出典:任天堂ホームページ
令和元年7月12日(金)午前11時30分。参院選真っ最中に東京地裁で任天堂とコロプラの「白猫プロジェクト」特許侵害訴訟の第8回審理が行われた。
私はこの訴訟はずっと非公開で行われるという事をすっかり学習したので、落ち着いてから東京地裁に行く事にしていた。だが自分の仕事やら参院選の記事作成やらでなかなか行く事ができず、あの個人的に悪夢のような参院選が終わった週である7月25日(木)にようやく東京地裁に行く事ができた。
そして14階の資料閲覧室で裁判資料をゲット。当然、第7回弁論準備手続であったのは良いのだが資料が膨れに膨れ上がってついにバインダー8冊になってしまった。一番最初は2冊だったので、あの時に閲覧した人はどれだけ膨れ上がったかわかるだろう。
さて、第8回戦はコロプラのターンである。第7回戦では任天堂がシルエット表示の仕様変更に回答が窮した場面も有ったが、ぷにコンの仕様変更を黙ってたのを逆手にとって追い詰めたり、特許2まで訂正審判を行うなど「コロプラ絶対許さない感」満載の任天堂のラッシュって感じであった。
さて、今回コロプラはどこまで反撃できているかと準備書面のリストを眺めていたら驚いた。コロプラのターンのはずなのに、任天堂の準備書面が4つもあるのだ。これは一体?
訂正審判で次々に任天堂が勝利。その結果を裁判官に喜々として報告
コロプラの準備書面は特許の数に応じていつものように5つである。しかしそれに加えて任天堂の準備書面が4つもあるのを見た時、まず「今日は5時までにメモ終わらないかも」と思った。
普段5つの準備書面をメモするのに7時間いっぱい使うのに、今回は合計9つである。「これは2日がかりか?」と覚悟した。2日がかりは杞憂だったものの、一心不乱にメモって5時ちょうど。最後の5分はマジ焦った。過去最高のギリギリチョップだった。。。
一応間に合ったのは、任天堂の原告準備書面は訂正審判で任天堂が勝利したことを報告するだけで4つ合わせても17頁しかないからだ。
訂正審判はこれまでの記事で何度か触れてきたが、無効資料を避けるためにあえて「特許請求の範囲の減縮」を行うものだ。
初出:任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃
そしてこの訂正審判で注目すべきは、「訂正後の特許がたった今、裁判でコロプラが主張している無効資料を考慮してもなお特許登録に値するか」を特許庁が審査してくれるのである。
つまり任天堂は訂正審判をして審査を通れば特許は狭くなってしまうが、コロプラの無効資料は問題無いと特許庁のお墨付きを得るのだ。これは裁判でコロプラの無効資料と戦う上で決定的な武器になる。
そして私は特許情報データベースを見る事で、ほぼ任天堂の訂正審判が成功しつつある事を5月に記事に書いている。
任天堂 VS コロプラ特許訴訟。訂正審判でコロプラの無効資料が無効に
この記事に書いたように、前回の第7回戦とこの第8回戦の間に訂正審判の審決が幾つか出ている。もちろん全て任天堂勝利である。任天堂はこの有力な証拠を裁判所にドヤ顔(想像です)で提出した訳だ。
特許4「相互フォロー」の請求項3だけは拒絶中だが、任天堂勝利はほぼ当確
原告準備書面(14) 【本件特許権1・6関連】 令和元年6月14日
本件特許権1 特許3734820号 「タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)」
本件特許権6 特許第6271692号 「一方的に相手ゲーム機をフォローできる(フォロー登録)」
特許庁は、令和元年5月24日付け審決において、平成30年11月30日付け審判請求書により原告が請求した本件特許1に関する訂正審判について、本件発明1-1(本件特許1の[特許請求の範囲]の請求項1に記載された発明)を対象とした訂正を認める判断を示した。
また、特許庁は、令和元年5月24日付け審決において、平成30年11月30日付け審判請求書により原告が請求した本件特許6に関する訂正審判について、本件発明6-1及び6-3(本件特許6の[特許請求の範囲]の請求項1及び3に記載された発明)を対象とした訂正を認める判断を示した。
原告準備書面(16) 【本件特許権3関連】 令和元年6月28日
本件特許権3 特許4010533号 「スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)」
特許庁は、令和元年6月17日付け審決において、平成30年11月30日付け審判請求書により原告が請求した本件特許3に関する訂正審判について、本件発明3-11(本件特許3の[特許請求の範囲]の請求項11に記載された発明)を対象とした訂正を認める判断を示した。
このように特許1「ぷにコン」、特許3「スリープ機能」、特許6「フォロー登録」の3つについては既に任天堂勝利の審決が出ている。コロプラの無効資料は「これでは特許を無効にはできない」と特許庁に正式にダメ出しを食らった訳だ。
そして私はこれからコロプラの準備書面にか書かれている「この無効資料があるから特許は無効だ」との、無駄な主張を見る事になるのだ。
だから思った。「ごめんなさい。こんなときどんな顔すればいいのか分からないよ。」
さて、問題は特許4である。特許4は前回の記事にも書いたが、
訂正前の「ネットワーク通信を行うこと」を、訂正後の「通信ゲームを行うこと」へと、異なる概念へ変更するものであって、実質的に範囲を変更するものである。
として拒絶されていたからだ。だが任天堂の準備書面から見えたのは「当確」の赤いバラシールだ。
原告準備書面(15) 【本件特許権4関連】 令和元年6月14日
本件特許権4 特許5595991号 「ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う(相互フォロー)」
特許庁は、「ネットワーク通信を行うこと」を「通信ゲームを行うこと」とする訂正に対して訂正拒絶通知を発行した。これに対して早期に訂正を確定させるために訂正発明4-1、4-9の訂正事項を削除し、訂正事項の表現を改めて新たな訂正審判請求を行う。
訂正前 「ネットワーク通信を行うこと」
最初の訂正 「通信ゲームを行うこと」
新たな訂正 「前記通信ゲームのためのネットワーク通信を行うこと」
原告準備書面(17) 【本件特許権4関連】 令和元年7月4日
特許庁は、令和元年6月21日付け審決において、平成30年11月30日付け審判請求書により原告が請求した本件特許4に関する訂正審判について、本件発明4-3(本件特許4の[特許請求の範囲]の請求項3に記載された発明)を対象とした訂正を認める判断を示した。
また、原告は、本件発明4-1及び4-9(本件特許4の[特許請求の範囲]の請求項1及び9に記載された発明)について、原告準備書面(15)に記載した内容にて訂正審判を請求した。
このように、特許4は拒絶されているとはいえ訂正審判した請求項1,3,9の内請求項3については訂正が認められている。そして残りの1と9も「前記通信ゲームのための」と特許請求を減縮して無効資料を逃れる事に成功した上、次で確実に訂正が認められる。当確ってやつだ。
これで任天堂は6つの特許の内、特許1,3,4,6と4つの訂正審判がOKになり多くのコロプラの無効資料を逆に無効にした。
残る2つの特許について特許5「シルエット表示」だけは訂正審判をしていないが、特許2「チャージ攻撃」は現在、訂正審判中である。
特許2の訂正審判も認められればコロプラの頼りである無効資料はまさに虫の息だ。
訂正審判の成功により任天堂はコロプラの無効資料を22から13に減らした
しかしコロプラの無効資料は弁論の度に増えていくので今どこまで有ってどれがダメになったのはよくわからない。そこでこのタイミングで一度整理してみよう。
表 コロプラの無効資料と訂正審判の状況
| 特許 | 訂正審判 | 無効資料の数 (訂正審判前) |
無効資料の数 (現在) |
無効資料 |
| 特許1「ぷにコン」 | 勝ち
(5/24) |
4 | 0 |
|
| 特許2「チャージ攻撃」 | 実施中
(5/14~) |
4 | 4 | 「WARFARE INCORPORATED」
「ぐるみん」 「スパイダソリティア」 「Windows XP」 |
| 特許3「スリープ機能」 | 勝ち
(6/17) |
3 | 1 |
「特開平5-12139」 |
| 特許4「相互フォロー」 | 当確
(2018/11/30~) |
6 | 3 |
「Xbox Live」 「特開2003-50771」 「特開2004-213399」 |
| 特許5「シルエット表示」 | – | 5 | 5 | 「特開2001-276420号」
「Direct 3Dによるゲームプログラミング」 「DirectX 6 SDK」 「Open GL Programming Guide(日本語版)」 「ザ・警察官 新宿24時」 |
| 特許6「フォロー登録」 | 勝ち
(5/24) |
6 | 3 |
「Xbox Live」 「特開2003-50771」 「特開2004-213399」 |
|
合計 |
22 | 13 |
この表のようにコロプラが出しに出しまくって来た22個の無効資料だが、任天堂の訂正審判の連戦連勝で13にまで減ってしまった(特許4と特許6の無効資料は重複扱い)。とはいえ13個も残っていると思うかもしれないが、それは訂正審判が始まった2018年11月30日の後にもコロプラが7つも追加して来たからだ。
そしてこの残り9つの内特許4の3つは新たな訂正審判(訂正2019-390082)で検討対象にされる。そして現在継続中の特許2の4つも検討中だ。したがって早晩にさらに6つの無効資料がダメになり、22個も有った無効資料は7つまで減ってしまいそうだ。
特許庁の審査もコロプラに辛辣で、特許6の訂正審判(訂正2018-390190)では、
本件特許に係る侵害訴訟事件(平成29年(ワ)第43185号)において、被告(株式会社コロプラ)が提出している各証拠(乙44~46)についても検討したが、各証拠には、訂正後の特許請求の範囲の請求項1における発明特定事項のうち、「前記或るゲーム装置の前記リストに前記他のゲーム装置の前記識別情報が含まれること、および、前記判断手段によって、前記或るゲーム装置の識別情報が前記他のゲーム装置の前記リストに含まれると判断されたことを条件として」、当該或るゲーム装置が前記通信手段を用いて当該他のゲーム装置とネットワーク通信を行うことを許可することについては、記載も示唆もない。
とまあ滅多切りである。「確かに数は多いけど、この資料で特許無効を主張するのは無理が有るのでは」との私の疑問は間違ってなかったようだ。
そして、ただのハッタリの無効資料だったとしたならば最大の謎である「なぜコロプラは無効審判を起こさないのか?」にも説明が付く。
「記載も示唆もない」証拠で無効審判を挑んでも時間とお金の無駄の上、任天堂に「この無効資料はハッタリですよ」と自らバラすようなものだからね。
そんな感じでコロプラのターンのはずが思わぬ任天堂のドヤ顔を見せられたような気分になった第8回戦。しかしやはり本番はコロプラの反論である。
「黙って仕様変更のブーメラン」や「均等侵害」にどう立ち向かうのか、また黙って仕様変更はあるのか、またまた新たな無効資料は登場するのか、それはまた次回。
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参照:任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた、任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第4回戦。コロプラの切り札(?)として『信長の野望』が出陣、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。ソリティア!?止まらないコロプラの後出し無効資料の嵐、任天堂 VS コロプラ特許訴訟。コロプラの弁護士交代は流れを変えたのか?、任天堂 VS コロプラ特許訴訟。最大の謎!なぜコロプラは特許無効審判をしないのか?、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。シルエット画像の仕様変更に任天堂は回答できず、任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。任天堂が見せるコロプラ絶対許さない感、任天堂 VS コロプラ特許訴訟。訂正審判でコロプラの無効資料が無効に









