法律

伊方原発の差し止めは、広島高裁・野々上裁判長の「結論ありき」の判決

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出典:Wikipedia 伊方発電所

12月13日、ちょっと衝撃的な判決を目にした。

(なぜか)広島市の住民が愛媛県にある四国電力・伊方(いかた)原発の運転差し止めの仮処分を求めた裁判で、広島高裁が運転差し止めを命じる判決を出したのだ。

原発の差し止め訴訟は全国で行われている。福井県の高浜原発が大津地裁で運転停止を命じられた例はあるが、大阪高裁で取り消されている。第2審である高等裁判所で運転停止が認められた例は初めてであり、今後も同様の判決が続く可能性が増してしまった。これで原発の再稼働にさらなる暗雲が立ち込めてしまった。

しかし、広島高裁の判決はどう読んでも納得のしようがない。おかしな論理と決めつけで構成されている。

広島高裁で引き続き行われる異議審判で決定が覆る事を望みつつ、今回の判決がいかにおかしいかを考えていきたい。

原子力規制委の「火山影響評価ガイド」を都合の良いように解釈

今回の裁判では、原告である広島市の住民は「基準地震動、過酷事故対策、テロ対策の合理性、火山の影響など、伊方原発には様々なリスクが存在し、事故が起きれば100km離れた広島市も放射性物質で汚染され、危険だ。だから伊方原発を停止しろ」と訴えている。

それに対して四国電力は「伊方原発は原子力規制委の新規制基準に合格しており、安全である」と反論していた。

そして判決では、

・基準地震動、過酷事故対策、テロ対策の合理性などについて、新規制基準は合理的である

・火山の影響について、新規制基準の「火山影響評価ガイド」は社会通念からかけ離れている。だが、それを否定はしない

・原子力規制委は伊方原発の火山影響評価を合格としたが、裁判長はそう思わない。

・よって、伊方原発の敷地に原発を立地してはダメ。伊方原発は運転停止しろ

となっている。

まあ要するに「阿蘇山の大噴火が起きれば130km離れた伊方原発は火砕流に巻き込まれ、破壊される可能性が十分にある。だからダメ」と言っているのだ。

しかしまあ、この判決の要になった火山影響評価ガイドの扱いがとにかくおかしいのだ。火山影響評価ガイドでは過去最大の噴火(伊方原発の場合、9万年前の阿蘇山の大噴火)を想定する事になっている。

野々上裁判長はこれを「火山影響評価ガイドが定める安全基準は、当裁判所の考える社会通念からかけ離れている」と否定的に評価している。

これは私もそう思う。過去最大の阿蘇山の噴火が起きれば、九州は壊滅し、何百万人が死傷するだろう。原告が住む広島だって無事では済まない、火山灰で壊滅的被害を受けるだろう。その被害は西日本全体どころか、日本中を覆うレベルだ。火山灰により放射性物質よりも遥かに重大ない健康被害が発生する。はっきり言って、原発なんて誰も気にしている余裕は無いだろう。むしろ頑丈な原発が、最も大丈夫だろう。

しかし、「おかしいけど、原子力規制委が科学的に決めた事だから」と否定的ながらも結局は肯定している。そして改めて火山影響評価ガイドを持ち出し、「原子力規制委が、火山影響評価ガイドに合格したというのは科学的に信用できない」となんの根拠も示さず否定している。

つまり、野々上裁判長は原子力規制委の科学的知見を一方では肯定し、一方では否定している。完全に矛盾している。

野々上裁判長は自分が予め決めていた「原発停止」という結論に合わせて、原子力規制委の意見を都合良く切り貼りしているとしか思えない。

裁判所は司法。すなわち「法律を司る」場所のはず

今回の判決で真っ先に感じた単語が「司法の暴走」である。

判決でも「原子炉等規制法では、原子力規制委員会の科学的専門的技術的知見に基づく合理的判断に委ねる趣旨である」と書いている。

裁判所は「司法」である。まさしく法律を司る場所のはずである。裁判所は今回の裁判では「原子炉等規制法」に違反しているか否かだけを判断するべきだ。

そして野々上裁判長は「火山影響評価ガイドはおかしいけど、原子炉等規制法に違反してない」と言っている。ならば、その評価結果も原子炉等規制法に従い、原子力規制委の結論を尊重するべきだ。

しかし、なぜか「原子力規制委の評価結果は、私が信用できない」と何の法律も根拠も示さずに否定している。裁判では四国電力が「過去の阿蘇山の噴火では、火砕流が伊方原発の敷地には到達していない」と証言しているにも関わらず。

さらに仮の仮に新規制基準の火山影響評価に合格した事は間違いだとしても、それが原発の停止につながるのはおかしいのだ。

原子力規制委員会の新規制基準は「原発の立地」、すなわちこれから建設する原発に法的効力を発揮する。すでに稼働している伊方原発が不合格だったとしても、法的に影響は無い。

さらに仮の仮の仮に火山の影響で伊方原発が破壊されたとしても、100km離れた広島まで放射性物質が飛散し致命的な被曝をする可能性はゼロだ。福島第一原発の事故で避難したのは20km圏内である。100km圏内だと、仙台や茨城も含まれる。

福島原発の20km圏内でも被曝による直接被害が報告されていない、当然仙台や茨城でも何も無い。なのに、なぜ伊方原発から100km離れた広島では被害が起きる事になるのか。

野々上裁判長は今月、12月下旬に定年で退官されるとの事だ。はっきり言って、定年する裁判官が「最後に画期的な判決出したいな〜」思い出作りに結論ありきの判決を出したとしか思えない。

九州が壊滅し、日本全体が火山灰に覆われる阿蘇山の大噴火。そんな事があり得ると裁判所が判断できるならば原発の立地どころか、まずは九州への居住を差し止める事だってできるという事だ。もし、9万年前の阿蘇山の大噴火、さらには他の火山の大噴火の可能性を理由に国外退去を命じられたらどう思う?

無知な大人のワガママで次世代に迷惑を掛けるのは止めよう

今回の伊方原発の判決では、本当に司法に失望した。できるだけ早く広島高裁の異議審で取り消して欲しい。またこんな裁判を連発している河合弘之弁護士は、高裁で負けた場合に逃げずに最高裁に上告しなければいけない。

河合弘之弁護士は本気で勝つつもりが無いのだろう。最高裁で判例ができるのをとことん避けている。そんな卑怯な真似で国民を不安にさせるのは辞めて欲しい。きっちり最高裁で決着をつけ、最高裁お墨付きの判例を出すべきだ。

そして、司法だけでなく原告にも失望した。ニュースに

差し止めを申請した広島市の会社員綱崎健太さん(37)は「72年前に広島から始まった無差別な放射線被ばくの歴史を終わらせる重大な一歩だ」と評価。「闘いは続く。これからも被ばくを拒否する姿勢で臨んでいきたい」と語った。

と書いてるのを見て、同い年がこんな幼稚な事を言っているのかと絶望的な気分になった。

論理的に考えればわかる事だが、原子力発電所が止まれば電気代が上がる。しかし、原発の危険性は止まっていても変わらない。福島第一原発の事故では、停止していた4号機の燃料棒から大量の放射性物質が放出されたのだから。

つまり原発差し止め訴訟とは、原発の危険性を何も変えないのに、電気代だけを上げようというものだ。はっきり言ってアホだ。

2011年、東日本大震災による関東の電力不足を受けて多くの会社がリスク分散のために全国各地に事業所を移転したり、増強する事を考えた。私が勤めていた会社も関西の事業所・工場を増強しようと考えた。

しかし、なぜか何にも事故を起こしていない関西電力の原発が運転することができなくなり、関東よりも関西の方が電力不足に陥り、電気代が上がる有様であった。その結果、関西の事業所を増強するどころかむしろ関東進出が加速してしまった。

こうやって、電気代が上がる事はその地域の経済を破壊し、そこで暮らす若者の将来に大きなダメージを与える。もう定年して暇を持て余した老人の遊びに付き合っている余裕は無い。次世代の若者が気持ち良く生きていけるよう、精一杯フォローするのが私たち現役世代の役割だ。ご老人方にはせめて邪魔をしないで欲しいと思う。

だがこの8年、原子力発電を巡る混乱には本当に眩暈がする思いだ。池田信夫氏は「曖昧な意思決定を法的に明確化し、拒否権をもつ人を減らすことが必要だろう」と書かれているが、完全に同意である。

しかし、今回の裁判を見ると絶望的な気分になる。高浜原発を停止した福井地裁の樋口裁判官とか、今回の広島高裁の野々上裁判長のように、裁判官が思い出作りに「とにかく原発を止めるぞ」と暴走したら、どんな法律を作っても無駄なのでは。

参照:時事ドットコム・12/13時事ドットコム・12/13NHK NEWS WEB・12/13日本経済新聞・12/13毎日新聞「広島高裁の決定要旨」毎日新聞・12/13産経新聞・12/13産経新聞・12/13



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-法律

author : 宮寺達也



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