社会・一般

川崎・登戸殺傷事件。孤独な独身男性のルサンチマン、その闇は深くて見えない

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出典:写真AC(孤独)

またしても弱い子どもを狙う悲惨な事件が発生してしまった。

最初にそのニュースを見た時は目を疑った。(5月28日の)今朝、川崎市多摩区登戸で通り魔事件が発生し、小学校6年生の女の子と別の子の保護者の30代男性が死亡。しかも犯人の岩崎隆一(川崎市麻生区在中・男・51歳)は自殺してしまった。

登戸は小田急線と南武線の乗り換え駅なので、神奈川に越してから何度も降り立った事がある。しかも近くには大事な人達も住んでいる。不謹慎かもしれないが、その人達では無かった事にまず安堵してしまった。だけどそんな私にもゆかりの深い場所でこんな事件が起きるなんて。

被害に遭われた子ども達はきっと言葉にはできない恐ろしい思いをしただろう。今はとにかく心と体を休めて欲しい。そして亡くなられてしまった女の子、男性には深い哀悼の意を表したい。どうか天国で幸せになって欲しい。

附属池田小事件、秋葉原通り魔事件など、悲惨な無差別殺傷事件は多い。だが、やはり共通するのは実は無差別ではなく、確実に弱い人間を狙って凶行に及ぶ事だ。どうせ死にたいならヤクザにカチコミでも掛けて死ねば良いのにといつも思う。

そして犯人が孤独な独身男性という傾向もあると思う。(今回の犯人である岩崎隆一の情報はまだほとんど無いが、現時点の情報からも孤独に暮らしていた独身男性と思われる)

実は私は附属池田小事件が起きる前に、犯人・宅間守に実際に会った事がある。あの時、宅間守が抱えていた闇に私は一切に気づく事ができなかった。

思い出す附属池田小事件。あの時私はすぐ近くにいた

宅間守が附属池田小学校に侵入し、児童8名を殺害、児童13名・教諭2名に傷害を負わせた悲惨な事件が起きたのは2001年6月8日(金)10時20分ごろである。

あの時、私は大阪大学の3回生だった。授業は吹田キャンパスなのだが、ソフトテニス部の活動を豊中キャンパスで毎日行っていたので豊中に住んでいた。そしてあの日は吹田キャンパスの授業が午後からだったので、その前に部費を降ろそう(ソフトテニス部の会計だった)と池田駅前のUFJ銀行に石橋キャンパスから自転車で向かっていた。

池田駅前のUFJ銀行で用事を済ませたのが確か12時ごろだった。石橋まで176号線沿いに自転車で帰っている途中で異変に気付いた。凄い数のパトカーと救急車が行き交っていた。サイレンがうるさい。そして心なしか通行人の空気が緊張している。

叫び声が聞こえたとかでは無かったのだが、何か事件が起きた事だけはわかった。ただ、その時はそれ以上の異変を感じる事ができず、そのまま石橋に帰り、吹田キャンパスに向かった。

そして放課後に豊中キャンパスに戻り、部活仲間から池田小学校で無差別殺人が起きたと聞き震えた。事件が起きたちょうどその頃、私は池田小学校の目の前を自転車で通過していたのだ。もしかしたら犯人とニアミスしていたかもしれない。

ただ自分が殺されていたとは思わなかった。むしろなぜ私を狙わなかったのかと思った。あの頃の私は20歳と若く、毎日の体育会ソフトテニス部の練習で心身ともに屈強な男だった。ラケットもあるし、返り討ちにしてやったのにと思った。

だが、無差別殺人の犯人は無差別と言いながら絶対に私のような男は狙わない。いつだって犠牲になるのは弱い子ども、女性、老人なのだ。

宅間守はコンビニでマガジンを立ち読みする普通の男性だった

その頃の私は親友・Nが1人暮らししていた箕面市のアパートによく遊びに行っていた。目の前にファミリーマートがあるので便利だったのと、Nが揃えていた「コータローまかりとおる」「コータローまかりとおる・柔道編」が目当てだった。

そしてしばらくして犯人が箕面市在中の宅間守と知ったが驚きは無かった。2人で「まあ近くに住んでたのかもね」と言っていた。だが、それは想像以上に近かった。

犯人の宅間守の顔写真が報道されてからしばらくした日、いつものごとくNの部屋に遊びに行き、そこから別の場所に遊びに行こうと一緒にNの部屋を出たら新聞記者が待っていたのだ。

そしてNに「あなたのアパートに宅間守が住んでいたんですけど、どんな印象でしたか」と取材を始めた。

私は遠巻きに見ていただけだったが、不意に記憶が蘇ってきた。テレビで見た宅間守の顔、Nの部屋に遊びに行く前に必ず寄るファミリーマート、そこで一緒にマガジンを立ち読みする男性。あいつが宅間守だったのだ、と。

報道で知る宅間守は精神異常者だった。精神障害を患い、何度も事件を繰り返し、いつか大きな事件を起こすのも当然のようなキ◯ガイ。「そんなキ◯ガイ、見たらわかるやろ。なんで入院させておかんかったんや」と思ってた。

でも宅間守と話した訳じゃ無いが、実際に会った事を思い出すとそれは違うと思った。僕には宅間守は普通の人にしか見えなかった。だからこそ印象にも残っていなかった。同じアパートに住んでいたNも同じ事を言った。

だがその心の中には想像を絶する深い闇が潜んでいた。

孤独な独身男性の絶望は深い。今の日本に救いの手は存在しない

私は宅間守を垣間見ただけであるが、あの心の闇は一緒に暮らしでもしない限り他人にはわかるとは思えない。きっと事前にどうこうするのは無理だったのだろう。

そしてあれから約20年が経ち、あの時の宅間守の気持ちは理解はできなくても少しは想像できる。

宅間守も、その後に起きた秋葉原事件の加藤智大も、そして川崎殺傷事件の岩崎隆一も、いつだって共通するのは孤独な独身男性である事だ。

私は仕事もあるし家族も友人もいる。孤独では無いと思ってるが、日本における独身男性の肩身の狭さはわかる。

何をしても一人前という実感が持てない。「おっさん」とただただ蔑まれる存在になり、自分はどうしようもない劣等種であるというルサンチマンに襲われる。

仕事をしていればまだ良いが、一度ドロップアウトしてしまうと仕事をする事すら困難だ。パートやアルバイトで雇ってもらうのも難しい。

ただ思い込みで言っているのではない。データでも日本の未婚男性の不幸率は43.5%で群を抜いている。

未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

男女平等、LGBTなどの差別問題は言われているが、この未婚男性の不幸は見過ごされがちだ。少なくとも政治家の公約になったり、行政のサポートがあるなんて話は聞いた事がない。

そこに孤独が加わると、どうしようもない「無敵の人」が誕生するのだろう。

今回の事件を「無敵の人」と一括りにする気はないが、ただ改めて「無敵の人」をどうするかしっかり向き合っていかなければと思った。

とはいえ、ちゃんと働いている自分が全く結婚できないんだから、仕事を失った人はもっと詰んでいる。少なくとも今の日本で、高年収の女性が「専業主夫」として無職男性と結婚して養うという救いは全く想像できない。これだけは現実に存在する男性と女性の差であり、男性の絶望だ。

非婚がどんどん進む中、「無敵の人」はもっと増えていくだろう。即効的な解決策なんて思いつかない。

「無敵の人」にも再チャレンジの機会を与えるよう、採用における年齢差別を撤廃していくとか、解雇規制を緩和して労働市場を流動化するとか、長い道だけど一歩ずつ進めて欲しい。

そして当面はただただ警備を強化していくしかない。孤独な未婚男性の闇を救いたいとは思うが、その前に何の罪も無い子ども達をこれ以上犠牲にする訳には絶対にいかない。

参照:川崎・登戸殺傷 児童ら18人襲われ小6女児と男性死亡 確保の男も死亡おびえる児童、子を探す母、血まみれの大人 川崎の事件附属池田小事件 – Wikipedia秋葉原通り魔事件 – Wikipedia未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会



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author : 宮寺達也



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