図 『SUPER Anti Spyware』が表示されたPC画面
前半・被害編ではサポート詐欺についてと、実際に私の母親が被害に遭った経緯を書いた。
さて、いよいよ後半・解決編では詐欺会社からお金を取り戻すところまでを書きたい。
今回の詐欺会社が利用している電話番号「0345799260」をGoogleで検索すると様々な被害情報が報告されているが、解決に至ったとの記載は見当たらない。実際に母親も「勉強代」と諦めようとしていた。
4万円という「仕方無いか」と思わせる金額設定といい、本当に巧妙な詐欺会社だ。
だけどあきらめたらそこで試合終了ですよ。最後まで手を尽くせば必ず解決できるんです。
母親の代理人としてカード会社と交渉したが、なんとも不誠実
まず行ったのはカード会社に電話し、決済状況の詳細な把握と取消の可能性を探る事だ。
私「宮寺達也と申します。母親がサポート詐欺に遭ったので代理人として解決方法を相談したい」
カード会社「息子さんというだけでは代理人として認められません。お母様にこの番号に電話していただき、『代理人を宮寺達也に任せる』とご一報ください」
私「了解しました。一旦切ります」
(母親に電話)
私「お母さん。僕を代理人にして貰うよう、カード会社に電話して『代理人を宮寺達也に任せる』と言って」
母親「わかった」
(しばし待つ)
私「もしもし宮寺達也です。母親の代理人として相談させてください」
カード会社「先ほどお母様から電話が有りましたが、そこで『今回はご本人様の意思で購入されているので取り消しができません』とお伝えいただき納得いただきました」
私「何勝手に説得しとんねん(怒)」
(再び母親に)
私「お母さん。カード会社に騙されたらあかん。相手の言い分は無視して『代理人を宮寺達也に任せる』とだけ言って電話切って」
母親「ごめん。サポート詐欺の件と電話したら、無理だから代理人とか無意味とか言われて・・・」
(再びカード会社に)
私「もしもし宮寺達也です。母親の代理人として相談できますね」
カード会社「はい、承っております。ですがやはり、今回はご本人様の意思で購入されているので取り消しができません」
私「それは聞いてます。しかし今回のサポート詐欺は必ず『錯誤による売買契約の無効』に該当します。フリーソフトを39,474円で購入させられたんですから。支払い停止の抗弁権が使えるはずです」
カード会社「すいません。わかりません。上司に代わります」
私「(わかんないなら取消出来ませんとか安易に断言するな(怒))」
上司「お電話代わりました。支払い停止の抗弁は総支払額が4万円以上である事が条件になります。今回は39,474円なので対応できかねます。キャンセルされる場合は購入された会社に返金対応をしてもらってください」
私「(なんという絶妙な価格設定)わかりました。相手は海外の会社なので随分無茶を言いますが、まず検討します。しかし詐欺なのは間違いありません。それを証明すれば取消は可能なのでは。どんなに少ない可能性でもご提示ください」
上司「消費生活センターに相談し、消費生活センターが詐欺と証明してくれれば取り消しも可能です」
私「(それだよ!なんで黙ってた)わかりました。消費生活センターに相談します」
こうして消費生活センターに相談するという次ステップが決まった訳だが、カード会社の対応は何とも不誠実に感じた。カード会社からすれば取引が成立した方が手数料を得られるのだから、母親を騙してまでも取引をキャンセルさせたく無かったのでは邪推してしまう。
なぜ最初の代理人の申し出の電話を潰そうとしたのか。なぜ母親に消費生活センターに相談しろと言ってくれなかったのか。不信感は募るばかりだ。
【教訓】サポート詐欺に遭った時にカード会社に相談しても何の役にも立たない
消費生活センターに相談。巧妙に隠された返金方法を発見。だがさらなる罠が!
そして私は消費生活センターの消費者ホットライン「188(いやや)」に電話した。そこで
「お母様の地元の自治体の消費生活センターにご相談するのが確実です」
とアドバイスを受け、故郷・富山県黒部市の消費生活センターに電話した。
そこからの対応はスムーズであった。私は担当の方にこれまでの詳細を伝え、カード会社に詐欺と証明してもらうか、詐欺会社と交渉して返金を求めるか、どちらかを実現して欲しいとお願いした。
担当の方は快く相談を受けて下さり、しかもわざわざ実家を訪問までしてくれて被害に遭ったPCの調査までしてくれたのだ。
その結果、巧妙に隠された返金方法が見つかった。
母親が詐欺に遭った時にメールアドレスも記入していた。そこに詐欺会社から契約メールが届いていたのだ。ただし、全て英語で書かれているので母親には内容はチンプンカンプンであった。
その契約メールの中身については担当の方もわからなかったようだ。だが心配無い。こういう時には越境消費者センター(CCJ)に相談するとの事だ。
そして待つ事3日、1月24日(木)。越境消費者センター経由で返金メールの文章を入手したと連絡があった。後は送りつけるだけだ。
なんと!詐欺会社はPCを破壊し、メール送信が出来ない様に
契約メールを解析したところ、返金するためには2つのメールアドレスに特定のフォーマットを送信する必要があるとの事だ。
しかし越境消費者センターにはこの詐欺会社の事例もデータベースとして記録されており、雛形が存在していたのだ。なんて頼もしい!
そして黒部市消費生活センターの担当の方は再び実家を訪れ、母親と一緒にPCから返金メールを送信しようとした。ところが、
「メールが送信できません」とエラーメッセージが表示されるのだ!
PCのメール機能は正月に帰省した時に私がチェックしていたので問題は無い。これは詐欺会社がPCのネットワーク系のドライバを破壊した可能性が有る。これでは返金メールが送信できない。
返金メールは契約に使用したメールアドレスから出ないと受け付けて貰えない。このままでは返金が不可能になってしまうと私に連絡が有った。
しかしあきらめる必要は無い。その連絡を受けた私は、私のPCから母親のメールアドレスで利用できるWebメールにアクセスして返金メールを送ると回答した。
そしてWebメールで詐欺会社「Premium Techie Support」の代理店「Fast Spring」の2つのメールアドレスに返金メールを送り付けてやった。
以下がそのアドレスと雛形である。同じ会社に騙された人はご活用ください。
アドレス:
mailer@fastspring.com、orders@fastspring.com
雛形:
Dear Customer Support,
I am <名前> who purchased your product, however, I would
like to request for a cancellation of my license and a full refund.
Could you tell me what I should do for a next procedure?
Finally, I let you know the following information that will help you to find
me on your database;– Email address used to sign up with you
<詐欺サイトに記載したメールアドレス>
– Order number was noticed by you
<契約メールに記載された契約番号>I look forward to hearing from you soon. Thank you in advance.
そうしてその翌日、1月25日(金)。無事に「返金が完了した」とのメールが送付されてきた。
だがここで気になる点が。返金額が「42,632円」になっていたのだ。契約メールの記載は「39,474円」だったのだが、これは消費税無しの価格だ。どこにも税込み価格は書いていなかった。
もし最初から税込み価格が「42,632円」とわかっていたならば、支払い停止の抗弁で交渉できたのに。どこまでも卑怯な連中よ。
詐欺に遭わないのが一番だけど、遭ってしまったら消費生活センター(188)に相談
このようにサポート詐欺は
「パニックを誘発させてカード番号を入力させる」
「支払額を4万円以下と思わせて、支払い停止の抗弁もさせない」
「契約メールは英語で書かれており、普通の人には返金方法はわからない」
「返金方法がわかってメールしようとしても、送信できない様にPCを破壊している」
と「建前上は正当な取引」を装いながら、巧妙に返金を阻止する仕組みを用意している。この私もかなり苦労させられた。
しかし、越境消費者センター(CCJ)はこういう海外の悪質な詐欺会社との対応方法もデータとして記録しているので助かった。ありがとうCCJ。
という訳で、もしあなたやその家族がサポート詐欺に遭ってしまった場合の解決方法をまとめるとこうだ!
・まずはカード会社に連絡してカード番号を変更
・消費生活センターに相談。消費者ホットライン「188(いやや)」に電話
・もしくは直接、越境消費者センター(CCJ)に相談しても良い。ただし相談は原則メールなのでPCが破壊されていたらできない
・契約メール(英語)を読めなかったら消費生活センターの方にお任せして、返金メールを作成してもらう
・メールが送信できなかったら他の人にWebメールで送信を依頼しよう
・PCが色々破壊されているのでクリーンインストールして完了
そしてそもそもサポート詐欺に遭わない方法だが、これはなかなか難しい。
一番は「怪しい電話番号には絶対に電話しない」事である。振り込め詐欺と同じで、知らない電話番号は基本的に詐欺と思ったら確実だ。
もしPCが使えなくて困るとパニックになっても、まずは家族などPCに詳しい人に電話しよう。
私も今回の一番の後悔は、1月20日に母親が詐欺に遭った時にすぐに電話に出ていればという事だ。実家から遠く離れて暮らしていると、どうしても助けに入るのが遅れてしまう。
普段から遠く離れた家族にちょくちょく連絡する。照れくさいとかいつでも電話出来るからいいやとか思いがちだけど、振り込め詐欺を含めて最大の詐欺対策だと確信させられました。
そして詐欺会社よ。貴様に贈る言葉はこれだけだ。
てめーの敗因は…たったひとつだぜ…
たったひとつのシンプルな答えだ………
『てめーはおれを怒らせた』
参照:電話をかけると引っかかるサポート詐欺とは?、支払い停止の抗弁権 – Wikipedia、錯誤による無効、全国の消費生活センター等_国民生活センター、黒部市消費生活センター、越境消費者センター(CCJ) – 国民生活センター