10連休も終わろうかとする5月5日。子どもの日に合わせたのか、ある少年ユーチューバーがYahoo!トップで紹介され爆発的に注目された。
「不登校は不幸じゃない」10歳のユーチューバー 沖縄から世界に発信「ハイサイまいど!」
「死ぬな。苦しむな。学校なんて行かなくてもいい」というメッセージは多様性を肯定する今の時代の価値観にも合っている様に見える。が、肝心の本人が不登校になった理由が「宿題が嫌」というショボいものなので説得力が無いなとしか。
ネットでは「教育を受けさせる義務に違反」「親のロボットになっている」「ユーチューブの利用規約は13歳以上だからアウト」と非難轟々である。肝心の動画も低評価が圧倒的だ。
とはいえ、これは確信犯の炎上行為だ。イ○ハヤ、はあ○ゅう、○ときたと散々に大人が見せつけて来た醜悪な行為だ。子どもに真似させる親、自ら真似する子どもが出て来ても不思議では無い。
あの子は可哀想だとは思うが、他人の子どもだ。親がやらせている以上、私がどうこう言える立場でも無い。そう思っていた。
だがふと気づいた。これは児童労働を禁止した国際条約違反では。端的に言えば、虐待だ。ならば法治国家の日本で虐待されている子どもを見過ごす訳には行かないのでは。
児童労働は3つの国際条約で世界的に禁止。日本も批准している
世界の子どもを児童労働から守るNGO ACEのサイトに酔えると、児童労働とは「子どもが働く事」とイコールでは無い。確かにそうだったらかつての安達祐実ちゃんとか芦田愛菜ちゃんとかもアウトだからね。
定義は幾つかあるが、今回の事例に近いのは
教育を受けることを妨げる労働
・14歳までは教育を受けることが子どもの権利として認められているため(義務教育)、15歳未満の子どもが教育を受けずに働いている場合はすべて児童労働にあたります。
子どもを搾取する労働
・報酬や待遇が労働に見合っておらず、不当な扱いを受ける場合、これを搾取と言います。賃金が著しく低かったり、賃金ももらえず強制的に働かされたり、おとなの労働の世界でも見られることですが、子どもはおとなより社会的地位が低く、発言力もないため、おとなの言いなりに働かされ、暴力や虐待など、不当な扱いを特に受けやすい立場にあります。
の2つだろう。
今回の不登校ユーチューバーが該当する可能性は極めて高いと感じる。
そして児童労働は、親や子ども本人の意思でやっているなら大丈夫というものでは無い。日本も加盟している3つの国際条約で禁止されている。つまり、日本国内で法的に禁止されている行為なのだ。
・若年者の健康、安全、道徳を損なうおそれのある就業については、最低年齢は18歳に引き上げられる。軽易労働については、一定の条件の下に、13歳以上15歳未満の者の就業を認めることができる。
最悪の形態の児童労働条約(ILO第182号・2001年批准)
・18歳未満の児童による最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保するための即時の効果的な措置を求める
・すべての子どもの命が守られ、もって生まれた能力を十分に伸ばして成長できるよう、医療、教育、生活への支援などを受けることが保障されます。
・子どもに関することが行われる時は、「その子どもにとって最もよいこと」を第一に考えます。
10歳の子どもに教育を受けさせず、ユーチューバーや講演をさせるのは児童労働
これらの3つの条約により、日本では児童労働が禁止されている。では、10歳の不登校ユーチューバーは児童労働に該当するかを考えたい(無論、親は違うと反論するだろうが)。
まず、「ユーチューバーは好きな事をやっているだけ。労働では無い」との反論はあっさり却下だ。ユーチューバーという職業が存在してしっかり生活している以上、ユーチューバーとして活動して収益が発生すればそれは労働だ。
さらに、5月25日には親子で講演をするとも発表している。これは完全に労働だね。
そして私が不登校ユーチューバーが「合法的に子どもが働く事」ではなく、児童労働と考える根拠だ。まず「教育を受けることを妨げる労働」に違反しているからだ。
「15歳未満の子どもが教育を受けずに働いている場合はすべて児童労働に該当する」
この定義によると、親が不登校を黙認(それどころか推奨)してユーチューバーという労働をさせるのは完全に児童労働でありアウトだ。
無論、いじめなど学校に行く事が出来ない事情は考慮すべきだ。今回の「宿題したく無い」は恐ろしくショボいが、そこは無視する。問題なのは、たとえ在宅でも義務教育に相当する教育の機会を親がこの子に与えているようにとても見えない事だ。
そして次の理由が親による搾取だからだ。
不登校ユーチューバーは毎日のように動画をアップし、ツイッターを更新し、なんとラジオのレギュラーまで持っている。さらにはテレビにも出演し、親子で講演し、働き詰めである。
これが本当にこの子の意思で選択した仕事の量なのか。親が子どもに仕事を押し付けているようにしか見えない。
特に発端になったユーチューバーは大問題だ。ユーチューブの利用規約では利用年齢は13歳以上になっている。はっきりしてるのは親が取得したGoogleアカウントで活動している事だ。
(そうなると、なりすましとか13歳未満の利用とか、そもそも規約違反でアウトなのだが)
親がアカウントを開設し、それでユーチューバー活動をさせて収益を上げているのは搾取の定義「大人の言いなりに働かされ、虐待(教育ネグレクト)を受けている」に該当する可能性が高い。
ちなみにツイッターも利用年齢は13歳以上なので全く同じでアウトである。
このように、10歳の不登校ユーチューバー活動は「15歳未満の子どもが教育を受けずに働いている」児童労働であり、「大人の言いなりに働かされ、虐待(教育ネグレクト)を受けている」搾取であり、法律違反の可能性が高いと感じる。
問題は学校に行くかどうかでは無い。ユーチューバーの方だ
不登校ユーチューバーの親や支援者は「学校は古い制度」「宿題は無意味」「多様な価値観を認めるべき」「お前に迷惑掛けてない」と問題を「不登校」の是非に絞ろうとしている。
無論、不登校だけでも憲法に定められた「教育を受けさせる義務」に違反しているので問題なんだけど、義務教育の不登校者は数え切れないくらい多数に上る。義務教育と学校というシステムの是非は分けて考えるべきだろう。
だから、不登校を否定しても親の思う壺だ。
問題は不登校ではなく「ユーチューバー」の方なのだ。
私はこの子が不登校であっても、何らかの形で教育を受けているのならば何も言えないと思っている。しかし親が強制する労働に時間を取られすぎて、教育を受ける機会を放棄させられているならばそれは大問題だ。
日本国内で法的に禁止された児童労働であり、要するに虐待だ。他人の子どもでも関係無い。今すぐに第3者の手によって救わなければいけない。
10歳の不登校ユーチューバーが児童労働に該当するのか、労働で教育を受ける機会を失っていないか。これからのこの子を巡る議論は不登校では無く、児童労働について行わなければいけないと思う。
参照:少年革命家ゆたぼんチャンネル、少年革命家ゆたぼん@5.25親子講演会@yutabon_lucky、「不登校は不幸じゃない」10歳のユーチューバー 沖縄から世界に発信「ハイサイまいど!」、児童労働入門講座 | 世界の子どもを児童労働から守るNGO ACE、児童労働 – Wikipedia