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給与所得控除の見直しで、サラリーマンの消費税は50%へ

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出典:写真AC

先日行われた衆議院選挙では、消費税増についてどの政党も非常に消極的な公約に終始していた。

自民党は2019年10月に10%に増税するが、増収分の使途を教育無償化など子育て世代への投資に集中するとしている。希望の党・日本維新の会は消費増税凍結を、立憲民主党も増税には否定的な立場をとっている。

選挙では自民党が圧勝したが、このまま消費税10%増を行なっても、膨張し続ける社会保障の見直しはかなり難しい状況だ。

もちろん、国民の負担増がゼロで社会保障制度の維持・改革ができるならばこんなに素晴らしい事は無い。しかし、現実はそんな甘くは無く、消費税増をあてにしていた分は別のどこかから徴収せざるを得ない。

そうなると、所得を補足しやすく、天引きによってこっそり増税しても気づかれないサラリーマンがまたまた絞られる事になる。「なんどめだ、サラリーマン増税」と思われようが。

それが選挙の翌日に政府の税制調査会が発表した「サラリーマンの給与所得控除の見直し」である。その中で財務省は「給与所得控除は、会社員だけが恩恵を受ける仕組みで時代に合わない」と言っているがトンデモない話である。

給与所得控除の見直しにより、サラリーマンは消費税が12%UPするのと同じだ。すでに厚生年金で多額の負担をしている事を考えると、サラリーマンの実質的な消費税は50%に達してしまう。


フリーランスも給与所得控除並みの節税は可能

まずニュースを見て強烈な違和感を感じたのが、「給与所得控除は、会社員だけが恩恵を受ける」である。

私はサラリーマンを12年間勤めてからフリーランスになったので、どちらでどのくらい所得税が取られるかよ〜くわかっている。その上ではっきり断言できるのは、

「給与所得控除があっても、サラリーマンの方が多くの所得税を払っている」

という事である。実際に計算してみよう。

年収500万円のサラリーマンの場合、給与所得控除は、

500万円 × 20% + 54万円 = 154万円

となる。この金額には課税されないため、所得税が安くなるのだ。所得税率は20%なので、30万8千円の節税ができるわけである。

この給与所得控除は確かに私のようなフリーランスには無い。しかし、どっちが不利だろう?

フリーランスの場合、まず青色申告の特別控除65万円がある。これを受けるにはちょっと難しい確定申告が必要だが、会計ソフトを使えば簡単にできるので問題無い。

さらに家で仕事をしているので、家賃、光熱費、通信費(インターネット、スマホ代)などを経費として申告する事ができる。毎月の家賃を8万円、光熱費を2万円、通信費を1万円とすると、年間では132万円になる。

もちろん、その全てが経費として認められるわけでは無い。仕事以外にプライベートとして使用している分も当然あるわけで、これは「どのくらい仕事として使ったか」を比率として申請する。この比率はまあ3〜5割といった所だ。4割と仮定すると、経費は52.8万円になる。

後は仕事で使用した資料、PCソフト、周辺機器、交際費、等々、常識の範囲で経費を積み上げると月2万円程度は使うものだ。

これらを合算すると、フリーランスの年間所得控除は約166万円になる。フリーランスが普通に経費申請していれば、給与所得控除と同等の節税が可能である。上手く節税できれば、サラリーマンよりよほど所得税が少なくて済むだろう。

サラリーマンの実質消費税は50%へ

この給与所得控除が無くなった場合、サラリーマンは大増税になる。わかりやすいよう消費税に換算して考えてみよう。

年収500万円の場合、年間30万8千円なので月額2万5667円のUPだ。月に消費する金額を20万円とすると月額2万5667円は12.8%の消費税に相当するので、20.8%の消費税という事だ。スゴイね!

さらに、サラリーマンはすでに圧倒的な厚生年金を払っている事を忘れてはいけない。「まだ厚生年金で消耗してるの?」に書いたが、サラリーマンの厚生年金料率は収入の18.3%である。年収500万円ならば、月に7万6250円を負担している。(会社負担も、結局は自分が負担しているんだよ)

国民年金の保険料が月額1万6260円であるので、差額は6万円である。これも消費税に換算すると、30%だ。

つまり、サラリーマンはもう既に厚生年金の負担で実質消費税が38%の状態である。ここに給与所得控除まで無くすというのは質消費税が50%に達してしまう。サラリーマンだけを狙い撃ちしたトンデモない不公平である。

給与所得控除はサラリーマンに残された最後の救いの手

サラリーマンは全国に5,646万人いるが、それでも国民の半分以下である。しかも年収1000万円を超えたお金持ちなんてほとんどいない、日々働き続け、平均収入が420万円という普通の人達だ。

そんな頑張っている人達は既にトンデモない厚生年金が課され、実質消費税は38%になっている。ここに給与所得控除が無くなれば、実質消費税は50%にまで達してしまう。

まさに江戸時代の五公五民を再現したかのような重税では無いか。

衆議院選挙では「国民の負担を減らすために、消費増税10%の凍結を」と訴えていた政党が有ったが、彼らの言う国民にサラリーマンは含まれていないのだろうか。

あらゆる政治家が「消費税増を訴えれば、選挙に負ける」と口にするが、そんな政治家の身分保障のためにサラリーマンは乾いた雑巾のように絞り尽くされ、さらにまた絞られるのである。

そんなサラリーマンにとって悪魔のような税制・社会保障制度の中、給与所得控除はフリーランスと同等の節税効果が得られる女神のような存在であった。国はその女神すらサラリーマンから奪おうと言うのだ。

しかし、今回の給与所得控除の見直しで怒りの声を上げているサラリーマンはあまり目にしない。本当に給与所得控除が廃止されても、月の手取りが1万円減る程度だろう(所得税の大半はボーナス時に天引きされるため)。もしかしたら定期昇給と相殺されて、気づかない人すらいるかもしれない。

まさに己の死に気づかない「茹でガエル」としか表現しようがない。

これを覆すには、サラリーマンがもっと声を上げていくしかない。先日の選挙でわかったように、今の政治家は全くサラリーマンの味方をするつもりは無い。

茹でガエルになる前に脱出するか、抗議するか、サラリーマンが自ら行動する以外に状況を変える術は無いのだ。

参照:毎日新聞・10/6gooニュース・10/23産経新聞・10/23日本経済新聞・10/25国税庁

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author : 宮寺達也

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  1. 税理士 より:

    > これらを合算すると、フリーランスの年間所得控除は約166万円になる。フリーランスが普通に経費申請していれば、給与所得控除と同等の節税が可能である。

    青色申告特別控除の65万はともかく、現金支出を伴う「経費」と現金支出を伴わない「給与所得控除」を同列に扱うのは、さすがに無理があると思いますが…というか意味がわかりません。別にサラリーマンにも経費を認めて確定申告してもらえばいいだけでは?既に特定支出控除がありますが。

  2. ただの通りすがり より:

    そもそも無条件に認められる給与所得控除と経費を同列に扱うのはおかしいと思いますよ
    極端なことをいえば経費を積み上げることでいくらでも圧縮できますがそんなのは何の意味もないことです
    確かに厚生年金等社会保険料は安くはありませんが損かどうかは微妙でしょう
    国民年金だけで生活できずに生活保護を貰う高齢者は多いですし 障害年金や遺族年金等もあることを考えると無条件に損とはいえないでしょう これは年収等にもよると思いますが

    それと所得税に関してはまともに払ってる人が少なく特に中間層に関しては極端に負担が低いといえます
    はっきり申し上げて税収が少ない一番の原因は所得税が低いからです
    高所得者の給与職控除はすでに上限導入および1000万まで引き下げですのでこれをさらに引き下げるのか中間層まで波及させるのかどうなるでしょうか

    なんだかんだいってサラリーマンは数が多いですから政治的にもかなり強いと言え優遇されてると思いますよ

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