教育

大阪大学の入試ミスは大問題だけど、責任を求め過ぎ。大学はお母さんじゃない

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出典:Wikipedia 大阪大学豊中キャンパス

1月13・14日の土日はいよいよ大学入試センター試験である。

日本の大学受験は、人種も、性別も、年齢も、血筋(親の資産)も、過去も、性格も、顔立ちも関係無く、試験で高得点を獲得するだけで人生を切り開くことができる素晴らしい制度だ。

この時のために頑張ってきた58万2671人(現役は47万3570人)の受験生達は、是非とも試験本番で十二分に力を発揮し、未来を掴んで欲しい。

昨年の記事であるが、センター試験前日・当日の心構えや過ごし方をアドバイスした記事がある。是非とも参考にしていただき、本番で自己ベストを叩き出して欲しい。

頑張れ受験生!センター試験で自己ベストを出す方法(前日)

頑張れ受験生!センター試験で自己ベストを出す方法(当日)

さて、そんな受験シーズン真っ最中に驚きのニュースがあった。1月6日、大阪大学が2017年の入試で物理に出題ミスがあり、本来合格していた30人を間違って不合格にしていたと発表したのだ。

大阪大学は私が青春を過ごした大切な母校である。しかも、私も入試で物理の試験を受けて合格している。もし自分の入試で出題ミスが起きていたら・・・

そんな自分事である大阪大学の出題ミスについて、自分の経験を踏まえながら思うことを書いていきたい。

私の入試で物理の出題ミスがあったら、不合格になっていただろう

大阪大学の2017年の入試で起きた出題ミスでは、本来合格していたはずの受験生が全部で30人不合格になってしまった。

その内訳は、

理学部4人
医学部2人
歯学部1人
薬学部2人
工学部19人
基礎工学部2人

である。

流石に物理の本場である工学部への影響が甚大だ。工学部の定員は793人であるので、2.4%がミスで不合格になってしまった訳だ。

1999年、私が大阪大学工学部を受験した時、2次試験の科目は数学(200点)・物理(200点)・化学(200点)・英語(100点)であり、センター試験の400点と合わせて1100満点の勝負だった。

合格ラインが700点といったところで、私のセンター試験の持ち点は300点。つまり2次試験で400点が必要だった。私の目論見は「数学100点、物理150点、化学100点、英語50点で400点。これで春からは阪大生だ!」であった。

しかし現実は甘くない。初っ端の数学で大きくつまずいた。数学は最も得意としていた科目だったのに、4問中まともに解答し終えた問題はゼロ。部分点で50点あれば御の字という手応え・・・

ソフトテニスのインターハイ予選に負けてから急ピッチで受験勉強をしてきたので、得意な数学は後回しにし、センター試験対策に重点を置いてきたやり方がついにボロを出した。

正直「オワタ」と思いながらお昼ご飯を食べ、午後一発目の物理に臨んだ。元々、物理では高得点を見込んでいたので上乗せは難しい、苦手な化学で勝負かと思っていた。そんな状況で物理の神が私を祝福してくれた。

解ける解ける、面白いくらいに物理の問題が解ける。私は物理の問題の全てを確信を持って解答できた。ほぼ満点だったはずだ(1999年当時は採点結果の公表は無かった)。

化学、英語の手応えはまあ予定通り。そうして私の阪大受験は終了した。

そして運命の合格発表、1999年3月10日午後4時。家の前で合格者番号が記載された郵便を今か今かと待ち続けていた私の前に郵便局のバイクが現れた。受け取るや否や、夢の中にまで出てくるほど暗唱した受験番号を探す。

「あった。あった、あったぞ、やったー!」

とまあ、こうして私は晴れて大阪大学に合格したのだ。自己採点は数学(50点)・物理(200点)・化学(100点)・英語(50点)、合格ラインの700点ギリギリだった。

今回の出題ミスは物理の9点分だ。もし私の入試で同じミスがあれば物理が191点なので、マジで落ちていた可能性がある。そうしたら私は全く別の人生を歩んでいたかもしれない。

ニュースを見ていて、不合格とされていた30人の気持ちが我が事のように理解できた。

でも「大阪大学に入った後」まで補償するのは違う

現在の日本ではどこの大学を卒業するかで人生が大きく変わる。それを決める大学受験でミスがある事は、未来ある若者の人生を狂わせるあまりにも重大な問題だ。

大阪大学も「受験生の人生を狂わせてしまった」と謝罪しており、「2年次への転入の調整」「予備校の費用や他大学の授業料など、合格していればかからなかった費用の補償」「慰謝料の支払い」とフォローしようとしている。

しかし、このフォローに対して厳しい意見を目にする。

「6月にも外部から指摘があったのに、なぜ1月まで放置したのか」

「今から大阪大学に入学したとしても、人間関係が固まっていて、その輪に入れない」

「定年まで働く年数が1年減ったのだから、最後の1年分の年収1500万円を補償するべきだ」

といった意見を掲示板やツイッターなどで目にした。

確かに放置した事は重大な反省が必要だ。しかし私は「大阪大学には入れなかった事」への補償は真摯に行うべきであるが、「大阪大学に入った後」まで補償するのは違うと思う。

確かに30年前ならば、旧七帝大に数えられる名門・大阪大学に入学できれば人生は安泰であった。卒業後は一流企業に就職、40歳ごろに課長になり、50歳には部長、定年まで勤め上げて退職金3000万円をゲット。そのお金で家を新築し、老後はのんびりと過ごすといった感じか。

しかし、そんな時代はとっくに終わっている。

大阪大学に入ればどこの企業でも内定ゲットだぜ、なんて事は無い。仮に就職できても上の世代が詰まっていてずっと平社員のまま。厚生年金保険料はどんどん上がり、手取りは一向に増えない。気が付いたらずっと地元で暮らしながら実家の商売を継いだ同級生の収入の半分にも満たない、なんて有り得る。

何を隠そう。この私自身の話だからだ。

大阪大学に落ちていたら人生は変わったけど、行き着く先は同じだったろう

私は大阪大学の修士課程に進んで就職活動をしたが、確かに有利だったとは思う。本命の精密機器メーカーには落ちたが、国内有数の事務機器メーカーに就職できた。

しかし入社してみると、同期は偏差値だけならば大阪大学を下回る大学の出身者の方が多かった。

就職してからはエンジニアとしてプリンタの開発、特許出願など圧倒的な実績を残して来たと自負している。だが出世はさっぱりであった。負け惜しみでなく、単純に上が詰まっているから順番が回って来ないのだ。

そうして入社12年目の春、私は退職してフリーになった。

もし私が出題ミスで大阪大学に落ちていたらどうなっていただろう。恐らく、後期試験を受験して東北大学に入学していただろう。

そしてソフトテニス部に入部し、七帝戦に出場。仲間だった大阪大学のメンバーとはライバルとして出会い、友情を育んでいただろう。

卒業後は修士課程に進み、国内の電機メーカー、精密機器メーカー、事務機器メーカーを志望し就職活動。その結果は、結局は同じ会社に入っていた気がする。そして12年目くらいで会社に見切りをつけ、退職しフリーになっていたはずだ。

そう。大学は違ったとしても、そこで自分が熱中する事、学びたい事がはっきりしていればいずれは同じゴールに辿り着くものだ。ドラえもんでのび太がジャイ子と結婚するはずだったがしずかちゃんと結婚する未来に変わっても、セワシくんはちゃんと産まれるのと同じ話だ。

大学はお母さんじゃ無い。入学した後の自分を決めるのは、自分の心だけ

逆に言えば、大阪大学に入っていたとしても(ソフトテニスのように)熱中する事が無かったり、学びたい事が無ければなんの成長もできない。待っているのは信頼できる友人も作れず寂しい青春時代を過ごし、定年まで不満を言いながら指示された仕事をこなすだけの人生だ。

大学はあくまで本人の向上心に応えてくれる学びの場である。赤ちゃんにとってのお母さんのように、手取り足取り引っ張っていってくれる存在では無い。

大阪大学の入試ミスに「友人関係が壊れた分、定年までの年収を補償しろ」と批判している人は、大学が自分の人生の成功を保証してくれる存在だと思っているのだろう。

だが違う。有名大学に入りさえすれば人生が安泰だったのは昭和の一時期の幻想だ、そんな時代はもう終わっている。大学に入った後も会社に就職した後も、いつまでも努力を続けなければ人生はままならない事を理解して欲しいと思う。

そして最後に、大阪大学から追加合格の連絡を受けてどうするか迷っている30人へメッセージを送りたい。

もし今からでも大阪大学に入りたいと思っているあなた。1年遅れでも入るべきだ。大阪大学は素晴らしい大学だ。あなたの学びの意思に十二分に応えてくれる。きっと卒業するまでに大きな成長を果たせるだろう。

そして、他大学に入学してそこが気に入ってるあなた。大阪大学に入っていればどうだったかと振り返らず、真っ直ぐそのまま進んで大丈夫だ。どこの大学であったとしても学び続ける姿勢があればいつか同じゴールに辿り着く。

みなさんにはまだまだ可能性がある。立ち止まらず、振り返らず、真っ直ぐ成長していって欲しい。

参照:センター試験 | 大学入試センター大阪大学 ニュース&トピックス朝日新聞・1/6朝日新聞・1/12読売新聞・1/7読売新聞・1/8毎日新聞・1/10産経新聞・1/8日本経済新聞・1/8



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author : 宮寺達也



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