任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ | パテントマスター・宮寺達也のブログ

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任天堂 VS コロプラ特許訴訟・第2回戦。タイトな解釈にねじ込むコロプラ

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出典:Wikipedia 東京地方裁判所

4月23日午後2時、任天堂とコロプラの特許侵害訴訟の第2回口頭弁論が東京地裁で開かれるはずであった。私は第1回口頭弁論を傍聴し裁判資料を読み、

任天堂がコロプラを訴えた裁判資料を読んだけど、コロプラの勝ち目が見えません

というブログを書いた。そこで「第2回の口頭弁論も取材する」と約束していたので再び傍聴すべく、時間に余裕を持って東京地裁に到着した。しかし民事訴訟の開始予定をいくら探しても任天堂とコロプラの訴訟は見つからなかった。

手ぶらでは帰れないと思い、せめて裁判資料だけでも読んで帰ろうと資料閲覧室に行ったところ「今日は『弁論準備手続』(※1)だから、傍聴出来ないよ。資料もまだ読めない」と教えていただいた。

という訳で裁判の傍聴は出来なかったが、4月25日に改めて東京地裁に赴き裁判資料を閲覧することはできた。

そこで第1回口頭弁論でのコロプラの答弁書に対する任天堂の回答、それを踏まえたコロプラの本格的な反論を見る事が出来た。

弁論準備手続までの資料を読んだ感想としては、「任天堂有利は変わらず」「だがコロプラは全面対決に打って出る模様」「しかし決定的な反論は無かった」という所だ。

「タイトな解釈にねじ込むコロプラという戦う会社」と口ずさみつつ私は帰路についた。

やっぱりコロプラの第1回口頭弁論の答弁は時間稼ぎ。任天堂もおこ

まず確認したのは、コロプラの第1回口頭弁論での答弁(求釈明事項)への任天堂の回答である。

私は前のブログで「コロプラは敗訴を覚悟でただ時間稼ぎをしているようにしか感じない」と書いたが、任天堂も全く同感だったようだ。そして当事者である分、怒りも感じられる回答であった。

任天堂の回答(原告準備書面) 平成30年3月12日

第1 はじめに

被告(コロプラ)による求釈明は、訴状において原告(任天堂)が既に主張しているコロプラのアプリ(白猫プロジェクト)が任天堂の特許を侵害している理由について、任天堂に重ねて主張するように求めるものに過ぎず、また、認否の観点からは不要なクレーム解釈も含まれており、審理遅延を目的としていることは明白である。

したがって、これら求釈明に応じる必要性は認められないものの、さらなる審理の遅延が生じることが無いように、審理促進の観点から必要な範囲について回答を行うものとする。

第2 特許1〜5へのコロプラへの質問への回答

5件の特許について、それぞれ質問された事を資料に基づいて回答。詳細は割愛するが、まあ想像通り「資料の〇〇頁に書いてあるから読め」という感じであった。

第3 白猫プロジェクトが特許4(特許5595991号:ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う)侵害している事について

第4 特許4の間接侵害について

特許4の発明は、間接侵害(特許法101条1号)(※2)である。

と、このようにコロプラの求釈明について時間稼ぎと怒りを表明しつつ、間接侵害もしているぞと主張を強化してきた。さらに任天堂は2日後、6件目の特許も追加している。

特許の追加(訴えの変更申立書) 平成30年3月14日

本件特許権6 特許第6271692号

「ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う」特許4の改良発明。「相手が自分のゲーム機をフォローしていてもなくても、一方的に相手のゲーム機をフォローすることができる」

この特許6は特許4が「相互フォローする」と限定した発明の範囲を広げるものであり、コロプラにとっては侵害回避がより難しくなったのだけは間違いない。

任天堂は時間稼ぎに怒りつつ、しっかりと主張をバージョンアップさせて来た。

コロプラは全面対決の様相だけど、クリティカルな反論は無し

そして、この任天堂の回答を受けてのコロプラの反論である。「全面的に特許侵害を否定する」内容であった。

特許1から5の全てについて「白猫プロジェクトは特許侵害をしていない」と反論し、「故に、損害賠償の必要は無い」と真っ向から任天堂の主張と戦っている。

まあこの流れは予想通りだ、問題はその中身である。「外から遊んでいるだけではわからないけど、ゲームの中身は明らかに特許に侵害してないよ」「任天堂の特許を完全に無効にする資料を発見したよ」というクリティカルな反論があるのかと資料を隈なく見渡した。

結論としては、「クリティカルな反論は無い。だが、タイトなクレーム解釈を多用し、全特許について反論をねじ込んでいる」という感じであった。

クリティカルな反論とは、誰が見ても特許に記載しているクレーム(請求項)が指し示す内容と、白猫プロジェクトの仕様が異なっているという反論である。

例えば、特許1(特許3734820号:タッチパネルでジョイスティックを操作する。ぷにコンの事)では、「指示座標が前記基準位置を中心とした所定半径を有する円領域からなる制限範囲を逸脱したとき」という記載がある。

これに対して任天堂は実際に白猫プロジェクトをプレイして、「ぷにコン」は「円領域」で動作しているので侵害していると主張している。

これに対して、例えば白猫プロジェクトのソースコードを公開するなどして、「いや、白猫プロジェクトのぷにコンは『円形』で動作していません、『長方形』です」などと明確な差異を突きつける事が出来たらコロプラの勝ちだ。

だが、特許1から5の全てについて反論はしているが、「誰が見てもコロプラは任天堂の特許を侵害していないよね」というものは無かった。

特許1〜5に対するコロプラの回答(まるでジャブの嵐)

コロプラの反論は多岐に渡るので、特許1〜5それぞれについての反論はまた別記事で詳しく解説したい。まずは一部を紹介しよう。

コロプラの反論(被告第1準備書面) 平成30年4月16日

1. 特許3734820号:タッチパネルでジョイスティックを操作する(ぷにコン)への反論

・「座標入力されている状態が継続するとき基準座標を設定する」とあるが、白猫プロジェクトはタッチしたら直ぐに基準座標を設定するから違う

→(特許1もタッチしたら直ぐに基準座標を設定すると読めるので、ちと無理な解釈に思う)

・米国特許第5327161号に「ジョイスティックの動作をシミュレーションする」発明がある。特許1は無効だ!

→(CRT上にタッチパッドでジョイスティックを表示するから似ているけど、「指示座標が円領域を逸脱する」等については記載無し。厳しいのでは)

2. 特許4262217号:タッチパネルを長押しした後、指を離すと敵キャラを攻撃(チャージ攻撃)

・「第1のオブジェクトが操作されている状態にあるとき」とある。「操作」とはタッチしながらオブジェクトを移動させると解釈できるけど、白猫プロジェクトの「操作」は長押しするだけ

→(確かに実施例には長押しは「フォーカス」、座標が移動すれば「操作フラグ=ON」と書いてある。でも、日本語としては「フォーカス」「操作フラグ」もまとめて操作と解釈しても良さそう)

・白猫プロジェクトは位置情報や操作の解除に基づいてチャージ攻撃していない

→(これも『操作』の解釈次第)

3. 特許4010533号:スリープから復帰する時に確認画面を表示し、スリープ直前の画面から再開(スリープ機能)

・スマートフォンはゲーム機じゃ無い。任天堂の特許が示すのは「ゲーム専用機」

→(任天堂は当然に「ゲームができればゲーム機」と反論してる。私もそう思う)

・「×」の表示はなんの説明も無いから、「復帰条件を表示する手段」じゃない

→(これも無理やり。説明が有るか無いかは関係ないでしょう)

4. 特許5595991号:ユーザー間で相互フォローし、通信や協力プレイを行う(相互フォロー)

・「指定」とあるが、辞書で引くと「幾つかの候補の中で特にそれだけが条件を満足するものだ、という主体の意向を示すものだ」と書いてある。白猫プロジェクトの相互フォローやメッセージは複数の選択肢から選んでいないから「指定」では無い

→(大辞林 第三版によると、複数から選択する以外にも『断定(はっきりと判断を下すこと)と同じ』と書いてある。ちょっとその解釈はあかんわ)

・メッセージの送信は「ネットワーク通信」では無い

→(そりゃ無茶でんがな)

5. 特許3637031号:障害物でプレイキャラクターが隠されてもシルエットで表示する(シルエット表示)

特開2001-276420号:「オブジェクトが被ったら×マークを表示する」と、「3DCGの教科書に書いてある内容」を組み合わせれば、「オブジェクトが被ったら座標情報を更新してシルエット表示する」発明は昔から常識。特許5は無効だ!

→(組み合わせで常識と判断するかは審査官(裁判官)次第だけど、請求項4にある「シルエット表示は、プレイヤキャラクタと同一の形状でかつ異なるテクスチャを用いる」までも常識とするのは難しいと思う)

とまあ、こんな感じである。

コロプラは訴えられた時点では確たる対抗策は無かった

コロプラの反論は時間を掛けて、針の穴の隙間を通すような反論を必死にかき集めていると感じた。恐らく担当の弁護士・弁理士さん達が頑張ったのだろう。そのための第1回口頭弁論での時間稼ぎだったのかもしれない。

クリティカルに特許侵害を無効化できる資料は無かったが、任天堂も無視は出来ない反論資料を揃えている。しかし、依然として厳しい情勢には変わりない。

私個人の感想としては、現時点で東京地裁が特許侵害を認める可能性は

特許1:70%以上

特許2:70%以上

特許3:90%以上

特許4:90%以上

特許5:90%以上

と予想している。あくまで私の勝手な予想でしかないが、これはかなり厳しい数字だ。仮に実際はもっとコロプラに有利であり5件全てが五分五分だとしても厳しい。

コロプラが特許侵害を回避するには「全勝」が必要なのである。五分五分としても、5連勝する確率はわずか3.1%である。

もちろん今後の裁判の展開次第でこの状況予想も変わって来るが、少なくとも現時点での期待値は五分五分でも42.6億円の損害賠償金(請求は44億円)、配信停止で年間194億円の損失(現在の年間売り上げが200億円)である。

少なくとも白猫プロジェクトの仕様を放ったらかしにして、ユーザーに不安を与えているのは危機管理として最悪の対応だと思う。

また、コロプラが任天堂に訴えられた時点で「特許侵害していないと確たる証拠を持っていなかった」のは明らかだ。クレーム解釈は裁判所や特許庁の判断に委ねるしかない部分が多く、とても「確たる証拠」とは言えない。それがコロプラの反論を見てはっきりとした。

裁判の行方はまだまだわからない、そして結果が出るのはかなり先の話だ。コロプラは「勝てる可能性が低い」と言う事実を素直に認めて、白猫プロジェクトのユーザーに今後の対応を真摯に説明するべきだと思う。

なお、第2回口頭弁論は6月15日午後4時に改めて開かれるようだ。また取材したいと思うのでご期待ください。

ちなみに

任天堂に訴えられたコロプラが妙に強気な「真意」を分析してみた

と言う記事を書いたが、どうやら「本命(2.0倍) 『クロスライセンスに自信がある。だがダメだった』」が当たりだったのではと思っている。

参照:間接侵害 – 知的財産用語辞典特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)

※1:「弁論準備手続」・・・口頭弁論期日における証拠調べに向けて、争点・証拠整理の弁論活動をする。傍聴には制限あり。

※2:「間接侵害」・・・アプリ単体では特許を直接侵害しないけど、そのアプリを生産し配信すると、購入者が特許を侵害する事になる。このように特許を侵害するために必要不可欠なアプリを生産し配信すると特許権を侵害するとみなす。



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author : 宮寺達也



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