特許

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。任天堂が見せるコロプラ絶対許さない感

投稿日:

出典:白猫プロジェクト PV 第1弾【株式会社コロプラ】

前回、前々回の記事に引き続き、任天堂とコロプラの特許訴訟の第7回戦(第6回弁論準備手続)での任天堂の主張を解説していきたい。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。シルエット画像の仕様変更に任天堂は回答できず

第7回戦は任天堂の反論のターンである。シルエット画像の仕様変更には戸惑っているようだが、その他のコロプラの反論には全てにおいて正確で論理的な回答をぶつけている。

さらに第6回戦でコロプラから特許2「チャージ攻撃」に対してぐるみんやソリティアなどの無効資料をぶつけられたのに対して、特許2も訂正すると宣言したのだ。

これまでも特許1「ぷにコン」、特許3「スリープ機能」、特許4「相互フォロー」、特許6「フォロー登録」と6つの特許中4つを訂正していたのだが、これで5つ目である。ほぼ全てを訂正した事になる。

そもそも任天堂の6つの特許軍は他の大多数のスマホゲームにも侵害を主張できそうな超強力な特許群である。任天堂は自らの貴重な知的財産を削ってでもコロプラとの特許訴訟を勝利に、しかも早期に終わらせようという覚悟を感じる。

ソリティアと差別化するために特許2「チャージ攻撃」も訂正の再抗弁

第6回戦でコロプラが繰り出して来た無効資料の嵐は、特に特許2に集中していた。

「ぐるみん」「スパイダソリティア」「Windows XP」と3つのゲーム・OSを新たに無効資料として追加して来たのだ。

とはいえ全てがマウス操作するWindowsのゲーム、そしてOSそのものである。特許2のそのままの記載でも十分に反論できるだろう。しかし任天堂は「これ以上の無益な議論を避けるために」特許2も訂正審判請求を行うと明らかにした。

原告準備書面(10) 【本件特許権2関連】 平成31年4月25日

本件特許権2 特許4262217号 「タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃(チャージ攻撃)」

特許2の請求項1,3,7,8に対して近日中に訂正審判請求を行う。

本訂正によりコロプラは提示したゲームが特許2と全く内容の異なるゲームである事を明らかにした。

そして、その特許2の訂正内容がこちらだ。あからさまなくらいコロプラの無効資料を潰しに来ている。

特許2【請求項1】(訂正後)

ゲーム画像が表示される表示画面上の位置を指示するための当該画面表示上に設けられたタッチパネル(訂正前:ポインティングデバイス)を備えるゲーム装置のコンピュータに、

前記タッチパネルからの出力信号に基づいて、当該タッチパネルを通じて入力される前記表示画面上の位置を示す座標値を逐次検出する座標検出ステップと、

前記表示画面上に表示されるプレイヤキャラクタ(訂正前:第1のオブジェクト)タッチパネルにより操作されている状態にあるときに、前記座標検出ステップで検出された座標値に基づいて当該プレイヤキャラクタを移動させる移動制御ステップと、

プレイヤの前記タッチパネルによる入力操作に関連する位置情報と前記表示画面上に表示される敵キャラクタ(訂正前:第2のオブジェクト)の位置情報とに基づいて双方の位置関係が所定の条件を満たすか否かを判別する位置関係判別ステップと、

前記プレイヤキャラクタが前記タッチパネルにより操作されている状態が解除され、かつ、前記位置関係判別ステップにより前記位置関係が所定の条件を満たすと判別されたときには、前記解除がプレイヤにより行われたタイミングで前記プレイヤキャラクタが前記敵キャラクタに対して(訂正前:前記第1のオブジェクトと前記第2のオブジェクトとの何れか一方が他方に対して)所定の攻撃動作を行うよう制御(訂正前:行うよう当該一方を制御)する動作制御ステップとを実行させる、ゲームプログラム。

このように「2つのオブジェクトの位置関係に基づいて何らかのアクションを起こす」という広い権利範囲から、「プレイヤが操作するプレイヤキャラクタが、敵キャラクタとの位置関係に基づいて攻撃する」というまさに白猫プロジェクトを狙い撃ちしたかのような特許に狭めてしまった。

確かにこれでスパイダソリティアやWindows XPとは違うと誰の目にも明らかだ。

なおぐるみんは敵キャラクタを攻撃するゲームだが、ぐるみんのチャージ攻撃は「移動中に、移動方向にしか発動しない」のでぷにコンのチャージ攻撃とは全く違うとも主張している。

任天堂ならあの無効資料の嵐に反論するとは思っていたが、ここまで大胆に肉(自社の大事な知的財産)を切って骨を断ちに来るとは思っていなかった。

特許3「スリープ機能」は粛々と反論。コロプラはもう無効資料に頼るしかない瀬戸際

そして最後に特許3「スリープ機能」についての任天堂の反論だ。

原告準備書面(11) 【本件特許権3関連】 平成31年4月25日

本件特許権3 特許4010533号 「スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)」

任天堂は争点を5つに整理して、わかりやすく説明してくれていた。実は今回、他の準備資料でも争点を箇条書きにしてわかりやすくする配慮が何度も登場していた。裁判資料を読んだ私も大変に見やすかったので、裁判官はもっとだろう。

こういう細やかな配慮にもまた連戦連勝の最強法務部(知財部)の力を見た思いだ。

a. スマートフォンがゲーム機かどうか
→特許の明細書に「意図せずゲーム処理モードに復帰すると勝手にゲームが進行してしまう」携帯デバイスが課題であると書いてあり、当然にスマートフォンも含まれる。

b. タッチパネルが操作スイッチであるかどうか
→コロプラは操作スイッチとはハウジング表面にあるものと主張するがそんな定義は無い。ゲーム機の外部に露出しているのが操作スイッチである。

c. 「×」ボタンが復帰条件と一目でわかるかどうか
「×」ボタンを押したらそのウインドウが消えて、その背後に表示されている画面に移動(ゲームに復帰)するのはWindowsなどのUIで常識である。というか、だから白猫プロジェクトも「×」ボタンを採用したんでしょ。

d. 白猫プロジェクトは復帰画面をスリープ移行前からずっと表示している事について
→何度も言ってるけど証拠を出せ。
→そして仮にスリープ移行前から表示してても、スリープ復帰時に表示してれば侵害している。

e. 白猫プロジェクトの復帰画面の目的について
→コロプラは「復帰画面はスリープモードの解除が目的では無い」と言っているが、そんなの関係ねえ。実際にスリープモードの解除に使ってるんだから侵害している。

と反論していた。私も完全に論破しているように思えたので、特許3の争点は無効資料に移ったと言って良いだろう。

だが、任天堂が無効資料に対抗するために行った特許3の訂正審判では特許庁が拒絶を出してしまった。これは特許庁がコロプラの無効資料を見て「訂正後の特許3は無効である」と認めた事になる。

この事はツイッターなどでも私に指摘してくれた人がいる。

だが結論としては任天堂には大きな問題になっていない。この事はまた別途、他の訂正審判とまとめて記載したい。

これで特許5「シルエット表示」以外は全て訂正。特許を切らせてコロプラを断つ

任天堂はコロプラの無効資料に対抗するため、これまでも特許1「ぷにコン」、特許3「スリープ機能」、特許4「相互フォロー」、特許6「フォロー登録」と6つの特許中4つを訂正していた。これに特許2が加わった事で5つ目となり、ほぼ全てを訂正した事になる。

そもそも任天堂の6つの特許群は他の大多数のスマホゲームにも侵害主張できそうな超強力なものである。大儲けしているビッグネームのスマホゲームにも特許侵害訴訟を起こして、白猫プロジェクトの44億円の比ではない100億、200億円の訴訟を起こす事だって可能だ。

任天堂から自らの貴重な知的財産を削ってでもコロプラとの特許訴訟を勝利に、しかも早期に終わらせようという覚悟を感じる。

まさに肉を切って骨を断つだ。

何より、特許の訂正は弁護士の一存でできるはずがない。任天堂の知財部、そして発明した社員・部署ともしっかり連携を取ってこの訴訟に臨んでいる事がここからも見て取れる。それに対してコロプラは白猫プロジェクトの設計情報を全く出さなかったり、こっそり仕様変更したり、仕様変更の日時を間違えたり連携がボロボロである。

今回の訴訟の明暗を分けるのはそういう普段からの特許に対する姿勢の違いであろう。

しかし任天堂の特許訂正を見て「これでウチは訴えられなさそう」と安心しているスマホゲーム会社は多いのではないか。そして任天堂は自社の特許を使って大儲けしようとか、スマホゲームの発展を潰そうとかそんな意思は一切無い事が分かったはずだ。

だが、だからこそなぜコロプラとだけここまで争い合う関係になってしまったかがわからない。この最大の謎はまだ解けそうにない。

さて次回の審理は令和元年7月12日午前11時30分からである。次はコロプラのターンなので第4回戦・6回戦と続いた後出し無効資料がまた出てくるのか、注目である。

参照:任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第4回戦。コロプラの切り札(?)として『信長の野望』が出陣任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。ソリティア!?止まらないコロプラの後出し無効資料の嵐任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。シルエット画像の仕様変更に任天堂は回答できず



   ● オススメ商品
                     
 
   

-特許
-,

author : 宮寺達也



関連記事

一番大事なのは白猫プロジェクトのユーザーが安心して遊べる事でしょ

出典:「白猫プロジェクト」進撃の巨人コラボ特設サイト 任天堂とコロプラの特許訴訟について記事だが、相変わらず凄い反響をいただいている。特に第2弾は8万PVを超えてしまった。想像もできない数字だ。裁判の …

任天堂 VS コロプラ特許訴訟。コロプラの弁護士交代は流れを変えたのか?

出典:写真AC(知財 本棚) 第6回戦でのコロプラの反論について解説記事を書き終わって改めて思った事だが、やっぱりコロプラの反論は最初の「いちゃもん付けるだけの時間稼ぎ」から随分と印象が変わっている。 …

特許出願数の減少はゆとり教育とは関係無い

出典:イラストAC 山田肇氏の記事を拝見したが、私も「理数系科目の授業時間減少によって研究開発力が低下」したとの神戸大学の研究結果には大いに疑問である。 実際に事務機器メーカーで特許出願を多数行い、退 …

任天堂 VS コロプラ特許訴訟。最大の謎!なぜコロプラは特許無効審判をしないのか?

出典:写真AC(特許庁) 第6回戦までの任天堂とコロプラの特許訴訟を振り返って、コロプラの反論に不自然だった事が2つ有った。その1つが第4回戦から急に人が変わったように後出し無効化資料を出して来た事で …

ドワンゴがFC2を特許侵害で提訴。勝つのはどっちだ?

出典:ITmedia ビジネスオンライン ニコニコ動画を運営しているドワンゴが11月15日、FC2動画等のコメント機能がドワンゴの特許を侵害しているとして、運営元のFC2とホームページシステム(大阪市 …

           

● サイト内検索



● アクセスランキング(週間)



● オススメ記事


● オススメ商品




● カレンダー
2019年8月
« 7月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031