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任天堂 VS コロプラ特許訴訟。最大の謎!なぜコロプラは特許無効審判をしないのか?

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出典:写真AC(特許庁)

第6回戦までの任天堂とコロプラの特許訴訟を振り返って、コロプラの反論に不自然だった事が2つ有った。その1つが第4回戦から急に人が変わったように後出し無効化資料を出して来た事である。これは本当に人が代わっていた。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟。コロプラの弁護士交代は流れを変えたのか?

そして2つ目。これが最大の謎であるのだが、

「コロプラは大量の無効資料を出しておきながら、特許無効審判を起こしていないのだ」

この任天堂とコロプラの特許訴訟の記事は知り合いの弁理士さんも読んでくれているのだが、やはり「なぜ無効審判を起こさないのか理解できない」と不思議がっている。

コロプラが無効審判を起こさない理由について推測してみたい。

無効審判は誰でも起こせる。特許無効を勝ち取れば、当然特許侵害も消滅する

特許無効審判とは、特許庁に対して「あの特許は〇〇の理由で無効だから登録を取り消して欲しい」と訴える事だ。

無効になる理由は様々あるが、基本的にはコロプラが特許訴訟で主張しているように「この特許は××と同じ技術であり、特許登録は無効だ」と過去に似た技術があるからだ。

この無効審判は誰でも起こす事ができる。特許を無くして欲しい人が無効審判を起こし、無効資料を提示して新規性・進歩性が無いとして特許登録を無かった事にしようとする。

もちろん任天堂の特許が有っては困るコロプラは起こす事ができる。さらに今回の特許訴訟で「こんなのに特許が与えられる事がおかしい」「任天堂はゲーム業界の発展を妨げるクソ」とわめいていたニュースピッカーが自ら起こす事だってできる。

無効審判は通常の特許訴訟のように三審制で行われる。ただし1審に相当するのが特許庁への無効審判であり、地裁はスルーする。特許庁での審決が不服で有った場合には、訴えを起こした人、起こされた特許権利者、またその両方が知財高裁に審決取消訴訟を提起する事ができる。

そのため訴訟としては2審からスタートし、知財高裁の判決に不服であれば最高裁に上告ができる。

そしてこの無効審判・審決取消訴訟は特許訴訟と同時並行で行う事ができる。

「あなたの製品は私の特許を侵害している」と特許訴訟を起こされた場合、相手の特許が無効と思うならば特許訴訟で無効を主張すると同時に無効審判を起こして特許を無かった事にするのがセオリーである。

そしてこの無効審判の経過はおなじみの特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)で見る事ができるのだが、任天堂の特許6件にはいずれも記録されていない。

本件特許権1 特許3734820号 「タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)」

本件特許権2 特許4262217号 「タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃(チャージ攻撃)」

本件特許権3 特許4010533号 「スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)」

本件特許権4 特許5595991号 「ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う(相互フォロー)」

本件特許権5 特許3637031号 「障害物でプレイキャラクターが隠されてもシルエットで表示する(シルエット表示)」

本件特許権6 特許第6271692号 「一方的に相手ゲーム機をフォローできる(フォロー登録)」

カプコンに特許侵害で訴えられたコーエーは特許無効審判を活用した

実際に特許侵害訴訟を起こされたので無効審判を起こしても対抗した事例がある。それがカプコンとコーエーの特許侵害訴訟である。

カプコンとコーエーの特許侵害訴訟。地裁ではコーエーが勝ったけど、大逆転が有るかも

過去記事に書いているのだが、コーエーの「三国無双」「戦国無双」など「無双」シリーズとホラーゲーム「零」シリーズが自社の特許を侵害しているとしてカプコンが特許訴訟を起こした。

この訴訟では訴えられたコーエーは「侵害していない」との反論はあまり行わず、「カプコンの特許は過去のファミコンソフトと同じで無効である」と主張した。そして同時に特許庁に無効審判を起こし、カプコンの特許を無かった事にしようとした。

この無効審判は、

カプコンの特許 特許3350773号

のリンク先にある経過情報から、コーエーが2015年4月17日に「全部無効(新々無効)」(審判番号2015-800110)を訴えている記録が見れる。なお「全部無効」とは特許に記載されている請求項が全て無効だとの訴えである。「新々無効」は調べたんだけどわかりません、誰か知ってる人いたら教えてください。

このように「特許が無効だ」と裁判で主張していたコーエーはセオリー通りに無効審判も起こした。

さらに無効審判は特許訴訟よりも(ほぼ)早く審決が出るのでスピードアップにも繋がる。「無双シリーズが発売されなくなったらどうしよう」と不安がっているユーザーや株主にも誠意ある対応だ。

ただ、この無効審判はコーエーにとって不利な結果に終わった。

コーエーが無効審判を起こした2015年4月17日からおよそ2年後、2017年3月24日に特許庁は「カプコンの特許を維持する」とのコーエー敗北の審決を下した。納得できないコーエーは知財高裁に審決取消訴訟を起こすのだが、1年後の2018年3月29日に却下されている。そして最高裁に上告したのだが、つい最近の2019年3月7日に上告棄却されている。

最高裁まで争った結果、カプコンの特許の維持が確定したのだ。

だが皮肉な事に、知財高裁に却下される少し前の2017年12月14日に大阪地裁で争われていた特許訴訟で「特許は無効だからコーエーの(実質)勝訴」という判決が下っていたのだ。

コーエーにとっては完全なぬか喜びである。知財高裁・最高裁でカプコン勝利の判決が出た以上、カプコンが控訴すれば特許訴訟でも敗訴するだろう。

だがコーエーは悔いる事は無い。特許訴訟も無効審判もいずれは知財高裁で争う事になるので、結局は同じ結論になる。その結論を早めに出そうと動いた事はユーザーや株主へ説明責任を果たそうとする誠意であり、評価されるべきだ。

だからコロプラが無効審判を起こさないのは時間を稼ぐため

無効審判は(ほぼ)特許訴訟よりも早く結論が出るので、コロプラが本気で「任天堂の特許は無効だから侵害してない」と思ってるならば無効審判にはメリットしかない。コーエーは失敗したが、その無効審判で任天堂の特許を無かった事にできれば特許侵害の事実も無くなり、堂々と白猫プロジェクトを配信できる。

ユーザーも株主も安心し、株価は大幅にUPするだろう。

なので無効審判を起こさないのは「早く結論を出したくないから」としか思えない。

コロプラが「実は任天堂の特許を侵害している。でも賠償金を払うのも白猫プロジェクトが配信停止になるのも嫌だからできるだけ先延ばしにしたい」と思っているならば、無効審判で早々に「任天堂の特許は有効」と審決を出されると困る。

ユーザーは離れるし株主も失望して株価は下がる。それが嫌だから無効審判をしていないのでは。

だがユーザーや株主にとって本当に不誠実な態度である。

黙ってぷにコンやシルエット表示の仕様変更をしていたのもそうであるが、私はずっとこの不誠実な態度を批判している。任天堂の特許は素晴らしく強いので、気づかずに侵害していたとしても仕方ない。特許侵害を完全に避けられている企業なんてそう存在しない。

でも侵害していたとしてもそれを誤魔化しているのならば、それは特許法を始め、日本の知的財産制度に対する侮辱でもある。

ユーザーも株主も知的財産もコロプラの敵ではない、味方だ。だが不誠実な態度をとり続けるのならば容赦はしない。コロプラは今一度真摯に向き合って欲しい。

参照:任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第4回戦。コロプラの切り札(?)として『信長の野望』が出陣任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。ソリティア!?止まらないコロプラの後出し無効資料の嵐任天堂 VS コロプラ特許訴訟。コロプラの弁護士交代は流れを変えたのか?特許庁(無効審判について)特許無効審判~他者特許侵害への対応



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author : 宮寺達也



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