「ゼロ」好きの小池都知事がぶち上げた東京都の二酸化炭素ゼロであるが、どう考えてもロクな事にならない。なので効果は全く無いが、副作用も都民負担も全く無い素晴らしい二酸化炭素ゼロの達成方法を私が提案してみせた。
カロリーゼロ理論風に小池都知事の東京都二酸化炭素ゼロを提案する
そこで「是非とも採用のご連絡をお待ちしております」と書いたのだがスルーされている。本気なんだけどな。
さて、では小池都知事がどうやって達成しようとしているのか。わかる範囲で調べてみたのだがどうやら、
・電気自動車やプラグインハイブリッド自動車(ゼロエミッションビークル)の普及を促進する
・プラスチックの使用量を減らす
・そのために、これから東京都主催の会議ではペットボトルやストローの使用を辞めていく
だそうである。
「焼け石に水ってレベルじゃねーぞ」と叫びたくなったのと同時に、CO2排出についても無知な事が判明して愕然としている(いや嘘です。やっぱ知らないだろうと思ってました)。
東京都のCO2排出量はエネルギー消費に比例して莫大な量である。ゼロにするには排出権を購入するしかなく、その負担はまたまた1兆円か。
東京都の年間CO2排出量は6000万トン。日本全体の5%に達する
まず大前提として知らなければいけないのは、東京都のCO2排出量である。果たしてゼロにできるような量なのだろうか。
2015年度CO2排出量 6,084万トン
「東京のエネルギー起源CO2排出量は、国内の排出量の5.3%を占めており、オーストリア、ギリシャ 等1国分の排出規模に相当する。」
東京都環境局が公開している資料から一目瞭然なのだが、年間6000万トンという凄まじい数字だ。ヨーロッパの1国に匹敵している。
国際的に温室効果ガス削減を目指した1997年の京都議定書では「先進国の温室効果ガスの排出量を1990年比で5%減少させることを目標」として掲げた。その1990年の東京都のCO2排出量は5,458万トンであるので、そことの差分なら500万トンでまだ実現の芽が出てくる。
とはいえ、それは国際的に決まっている当然の目標数値なのでわざわざ言う必要が無い。
何より、東京都のCO2排出量は東日本大震災からの省エネ活動もあってピークの2012年6,585万トンからは減ってきてはいるが、過去の推移を見ても誤差変動の範囲である。とても1990年比で5%減少すら困難である。
CO2排出量はエネルギー消費に比例。電気自動車に変えても減らない
しかし東京のCO2排出量がここまで多いと聞くと、
「確かに東京は人口もビルも多いが、火力発電所や工場はそんなに無いので少ないと思っていた」
と疑問に思う人も出るだろう。
それはCO2排出量の算定範囲で説明できる。東京都環境局の算定は、
・都内に供給される農林水産物、工業製品等の多くは都外で生産されており、これらの活動に起因する 二酸化炭素は都外で排出されている。本調査では、これらの二酸化炭素排出量は計上していない
・電力消費に伴う二酸化炭素排出量については、販売時の排出係数を用いて算出しており、都外で発電 の際に排出された量も含んでいる
となっている。工場は確かに都外でCO2が排出されるが、電力消費は「東京都内の需要に応じて発生する」ので都内のCO2排出に含めている。これは極めて自然な考えだ。
そのためCO2排出量はエネルギー消費量にほぼ比例する。その燃料種別の構成比は、
・電力 44.6%
・都市ガス 27.8%
・燃料油 25.1%
となっている。そのためガソリン車をEVやPHVに変えてもエネルギー消費の内訳が燃料油から電力に移動するだけで総量は全く変わらない。EVは放置によるバッテリー放電が問題になっているので、むしろエネルギー消費量は増えるかもしれない。
プラスチックの廃止など論外で誤差の影響すら与えないだろう。
もちろん電力起因のCO2排出は、消費した都内ではなく発電した都外に振り替えるという事は簡単であろう。だがそれに何の意味があるのか。
CO2排出権購入価格は最低でも1000億円。最終的な負担はまたまた1兆円か
そのため小池都知事が提唱するプラスチックの廃止、EVの普及などでは東京都のCO2排出量は全く減らない。むしろここ最近の猛暑などを考えれば、エアコンによる電力消費はますます伸びる。
エアコンは現時点でも家庭の電力消費のトップである。酷暑でエアコンをつけない事による熱中症死が問題になっているのに、これ以上劇的に電力消費が減る事は期待できない。
どんなに省エネ技術が普及しても、せいぜい現状の年間6000万トンを維持するのが精一杯であろう。
そうなるともう解決策は1つしかない。CO2排出権の購入である。
CO2排出権の取引は京都議定書以降に活発に行われて来たが、需要も一段落し低迷していた。しかし後継となるパリ協定の発行もあってまた活発になって来ている。現在は欧州を中心に1トンあたり2000円程度で取引されている。
国内でも「J-クレジット制度」が創設され、再生可能エネルギーなどの省エネ技術が生み出したCO2排出枠をやはり1トンあたり2000円程度で取引されている。
という訳で2050年に東京都がCO2排出を「実質ゼロ」にしようと思えば、まあ5000万トンのCO2排出権を購入する事になる。
5000万トン × 2000円/トン = 1000億円
つまり1000億円を「都民の税金から負担する」事でCO2排出を「実質ゼロ」にできる。「税金が増えるよ!」「やったね〇〇ちゃん!」
しかもパリ協定の発行からCO2排出権取引が活発になっており、価格は上昇傾向である。2050年に2000円/トンで済む保証は全く無く、その価格上昇に伴って負担は1000億円から右肩上がりだ。1万円/トンにも達すれば5000億円である。
しかも並行して(無意味な)プラスチック削減やEV普及のために莫大な対策予算を組み、支出をしている訳である。そのための対策予算が年間200億円でも2050年までの30年で6000億円である。合計すればまたまた都民負担は1兆円だ。
いくら年間予算7兆円の東京都とはいえ豊洲市場で1兆円をドブに捨て、希望の党で衆院選で惨敗した結果、消費税収を1兆円国に分捕られ、さらに年間1000億円もドブに捨てていこうというのだ。とまらねーな、おい!
まあ豊洲市場の損失はともかく、消費税収やCO2排出権の購入は都民以外にとっては小池都知事から地方へのバラマキなので、
「小池さんから1兆円の差し入れや。小池さんの優しさは五臓六腑に染み渡るで〜」
と感謝してもし足りない。可哀想なのは全く無駄な事に血税を支払っている都民である。小池都知事の支持率は安定しており、2020年の再選はほぼ安泰という話だが、本当に良いのかね?
参照:東京都の温室効果ガス排出量、2050年までに「東京のCO2排出量ゼロ」を小池都知事が発表。その時わたしは会場にいた。、排出量取引の運用に関する専門家委員会、CO2排出量取引、復活の兆し クレジットへの需要 カギ、再エネ発電由来の価値が上昇 J-クレジット制度の概要と直近の動向