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任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦。ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに

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出典:白猫プロジェクト ぷにコン操作ムービー【株式会社コロプラ】

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有料note(200円) 任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦(前編) 「ユーザに内緒でぷにコン仕様変更が大ブーメランに」

5月8日(水)午前11時30分、東京地裁で任天堂とコロプラの「白猫プロジェクト」特許侵害訴訟の第7回審理が行われた。

私は自分が訴訟の当事者になったおかげで、訴訟は被告原告双方が希望すればずっと非公開で行われるという事を学習した。

そのため第7回審理も非公開で行われることがわかっていたので、ようやく当日に東京地裁に行っても無駄足だったという事を回避できた。

そして2日後の5月10日(金)に裁判資料を閲覧し、やっぱり第6回弁論準備手続であった事を確認できた。

さて、第7回戦は任天堂のターンである。第6回戦ではコロプラがシルエット表示の仕様変更と無効資料の嵐でかなりの攻撃を繰り出していたので、任天堂がどこまでそれに対応できるか。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。ソリティア!?止まらないコロプラの後出し無効資料の嵐

第7回戦で改めて感じたのは任天堂の「コロプラ絶対許さない感」である。

だがコロプラも弁護士交代した第4回戦以降の仕様変更と無効資料による反論はなかなか効果的だ。非常に息詰まる攻防になっている。

任天堂はぷにコンの仕様変更を認めず、均等論で徹底的に追い詰める

任天堂の「コロプラ絶対許さない感」が溢れる第7回戦でまず注目なのは、仕様変更後のぷにコンへの反論である。

ぷにコンの仕様変更は第5回戦の時点でコロプラが主張し、即座に任天堂も「均等論」で反論していた。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!

ただ、この時の反応としては「ぷにコンの仕様変更を黙っていたのは問題だけど、均等論はなかなか認められないから任天堂は厳しい」というものが多かった。

確かに均等論は幾つかの条件を「全て満たさないと」認められないので、ハードルが高い。私も仕様変更前の損害賠償請求の可能性は高まったが、配信停止の可能性は低くなったと思っていた。

しかし、任天堂は第6回弁論準備手続において均等論の主張の精度をさらに高めて来た。

原告準備書面(9) 【本件特許権1関連】 平成31年4月25日

本件特許権1 特許3734820号 「タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)」

第1 充足論

2 新仕様は本件訂正発明1-1の技術的範囲に属する事(均等侵害)

(2)均等侵害の成立要件

特許請求の範囲に記載された構成に、相手方が製造等をする製品又は用いる方法(対象製品等)と異なる部分が存在する場合であっても、次の要件を満たす場合、対象製品と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解される

・最高裁平成6年(オ)第1083号 同10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号110頁

・最高裁平成28年(受)第1242号 同29年3月24日第二小法廷判決・民集71巻3号359頁

①当該部分が特許発明の本質的部分では無い事(第1要件)

②当該部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達する事ができ、同一の作用を奏する事(第2要件)

③そのように置き換える事に、当業者が対象製品等の製造等の時点において容易に想到する事ができたものである事(第3要件)

④対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者が当該出願時に容易に推考できたものでは無い事(第4要件)

⑤対象製品等が特許発明の特許出願手続きにおいて特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなど特段の事情も無い事(第5要件)

任天堂が自ら準備書面で書いているのだが、このように均等論が認められるには5つの要件を全て満たす必要がある。かなり難しいのではと思っていたのだが。。。

コロプラがぷにコンの仕様変更を黙っていた事が特大ブーメランに

任天堂は準備書面において引き続き、「円形から菱形に変更したぷにコンの新仕様」も特許1を侵害していると、5つの要件について全て説明している。

第1要件 非本質的部分

まず本質的部分とは「特許の明細書に記載された課題を解決」し、「従来技術には見られない特徴的部分」である。

そして特許1の課題である。物理的なジョイスティックならばレバーの倒れ具合を指の感覚で把握できるので原点がどこにあるか目で確認する必要が無い。また、レバーを限界まで倒したらキャラクタを移動させ続ける事ができる。

しかしタッチパネルでジョイスティックを模した場合には指の感覚で把握できないため、目視で原点の位置を確認する必要が生じてしまう。また指を動かし続けないとキャラクタを移動させ続ける事ができない。これが課題である。

この課題を解決するため「任意の位置に基準座標を設定する」事で原点位置の目視の必要を無くし、「制限範囲を超えた時は外縁部の時の入力距離に基づいて移動制御する」事でレバーを限界まで倒した時と同じ動作を実現する。

この2つが特許1の本質的部分であり、円形か菱形かは非本質的部分である。

第2要件 置換可能性

円領域を菱形領域に置き換えても、物理的なジョイスティックのレバーを限界まで倒した時の動作を含めて、タッチパネル上でジョイスティックを模した操作をプレイヤに混乱を生じさせる事無く実現できる。

そのため同一の作用効果を奏する事は明らかである。

この事は被告(コロプラ)が、白猫プロジェクトのプレイヤに対してぷにコンの仕様変更をアップデート情報として公表していない事からも示されている。

第3要件 置換容易性

制限範囲の形状をいかなる形状とするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項に過ぎない

第4要件 非容易推考性

ぷにコンの新仕様の構成は、訂正発明1-1の特許出願時において公知技術と同一でない。当業者が容易に推考できたものではない。

(つまり、任天堂の特許1をパクらないとぷにコンの新仕様は実現できなかったという主張)

第5要件 特段の事情

特許1は本訴訟前の平成28年6月14日に訂正審判請求を行っている。その際にも、制限範囲を円形と請求した事は先行技術に対して特許性を確保するために追加したものでは無い。

また、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなど特段の事情も無い。

以上が均等侵害を成立するための5つの要件と任天堂の主張である。

本来は厳しいものだ。なにしろ、特許というオンリーワンの技術だと主張してきたのに「そこは本質的な部分ではない」という主張もしていかなければいけないからだ。

しかし、これを奇しくも訴えられているコロプラが証明してしまった。

ぷにコンの動作を円形から菱形に変更してもアップデート情報として発表する程度でなく、さらに黙ったままでも多数のユーザに全く気付かれなかった。

任天堂の主張は「円形か菱形かは本質的部分でない。仕様変更後のぷにコンは仕様変更前と同じだから特許侵害したままである」という事だ。コロプラはぷにコンの仕様変更を黙っていた事で、お金を掛けてユーザの信頼を失いながらも任天堂のためにその主張の正しさを証明してしまったのだ。

もう本当に、これまた特大ブーメランである。コロプラの特許1への反論は「仕様変更したから侵害してない」と「信長の野望などで無効だから侵害してない」の2つの柱なのに、その両方を「ユーザに内緒で仕様変更した」というブーメランがなぎ倒してしまっている。

ちなみにこれは私も見落としていたのだが、コロプラはぷにコンの仕様変更をした証拠として「特許2018-68505号(まだ非公開)を出願した。その特許に書いてある」という主張を行なっている。実際の白猫プロジェクトのプログラムや仕様書など、直接的な証拠は提出していない。

なので任天堂に「特許を出したといってもそれは実際の白猫プロジェクトとは関係ない。本当に仕様を変更したのか、証拠を提出しろ」と攻められている。

流石に「仕様変更したと言ったけど実は嘘でしたー」なんて可能性は低いと思うが、今までのやり方を見るとコロプラならあり得るかもと思ってしまう。。。

特許1「ぷにコン」は仕様変更後の特許侵害も十分にありえそう

コロプラがユーザに黙って仕様変更していた事で、特許1を巡る争いはかなり任天堂のペースになっていると感じる。

ま、そもそも黙ってようがいまいがに関わらず、仕様変更した時点で特許侵害を認めたも同然なのだが。

コロプラの無効資料による反論も的を射ているとは思えないし、それに加えて黙って仕様変更がブーメランとなって襲われている。特許1はこの訴訟がニュースになった時から「ぷにコンの事じゃないか」と最も注目を集めていた。その注目の争いは、残りの焦点が「仕様変更後もやっぱり任天堂の特許を侵害しているか」に絞られたと思う。

しかし、やっぱりぷにコンの仕様変更を黙っていた事による「信長の野望と同じだから無効」へのブーメランは何度見直しても面白い。

コロプラ 「特許1は『信長の野望Online』の動作と同じだから無効。はい、証拠ビデオ」

任天堂 「日付が2016年8月3日じゃねーか」

コロプラ 「問題無い。キャラクタの移動操作はユーザがオンラインゲームを楽しむために不可欠かつ基本的なもの。ユーザの慣れという観点でも安易に変更できない。仮に変更されてならアップデート情報として周知徹底される」

任天堂 「あんた、ユーザに黙って『ぷにコン』の仕様変更したじゃねーか」

そしてコロプラは特許侵害訴訟を起こされただけじゃなく、黙って仕様変更した事でユーザからの批判に晒された上、それでも特許侵害の恐れが減っていない。ボロボロである。

昨今、NGT48とか不祥事を隠蔽しようとした結果、組織ごと大ピンチになった例が後を絶たない。問題が発生したらできるだけ情報を開示する事が身を助けるのは特許侵害訴訟も同じであるようだ。

さて、第6回弁論準備手続ではまだまだ任天堂の主張が続く。だが、今回は珍しく回答に窮してしまう場面も見られた。これはまた次回に書きたい。

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続きはこちら:任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第7回戦(中編)

参照:任天堂 VS コロプラ「白猫プロジェクト」特許訴訟 関連記事一覧

                   
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author : 宮寺達也



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