政治

第48回衆議院選挙。「初志貫徹」が国民の心を掴んだ選挙だった

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出典:自民党衆院選2017

第48回衆議院選挙が終了し、全議席が確定した。

結果は自民党・公明党が改憲の発議に必要な2/3議席を確保し、引き続き政権を担当。小池百合子都知事が代表を務める希望の党は50議席、当初予想を大幅に下回る惨敗。急遽結党した立憲民主党が55議席で野党第1党に躍進する大勝利、という結果であった。

面白いのは希望・立憲民主・民進系無所属(19議席)を合わせると124議席になり、民進党が解散前の88議席より大幅に勢力を伸ばしている点だ。

私が「前原誠司・民進党代表の捨て身の決断も虚しく。もしかして立憲民主党の1人勝ちなのか?」で書いた通り、選挙後は立憲民主が中心になり民進系議員が再結集する事態になりそうだ。

民進党の前原誠司代表が捨て身の決断をし、多くの有識者が期待した「ガラパゴス左翼の壊滅」とは全く逆の結果になってしまった。

さて、今回の選挙は与党が2/3以上と圧勝である、野党にはお通夜ムードが蔓延しているはずだ。しかし、そんな事お構いなく野党同士が勝った負けたと騒いでいる。こんな選挙は生まれて初めてだ。

今回の衆議院選挙の勝敗とは、それを分けたものは何だったのか?

それは「初志貫徹の勝利」、「信念を見失った敗北」と言えるのではないだろうか。


<自民党> 議席を失っても構わない覚悟で勝負を貫いた安倍総理の覚悟

自民党は定数が10議席減ったにも拘わらず、公示前議席と同じ284議席を確保した。公明党と合わせて与党で改憲の発議に必要な2/3議席を確保する圧勝であった。

もっとも、解散が発表された9月25日に小池氏自らが代表に就任する希望の党が発表され、
大幅な議席減は免れないとの見通しだった。特に民進党から希望の党への合流が発表された9月27日は「希望の党は150議席、もしかしたら過半数獲得もあるかも。政権交代だ!」との声すら出てきた。

安倍総理はこの時点ではまだ正式に解散を宣言しておらず、「今からでも解散を中止するべき」「安倍総理は解散のタイミングを誤った」との意見が多く、自民党内からも聞こえていた。

しかし、安倍総理は議席減を覚悟で9月28日の臨時国会で正式に衆議院を解散した。

安倍総理自身も勝敗ラインを「連立与党で過半数」と設定したように、2/3を取れるとは思っていなかったのだろう。しかし、もし過半数をギリギリで確保しても自民党は60以上の議席減となる。そうなると安倍総理の責任問題になり、退陣の声も上がってくるだろう。

そんな中で安倍総理は小池新党の準備が整わない今が最大のチャンスと考え、その初志を貫徹した。

事実、小池新党の動きを見るとモリカケ問題で安部政権の支持率が低下している年内は解散しないと踏んでいたように思う。小池サイドは明らかに新党準備の完成を来年春辺りに設定していた。そこまで解散を先送りすれば民進党や日本維新の会との選挙区調整が完了し、自民党は大幅に議席を失っていただろう。

支持率低下の局面にビビらず、勝負に出た安倍総理が勝利した。これこそ小池氏のお株を奪う「崖から飛び降りる覚悟」であった。

<立憲民主党> 時間が全く無い中で新党を立ち上げた枝野代表の実務能力

枝野幸男氏が代表となって躍進した立憲民主党であるが、本当に超スピードで立ち上がった。

小池氏の「排除」発言が飛び出した9月29日、民進党の両院議員総会で全会一致で承認されたはずの希望の党への合流に反発者が出始めた。しかし、その頃はまだ悪名高い政策協定書も明らかになっておらず、「全員合流できるのか、どうなのか?」と言った漠然とした反発であった。

前原氏はその懸念に対して「誰かを排除するということではない。安倍政権を倒すことを一緒にやりたい」と何とも玉虫色の回答をしている。排除は無いとしながら全員合流を明言せず、反発して新党結成をする動きを牽制していたと思う。

そして10月に入り、公示日の10日が目前に迫ってくると「新党の結成は時間的に難しい」との声も出始めた。しかし、そのタイミングで枝野氏は新党・立憲民主党を結党し、わずか1週間で78人もの候補者を擁立してしまった。

もしも政策協定書が明らかになった10月3日以降に新党結成の動きに出たら時間切れだっただろう。また実務能力が低ければ、たった1週間でここまで候補者を集める事も難しかっただろう。

「全員合流で無ければ希望の党へは行かない」「改憲に反対」「安保法制に反対」「共産党を含む野党共闘」と、民進党内でもかなり賛否が分かれていた内容について初志貫徹した枝野氏の、その判断力と実務能力の勝利である。

しかし、私は正確には「初志貫徹」できていないと思っている。希望の党の政策は9月25日には明らかになっていたのだから、政策が違うので合流が嫌ならば両院議員総会で反対するべきだった。政策がまるで違うとわかっている希望の党への合流を一度は承認したメンバーが、「やっぱりヤメタ」とは何とも嘆かわしい。結局は、自らの当選が最優先で希望の党へ合流した民進党メンバーと何が違うのかと思ってしまう。

<民進系無所属> 21人中18人が当選。実は今回の衆議院選挙の最大の勝利者

民進系無所属は、今回の選挙で無類の強さを発揮した。政党の後ろ盾が無く比例復活できないので落選したら即無職という状況の中、21人中18人が当選した。これは日本共産党(12議席)、日本維新の会(11議席)を上回る勢力である。

野田佳彦元総理や岡田克也元民主党代表の様にいち早く無所属での立候補を表明した議員もいたが、大半は希望の党の政策協定書に不満を感じて、希望の党からの立候補を取りやめた連中である。

やはり合流を決めた9月28日には希望の党の政策は明らかになっていたので、「いや、政策が違うなら最初から合流すんなや」と思うのだが。

しかし希望の党の好感度が急降下する中、有権者の皆さんはそんな細かい事を気にしなかったようである。「初志を貫く立派な議員だ」と好感度が上がったようだ。

ただ、希望の党で民進候補者の公認選定作業を行った玄葉光一郎氏が「公認に漏れた方々の立場を考えた時、非常に心苦しい」と無所属で立候補したのは流石にズルいと思った。

後、民進党を離党していたとはいえ、不倫疑惑で離党した山尾志桜里氏が当選し、旦那が不倫して騒がれた自民党の金子恵美氏が落選したのは世の不条理を感じたものだ。

<希望の党> 小池氏が出馬の決断を貫徹できず、大敗北

今回の選挙では、どこも希望の党は大敗北だと報じている。冷静に見ると公示前勢力が57議席なので50議席は言うほど大敗では無い。小池新党が出来る前も50議席くらいだろうとの観測だったので、まあまあと言って良い。

だが、政策協定書と言う踏み絵を踏ませてまで民進候補者を選別し、過半数を超える234人を立候補させたのだから、確かに大敗だ。都議選で圧勝したはずのお膝元の東京選挙区で1勝22敗というのも酷い。供託金の没収は東京だけで1億円、トータルは3億円くらいになるのではないか。

さて、選挙期間中にあれよあれよと好感度が下がっていった希望の党であるが、政策についてはかなり初志貫徹していた。中身は全く無い政策なので、貫くも曲げるも無いだけだったのかもしれないが。

事実、批判が多かった「大企業の内部留保への課税」について、小池氏は「課税にこだわらず」と修正している。「拘らないのが拘り」と言わんばかりのユルさだ。ま、その政策修正で批判も賛成も無かったので、有権者もそもそも希望の党には政策を期待していなかったのかもしれないが。

やはり、「初志を曲げた」のは小池氏自らの衆議院選挙への立候補だろう。「小池百合子・希望の党代表と小池百合子・東京都知事、どうして差がついたのか…慢心、環境の違い」に書いた通り、小池氏の持ち味は「崖から飛び降りる覚悟」だ。

都知事選では国会議員の立場も、自民党公認の立場も捨てて無所属で挑戦し、圧勝した。都議選では「二元代表制に反する」との批判もものともせず、自らが都民ファーストの会の代表に就任し、圧勝した。

そんな小池氏を応援してきた有権者は、今回の選挙も「都知事を1年で放り出すという批判をものともせず、希望の党代表として立候補するはず」と期待していたはずだ。

しかし、小池氏は衆院選がダメでも都知事があるという状況に慢心したのだろう。希望の党の勢い、都知事辞任への批判、そういった世論を調査しながら「都知事に留まるか、出馬するか、どちらが有利か」と出馬の判断を先送りにした結果、希望の党の好感度が先に急降下してしまった。

まるで下がり続ける売り上げをいつまでも見守りながら、既存の事業を損切りできない日本の大企業みたいであった。

<日本維新の会> 信念を曲げて希望の党と選挙協力(野合)。まるで大阪冬の陣

日本維新の会はかねてから民進党に批判的である。それもそのはず、2015年に民主党と維新の党の合併話が持ちあがり、それに反発したメンバーで結成されたのが今の日本維新の会であるからだ。維新の議員は常々、民進党が進める野党共闘を「野合」と批判してきた。

なので、希望の党への民進党の合流が発表された直後、松井一郎代表は「(民進党と合流なら)しがらみがありすぎる。言葉倒れだ」と批判している。

しかし、その2日後には東京都内の小選挙区には維新の候補者を立てず、大阪府内は希望の党の候補者を立てない選挙協力を発表した。松井代表は「政策的にほぼ一致している」と述べ、大村秀章・愛知県知事を交えての「三都物語」と称して連携をアピールした。

私は2008年に橋下徹氏が大阪府知事に当選したとき、大阪に住んでいた。その時からのオールド維新ファンとして、この選挙協力には批判的だった。

私は維新の魅力は、「政策を確かに実行する姿勢」だと思っている。松井代表は「身を切る改革で、維新と希望は一致している」と言うが、希望の党に本当に政策を実行する能力、気持ちがあるかは疑わしい。この1年の小池都知事の東京都政を見れば明らかである。

そのため、私にはこの選挙協力は維新が兼ねてから批判してきた「野合」そのものではないか、維新は信念を曲げてしまったのか、と失望した。そこで、

だいたい予想通りの展開。
維新の会も毒まんじゅうを食ったか。

松井氏「政策的にほぼ一致している状況なので」

希望の党に政策なんて無いのはみんなわかってる。結局、維新の会も当選だけが目的の既得権集団に落ちてしまったのか。

批判のツイートをした。すると「希望の党という暴風から地元を守る松井代表の英断」「それを批判するとは自民原理主義者が」と批判をいただいたが、結果はどうだっただろう。

維新は前回の衆議院選挙での41議席を遥かに下回る11議席。分裂後の公示前勢力14議席すら下回ってしまった。選挙協力をした地元の大阪でも小選挙区は3勝12敗。結党時の2012年の衆議院選挙では自民党、民主党と真っ向勝負して12勝3敗だった事を考えると、すっかり党勢が衰えている。

勝利した大阪17、18、19区は2012年以来、ずっと勝ち続けている選挙区だ。そもそも東京選挙区で維新が勝てる見込みも無かった。希望の党と選挙協力しなくても、結果は変わらなかったのではないか。

もちろん結果論だ。だが、どうせ信念を曲げてしまうなら希望の党との選挙協力を途中で見直して欲しかった。公示2日目の10月12日に、突然「特定の党に応援に入ることは、現段階で考えていない」と、三都物語を終わらせた大村知事の様に。

私のようなオールド維新ファンが望むのは何よりも大阪の改革、「維新以外、全部敵に回しても大阪を変えてくれそう」と信念を持って突き進む姿である。

国政に進出するのは良いが、そこで信念を曲げて敗北する姿を見せられては、大阪の有権者も離れてしまうのではないか。今回の選挙が、外堀を埋め立てられた大阪冬の陣の様にならない事を祈っている。

その他

<公明党>
5議席減の29議席で結構な敗北。だけどいつも31議席とかなので、前回が多かったのかも。

<社民党>
いつも「次の選挙で消える」と言われながら、3回連続で2議席をキープ。そのしぶとさは賞賛。

<日本共産党>
21議席からほぼ半減の12議席ってとんでもない大敗北。実は今回の選挙の一番の大敗。

しかし、志位和夫委員長は「立憲民主が大きく躍進し、共闘勢力全体としては議席を大きく増やしたのは大変うれしいことだ」とのコメント。

こんな吞気な委員長が17年間も交代せずに続けてるのは凄い。解任論とか出ないのかな。本当、どんな組織なんだろう。

参照:朝日新聞・2017衆院選日本経済新聞・10/23朝日新聞・10/9日本経済新聞・9/28産経新聞・10/6日本経済新聞・10/13日刊スポーツ・9/29朝日新聞・9/30スポーツニッポン・10/12朝日新聞・10/23

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author : 宮寺達也

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