教育

教育にお金はいらない 〜 都の私立高無償化は妥当か

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出典:写真AC

小池都知事が2017年度予算案に盛り込んだ私立高校の授業料無償化について、様々な議論が起きている。アゴラでは池田信夫氏が「高校無償化は子供を食い物にする「教育ポピュリズム」」という記事を投稿され、自治体のポピュリズム競争が進み、子供の税負担だけが増えると反対の意見を述べられている。

私は池田氏の意見に概ね賛成である。ただ、「教育を受ける子どもの視点」からも意見を述べてみたいと思う。

大学受験が目標なら、教科書を勉強するだけで十分

私は富山県黒部市というど田舎で育った。そこで、市立小学校→市立中学校→県立高校と、18歳までの全てを公立学校で過ごしてきた。そして、学習塾にも一切通うこともなく、学校の授業と家での予習・復習だけで国立大阪大学に合格した。

流石に大学時代は親元を離れて大阪で一人暮らしをしていたので、両親にはかなりの金銭的負担を掛けた。しかし、18歳までに必要となった教育費は給食費、制服代、中学の修学旅行費(何と、富山県の県立高校は修学旅行が無いのだ!)、高校の学費(年間3万円)くらいであった。中学校では男子は全員坊主(流石に今は違うが)だったので、散髪も母親にバリカンで刈ってもらっていた。

およそ考えうる限り、最小限の教育費で大阪大学に合格することができたと思う。

これは別に、自分の才能を自慢したい訳では無い。中学校に受験は無いから小学校時代に無理に勉強することはないし、県立高校の入試は教科書の内容から出題されるので中学校の授業をきちんと理解すれば十分だ。大学受験は、センター試験・2次試験のどちらも教科書の内容から出題されるので、やはり高校の授業をきちんと理解すれば十分だ。

小学校から大学受験に至るまでの日本の学校教育は、本来は教科書と授業の内容をちゃんと理解すれば十分である。勉強の習慣をきちんとつけることができれば、お金を全く掛けずに難関大学に合格することは可能である。

勉強の習慣は、両親の背中を見て身につく

なお、「教科書を勉強するだけで十分」というと、必ず「それはお前が天才だからだ」という反論をいただく。確かに多少の勉強の才能は両親から頂いたと思っている。しかし、それだけでは勉強を続けることはできない。

実際、私は富山県No.1の県立進学校に入学し、周りの天才達に圧倒され、勉強の意欲をすっかり無くした時期があった。高校3年生の6月時点ではビリから2番目の成績(数学80点、国語2点、英語1点)であった。

しかしそこから盛り返すことができたのは、勉強の価値を教えてくれ、また自ら勉強する姿を背中で教えてくれた両親のおかげだ。

私の両親は本好きで、家にはたくさんの本があった。それで、幼少からたくさんの本を読むようになり、小学校からは自分で図書館に通ってたくさんの本を読んでいた。それが、塾に行かなくても自分で勉強する習慣を身につけることのできた秘訣だ。

また、父親は日本史の高校教師として日々勉強をし、毎年センター試験に挑戦して100点を取っていた。

そして、母親は私に勉強の大切さを教えてくれ、私のテストの点数が良いと褒めてくれた。何より、私が勉強の意欲を無くしていた時期に「勉強だけが人生じゃない、真っ直ぐ生きてくれればそれで十分」と言ってくれた。

私にとっては月謝を払って学習塾に通うより、家で両親の背中を見る方がずっと勉強になったのだ。

子どもに勉強して欲しいと思っている親御さんは、お金を払って外に委託するだけでなく、自らも勉強する背中を見せる方がよっぽど効果があることを知って欲しい。

私立高校の無償化は、歪みを拡大する

私立高校が有償の現在でも、大勢の子ども達が小学校から学習塾に通い、私立中学校・高校を受験している。そして、私立高校で大学受験に向けた特別カリキュラムを受けている。しかし、私立への進学が難関大学への合格を目指してならば、私はちょっと歪んでいると思う。

私立中学校・高校の入試は、子どもの知能を試す難問が多く、教科書の内容を勉強するだけでは簡単には合格できない。そのため、私立入試に備える子どもは、小・中学校のときから学習塾に通い、教科書の内容とは別の勉強をしなければならない。こうして、私立中・高生と、公立中・高生のレールは別れていく。

しかし、難関大学合格を目指すならば、大学受験において再び公立の学生と同じレールに合流する。甲子園常連校のようにその私立にしかない存在価値や、エアコンやスポーツ施設といった公立には無い充実した設備を求めて進学するならばわかるが、大学受験のように公立の授業でも十分な内容のために、わざわざ私立の高い教育費を払う必要があるのか、私には大いに疑問である。

しかし、私立高校が無償化されれば「設備がしょぼい公立」か「設備が充実した私立」か、という選択肢になるため、生徒は私立に殺到するだろう。

その結果、中学受験のために小学校から学習塾に通う児童が激増し、小学校・中学校で学校の授業と私立入試のための勉強を両方する必要に追われたり、授業をまともに聞かない生徒が増えて学校の秩序が乱れたりと、子どもの負担を増すことに繋がるのではと危惧する。

そうして私立高校が無償化されても、受験のための学習塾に通う費用が増えたりしたら、結局教育費は変わらず子どもの負担だけが増えたというオチになりかねない。

公平な教育バウチャーで子どもに自由と時間を

このように、私立高校の無償化は歪みを生み出し、結果として子どもの負担を増し、親の負担もあまり減らない危険がある。しかし、どうせ税金を使うならば、これからの日本を担う子ども達に使うことは大いに賛成である。

だから子供への教育費の補助は、私立高校の無償化のように偏った方法ではなく、公立・私立や親の年収を問わず、公平に分配する教育バウチャーの形が望ましいと思う。

私立高校を希望する子どもはバウチャーを授業料に使用すれば良いし、公立高校でユニフォームや遠征費といった部活動のために使っても良い。

また、自由な時間のためにバウチャーを使うのも良い。好きな本を買って知識を広げるのも良いし、パソコンを買ってプログラムを勉強するのも、天体望遠鏡を買って天体観測をするのも良い。

子どもには無限の可能性があり、それはどんなきっかけで覚醒するかはわからない。「私立高校に行けば良いのでは」と行政が勝手に方向を決めるのではなく、子どもの自由を尊重して、自由に使える教育費を補助することが望ましい。

それが子どもの将来を思えばこその、私たち大人の責任だ。


※この記事は、2017年02月17日にアゴラに投稿・掲載された記事(http://agora-web.jp/archives/2024468.html)を再掲したものになります。

                   
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author : 宮寺達也



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