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リコーが復活するためには(新規事業で)競うな 持ち味(営業力)をイカせッッ

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出典:リコー ニュースリリース

「リコーが創業以来最大の赤字1600億円に」という衝撃的なニュースを見て居ても立ってもいられず、リコーの赤字の原因についてブログを書いてから1週間。最初はあまり読まれなかったが4月4日あたりから急にアクセスが伸び出している。

赤字1600億円の衝撃。リコーはいつ・どこで・何を間違えたのか?(前編)

赤字1600億円の衝撃。リコーはいつ・どこで・何を間違えたのか?(後編)

NewsPicksに取り上げられたのは知っていたが、アクセスの大半は直接URLを参照しているので、どこかにリンクでも貼られたか、リコー関係者にでも見つかったか。

いずれにしても本心からリコーを思って書いた記事なので、リコー関係者には是非読んで欲しい。私にとっては何のメリットも無く、今までボカシて来た前職を明らかにするという身バレリスクを冒しただけだ。それでも愛する古巣であるリコーには立ち直って欲しいのだ。

だが取り巻く環境は厳しい。経済誌の週刊ダイヤモンドに掲載された「リコーが複合機で過去最大の赤字、打開策なしの深刻な事情」という記事では、「大黒柱の複合機の収益性も他社に比べて低い」「新規事業の育成は周回遅れ」「ネットキャッシュはマイナス7246億円で新規事業に投資する金が無い」とボロボロにダメだしされている。

このままではつい先日入社式を迎えた新入社員たちも不安で仕方無いだろう。そこでリコーに11年間勤め、グラップラー刃牙をヒントに特許を100件も取得してきた私だからこそ言える打開策を提案したい。

「競うな 持ち味をイカせッッ」

リコーが新規事業で勝つのは無理

ペーパーレス化はますます進み、複合機の将来が暗いのは確実だ。だからライバルであるキヤノンはネットワークカメラや医療機器、(富士ゼロックスの親会社の)富士フイルムは医薬事業へと、新たな収益源を求めて新規事業に投資してきた。

当然、同じ事はリコーも考えている。近藤会長はずっと「3年後までに新規事業を全体の25%に拡大する。人員も新規事業に移動させる」と言ってきたし、山下良則社長も「企業買収を含む新規事業への投資を行う」と言っている。

しかし、リコーが新規事業で今から勝つのは無理だ。

理由は3つある。

1つ目は週刊ダイヤモンドが指摘したようにお金が無いからだ。リストラの危機を脱して売上・利益が回復してきた2015年くらいまでなら投資するお金も残っていただろうが、今期の大赤字で借金は7246億円。これでは無理だ。

だが大黒柱の複合機は大赤字の今期でも828億円の黒字である。もちろん昨年までも会社全体の営業利益よりずっと稼いでいる。それを食いつぶして来たのがPENTAX買収など新規事業への投資なのだ。

つまり新規事業への投資はこれまでも十分にしてきた、だが失敗しているのだ。それが今年から急に成功して大儲けなんて有り得ない。パチンコで負けが込んだお金が無くなったおじさんに「もう1万円貸してくれ、倍にして返すから」と言われて信じるバカはいない。

2つ目はそんなチャレンジングな人材がいないからだ。新規事業を成功させるには、当然にそれに適した人材が必要だ。未知の分野への好奇心を持ち、高い目標に挑戦する事を好み、自ら率先して行動するイノベーティブな人材だ。

もちろんリコーにもそういう人はいた。だけど「これでもかというくらい同期横並び」の年功序列の人事制度に長年浸かってしまった結果すっかり腑抜けてしまったり、管理職に昇格して引退モードになってしまったり、嫌気が差して辞めてしまったり(私を含む)。

仮に残っていたとしても、足を引っ張られてばかりでとても力を発揮できる環境では無い。これは身を持って体験したので断言できる。リコーの人事制度では、そんなイノベーティブな人材は活躍出来ないのだ。

赤字部署の方が早く昇進できるとか、成果で100倍の差をつけても同期は全く同じ評価とか、いったん昇進したら毎日寝てサボっていても絶対に降格しないとか、管理職になったら途端になぜかやる気をうしなってしまうとか。新規事業を成功させたければそういう時代遅れの人事制度を改革しなければいけない。

人事制度は古いままで事業だけは新しくしたいなんて虫の良い理屈、世界どころか日本でも通用しない。

最大の武器は「野武士のリコー」と呼ばれる営業部隊

そして最も大事な3つ目は新規事業では販社(リコー販売)の営業力が生きない事だ。

販社(リコー販売)の営業は本当に凄い。新人の頃に研修に行かせてもらったり、配属されてからも販社出身の方にアポを取っていただき営業に同行させてもらうなど、何度かその仕事振りを拝見した事があるがまさに「プロフェッショナル 仕事の流儀 」の世界であった。

足繁く顧客を訪問する体力・根性、目標を達成するための高い意識、商品をアピールする高い知識と会話術。営業の方と一緒に仕事をすると、設計部署にいる自分はまるで高校の文化祭でもやってるようなみじめな感覚に襲われた。

中でも新人時代の研修で営業所長に言われた言葉は忘れられない。

「君たちはこれから設計者としてリコーの製品を作っていく。その際、Q(品質)・C(コスト)・D(日程)を守れと教わるだろう。そして、QCD全部が大事と言われる。だが私たちが求めるのはD(日程)だけだ。どんなに品質がしょぼくても、コストがかさんで値段が上がっても、商品さえ有れば私たちは売ってみせる。だが、商品が日程通りに届かないとどうしようもならない

その後の設計時代はその言葉を噛み締める日々だった。私が最初に担当した機種は2年もの設計遅れを出して、本当に迷惑を掛けた。なんとか量産したものの時代遅れのスペックで申し訳無いと思っていた。だが、それでもしっかりと販社の方は売ってくださった。

それが「野武士のリコー」と呼ばれ、リコーを複合機業界のトップに押し上げた原動力だ。

これまでのリコーの新規事業は一眼レフカメラのPENTAX、監視カメラ、IBMから買収したプロダクションプリンティング、プロジェクター、LED照明などがあるが、どれも利益には結びついていない。全天球カメラの先駆けとして大ヒットしたRICOH THETAのような商品(実は既存事業の製品なんだけど)もあるが、2兆円企業を支える程の売上・利益は望めない。

そもそもリコーが高い営業利益を誇ってきたのは家電製品のように売ってお終いでは無く、営業を通じて顧客と高い信頼関係を築きながらアフターサービスで稼ぐ事が出来たからだ。

「野武士のリコーのように、営業の販売力に頼ってきたのがダメなのだ。これからは課題解決の時代だ」と言う意見もあるけど、そんな事誰よりも販社がわかっている。ダメなのは販社に課題解決力を持った製品を渡せなかった企画・開発部隊の方だ。

(新規事業で)競うな 持ち味(営業力)をイカせッッ

もちろん、apple(iPhone)やGoogleのように営業に過度に頼らず利益を上げられればそれが理想だ。だがそんな会社に変わるためのお金も無ければ人もいない。だったら、今ある最大の武器である営業力を存分に発揮できるよう、複合機をさらに洗練していくしかない。

複合機市場が狭まっていくのは百も承知だが、「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。出来ない事を妄想するより、出来る事を最大限に努力した方が未来は開ける。

リコーは新規事業でライバルと競おうという妄想から脱し、持ち味である販社の営業力を生かした複合機でベストを尽くすべきだ。

実際にリコーで複合機の開発をしていた私だからわかる。リコーの複合機事業はまだまだ改善する余地がある。その最大の証拠がアイキャッチ画像にある「RICOH SP C352」だ。

これは私が入社した直後の2006年から企画・構想が始まった製品である。本当ならば2008年には発売されるはずだったが、構想からやり直しになったり、延期したり、中止になって再開したり、また延びに延びたりと、10年後の2018年4月5日にようやく陽の目を見た。

この製品は私が開発初期から携わった。私の開発した先進的なLEDA書込み技術が思う存分搭載されており、大変に美しい画像を出す事ができるプリンター(のはず)だ。たくさんの特許と共に、私の全てが詰まったと言って良い製品だ。

だが、10年も遅れてしまえばその間の開発費だけで赤字だ。途中で私は開発を離れたが、3ヶ月に一度延期の挨拶が届くたびにもう開発中止すれば良いと思っていた。悲しいけど、これってビジネスなのよね。

しかし誰も開発中止という決断を下す事が出来ず、ずるずると発売されてしまった。発売されてしまったからにはせめて愛されて欲しいと思うが、こういう厳しい決断を下せないのがリコーだ。

複合機事業にも存在しなくて良い(むしろ無い方がスムーズな)部署が有ったり、誰のために存在するのかわからない製品が有ったり、まだまだ性能を磨きコストを削る余地が残っている製品が有る。

そう、リコーの複合機事業はもっと稼げる。まずは持ち味であるリコー販売と共に全社一丸となってライバルであるキヤノン、富士ゼロックスに勝つところからだ。

しかし、もうリコーを辞めて事情に疎かったので本当に今日知ったのだが、まさかみずほ銀行のシステムやらサクラダファミリアと言われてたRICOH SP C352をこの目で見る時が来るなんて。

いく~つも~のオリンピック(アテネ→トリノ→北京→バンクーバー→ロンドン→ソチ→リオ→平昌)を超えて~、たど~り着いた~未来がある~。

参照:リコーが複合機で過去最大の赤字、打開策なしの深刻な事情クラウドWatch・4/5リコー ニュースリリース・4/2日本経済新聞・2011/7/1私を磨いてくれたビジネス人生での5人のメンターコピー機が売れない!名門「リコー」の袋小路ヤフー個人・2017/4/28



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author : 宮寺達也



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