お笑い

吉本興業は一日にして成らず。変わるべきは岡本社長だけじゃなく6000人の芸人たち

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出典:吉本興業ホールディングス株式会社

7月20日(土)に行われた雨上がり決死隊の宮迫とロンドンブーツ1号2号の田村亮の記者会見は確かにインパクトが大きかった。ツイッターにマネージャーからLINEで送られた謝罪文面をスクショして貼り付けた宮迫と同一人物とは思えない。退路を絶った男の生き様を確かに見た。

そして特に個人的には田村亮の

(吉本が)僕をファミリーだと思うなら、僕は子供だと思う。子供が本当に悪いと思って謝ろうとしているのを止めるのが親ではないと思う。止めるのではなく、背中を押してほしい。どういうふうにしたら、ちゃんと謝ってくれるかを手伝ってほしかっただけです

の言葉は胸を打った。反社との闇営業が報じられてからも、個人的に「あの田村亮がまさか」との思いがずっとあった。テレビを通じてとはいえ、田村亮はめっちゃええ奴と信じていた。反社と付き合ったり嘘をつくような人物とは思えなかった。だからあの記者会見でのセリフにはグッとくるものがあった。

そして皆さんご存知のように批判の矛先は吉本興業(特に岡本社長)に向けられ、あの世紀のグダグダ会見に至る。

岡本社長のグダグダ記者会見はまさに火に油を注いだ。危機管理の失敗例として21世紀中は語り継がれるだろう。もはや岡本社長の辞任なしに吉本興業への批判は終わらないだろう。

なんで岡本社長はあんな記者会見をしたのか、闇営業問題の処分はどうするべきかはまた別に語りたい。

まず私が言いたいのは、吉本の問題は岡本社長が辞めても解決しないという事だ。闇営業、反社との付き合い疑惑、契約書無し、吉本9:芸人1の搾取、これらの問題が解決しない最大の理由は「それを良しとしている6000人の芸人たち」にある。

吉本の数々の問題は芸人の実力を向上する育成システムになっている現実

そもそも宮迫・田村亮の記者会見を発端にして盛り上がった吉本批判はずっと昔から言われている事である。

闇営業、反社との付き合い疑惑、契約書無し、吉本9:芸人1の搾取、仕事を取って来ないマネージャー、などなど。お笑いファンじゃなくてもほとんどの人は吉本芸人自らがエピソードトークとして面白おかしく話して来たのを聞いた事があるはずだ。

私は大阪大学入学の1999年から12年以上大阪に住んでいたし、吉本の劇場を観に行ったこともある。大阪なら吉本芸人はテレビで観るものじゃなく、生で会える身近な存在だ。だから吉本興業の理不尽な実態はミニにタコができるくらい見知っている。

その上で思うのは、この理不尽が吉本芸人の強さの源泉でもあると言う事だ。

吉本ではマネージャーが極端に少ないので仕事にマネージャーが付いて来ない。だから芸人だけで仕事場に行く、そこで取引先と知り合いになり直接仕事を貰う隙が生まれる。だがこの「マネージャーに頼れない」という過酷さが吉本芸人のバイタリティとなり、セルフプロデュース能力を鍛えている。

だから吉本芸人はどんな現場でも笑いに貪欲になり、その上自分をどう見せれば盛り上がるかを熟知するようになる。

そして給料の最低保証など無いので、賞レースなどブレイクするチャンスにどこの事務所よりも貪欲に挑んで来る。その結果がM-1グランプリで14回中11回が吉本芸人の優勝という結果だ。

M-1グランプリは吉本がプロデュースしているが、優勝者を見て吉本の忖度だと思う人はいまい。ほぼ実力通りの結果だ。最終決戦の審査がわずかに違ったとしても優勝者が笑い飯やスリムクラブや和牛に変わるだけで、やっぱり吉本芸人のままだ。

昨年末のM-1の後にはジャルジャルのラストイヤーがエモいと話題になったり、とろサーモンの久保田とスーパーマラドーナの武智の暴言が大批判されたりしたが、どちらもM-1に賭ける思いから来るものだ。この「自分の力で売れてやる」という執念は他の事務所の追随を許さない。

テレビが吉本芸人で埋め尽くされているのは吉本興業という事務所の力やテレビ局の忖度だけでは無い。シンプルに実力のある吉本芸人が多過ぎるからだ。

その吉本芸人の実力が過酷なマネジメント状況から生まれているのは現実だ。

育成システムを卒業した芸人は吉本の理不尽を擁護する立場に回る。これは体罰の再生産と同じ構図

もちろん私はこの過酷なマネジメントを全面的に肯定している訳では無い。

確かに芸人の実力向上に繋がっている面はあるが、確実に時代とずれて来ている。良い点は残し、変えるべき点は変えていかないといけない。

吉本興業はそんな変革すべき時代の瀬戸際に立っている。だが変革の抵抗勢力になっているのは岡本社長だけでは無い。むしろもっと大きい抵抗勢力なのは6000人の所属芸人の方である。

それをわかりやすく示したのが大平サブローである。

吉本ベテラン芸人の大平サブローさん、 若手芸人に憤慨「気に入らんかったら辞めろ」「こいつらふぜいが」

大平サブローさんは続けて「若い人、こいつらふぜいで、これを言うか!っていうような発信がいっぱいあるやん」と唖然とした口調に。「気にいらんかったら辞めろ」と訴えた。

若い人はもう知らないだろうけど、大平サブローは1988年に吉本から独立したが1993年に復帰した。その時に伝説ともなった屈辱的な「7カ条」(※)を受け入れている。

大平サブローは「自分があれだけ吉本の理不尽を受け入れてここまでやって来たのに、若いモンが楽をするのは許せない」という気持ちなのだろう。

キングコングの西野も「お客さんが入ってなかろうが。その赤字分誰が出してるかって言うと、われらが吉本興業ですよ。そこのこと考えてる?」と発言し、吉本の理不尽を擁護している。

これは多くの成功した吉本ベテラン芸人の本音だ。

「確かに理不尽な面はあるが、俺たちはこれで成功した。お前らももうちょっと我慢すれば成功するよ」

このベテランが理不尽を擁護し若手をなだめる構図。何かに似ていると思いませんか?

そう、これは(名門校の野球部などの)体罰が無くならない構図だ。PL学園だ。

吉本とかつてのPL学園は似ている。PL学園は圧倒的に理不尽な上下関係、ルール、体罰が有ったがそれを乗り超えた選手は凄まじい実力を身につけ、プロ野球にも名選手を数多く排出して来た。

しかしPL学園のやり方は徐々に時代からズレていき、最後は野球部消滅という結果になった。

吉本のマネジメントもこれと同じである。このままでは時代とのズレが大きくなり近い内にPL学園のように消滅の憂き目にあってしまう。

吉本のやり方は芸人の実力向上に繋がっている面はある。その良い面は残しつつも、時代に取り残された理不尽は変えていかなければならない。改革は待った無しである。

吉本を本気で変えたいと伝わって来るのは「狂犬」加藤浩次、「世直し」友近。他の芸人も続け

繰り返しになるが、吉本の改革を阻んでいるのは岡本社長だけでは無い。売れっ子になってテレビで大活躍している吉本芸人たちそのものなのである。

芸人の待遇を改革しようというのに、その芸人が反対しているのだから改革なんて進む訳がない。

松っちゃんが「後輩芸人達は不安よな。松本 動きます。」とツイートし、翌日のワイドナショーで吉本改革を語ったのは大反響だったが、松っちゃんはあくまで吉本芸人を守りたいだけで吉本を改革する気は無いように見える。

まあそれはそうだ。松っちゃんは吉本の一芸人では無い。岡本社長、藤原副社長の2人ともが元マネージャーであり、頭が上がらない。言わば社長以上の存在であり、今の吉本のマネジメントを作って来た張本人だ。

だから吉本を本気で変えていくにはダウンタウン派閥以外の売れっ子芸人が声を上げていかなければいけない。

そして宮迫と田村亮、かつては元SMAPが証明したように「事務所に残る前提」でなんて甘い態度では足元を見透かされる。「この条件が通らなければ吉本辞めますよ」というどの労働者にとっても最強のカードである「退職カード」を切っていかなければいいけない。

そして今それを出来ているのは「狂犬」加藤浩次だけである。

加藤浩次と言えば爆裂お父さんとして売れっ子アイドルを容赦無く投げ飛ばす姿を覚えているが、ただの狂犬キャラだと思っていた。ま、実際あの頃はキャラだったのだろう。まさか吉本という自分の存在を揺るがす相手にも噛み付ける狂犬振りだとは思っていなかった。

だが加藤浩次は相方の山本圭壱が解雇されるという苦労を味わったり、長年「スッキリ」で様々なニュースを解説して来た。そんな経験が加藤浩次をただの「狂犬キャラ」から真の「狂犬」に進化させたのか。

そしてもう1人期待したいのが友近である。友近はかつてアメトーーク!の「マネージャーほったらかし芸人」でも

「吉本は1回痛い目見ないとわからへん。これは世直しや」

と語っていたが、あの頃から問題の本質がよく見えていた。今回の騒動でも岡本社長と松っちゃんに対して

「私はまだ気持ちが追いついていない。芸人と社長との信頼関係が成り立っていないのに、あの会見で余計に不信感を抱いた」

「松本さんが会見を見て、これ(ツイッター)を書いたのなら、ちょっと松本さん待ってくださいと思ってしまいますね」

とコメントしており見事に本質を付いている。

このように理不尽で育って来た芸人が過去を忘れて、不公平だと思っても若手が新しいやり方でやっていけるように声を上げていかないと吉本は決して変わらない。

そしてそんな声が効果的になるためには、吉本への退職カードを切らないといけない。

だが元SMAPがずっとテレビに出れない現状を見ても、ほとんどの芸人にとって吉本への退職カードは恐ろし過ぎるはずだ。そんな状況を変えるために私たちにできる事は、吉本を辞めても応援するよ、絶対に干させないと声を上げていく事だ。

ファンあっての芸能界。ファンが変われば芸能界も必ず変わる。

参照:吉本興業・岡本社長会見【全文(1)】「二人に対して深くお詫び申し上げます」吉本興業・岡本社長会見【全文(2)】「50%の減俸を1年間続けることにします」吉本興業・岡本社長会見【全文(3)】「宮迫くんの契約解除の撤回」吉本興業・岡本社長会見【全文(4)】「冗談といいますか、和ませるといいますか」吉本興業・岡本社長会見【全文(5)】「『クビにする力がある』と言った?」(記者)「ないと思います」(岡本)吉本興業・岡本社長会見【全文(6)】「パワハラだと思うか?」(記者)「そうだと思う」(岡本)吉本興業・岡本社長会見【全文(7)】「(ギャラは)平均値で5対5から6対4」吉本興業・岡本社長会見【全文(8)】無責任発言「みんなに後で聞いておきます」吉本興業 – Wikipedia岡本昭彦 – Wikipedia亮“ファミリー”に不信感 涙の訴え「子供が謝ろうとしているのを止めるのが親ではない」元スマの次は宮迫? 脱ジャニ「田原俊彦」、脱吉本「サブロー・シロー」はこう干された吉本ベテラン芸人の大平サブローさん、 若手芸人に憤慨「気に入らんかったら辞めろ」「こいつらふぜいが」【闇営業】キンコン西野、芸人の無期限謹慎について語る 「辞めない理由何やの?何か希望ある?」松本人志「プロ根性で乗り越えましょう」沈静化図るも友近は“待った”「気持ち追いついていない」

※吉本興業はサブローに対し、復帰の条件として次の7カ条を突きつけたとされる。

(1) 3ヶ月はノーギャラとする。
(2)吉本を通さない営業(アルバイト)をしない。
(3)吉本内で独立をする動きのあるタレントがいれば、その説得役を引き受け、それを使命とする。
(4)今後、吉本への不満を一切口にせず、独立という思想をもたない。
(5)2週間以内に吉本の会長だった故・林正之助の墓参りに行く。
(6)無条件降伏します。
(7)明石家さんま、オール巨人、島田紳助が保証人となる。



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author : 宮寺達也



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