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任天堂 VS コロプラ特許訴訟。訂正審判でコロプラの無効資料が無効に

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出典:Microsoft Flight Simulator X 公式HP

任天堂とコロプラの特許訴訟の第7回戦(第6回弁論準備手続)の最後の記事で書いたのだが、任天堂はコロプラの無効資料に対抗するために特許1「ぷにコン」、特許2「チャージ攻撃」、特許3「スリープ機能」、特許4「相互フォロー」、特許6「フォロー登録」と6つの特許中5つを修正し、特許庁に訂正審判を請求している。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。任天堂が見せるコロプラ絶対許さない感

この訂正審判の状況はお馴染みの特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で確認することができる。任天堂が最初に特許の訂正を明らかにしたのは2018年12月5日の第5回戦の事なので、あれから5ヶ月。訂正審判もかなり進行しており、もう既に終了しているものもある。

この結果、続々と任天堂の主張が特許庁に認められコロプラの無効資料が無効になっている。

ずっとコロプラが無効審判を起こさない事が疑問であったが、やっぱり勝ち目が無いからなのだろうか。。。

訂正審判では「コロプラが訴訟で出した無効資料を含めて」特許を審議する

まず、改めて訂正審判について説明しよう。

特許は一度登録された後も、特許法第126条第1項1号で定められている「特許請求の範囲の減縮」によって「権利範囲を小さくするのならば」修正できる。その修正を特許庁に申請して審議するのが訂正審判である。

ただ、訂正審判は単純に「特許請求の範囲の減縮」を見るのでは無い。わざわざ権利範囲を小さくするという事は、どこかに無効資料を突きつけられたとか、自分で無効になる可能性の資料を発見したとか、無効審判を起こされたとか、特許訴訟で無効資料をぶつけられた(無効の抗弁)とか、権利範囲をそのままにしておくと特許が無効になる可能性が出てきたからである。

そのため訂正審判ではそれらに影響しないようできるだけ早期に審理する事、そして特許訴訟の無効の抗弁、無効審判、また特許異議の申立てとの関係に注意して審理する。

例えば特許3「スリープ機能」の訂正拒絶理由通知書(リンク先の右にある「経過情報」のボタンを押すと閲覧できる)によると、

なお、本件特許(特許第4010533号)に関し、東京地方裁判所において特許権侵害差止等請求事件(平成29年(ワ)第43185号。以下、「本件侵害事件」という。)が提起されており、本件侵害事件では、いわゆる無効の抗弁(以下、「本件無効抗弁」という。)が、同事件の被告により、本件特許の請求項11について、提出されている。

ここで、本件無効抗弁が対象とする請求項(本件特許の請求項11)は、当審が独立特許要件を判断する対象とする請求項(訂正後発明11)とは異なる。

しかし、訂正後発明11は、本件特許の請求項11に係る発明を限定したものであるから、本件無効抗弁は、当審が独立特許要件を判断する訂正後発明11と関連性があるといえる。

そこで、当審は、本件無効抗弁に係る無効理由を、訂正後発明11に関する限りにおいて、下記の無効理由(1)-(3)のうちの無効理由(1)に係る証拠に基づき、独立特許要件について検討する。

このように訂正審判は任天堂が独自に起こしたものであるが、この結果でコロプラの無効資料が有効なのか無効なのかがわかるのだ。

特許1「ぷにコン」と特許6「フォロー登録」はコロプラの無効資料を考慮した上で特許庁がOK

さて、訂正審判請求を行った5つの特許について見ていこう。まずは特許1「ぷにコン」である。

本件特許権1 特許3734820号 「タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)」

この審判は「訂正2018-390187」として番号が起案されている。詳細なレポートはまだ参照できない状態であるが、結果だけはわかる。

2019年(平成31年)4月26日(金)付で「結論(Y 訂正を認める) 」として審理が終結している。

コロプラが主張して来た信長の野望やPSOを考慮してなお、特許1は登録維持という特許庁の判断だ。この日は平成最後の平日だったので、任天堂の知財部もハッピーな報告を受けて10連休に入ったのではないか。

そして次は特許6「フォロー登録」である。

本件特許権6 特許第6271692号 「一方的に相手ゲーム機をフォローできる(フォロー登録)」

「訂正2018-390190」として番号が起案されている。これまた詳細なレポートはまだ参照できない状態で結果だけわかる。

2019年(令和元年)5月7日(火)付で「結論(Y 訂正を認める) 」として審理が終結している。

コロプラは、特開2002-140278号(ソニー株式会社)と特開2003-340161号(コナミ株式会社)と特開2003-036319号(株式会社スクウェア)の3つの特許公報を無効資料として挙げたが、特許6は登録維持という特許庁の判断だ。

この日付は令和最初の平日であり、また第7回戦の前日である。任天堂は自信を持って第7回戦に臨んでいたのだろう。

特許3「スリープ機能」は訂正審判で拒絶通知をもらってしまう

ただ特許3「スリープ機能」は少し雲行きが違っている。

本件特許権3 特許4010533号 「スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)」

この審判は「訂正2018-390188」として番号が起案されている。ただし訂正拒絶理由通知書が特許庁から出されたのだ。特許庁はコロプラが出した無効資料「Microsoft Flight Simulator」「スーパーマリオアドバンス」などと訂正後の特許6を比較検討した。その結果、

「Microsoft Flight Simulator」を搭載したWindows2000は特許6同様に自動でスリープに移行し、復帰する機能がある。

任天堂は「Microsoft Flight Simulatorはキーボードやマウス操作が無い状態が継続してもスリープモードに移行しないので特許6とは異なる」と主張しているが、証拠として提示されたビデオでは3分間の観察中にスリープモードに移行しなかっただけである。

Windows2000ではOSの電源オプションの設定によってユーザが必要に応じてスタンバイ・モードに移行するまでの時間を長時間(例えば「30分後」など)に設定できるから、任天堂の証拠ビデオは「Microsoft Flight Simulatorに自動でスリープモードに移行できない阻害理由がある」証拠として採用できない。

よって「Microsoft Flight Simulator」から訂正後の特許6を想到する阻害要因が無く、特許登録は認められない。

として拒絶されてしまった。当然だが訂正後(権利範囲が小さい)特許6が却下されたならば、訂正前の特許6も無効である。まさにコロプラの無効資料の嵐が数打ちゃ当たるで成功した形だ。

だが任天堂弁護士の素早いアピールで特許3は無事にOKを貰う。特許4も問題無さそう

しかしまあ特許審判においてこのくらいは想定内である。

この拒絶通知が出されたのは1月11日であるが、任天堂の弁護士は1ヶ月後の2月4日にアポを取り特許庁に面接に乗り込んでいる。

そこで実際にMicrosoft Flight SimulatorをインストールしたノートPCを持ち込み、審査官にプレゼンを行っているのだ。

そこでまずFlight Simulatorのプレイ中にはキーボードやマウス操作をしない場合、OSの電源オプションの設定時間に到達しても自動でスリープモーに移行しない動作を実演。

さらにこれがFlight Simulatorが明確に意図した動作である事を証明するため、同じFlight Simulator起動中だがゲーム開始直後のスタート画面を表示した。このスタート画面ではOSの電源オプションの設定時間に到達すると自動でスリープモードに移行する。

つまり、Flight Simulatorは「プレイ中でもスリープモードに移行しスリープ復帰後はその中断時からゲームを再開する機能が存在しない」事を証明したのだ。

審査官も納得したようで、スタート画面時の動作について文書での説明を要求しただけである。

そしてこれはほんの昨日の事である。特許3の経過情報に5月17日付で「Y 訂正を認める」との表示が更新されている。まだ審理終結通知書がUPされていないので確定情報では無い可能性があるが、面接の内容からもほぼ拒絶は回避できたと考えて良いだろう。

そして次に特許4「相互フォロー」である。

本件特許権4 特許5595991号 「ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う(相互フォロー)」

この審判は「訂正 2018-390189番号」として番号が起案されている。そしてこれも訂正拒絶理由通知書が出されている。

しかしこれは問題無い。拒絶の理由が

訂正前の「ネットワーク通信を行うこと」を、訂正後の「通信ゲームを行うこと」へと、異なる概念へ変更するものであって、実質的に範囲を変更するものである。

だからだ。コロプラの無効資料と比較してNGなのでは無く、ただ権利範囲の解釈の問題だ。それに通信ゲームへの変更が認められず、ネットワーク通信のままでも大きな影響は無いだろう。

ちなみに特許4についてのコロプラの無効資料については

被告(株式会社コロプラ)が提出している各証拠(乙44~46)についても検討したが、訂正後の特許4の構成について記載も示唆もない

とバッサリと却下されている。このままコロプラの無効資料が認められないのは確実である。

任天堂は訂正の再抗弁を利用してコロプラの無効資料の嵐を逆に無効化

そして残るは訂正審判中の特許2「チャージ攻撃」と訂正していない特許5「シルエット表示」

本件特許権2 特許4262217号 「タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃(チャージ攻撃)」

本件特許権5 特許3637031号 「障害物でプレイキャラクターが隠されてもシルエットで表示する(シルエット表示)」

の2つである。特許2「チャージ攻撃」はこれから訂正審判をするので、数ヶ月後に結論が出るだろう。特許5「シルエット表示」は訂正審判はしていないが、もしかしたら仕様変更に関連して新たに訂正審判を行うかもしれない。

現状は6個中4つの特許について、コロプラの無効資料が特許庁によって否定された状態である。

もちろん特許庁の訂正審判と東京地裁の判断は独立しているし、コロプラはXbox Liveなど訂正審判後にも新たな後出し無効資料を追加している。まだコロプラの無効資料の嵐が止んだ訳ではない。

しかしかなり弱まったのは事実だ。風速20メートルの台風に思えた無効資料の嵐も、現時点では穏やかで心地よい春風のようなそよぎ具合である。

このまま無効資料の嵐が無効になったらコロプラの主張は極めて不利になる。

それでもまだ無効資料頼みの特許戦術を続けるのか、それともまた黙って仕様変更をしているのか。コロプラの動きに注目である。

参照:任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第4回戦。コロプラの切り札(?)として『信長の野望』が出陣任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。ソリティア!?止まらないコロプラの後出し無効資料の嵐任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。シルエット画像の仕様変更に任天堂は回答できず任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。任天堂が見せるコロプラ絶対許さない感特許庁「54 訂正審判」



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author : 宮寺達也



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