権」「法の下の平等」である。
前澤氏がお年玉キャンペーンにどんな理想を掲げようが決してベーシックインカムにはなり得ない。それは「全員じゃないからベーシックインカムではない」という単純な話ではない。前澤氏が「どんな人であっても100万円をあげたい」と完全な抽選を実現し、属人性を完全に排除したとつもりでも違う。
そもそも「前澤氏をフォローし、該当ツイートをリツイートする」という時点で完全なランダム性を失っており、「前澤氏に多少なりとも媚びる」という属人性を帯びている。ツイッターキャンペーンではどうやってもベーシックインカムにはなり得ない。
前澤氏はもちろん、前澤氏のお年玉キャンペーンを絶賛している人には「基本的人権」「法の下の平等」という感覚が決定帝に欠けていると思ってしまう。
「#前澤お年玉」は貴族の遊び。参加者は「300円で前澤氏に媚びた人」とイメージダウン
別に前澤氏のお年玉キャンペーンが良いか悪いかという話ではない。
「お年玉キャンペーンがベーシックインカムの社会実験」と言うのでそれは間違っていると言うだけだ。
私は相変わらず品が無いと思っているし、現時点でのリツイートは287.7万件なので期待値は347.6円である。最終的には300円程度であろうか。期待値300円で前澤氏に媚びた人と思われてイメージダウンする方が遥かに損失だ。だから決して参加しない。
参加する人については「まあご自由に」と思ってるけど、イメージダウンについてどう思ってるのか心配である。「今年は完全抽選だから心配ない」とまた反論しそうだけど、多分違うと思う。
前澤氏はお年玉キャンペーンを説明するユーチューブ動画で
「1000人の当選者には定期的にアンケートをとらせていただきたい。その後の変化や影響についてアンケートを行い100万円が与える影響を知りたい」と発言している。普通に考えて、前澤氏に非協力的な人が当選するとは考えにくい。
結局、去年に近い恣意的な選抜が行われるのでは。
前澤氏がベーシックインカムに掛ける理想に下心が無いとしても、どうやっても当選するのは前澤氏に媚びる人だけになる。
だから前澤氏のお年玉キャンペーンは決してベーシックインカムにはなり得ない。強いて言うなら「貴族の遊び」だろう。
金持ちが有り余るお金を自分に好意的でお金が無い人に配って、感謝の気持ちを受け取るという娯楽。小遣いを恵んでやる事で友達を増やす子ども。
こういう事を「品が無い」と思う感性だけは忘れないようにしたい。
参照:ベーシックインカム – Wikipedia、法の下の平等 – Wikipedia、前澤氏「総額10億円」昨年10倍!年玉企画の詳細、前澤友作氏、お年玉企画を発表「100万円を1000人」総額10億円で昨年の10倍に、前澤友作氏、100万円を1000人に配る「お年玉」。「ベーシックインカム」の社会実験と表明、前澤社長の1億円お年玉、100万円当たった人の共通点は?