川崎市多摩区登戸で通り魔事件が発生した5月28日、朝からずっとニュースもSNSもこの事件の話題が飛び交っていた。
そんな中、見知った、だが違和感のある単語がツイッタートレンドにランクインしていた。それが「藤田孝典」である。
藤田孝典氏と言えば生活困窮者支援を行うNPO代表と名乗っているが、ZOZOの前澤社長に「月に行く金で社員の給料上げろ」とかトンチンカンな言い掛かりをつけたり、とにかく以前から有名人や事件にかこつけて炎上を起こし売名行為が目立つ人間であった。
そんな藤田孝典氏が事もあろうに、川崎・登戸殺傷事件を早速ネタにしていたのだ。
川崎殺傷事件「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい
一見、「これ以上の凶行を起こさないための緊急メッセージ」と弱者に寄り添っているようにも見えるメッセージだ。Yahoo!のトップにも記載されて爆発的なアクセスを集めていた。
だが、多くの方はこのメッセージの本音に気づいている。これは事件を利用し、被害者を踏みにじる極めて悪質な政治的プロバガンダだ。
まだ犯人も明らかになっていない時点で事件を政治利用する醜悪
藤田氏は記事の中で、
「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい
次の凶行を生まないためでもある
何らか社会に対する恨みを募らせている場合が多く、「社会は辛い自分に何もしてくれない」という一方的な感情を有している
困っていたり、辛いことがあれば、社会は手を差し伸べるし、何かしらできることはあるというメッセージの必要性を痛感している
と主張している。
まず大問題なのは、この記事が配信されたのは「5月28日 13:10」である。まだ「犯人らしき人物が死亡した」「51歳の男性」という情報くらいしかわかっていない。岩崎隆一という名前はもちろん、どんな人物でどんな背景があって、犯行に及んだ理由など全くわかっていない。
私も夜になってから記事を書いたが、少なくとも犯人について可能な限り情報を集め「孤独な独身男性」ではないかという推察を前提にしている。何かを決めつけ、誰かにそれを強要するような事は一切書いてないつもりだ。
川崎・登戸殺傷事件。孤独な独身男性のルサンチマン、その闇は深くて見えない
藤田氏は一体、いかなる根拠で犯人が「社会に対する恨みを募らせている」と断言できたのか。その後の報道ではスクールバスの騒音に腹を立てていたとの情報もあり、いまだに動機が社会への恨みとは言えない状況だ。
そしてまたいかなる根拠で「『死にたいなら一人で死ぬべき』と言わない事で、次の凶行がと止められる」と断言できるのか。
犯人が犯行後に自殺をした以上、「死にたいなら一人で死ぬべき」は多くの人が当然に抱く本音であろう。その大勢の本音に蓋をして、いるかどうかもわからない「ネットのメッセージを見て凶行を思いとどまる人」を想定しても無意味だ。それどころか逆効果かもしれない。
思い込みで断言して良いならば、藤田氏の記事を読んで、本音に蓋をされてストレスが爆発し「誰も死にたいなら一人で死ねと言わない。だったら死にたい奴は俺が殺してやるぜ」と新たな凶行に走る人が出ないとも限らない。
結局、藤田氏の主張はただの個人の思い込みに過ぎない。それをただ発言するだけなら勝手だが、Yahoo!という巨大メディアで「ニュース」として発信するのはあまりにも酷い。
私には藤田氏の記事は「だから自分のNPOを頼ってください」という宣伝にしか思えない。事件の醜悪な政治利用ではないか。
「他者を大事に思いやる」と言いながら被害者へのお悔やみの言葉もない矛盾
そしてこの記事に全く説得力が無いのは、普段の藤田氏の言動と全く矛盾しているからだ。
記事の最後に、
人間は原則として、自分が大事にされていなければ、他者を大事に思いやることはできない。
社会全体でこれ以上、凶行が繰り返されないように、他者への言葉の発信や想いの伝え方に注意をいただきたい。
と書いているが、そもそも被害者へのお悔やみの言葉すら書いていないこの記事のどこが「他者を大事に思いやる」なのか。
おまけに藤田氏はこれまでもZOZO、前澤社長、広報の田畑氏を中心にYahoo!という巨大メディアを利用して思いやりの欠片もない攻撃を繰り返して来たではないか。
これはブラック企業アナリストの新田龍氏が鋭く指摘している。
藤田孝典「他者への言葉の発信や想いの伝え方に注意をいただきたい」
↓
・「嫌い」だから、何も問題を起こしてないZOZOをYahoo!ニュースで実名挙げて叩く
・ZOZO田端氏に「逃げんな!」と恫喝
・自分の仲間のユニオン内で起きた労基法違反&ハラスメントに対しては「組織を信頼して見守れ」とスルー pic.twitter.com/xvaKsSTCEU— ブラック企業アナリスト 新田 龍 (@nittaryo) 2019年5月28日
藤田氏は自分の記事に説得力を持たせたければ、まず自分から「他者への言葉の発信や想いの伝え方に注意をいただきたい」。まあ、事件の当日に書いた記事で被害者へのお悔やみの言葉すら書けないようでは無理だろうけど。
「弱者を利用しふみつける悪」はいつだって善意を装っている
今回の藤田孝典氏の記事は、私が思う「悪」そのものだ。
正義と悪を軽々しく語れるような年齢でもないが、私には「悪」の基準がある。それがジョジョ3部で空条承太郎が言った、
だがこんなおれにもはき気のする「悪」はわかる!!
「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!
である。
藤田孝典氏の記事は、自分のNPOや売名のために事件の被害者を利用した記事を書いてアクセスを集めるという「弱者を利用しふみつける」ものだ。
だが、一見すると「次の凶行を起こさないように」と書いているので「正義」のメッセージと勘違いする人もいるかもしれない。だからここは承太郎の言葉を借りて私が裁かなければいけないのだ。
だがこんなおれにもはき気のする「悪」はわかる!!
「悪」とはてめー自身のためだけに弱者を利用しふみつけるやつのことだ!!
ましてや被害者をーっ! きさまがやったのはそれだ! あ〜〜〜〜ん
おめーの「本音」は被害者自身にも法律にも見えねえしわからねえ…
だから おれが裁く!
参照:川崎殺傷事件「死にたいなら一人で死ぬべき」という非難は控えてほしい、川崎・登戸殺傷 児童ら18人襲われ小6女児と男性死亡 確保の男も死亡、おびえる児童、子を探す母、血まみれの大人 川崎の事件