社会・一般

強制捜査するべきは電通じゃなくて、アニメ制作会社だ

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出典:毎日新聞ウェブサイト

11月7日、東京労働局が電通本社・支社に労働基準法違反の疑いで家宅捜索に入った。この強制捜査のインパクトは強く、例えば朝日新聞のように、有名な大企業で違法な長時間残業をしているケースは減ることが期待できる。

しかし、これでは36協定の特別条項で「合法的に」長時間労働を行なっている企業や、請負契約で長時間労働を課している業界には影響が無く、救われない人は多いと思う。

私は労働基準監督署が本気を出すのならば、本当に働く人が苦しんでいる企業を指導し、社会に問題提起して欲しいと思う。

そして今、最も働く人が危機を迎えているのが「アニメ制作会社」だ。


アニメ制作会社の危機

まず最初に強調したいのは私はアニメが大好きだ、愛していると言っても良い。地上波のアニメはトリプルチューナーのBDレコーダーで全て録画しているし、Blu-rayも月に10本以上購入している。だからこそ、今後も面白いアニメを見たいがために、アニメ制作会社には健全な労働環境を実現し、若い人たちが憧れる職場になって欲しい。

しかし、昨今のアニメ制作会社の労働環境は、悲惨なニュースばかりである。

2010年にはA-1 Picturesで28歳の男性が「月600時間労働」を苦に過労自殺している。2016年に入っても、XEBECの低賃金が話題になったり、P.A.WORKSの社員の給与明細がSNSにアップされ「1,477円」という信じ難い月収が波紋を広げた。

日本アニメーター・演出協会の調査では、2013年のアニメーターの平均年収は332.83万円と日本の平均年収409万円をかなり下回る上、20代の平均年収は約110万円と悲惨な水準になっている。

これは普通に考えれば、最低賃金以下の給与で労働者を酷使していることになり、違法だ。なぜこのような状況が長年放置されてきたのか?

アニメーターは出来高払いの請負制だから問題無い?

多くのアニメーターは個人事業主であり、アニメ制作会社と請負契約を結び、作画の枚数に応じて対価を受け取る「出来高払い」の給与制度になっている。そのため、作画枚数が少ない若手は数百時間労働して、最低賃金以下の対価になっても違法とはならないようだ。

しかし、アニメーターの労働実態が「請負」の条件を満たしているかは、疑問だ。請負契約を満たすためには、「発注者と労働者との間に指揮命令関係が生じない」ことが条件だ。この条件を満たさないケースとしては、

・勤務場所や労働時間を拘束されている

・労働方法(作画方法など)について強く指示されている

・他の会社の業務に従事することが禁止されている

・機械や資材などを会社側が提供している

出典:弁護士ドットコム

のようなケースが挙げられる。

つまり上のケースに該当する働き方をしていれば、会社と労働者に雇用契約が発生していると認定され、年収100万円のような労働は最低賃金法違反となる。

労働基準署は現在のアニメーターの労働環境を調査し、違法があればしっかりと改善指導して欲しい。その結果、一時的にはアニメ業界は厳しくなるだろうが、長期的には健全な業界に生まれ変わるためのきっかけになると信じている。

アニメーターの給料を上げるための提案

もちろん、ただ違法な労働を取り締まっただけではアニメーターの給与は上がらない。これまでにも散々議論してきた問題かもしれないが、状況が悪化している以上、まだまだ議論していかなければいけない。その一助となるべく、私の改善案をお伝えしたい。

その1 税金投入で自転車操業にリセットを

ここ数年、地上波では週に50本以上のアニメが放送されている。どう考えても多すぎるが、一向に減る気配が無い。ちゃんと作れているならまだ良いが、2016年の秋アニメではすでに3本のアニメで放送休止が起きており、どう見ても限界である。

なぜここまで多くのアニメを製作しているかというと、アニメ制作会社が典型的な自転車操業に陥っているからだ。アニメ制作会社は常に資金不足な状態であり、今のアニメを製作するために、次のアニメ製作を受注して売り上げを確保しているから、アニメ製作を止めることができない。

私はこの状態はすでに民間で解決できるレベルを超えていると思う。そのため、政府が介入して税金を投入して、この自転車操業をリセットするべきと思う。そうして、一からじっくりと良作を作り始める体制に回帰して欲しい。

一業界への税金の投入には批判があるだろうが、政府はクールジャパンを推進しているのだから、口で言うだけでなく、行動して欲しい。まさに「同情するなら金をくれ」である。

その2 地上波の電波オークションを実施し、アニメ専門局を

アニメ業界は「地上波で無料放送し、Blu-rayの売り上げで回収する」というビジネスモデルを取っている。どんなに面白いアニメであっても、全話を無料で見れるものに2話8千円を払う人は少ない。このビジネスモデルは破綻寸前だ。

そこで、私は「地上波で有料放送」すれば、安定した売り上げが見込めると考える。有料放送はCS・ケーブルテレビで既に実施しているが、やはり地上波と比較すると視聴者が少ない。現行の地上波にアニメ専門局を作り、デジタル放送をスクランブル化して有料放送にすれば、安定した収益を見込める。月に25本のアニメを放送し、受信料を月500円に設定し、7百万人が支払うとすれば、月35億円の売り上げアップになる。現在、1ヶ月5千万円〜1億円と言われるアニメ製作費が倍以上になる。アニメーターの給料も倍増するだろう。

地上波のオークション入札にあたっては、アニメ制作会社を統合するようなコミッショナーの設立が必要だったり、電波法の改正だったり課題は多いが、是非とも実現して欲しい。

その3 もっと映画を増やして、プレステVRで鑑賞を

アニメをテレビで無料放送するのではなく、映画にすれば直接売り上げが見込めるので、アニメ業界はもっと映画にシフトすれば良いと思う。しかし、現在の映画興行では配給会社や映画館のスクリーン数の制約によって、大きな売り上げが見込める作品でなければ上映することは難しい。そこで、プレステVRの出番だ。

SONYのプレステVRはゲームだけでなく、「シネマティックモード」と言う仮想空間内で大迫力のスクリーンを楽しめる機能がある。これを活かせば、ネット配信で映画を楽しむことができるため、配給会社や映画館を通さなくとも、映画興行を成立させることができる。新作のアニメ映画を自宅でいつでも体験できるならば、もっと多くの人がアニメ映画を見るようになるのでは。

アニメでみんなが幸せに

私は本当にアニメが大好きだ。最近、問題になったP.A.WORKSは地元富山の会社という縁もあり、一番好きなアニメ制作会社だ。true tears、Angel Beats!、花咲くいろは、TARI TARI、レッドデータガール、有頂天家族、凪のあすから、グラスリップ、SHIROBAKO、Charlotte、ハルチカ、クロムクロと、ほぼ全てのBlu-rayを買っている。少ないながら、売り上げに貢献してきたつもりだ。

だが、違法な労働環境で苦しんでいる人達を犠牲にしてまで、楽しみたいとは思えない。理想論と言われるかもしれないが、アニメーターが気持ち良くアニメを製作し、相応の対価を受け取り、そうやって出来た素晴らしいアニメを気持ち良く鑑賞したい。

アニメ制作会社は、なんとか現在の苦境を脱し、みんなが幸せになる環境を実現して欲しい。そのためには、私もできるだけの助力を惜しまないつもりだ。


※この記事は、2016年11月08日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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