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任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第3回戦。遅延行為を繰り返すコロプラと怒れる任天堂

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出典:Wikipedia 東京地方裁判所

6月15日(金)午後4時、東京地裁で任天堂とコロプラの「白猫プロジェクト」特許侵害訴訟の第3回審理が行われた。私は「多分、弁論準備手続なので非公開なんだろうな」と思いつつ一応東京地裁に足を運んでみたが、やはり第2回弁論準備手続であり非公開であった。

そのため前回に引き続き傍聴は出来なかったが例によって裁判資料は閲覧できる。前回(第1回弁論準備手続)でコロプラが本格的に主張した内容について、任天堂の反論が出揃っているはずである。

そういえば任天堂とコロプラの特許訴訟が始まってから4ヶ月経った。最初の2月16日が第1回口頭弁論、2回目の4月23日が第1回弁論準備手続きであるので、両者の顔合わせはこれが3回目である。なお、これまでの裁判の取材結果は以下の記事にまとまっているので読んで欲しい。

第1回口頭弁論 「任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません」

第1回弁論準備手続 「任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ」

さて、今回で任天堂とコロプラの主張が一通り出揃う事になる。色々と謎に包まれていた特許侵害訴訟の全容がかなり明らかになるはずだ。そう胸を躍らせながら早速6月18日(月)に裁判資料を閲覧に行ったのだが「まだ無理」と却下されてしまった。。。

さらに6月19日(火)~21日(木)はアパートの配管工事のため自宅を動く事が出来ず、応援しないと決めた日本代表のW杯よりもんもんと気にする日々を過ごしていた。そして工事が終わり、ようやく22日(金)に裁判資料を閲覧する事が出来た!

そして見えてきた裁判の全貌であるが、「遅延行為やタイトな解釈を存分に繰り出して時間を稼ぐコロプラ」と「遅延行為やおかしな解釈に怒りつつ、隙無く反論する任天堂」というなんとも予想通りの構図であった。

遅延行為を繰り返すコロプラに任天堂がまたも抗議

まず任天堂は前回(第1回弁論準備手続き)でも、コロプラの答弁書の記載が「審理遅延を目的としていることは明白である」とコロプラに抗議している。

コロプラは第1回目の答弁書において「色々と質問しますので、回答をいただくまでは正式な反論を行いません」と任天堂に要求し、2ヶ月の時間を稼いだ。しかし2か月後の第2回では詳細な主張を行っていたので私はてっきり「もう時間稼ぎは止めたのかな」と思っていたが違ったようだ。

コロプラは前回(第1回弁論準備手続き)の反論の中にも時間稼ぎを紛れ込ませていた。それは「特許1(特許3734820号)と特許5(特許3637031号)は無効な特許である。そのため、任天堂がこれらの特許が有効であるとの反論をしたら、改めて特許侵害の反論を行う」と書いていたのだ。

この旨、確かに私のメモにも記載して有ったがそこまで深く考えていなかった。こういうラリーが続くものだと。しかし任天堂は「特許が無効かどうか拘わらず、侵害しているか否かの反論ができるはずだ」と第2回の原告準備書面の開始1ページを丸々割いて抗議している。

任天堂の回答

原告準備書面(2) 平成30年6月8日

原告は、被告から「後記の求釈明事項に対する回答を待って、追って認否反論する。」として多岐にわたる釈明がなされたことを受け、必要な範囲において回答を行った。

それにもかかわらず、被告は被告第1準備書面において「本準備書面において主張した無効の抗弁に対する原告の反論を踏まえて認否を行う。」と主張し、訴状における「被告アプリの構成」を含む原告の一部主張に対する認否を未だに留保している。

しかし、上記主張は認否を留保できる理由となるものではない。すなわち、第1回弁論準備手続期日(平成30年4月23日)において指摘したとおり、被告が認否を未だに留保している「被告アプリの構成」は被告アプリが客観的に備える構成を記したものにすぎず、原告の主張を待たなければ認否できない類のものではなく、また、その具体的構成を把握している被告において、被告が相当と考える対案を示せば足りるからである。

このように被告において未だに認否を留保している理由は審理を遅延させることにあることは明らかである。

ところで、被告は認否のためには釈明に対する原告の回答が必要であると主張しながら、被告第1準備書面においては原告による回答を何ら踏まえることなく反論を展開している。かかる一事からも明らかなとおり、被告による認否の留保は審理遅延を目的としているものにほかならない。

原告は本準備書面において被告第1準備書面における無効の抗弁に対する反論を行っており、被告において認否を留保する理由は失われた以上、訴状における原告主張に対して直ちに認否を行うべきは当然である。

ちょっと長いが、任天堂の反論(原告第2準備書面)の1ページ目を丸々書き写してみた。いかがだろうか、任天堂の怒りが伝わってくるだろう。特許を侵害していると主張している任天堂はもちろん、早く安心して白猫プロジェクトを遊びたい白猫ユーザーのためにもコロプラは審理を加速させて欲しい。

任天堂とコロプラの噛み合わない構成要件充足性の議論

さて、今回の裁判資料のメインは前回コロプラが「特許1から5まで、白猫プロジェクトは全く侵害していません」と主張した内容への任天堂の反論だ。

このコロプラと任天堂が「特許を侵害した、していない」と争う際の論点は大きく2つある。1つ目は「もしも任天堂の特許は無効だったら、侵害も何もない」という『無効の抗弁』である。特許というのは特許庁OKと判断しても、後になってから出願前に似たような発明が見つかれば取り消す事ができる。特許が取り消しになってしまえば、侵害も取り消しになるという事だ。

2つ目は「白猫プロジェクトは任天堂の特許の構成を全て備えているか、否か」という『構成要件充足性の立証』である。特許を侵害したと認められるには、特許に記載されている構成を全て備えている必要がある。

例えば任天堂の特許が「A, B, C, D, E」と5つの部品からできているとする。もしも白猫プロジェクトが「A, B, C, D, E」ならもちろん特許侵害だ。しかし「A, B, C」でできており、「D, E」を含んでいなければ特許侵害では無い。「A, B, C, D」でも特許侵害では無い、1つでも含んでいなければOKなのだ。ただし、「S, A, B, C, D, E, F」なので特許侵害では無いという主張は駄目だ。余計なものを含んでいても関係無い、「A, B, C, D, E」をすべて含んでいるので特許侵害である。

さて、以上を踏まえて前回のコロプラの主張と今回の任天堂の反論を抜粋して整理してみよう。

任天堂の反論

原告準備書面(2) 平成30年6月8日

1. 特許3734820号:タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)

(コ) 「座標入力されている状態が継続するとき基準座標を設定する」とあるが、白猫プロジェクトはタッチしたら直ぐに基準座標を設定するから違う
(任) その解釈はおかしい。「継続」とはどこにも書いていない。特許は「変化」を条件としている

(コ) 米国特許第5327161号に「ジョイスティックの動作をシミュレーションする」発明がある。特許1は無効だ!
(任) CRTにだけ適用される発明で、タッチパネルのゲーム機には適用できない

これを構成要件充足性で説明すると、こうなる。

(コ) 「任天堂は特許を『AまたはB』で構成していると言うけど、コロプラには『A』に見える。そして白猫プロジェクトは『B』だから違うよね」
(任) 「アホぬかすな。特許には『AまたはB』って書いてあるやろ。だから『AまたはB』や。もちろん『B』も含むで」

2. 特許4262217号:タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃(チャージ攻撃)

(コ) 「第1のオブジェクトが操作されている状態にあるとき」とある。「操作」とはタッチしながらオブジェクトを移動させると解釈できるけど、白猫プロジェクトの「操作」は長押しするだけ
(任) 【0046】にタッチしながらオブジェクトを移動させる記載が有るけど、【0024】にタッチパネルから指を離すだけと書いてある。

(コ) 白猫プロジェクトは位置情報や操作の解除に基づいてチャージ攻撃していない
(任) 右手の指でタップして、左手の指でタップするとチャージ攻撃できる動作は確かに有る。でも、位置情報や操作の解除に基づいてチャージ攻撃する動作も有る

これを構成要件充足性で説明すると、こうなる。

(コ) 「任天堂は特許を『A』で構成していると言うけど、残念、白猫プロジェクトは『B』だから違うよね」
(任) 「アホぬかすな。白猫プロジェクトは『AまたはB』の動作やろ。だから『A』を含んでるやん」

3. 特許4010533号:スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)

(コ) スマートフォンはゲーム機じゃ無い。任天堂の特許が示すのは「ゲーム専用機」
(任) ゲームできるんだからゲーム機でしょう

(コ) 「×」ボタンの表示はなんの説明も無いから、「復帰条件を表示する手段」じゃない
(任) 「復帰条件を表示する手段」は「×」ボタンだけではない。「×」ボタンを含む一時停止画面の表示。なお、「×」ボタンだけでも十分に理解できるので「復帰条件を表示する手段」である

これを構成要件充足性で説明すると、こうなる。

(コ) 「任天堂は特許を『A』で構成していると言うけど、残念、白猫プロジェクトは『B』だから違うよね」
(任) 「アホぬかすな。どう見ても白猫プロジェクトは『A』やろ」

4. 特許5595991号:ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う(相互フォロー)

(コ) 「指定」とあるが、辞書で引くと「幾つかの候補の中で特にそれだけが条件を満足するものだ、という主体の意向を示すものだ」と書いてある。白猫プロジェクトの相互フォローやメッセージは複数の選択肢から選んでいないから「指定」では無い
(任) 【0190】に「全てを指し定める」、【0128】に「個別、または複数」と書いてある。1つだけと限定する根拠は無い

(コ) メッセージの送信は「ネットワーク通信」では無い
(任) 通信とは「郵便・電信・電話などによって意思や情報を通じること」とある。ネットワーク通信が「同時接続に限定される」という理屈はおかしい

これを構成要件充足性で説明すると、こうなる。

(コ) 「任天堂は特許を『AまたはB』で構成していると言うけど、コロプラには『A』に見える。そして白猫プロジェクトは『B』だから違うよね」
(任) 「アホぬかすな。特許には『AまたはB』って書いてあるやろ。だから『AまたはB』や。もちろん『B』も含むで」

5. 特許3637031号:障害物でプレイキャラクターが隠されてもシルエットで表示する(シルエット表示)

(コ) 特開2001-276420号:「オブジェクトが被ったら×マークを表示する」と、「3DCGの教科書に書いてある内容」を組み合わせれば、「オブジェクトが被ったら座標情報を更新してシルエット表示する」発明は昔から常識。特許5は無効だ!
(任) コロプラが主張する無効理由は、本件発明を念頭に置いた単なる後知恵の主張に過ぎない。特許法における進歩性の議論では無い

これは「無効の抗弁」なので、構成要件充足性の議論では無い。

しかし、なんともコロプラの構成要件充足性の主張が無理矢理で、任天堂と噛み合わない議論をしているように見える。どちらの弁護士も、この資料を作るのは大変だろうなと同情してしまった。

任天堂の反論には隙が無いと思うが、裁判はまだまだ長引きそう

コロプラの主張に対する任天堂の反論を一部抜粋して整理してみたが、私が前回の記事で予想した内容とほとんど同じであった。

これは私の特許裁判に対する見方が優れているとかでは無い。単に、コロプラの主張がそれだけ穴が多いというだけの話だ。

コロプラは多数に渡って任天堂の特許にイチャモンを付けて来たが、任天堂は私が見ても当然に納得できるわかりやすく、さらに明確なロジックで全てを反論した。コロプラは「無効の抗弁」も「構成要件充足性の立証」も穴だらけに見える。

しかし、そう簡単に判決が出る事は無いだろう。特許侵害裁判はそもそも時間が掛かる(カプコンとコーエーは1審で3年)し、この裁判もまだ弁論準備手続をしている段階だ。地裁判決が出るまで1年以上、最高裁まで争ったら4年、5年掛かりそうだ。

コロプラの訴訟戦略は「スマホアプリはゲーム機か否か」「特許の構成は任天堂は『A』と言ってるけど、私は『B』と思う」と言った「解釈論争」に持ち込むつもりでは。

解釈論争ならばどんなに論理的に詰められても、「しかし私はそう思わない。裁判長、いかがですか?」と判決まで時間を稼ぐ事ができる。もちろん訴訟戦術としては合法で有効なので咎められる謂れは無い。だが、本気で特許侵害をしていないと信じているとはとても思えない。

もし「実は特許侵害していると思ってるけど、裁判で時間を稼ごう」と思っているなら、

白猫プロジェクトのサービスが終了するということは断じてございません。コロプラとしては、特許侵害の事実は一切ないものと確信しておりますが、訴訟がたとえどのような結果になっても仕様変更等を通じて、サービスを継続してまいります

とプレスリリースまでしたユーザーとの約束で嘘をついたという事だ。そして、裁判資料を閲覧する度に疑惑は深まっている。

任天堂は知的財産部の社員が白猫プロジェクトをプレイしてそのプレイ動画を証拠として上げているが、コロプラは担当の弁護士がプレイして、それを「外からビデオ撮影した」プレイ動画を証拠として上げている。

そして、任天堂に「そんなもの証拠になるか。わざわざビデオに撮らんでも、アプリのプログラムを証拠として上げればええやん」と一蹴されている。他の反論でも「アプリのプログラムを証拠として上げればええやん」と指摘されている箇所があり、どうにもコロプラのエンジニアが協力している感じが無いのだ。

本当にコロプラはユーザーに約束した通り、知的財産の順守とユーザーのピンチに真摯に対応しているのだろうか。疑惑はますます深まっている。

そして次回の審理は9月13日(木)午後2時からである。そろそろ傍聴したいなと思いながら、それまでにさらに考察を深めていきたい。

参照:コロプラ・お客様への感謝とお知らせ



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author : 宮寺達也



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