どうもパテントマスターです。
2018年の年末にはブログ更新しようと頑張ったのですが、結果的にはURLだけ採番して空っぽの記事を量産し「ブログ借金」を増やしただけでした・・・
年が明けて2019年もありがたい事に本業が忙しくさっぱりでしたが、2月25日には任天堂・コロプラ裁判の第6回戦もあった事ですし、また皆様に記事をお届けするべく頑張ります。
さて、そんなパテントマスターが最近気になった知財ニュースがこちら。
「Webサービスをスクショで紹介したら50万円請求された」―― 物議を醸した「強い女メーカー」問題の争点は
詳細は上の記事を読んで欲しいが、「強い女メーカー」というWebサービスを個人ブログで紹介しようとスクショ画像を貼ったら、作者から「商用利用は禁止している。規約違反だ。50万円払え」と訴えられたという話である。
この事件は様々に議論されているが、みんな共通してるのは「そもそも訴えるよう話なのか?作者はやり過ぎじゃ」との空気である。
確かにわざわざ訴えるような話とは思えない。作者は何を思って訴えたのか、訴えは正当なのか、パテントマスターとして推理・解説してみたい。
強い女メーカーのスクショ画像の問題は引用か否か。それだけ
強い女メーカー事件の論点は大きくまとめると3つだ。
・スクショ画像は引用の範囲では?
・個人ブログは商用利用なのか?
・賠償額50万円は高過ぎるのでは?
特に「アドセンスやアフィリエイトを貼っただけの個人ブログが商用利用とはおかしい」という議論が盛り上がっている。私のブログもGoogleアドセンスとAmazonアフィリエイトを貼っているので他人事では無い。
しかし「商用利用か否か」「賠償金の額」は極めてどうでも良い。私を始め知財をかじった人の論点は1つしかない。「引用か否か」である。
そもそも引用を超えた無断転載は商用利用であろうが無かろうがダメに決まっている。
例えば私のブログを全文コピペして有料メルマガなどで収益を上げられたら当然激おこだが、それは無料のツイッターやフェイスブックでも同じだ。全文コピペのような引用を超えた無断転載は著作権法違反であり、著作者である私の権利を侵害しているからだ。
しかし「引用」の範囲であれば商用利用であろうが無料であろうが、個人サイトだろうがネットニュースだろうが、私に事前連絡があろうが無かろうが、私には何も言う権利が無い。
引用は著作権法32条に定められた国民の権利であり、著作者の許可(許諾)は不要だから。
引用に全く言及しない強い女メーカーの作者(@agt87_)と弁護士
発端となったブログは、
強い女メーカーをスクショで紹介したら @agt87_ さんから損害賠償50万円で訴えられた話。 – yowai-otokoのブログ(今は削除)
と「訴えられた事を書いた」記事である。どんなブログだったか明記されておらず内容はわからない。
そこで、強い女メーカーの作者(twitterアカウント:@agt87_)と弁護士が発表した内容から事件を追っていこう。
まず、弁護士が発表した見解だ。
まず、
著作権侵害を理由に、法的な請求を各所に対して行っております
と書いているように、実際に多くの個人ブログを訴えているようだ。多数の「強い女メーカー」を紹介した記事が削除され、現在は見れなくなっていることが判明している。そして、
商用利用というのは、著作物や二次創作物自体を販売する場合の他、著作物や二次創作物を、アフィリエイト・広告収入等で経済的利益を得ることができる、ブログ・ウェブサイト等で利用することを含みます
と個人ブログも商業利用と強調している。商用利用の定義についても正直異論はあるが、問題はそこでは無い。どこにも「何が著作権侵害なのか?」「引用の基準」について全く書かれていない。
なお作者の考えを知ろうにも、ツイッターで「専門家(弁護士)に委ねる」とだけ書いており、やはりわからない。
だが、この事件の要は商業利用かどうかでは無い。引用か否かである。
削除されたブログがそもそも引用の範囲を守った記事であれば、個人ブログが商用利用かどうかなんて関わらず作者に訴える権利は無いのだから。
※2/28 20:14 追記・修正
私が作者のサブ垢と推測した「旭鉄子(@19ashttk91)」氏ですが、ご友人から「作者とは別人である」との連絡をいただきました。
私もサブ垢とは書いたものの「作者(@agt87_)、もしくは深い事情を知っている極めて近い人」と同一人物と断定していた訳ではありませんが、ブログ全体を通じてそう認識されるような表現でした。ご友人の連絡を信じ、旭鉄子(@19ashttk91)氏と作者(@agt87_)は全くの別人であるとはっきりわかるように記事を追記・修正いたします。
旭鉄子(@19ashttk91)氏と作者(@agt87_)のご両名について、表現が至らなかった箇所は謝罪させていただきます。申し訳ございませんでした。
作者(@agt87_)と友人(@19ashttk91)が最新投稿で引用に言及
もちろん私のような指摘は既に山のようにある。そこで2月24日になってようやく作者(@agt87_)が引用について言及した。
何も言わないよ!!と言っておいて早速言ってるじゃねえか感あるけどこれだけ〜!!!🙇♀️
本件は「引用」の条件に満たないと私が判断した物について弁護士に相談しました。
ただ、引用にあたるかどうかはあくまで調べたとはいえ素人判断ですのでそれも含めて弁護士に委ねた次第です🙇♀️— 🎄🌮🎄 (@agt87_) 2019年2月25日
・・・引用については「私が判断した」?
・・・引用にあたるかどうかは「素人判断」?
不穏な言葉が並んでいるが、ここでパテントマスターが引用の条件について解説しよう。引用と認められるには著作権法に規定の条件を満たす必要がある。主には、
・報道、批評、研究など、正当な目的である事(判例で紹介はOK)
・引用部分とそれ以外の部分の主従関係が明確である事
・引用部分が明確である事
・出典を明示する事
と言った所だ。例えば、引用部分がどこかわからないように書かれており、まるで自分が創作したかのように見えたらダメである。また、本文丸々コピーして最後に「あなたはどう思いますか?」と付け加えるような手抜き記事だと、引用部分が「主」になるのでダメである。
しかし出典を明示し、その引用部分を明確にし、それに対して適切な批評・紹介のコメントを行なっているものは引用の範囲であり合法である。
そしてこの引用の条件には著作者の許可は必要無い。引用の範囲であれば、他人の著作物を勝手にコピペしてOKである。
なお、過去には「脱ゴーマニズム宣言」という著書が「ゴーマニズム宣言」の画像を大量に無断転載したと裁判になったのだが、概ね引用であると認められた。例えコピーした量が多くてもそれで直ぐに無断転載とはならない。
しかし、作者(@agt87_)は「引用の条件を満たさないと判断したから訴えた」と言っているのに、その判断基準は一切明らかにならない。本当に引用を超えていたのか?正当な引用も訴えていたのではないか?
それに対する答えに大きなヒントを与えてくれたのが作者のサブ垢友人旭鉄子(@19ashttk91)氏である。
作者の友人(@19ashttk91)が「引用には許可が必要」と爆弾発言
作者(@agt87_)のツイッターアカウントを見ると、旭鉄子(@19ashttk91)というアカウントが批判リプ全部に粘着して反論コメントを返している。
そして反論された多くの人が「本人乙」と返している。もっとも旭鉄子(@19ashttk91)氏は「全くの別人です」と反論している。私もてっきり作者のサブ垢と思ったが、ご友人の連絡によると本当に違うようである。
ただ問題はその擁護内容である。騒動の当初から作者の状況をつぶさに観察していると思われる旭鉄子(@19ashttk91)氏のリプライから、決定的とも思えるツイートが炸裂した!
疑問をもつというのは素敵なことです。私の怒りの発言、お許しください。
引用がどのように有用なのかがわからないので説明願えますか?
それと是非とも口を出さずに見守りに撤っしてほしいです。
著者を責める発言に見えてしまったので、とても心苦しく思います。 pic.twitter.com/TsmZ3QMYSe— 旭鉄子 (@19ashttk91) 2019年2月25日
例のブログはご想像の通り強い女メーカーを「これは面白いぞ!みんなもやろう!」といったような出来上がり画像などの紹介でしたが、引用のルールにあたる許可を得ていなかったためにこういった訴えになっていました。
厳しい言葉から始まりすみません。
ありがとうございました🙇♀️ pic.twitter.com/85YEmZwQkg— 旭鉄子 (@19ashttk91) 2019年2月25日
これは直前の「あなたからも弁護士からも「引用」という言葉が一切出てこないことに疑問を抱いています」という極めて真っ当な質問に対するリプなのだが、とんでもない爆弾発言である。
引用がどのように有用なのかがわからない
例のブログはご想像の通り強い女メーカーを「これは面白いぞ!みんなもやろう!」といったような出来上がり画像などの紹介でした
引用のルールにあたる許可を得ていなかったためにこういった訴えになっていました
先にも書いたが、騒動の発端となった記事は「50万円払えとブログを訴えられた」というものであり、しかも今はその記事すら削除されている。訴えられたブログがどんな内容かは今となっては私たちにはわからないが、旭鉄子(@19ashttk91)氏はわかった上で「問題は引用の許可だった」と証言しているのだ!
ここで問題になるのが「引用のルールにあたる許可」という箇所だ。これも先に書いたように引用には許可は必要無い。
旭鉄子(@19ashttk91)氏が自らツイートに張っている画像からもそれは明らかだ。
図 旭鉄子(@19ashttk91)がツイートに張った引用フロー
だが「引用のルールにあたる許可」という発言と図を照らし合わせると、作者の脳内が見えてくる。それは危険なほどに見えてくる。
「引用のルール・条件を満たすか?」→「ルールの範囲内で利用OK」
というフローに出てくる「ルールの範囲内」という言葉だ。これは当然、著作権法の引用の範囲を示す。だが作者(@agt87_)はこの「ルールの範囲内」を「著作者がルール(商業利用不可)を定められる」と勘違いしていたのでは!
引用には著作者の許可は不要。このままスラップ訴訟をすると逆に訴えられるよ
もちろんこの考えはあくまで私の推理でしかない。しかし、
なるほど、こちらこそ論点をわかってないままの意見すみません。
著作権は難しいですが、そのぶん沢山勉強なされているのですね。私も沢山勉強しようと思います。
貴方のような方がもっと日本に増えますように。
yahoo知恵袋でならベストアンサーに選ぶような意見でした。ありがとうございました!— 旭鉄子 (@19ashttk91) 2019年2月25日
と私の推理を裏付けるかのように、旭鉄子(@19ashttk91)氏は著作権への無知を爆発させている。旭鉄子(@19ashttk91)氏は作者の代弁者かのように発言しているので、この考えは極めて作者のものに近いと思われる。実際、作者のツイートや弁護士の意見書にも引用の基準について一切書かれていない事もそれを裏付けている。
さらには、他のブログからも推察できる。強い女メーカーを紹介している記事の中には、「作者の許可を取りました」と追記し今も存続しているものがある。例えば、
超かわいい理想の顔が作れる「強い女メーカー」の作り方作者は誰?Picrew(ピクルー)とは?
の記事がそれだ。
この記事を読むと確かに画像は多いが、出典の明示・正当な目的(紹介)・主従関係(紹介が主)が成立している。もし私がチェックを頼まれたら「画像に矢印を被せてるのはNG(改変に当たるかも)」とは言うが、まあ引用の範囲とOKを出す。著作者に許可を貰う必要は無い。
作者のツイートからも、他の記事の内容からも、作者が「50万円払え」と訴えた記事は引用の範囲を守った紹介記事である可能性が高い!
作者は「著作権とは著者の作品を守るために働くもの」と書いているが、全くもって理解が足りない。
著作権法は「著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的」としている。著作権者だけでなく、それを利用する人の権利も守る法律だ。
だから引用は立派な利用者の権利である。
もちろん弁護士を雇い、民事訴訟で自分の権利を主張する権利はある。しかし正当な引用に対しても「50万円払え」と脅して回るのは悪質なスラップ訴訟である。
このまま正当な表現に対してもスラップ訴訟の脅迫を続けるならば、それこそが表現の自由への挑戦であり、著作者の権利侵害である。反社会的な行為であり決して許されない。ましてや無知が理由ならばなおさらだ。
そうで無いと言うならば、強い女メーカーの作者(@agt87_)と弁護士は、どのような基準で引用を超えている無断転載と判断したのか、その基準を明らかにされたい。
今、表現者の権利を侵害しているのは画像を引用したサイトではなく、強い女メーカーの作者の方だ。このままでは強迫行為として逆に損害賠償を請求されてもおかしく無いぞ。。。
参照:著作権法 – e-Gov法令検索、引用 – Wikipedia、脱ゴーマニズム宣言事件 – Wikipedia、「強い女メーカー」を紹介してた記事があちこち消えてる件