特許

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第6回戦。またユーザに内緒で白猫の仕様が変わってた

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出典:「白猫プロジェクト」公式サイト

前回の記事を書いたのが昨年の12月8日。それから実に4ヶ月以上。。。

任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃

任天堂とコロプラの特許訴訟の情報を待っていた皆さん、本当にお待たせいたしました。

2月25日(水)午前11時30分、東京地裁で任天堂とコロプラの「白猫プロジェクト」特許侵害訴訟の第6回審理が行われた。私は「またまたまたまたまた非公開なんだろうな」と思いながら東京地裁に着いた。当然、第5回弁論準備手続であり非公開であった(もう本当に学習しろよ・・・)。

そしていつもの通りにその翌々日以降、2月28日か3月1日にでも裁判資料を閲覧しに行こうと思ってた。ところがなんとこの私自身が訴えられるという情報をキャッチ!

楽しみにしてもらっている皆さんには申し訳無いと思いながらも、自分の訴訟の事を考えて情報発信を制限せざるを得なくなってしまった。忸怩たる思いを抱えながら2ヶ月、ようやく一段落して裁判資料を閲覧し、任天堂とコロプラの特許訴訟の最新情報を発信できるように。感無量ですよ、本当。

さて、改めて前回の第5回戦を振り返る。任天堂の反論のターン。そこでは「ぷにコン」の仕様がユーザに内緒で変わってた事が判明した上、コロプラが

「キャラクタの移動操作はユーザの慣れという観点でも安易に変更できない。仮に変更したら変更はアップデート情報として周知徹底すべき」

と準備書面で主張していたのを逆手に取り特大ブーメランを食らわせていた。しかしコロプラの無効資料が効いて任天堂も特許を修正せざるを得ないという熱い展開であった。

そして第6回戦はコロプラの反論のターンである。

しかしそこで明らかになったのはまたユーザに内緒での仕様変更である。ぷにコン以外にもシルエット表示の仕様が変わっていたのだ。

ユーザに内緒で仕様変更したのは「特殊な事情」のため?

第5回弁論準備手続の注目はやはり前回の超特大ブーメラン、

コロプラ 「特許1は『信長の野望Online』の動作と同じだから無効。はい、証拠ビデオ」

任天堂 「日付が2016年8月3日じゃねーか」

コロプラ 「問題無い。キャラクタの移動操作はユーザがオンラインゲームを楽しむために不可欠かつ基本的なもの。ユーザの慣れという観点でも安易に変更できない。仮に変更されてならアップデート情報として周知徹底される」

任天堂 「あんた、ユーザに黙って『ぷにコン』の仕様変更したじゃねーか」

にいかに回答するかである。まあ要するにぷにコンの仕様変更を黙っていたのをどう言い訳するのか。

答えは早速確認できた。

被告第9準備書面(本件特許権1関連) 平成31年2月19日

「しかしながら、被告アプリにおいては、原告から訴訟を提起されたという特殊な事情のもと、キャラクタの移動制御に関する仕様変更をアップデート情報として表示していないにすぎない」

なるほど。訴えられたから訴訟に不利にならないように黙っていたと。わかるわかる、私も訴えられたのでよくわかる。訴訟に不利になるかもしれないので、どんな発言でも慎重にならざるを得ないよね。

って、んな訳ねーだろ!

訴訟のためならばむしろ逆で、特許1に抵触しないように仕様変更したんだからむしろ大々的にアピールしなければならない情報だ。実際、グリーに訴えられたSupercellは「クラッシュ・ロワイヤル」の仕様変更を特急でプレスリリースした。

ぷにコンの仕様変更を気付いていたというユーザの声も無かったので、使用感に大きな差が無い変更なのでバレないと思っていたのではないか。

しかし不可解である。勝訴の可能性がUPする重大な仕様変更なのだから、最初から発表すれば良かったのだ。「任天堂の最強法務部に訴えられた」との情報でどれだけ株価が下がった事か。これは株主に対する背任行為に当たる可能性すら感じる。

そして弁護士もなぜ最初から主張しなかったのか本当に不思議である。やっぱり思いつくのはを時間稼ぎの訴訟戦略くらいしかない。

コロプラはシルエット表示の仕様もユーザに黙って変更していた

コロプラは今回、特許5「シルエット表示」への反論でまたしても仕様変更を後出ししてきた。

被告第13準備書面(本件特許権5関連) 平成31年2月19日

仕様変更を行った結果、被告アプリが特許5の技術的範囲に属さない事がより一層明らかになった。

仕様変更は2019年1月16日 Ver.1.188

<仕様変更後の動作>

地形オブジェクトをZ値を更新して描画し、次にキャラクタ画像をZ値を更新しながら描画し、次にシルエット画像をZ値を更新しないで描画する。

しかしZ値を更新しないと常にシルエット画像が表示されるため、ステンシルバッファという技法を用い、地形オブジェクトに隠れていないキャラクタ画像部分にステンシル情報を書き込み、キャラクタの内ステンシル情報が書き込まれていない部分だけにシルエット画像が表示されるようにする。

こうする事でキャラクタ画像の内、地形オブジェクトに隠れている部分および、キャラクタのやや外周部分にだけシルエット画像が描画される。

このようにこれまた裁判が始まってから仕様変更をしているのだ。ただしこの仕様変更はユーザには極めて気付かないレベルの違いだろう。表面的な動作としてはシルエット画像が輪郭の分、気持ち大きくなるだけのはずである。とはいえ、やはり特許訴訟の勝率をUPする重大な情報だ。プレスリリースするのが当然だと思う。

そして、この仕様変更にはそもそもな疑問が残っている。任天堂の特許のクレームは

「前記Zバッファの奥行情報を書換えず、前記プレイヤキャラクタを第1目印画像によって前記フレームバッファ内に描画する第1目印画像描画手段」

とシルエット画像のZ値についてはそもそも触れていない。白猫プロジェクトはとにかくシルエット画像がキャラクタ画像に被さっていたら侵害になる。そのため、この仕様変更後の動作でも特許侵害になる。これはどういう理屈か?

コロプラの弁護士の主張は「包袋禁反言の法理」

コロプラは仕様変更によって

白猫プロジェクトは地形オブジェクトがキャラクタよりも仮想カメラ側に無い場合にはシルエット画像を表示しない動作になる。

しかし特許5は地形オブジェクトがキャラクタよりも仮想カメラ側に有る事を「条件」としてシルエット画像を表示する場合を含まない。

よって白猫プロジェクトは特許5を侵害していない。

と説明している。

「いやいや、特許5に『プレイヤキャラクタが地形オブジェクトよりも前記仮想カメラ側にあるときはプレイヤキャラクタを描画する』って書いてますやん、一緒ですやん」と思ったのだが。これを説明するのが「包袋禁反言の法理」である。

読んでいる人の99%が馴染みの無い言葉であろう。私も実例を見たのは実は初めてである。

包袋禁反言の法理とは、特許侵害を提訴された製品がその特許の拒絶理由で特許庁が引用した技術と同じであれば特許権侵害は成立しないというルールである。

特許は拒絶理由への対応で「このように対応しましたので、引用技術とは違う技術です」と主張して認められた。だから、特許侵害を主張した製品が引用技術と同じあれば、当然に特許と製品は違うものになる。これが包袋禁反言の法理である。

コロプラは、特許5は出願の過程で「地形オブジェクトがキャラクタよりも仮想カメラ側に有る事を条件としてシルエット画像を表示する」という請求範囲を失っている、だから白猫プロジェクトは包袋禁反言の法理により特許5を侵害していないと主張している。

で、これを踏まえて特許5の出願経過を振り返って見る。

出願時の特許5

【請求項4】前記地形オブジェクトは少なくとも前記ゲーム空間に建物や壁を表示するための建物オブジェクトを含み、前記第1目印画像描画手段は、前記プレイヤキャラクタが前記建物オブジェクトに隠れるとき、前記ゲーム画像における前記建物オブジェクトの画像上に第1目印画像を描画する、請求項1ないし3のいずれかに記載のゲーム装置。

拒絶通知

請求項4は、プレイヤキャラクタが建物オブジェクトに隠れるときのみ、ゲーム画像における建物オブジェクトの画像上に第1目印画像を描画するものであるのか、プレイヤキャラクタが建物オブジェクトに隠れるときにも、ゲーム画像における建物オブジェクトの画像上に第1目印画像を描画するものであるのか不明確である。

なお、前者であるならば、請求項1-3記載の事項と矛盾するものとなる。

意見書・手続補正書(このように対応しますので特許にしてくださいといレター)

現請求項2は、旧請求項4と同じでありますが、審査官殿のご指摘に従って、「前記プレイヤキャラクタが前記建物オブジェクトに隠れるとき、」という記述を削除しました。

弁護士とタッグを組んでの仕様変更は効果的か。だがなんか色々グッダグダ

なるほど。確かにコロプラが主張するように「建物オブジェクトに隠れるとき」という条件が削除されている。この条件が拒絶対応の時点で失われているならばコロプラの主張も通る可能性が有る。

そもそも任天堂が特許侵害と主張している今の特許5・請求項1は「拒絶通知の時点で、拒絶理由が発見されなかった旧請求項2を請求項1にしたもの」である。厳密には「地形オブジェクト」と書くところを単なる「オブジェクト」と書いてしまったのを修正してはいるけど、実質的に同じものである。

そして旧請求項4は「隠れるときのみ」か「隠れるときにも」のどちらかわからないから削除したのである。その中で「隠れるときのみ」ならば旧請求項2(今の請求項1)と矛盾すると指摘されたのだから、論理的には今の請求項1は「隠れるときにも」シルエット画像を描画する請求項となる。

よって、「隠れるときのみ」シルエット画像を表示する今の白猫プロジェクトは特許5を侵害していない。

とはいえ、この仕様変更は実質的に提訴される前の白猫プロジェクトは特許5を侵害していたと認めたようなものである。「特許侵害の事実は一切ありません」と強弁していたコロプラが考えたものでは無く、恐らく弁護士に勧められて対応したのではないか。

だけど知財的な観点からすればテクニカルな仕様変更だ、大変勉強になる。ユーザや株主に黙ってたのはやっぱり駄目だと思うけど、これで少なくとも配信停止になる可能性は下がった。個人的にも6個の特許の中で最も特許侵害が認定される可能性が高いのがこの特許5だと思っていた。この仕様変更は個人的に評価したい。

ただ、どうしてもオチが付いてしまうのが悲しい。

コロプラの弁護士は2月19日に東京地裁に提出した準備書面で「仕様変更は2019年1月16日 Ver.1.188」と記載している。しかしそのわずか6日後に行われた第5回弁論準備手続で「実は仕様変更は2018年10月29日のVer.1.179でした」と訂正を申し出ているのだ。

こんな大事な情報を間違えるってぶっちゃけありえない。一体コロプラは弁護士とどんな連携をしているのだろう。知財を扱う人間として、コロプラの弁護団には酷く同情してしまう。

とはいえ、訴訟が始まってからもう1年以上。まだ結論は出そうに無い。だが、白猫プロジェクトは訴訟前にはある程度の特許侵害していたものの配信停止は避けられそうという結論がうっすらと見えて来た予感がする。

さて、第5回弁論準備手続ではまだまだコロプラの新しい主張が有る。これはまた次回に書きたい。

Next PatentMaster Blog Coming Ssoon・・・

参照:任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第4回戦。コロプラの切り札(?)として『信長の野望』が出陣任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。ユーザに内緒で『ぷにコン』の仕様が変わっていた!任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第5回戦。後出し無効資料でコロプラが会心の一撃コロプラ・お客様への感謝とお知らせ



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author : 宮寺達也



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