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「老後2000万円足りない」はただの事実。そして私たち現役世代の負担はまだまだこんなもんじゃねえ

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出典:写真AC

金融庁が6月3日にまとめた「人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書」へのドタバタが止まらない。

この報告書は「長寿化により人生はさらに延びる。95歳まで生きるためには夫婦で2000万円の貯金が必要」と言っている。2005年に入社した頃から「俺たちの時代は年金をアテにしてはダメだ。老後のために資産形成が必要だ」と散々に言われて来た私にとっては「何を今さら?」としか思えない。

だが、この報告書がまさにパンドラの箱を開けたかのように

「年金だけで生活できるんじゃなかったのか!足りないと言うなら年金返せ」

「足りない年金を穴埋めするために既にものすごい負担しているのに、まだ負担を上げるのか」

「参院選を前に国民を不安にさせる事を言うな。撤回しろ」

「報告書は事実なんだからきちんと受け取れ。年金の破綻を誤魔化すな」

とありとあらゆる批判が殺到した。おまけに批判した人を批判するという構図になっており、もうごちゃごちゃである。

なのでこの問題を3つの観点から整理したい。

・「老後2000万円足りない」は正しいのか?

・今の高齢者は年金だけで生活できるようになるのか?

・私達、現役世代は年金だけで生活できるようになるのか?

「老後2000万円足りない」は総務省の統計データをそのまま読んだだけ。ただの事実

まず「老後2000万円足りないは正しいのか?」であるが、これはもう「正しい」としか言いようがない。

金融庁の報告書をまとめるための審議会の議事録がWebにUPされているが、こう書かれている。

金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)議事録

24ページをご覧いただきまして、高齢夫婦無職世帯の現在の収入・支出の状況になります。引退して無職となった高齢者世帯の家計は、主に社会保障給付により賄われています。ライフサイクルにおいて、当然のことではあります。現在、高齢夫婦無職世帯の実収入20万9,198円と家計支出26万3,718円との差は月5.5万円程度となっております。その高齢夫婦無職世帯の平均貯蓄額は、赤囲みの部分、2,484万円となっております。

今後、実収入の社会保障給付は低下することから、取り崩す金額が多くなり、さらに余命も延びることで取り崩す期間も長くなるわけで、今からどう準備していくかが大事なことになります。

この箇所だけではまだわかりにくいかもしれないが、金融庁のWGはあくまで「月5.5万円足りないと示された資料」を読んだだけである。これは総務省が毎年出している統計データそのままである。

家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)

図 高齢夫婦無職世帯の家計収支 -2017年-(総務省統計局)

このように総務省の正式な調査結果として「月5.5万円足りない」が発表されており、金融庁WGはこれを読んだだけである。なのでこれで金融庁を責めるのは理不尽だ。

そしてこれに日本の長寿化を考慮したのだ。

日本の現在の平均寿命は私が生まれた1980年には女性が78.76歳、男性が73.35歳であった。そして年金は65歳から支給されるので年金制度は10〜15年の支給期間を想定していた。

しかし平均年齢はどんどん伸び、2017年には女性が87.26歳、男性が81.09歳に達している。今のペースで平均寿命が延びれば95歳に達するのも時間の問題だ。それはイコール「年金支給期間の増大」を示している。

平均寿命が延びれば必然的に年金支給額は増大し、不足額も拡大する。そうして試算すると、

月5.5万円 × 12ヶ月 × 30年(95歳 – 65歳) = 1,980万円

こうなる。この「その内平均寿命は95歳に達するだろう」という見方に異論がある人はいまい。

このように「老後2000万円足りない」は統計データに基づいた正しい試算なのである。

金融庁を責めて報告書を撤回させてもこの事実は消えない。

「年金が足りない」高齢者の怒りは理解するが、もう現役世代の負担は限界

しかし「老後2000万円足りないは正しい」と聞かされても、

「そうか、2000万円足りないのか。じゃあパパ、頑張って貯金しちゃうぞ」

ってそう簡単に受け入れられる人が少ない事はよく分かる。

年金の破綻はずっと前から指摘されていたが、2004年の小泉政権での法改正の時には「100年安心プラン」と謳っていた。その反動で2007年の消えた年金記録問題が大爆発し、当時の安倍政権退陣の原動力になった。

せめて政府が公式に「年金はもうダメです。ごめんなさい」と言ってくれればまだ対話の余地があるのかもしれないが、あの悪名高い年金マンガ「厚生労働省・いっしょに検証!公的年金」でも、

「大丈夫です!公的年金は、長期的に収支のバランスが取れる仕組みになっています。ちゃんと検証もしていますよ!」

とメガネっ娘が「大丈夫です」と連発してくれる。厳密にはこの「大丈夫です」と「老後2000万円足りない」は矛盾しないのだが、これを「政府が大丈夫ですって言うんだから、ワシ達の老後は年金だけで生活できるんだな」と誤解している高齢者も多いだろう。

さらに政府が「老後2000万円足りないとは何事か。これでは国民に不安を与える」と報告書の受け取りも拒否したんだから、高齢者が誤解を強めるのも当然だ。

でも、政府が何を言おうがもう年金は破綻しているのだ。

国民年金は一律月額1万6000円でずっと固定されているが、厚生年金は全く違う。

私が生まれた1980年の厚生年金の保険料率は9.1%であった。平均年収が320万円だったので年間の負担額は29万円である。

しかし今や厚生年金の保険料率は18.3%にまで上がっている。平均年収が430万円なので年間の負担額は79万円である。

今の現役世代は、年金を受け取っている高齢者の若者時代よりも年間50万円も多く負担しているのだ。これは消費税に換算すると21%に相当する。今の高齢者の若者時代は消費税も無かったので、現役世代は消費税で29%も差がある生活を送っているのだ。

この差はもう消費税を10%に上げたら経済が破綻するとかそう言う次元じゃない。もうとっくに現役世代の経済は破綻しているのだ。

なので「今の高齢者は年金だけで生活できるようになるのか?」の答えは「できない」である。

そして、できる様にしろと言うのは現役世代に死ねと言う事だ。現役世代が死ねば結局、年金も破綻する。2000万円足りないから我慢してってレベルの問題ですら無い。年金給付切り詰めとか、消費増税とかでむしろ高齢者が現役世代を助けてくれ。

「足りない年金を払わされる」現役世代の不足は5000万円。理不尽でも今はとにかく貯蓄し、選挙に行くしかない

そして、「私達、現役世代は年金だけで生活できるようになるのか?」は当然「できない」である。

今の高齢者が年金だけで2000万円足りないのに、少子高齢化が進む中この状況が改善される事は無い。この状況を解決する方法は3つしかない。

①(現在の高齢者も含めて)年金給付を削減する

②年金徴収額を増大する

③年金以外の収入(消費税)で年金不足額を補填する

私は②には真っ先に反対する。年金を支払っているのは現役世代なので、これ以上負担を課せば生きていけない。次世代を紡ぐ子どもを産んで育てるなど不可能になる。これは亡国への道である。

なので私は①と③のセット、①が難しければ③だけでもを提案する。

消費税は高齢者も含めて薄く広く負担するので、現役世代への過剰な負担にならない。消費税が10%になれば日本経済は破綻すると言う人は多いが、現役世代の社会保険料は既に消費税20%相当である。2000万円足りない高齢者より、現役世代の生活がとっくに破綻してるんだから助けてくれよ。

しかし参院選への動きを見ると期待は限りなく乏しい。

今回の「老後2000万円不足問題」を批判を受けて政府はあっさり報告書を撤回するし、消費税増凍結・削減を主張している政党が人気を博すなど、シルバーデモクラシーが支配している今の政治では①の実現は限りなく困難である。せめて③だけでも実現して欲しい。

しかし今のシルバーデモクラシーは完全に選挙を支配している。せめて③だけでもどころか、②が実現してもおかしく無い。本当に恐ろしい状況だ。こうして私たち現役世代はまだまだ絞られる。

このまま私たち現役世代が高齢者になる頃には現在支給されている社会保障給付の平均は19万円から10万円ぐらいまで下がるだろう(これでも希望的観測だ)。

そうなると、月の赤字額は15万円にも達する。

月15万円 × 12ヶ月 × 30年(95歳 – 65歳) = 5,400万円

私達が高齢者になったら、5000万円は貯蓄しておかないと生きていけないのだ。しかも、貯蓄をするべき現役時代の負担がさらに増そうとしている状況でだ。

40年で5000万円を貯めるには、年間125万円の貯金が必要だ。しかし年収430万円の現役世代は既にそこから79万円の厚生年金、60万円の健康保険、50万円の税金が引かれている。残りは241万円。

そこから年間125万円の貯金をすると、116万円。月に使えるお金は10万円弱である。

必死にフルタイムで働いても生活保護以下の生活しかできない。これこそが今の日本を襲っている閉塞感の正体である。

しかしシルバーデモクラシーに支配された今の政治ではこの状況は変わらない。ただただ怒りをぶつけてもその声を拾ってくれる人はいない。

こんな状況で生きていくには、とにかく自分の価値を高める事、そして若者の投票率を上げる事が絶対に必要なのである。

参照:人生100年時代の蓄えは? 年代別心構え、国が指針案人生100年時代、2000万円が不足 金融庁が報告書人生100年 夫婦老後に2000万円 金融庁、資産形成促す金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)議事録家計調査年報(家計収支編)平成29年(2017年)「2000万円」報告書を拒否 将来不安から逃げる政府老後2000万円「報告書はもうなくなった」自民 森山国対委員長夫婦の老後資金「2000万円が必要」根拠は厚労省が提示 麻生氏の説明と矛盾自民、金融庁に報告書の撤回要求 公明代表「猛省促す」年金、20代は2000万円超の払い損 普通の人でも資産運用をしなければいけない理由(2)Q. 過去の厚生年金保険の標準報酬(等級表)や保険料率、あるいは国民年金の保険料額の変遷について知りたいのですが、どのように調べればいいですか。日本人の平均寿命と健康寿命平均給与平均給与 | 国税庁【図解・経済】民間平均給与の推移



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author : 宮寺達也



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