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最高裁判所・裁判官より、地方裁判所・裁判官の国民審査を

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出典:イラストAC

いよいよ今週末の10月22日は第48回衆議院選挙の投票日である。「猿は木から落ちても猿だが、代議士は選挙に落ちればただの人だ」とは昭和の大物政治家・大野伴睦の言葉である。投票日を目前にし、ただの人になりたく無い候補者が必死の戦いを繰り広げている。

投票日は台風接近の予報もあるので、是非とも期日前投票を活用してできるだけ多くの方に投票に行って欲しい。これから4年間の日本を担うリーダーを私たちが決めるのだ。

さて、衆議院選挙では同時に「最高裁判所裁判官国民審査」が行われる。罷免したい最高裁の裁判官がいれば、その人に×をつける。そして過半数の×が集まれば、その裁判官が罷免される制度だ。

この制度は日本国憲法第79条に記載された由緒正しきものであるが、はっきり言って無意味だと思う。こんな無意味な審査をするくらいなら、地方裁判所の裁判官を審査するのはどうだろうか?


絶対に罷免されない最高裁判所裁判官国民審査

今回の国民審査では7人の裁判官が審査対象である。もちろん何もしていない訳では無い。国民審査に向けて広報を出したり、報道機関のアンケートに答えたり、自分の信念や憲法改正、これまでの実績などをアピールしている。(参照:朝日新聞

しかし、緊張感は全く無いだろう。国民審査はこれまでに23回、延べ172人の裁判官が審査された。しかし過半数の×を獲得し、罷免されたものは一人もいない。

統計のテクニックでざっと考えてみよう。2005年からの国民審査の×の割合を集計すると、平均は7.8%である。標準偏差(わからない人はググってね)が0.96%である。

これは簡単に言うと、8.8%まで×が増える確率が32%、9.7%まで×が増える確率が5%、10.7%まで×が増える確率が0.3%、と言う事である。

では過半数の50%まで×が達する可能性がどれくらい有るかと言うと、ゼロである。Excelでは小さすぎて計算できなかった。20%まで達する可能性ですら0.0000000000025%と、40兆分の1の確率である。年末ジャンボ宝くじの1等当選確率が約1000万分の1なので、天文学的低さだ。

事実、歴代の国民審査で最も×がが多かったのは、1972年の下田武三氏で15.17%である。

統計的に、国民審査で裁判官が罷免される可能性はゼロだ。断言して良い。

本来は最高裁判所の裁判官も衆議院選挙の候補者と同じく、国民審査で否認されたら職を失い、ただの人になるはずだ。しかし、国民審査に向けて必死に演説やアピールをしている裁判官を見た人はいないだろう。確率ゼロなんだから納得だ。

目的はともかく、こんな現実に何も影響を与えない制度は破綻している。

最高裁判所は私たちに身近な判断を行わない

ここまで国民審査が機能しないのは、最高裁の裁判が身近で無いからだろう。日本の裁判は三審制であり、最高裁まで続く裁判は少ない。ほとんどは地裁、高裁で決着している。

また最高裁は「法律審」であり、事実認定を争う場では無い。例えば、殺人事件の裁判では「この証拠で被告を犯人と断定できるか、否か」という事は審理しない。そこに問題があれば、高裁に差し戻される。

最高裁は「殺人を犯した事が、刑法に違反しているかどうか」など、あくまで法律違反の有無を判断するのである。

なので、逆転裁判やドラマでイメージするようなドラマティックな判決はまず無い。また最低でも3人以上で審理するので、とんでもない裁判官の独断によるとんでも判決が出る事もまず無い。

そのため、最高裁の判決を見て「え、とんでも無い判決だ。もし私が当事者だったらどうしよう」という事はなかなか無いだろう。そのため、最高裁の裁判官の事を積極的に知る機会も、モチベーションも出てこない。

私たちに身近なのは、トンデモ判決を連発する地方裁判所の裁判官

しかし、地方裁判所は違う。日本の裁判の多くは地方裁判所から始まる。私たちも何かしらの事件やトラブルでお世話になる可能性がある。

そして、たくさんの裁判を扱っているからなのか、どうせ高裁で直されるからと甘えているのか、トンデモ裁判官によるトンデモ判決が連発されている。

その中でも、私が思う「これは絶対におかしい」と思う裁判を紹介したい。

No.1 東京・三鷹バス痴漢冤罪事件

この事件は、2011年にJR吉祥寺駅から出発したバスの車内で「スカートの上からお尻をなでた」として津山正義さんが逮捕された。

津山さんは事件直後に手に付着した繊維を検査したが、検出されなかった。さらに事件が起きた時間は携帯でメールをしており、記録も残っている。バスの車載カメラの映像でも左手でつり革を握り、右手でメールをしている映像が残っている。また、被害にあったとされる女性も津山さんが痴漢をした姿は見ていないと証言している。

しかし、東京地裁立川支部の判決(倉澤裁判官)では「犯行が不可能とは断言できない」という、証拠が全く無いのに有罪判決が下された。推定無罪の原則を遥か遠くにすっ飛ばしたトンデモ判決である。

この後の2014年、東京高裁で逆転無罪の判決が下された。だが、3年以上にも渡り犯人扱いされ、津山さんの人生には取り返しのつかない傷がついてしまった。

No.2 高浜原発 再稼働差し止め仮処分

2016年3月9日、原子力規制委員会の安全審査をクリアし再稼働していた関西電力の高浜原発に、大津地裁(山本善彦裁判長)は運転を認めない仮処分の判決を出した。

このため再稼働していた高浜原発は運転停止に追い込まれた。その損失は数千億円から1兆円にも上ると言われている。

高浜原発はこの判決だけでなく、福井地裁の樋口英明裁判長によっても再稼働停止の判決が出されている(この時はまだ停止中)。

専門家である原子力規制委員会と関西電力が膨大な時間を掛けて安全対策を積み上げてきたのに、「万が一があるかもしれない」と素人の裁判官の思い込みで原発が停止に追い込まれた。

もちろん、高裁ではこのような適当な判決は却下される。高浜原発も今年の3月に大阪高裁で仮処分が取り消された。

原発停止を決めた裁判官は、狭窄した正義感なのか、もし原発が事故を起こしたらどうしようという不安からなのか、極めて非科学的な判決を出し莫大な損失を関西圏の住民に負わせた。

自分でその損失を負担するのならまだ話はわかるが、無責任極まりない。

私たちに地方裁判所の裁判官を審査させて欲しい

私は最高裁判所裁判官国民審査は無意味だと思うので、廃止して欲しいと思う。しかしそれには憲法改正が必要なので、すぐには無理だろう。

だからせめて裁判官を審査するならば、私たちに身近な地方裁判所の裁判官も審査させて欲しい。

もちろん副作用はあるだろうから、まずは限定的なスタートでも良い。例えば、先に挙げた例のように、

・高裁で判決が覆された判決

・明らかに不合理で、国民から多くの批判が上がっている判決

に限定して始めるのはどうだろうか。また、否認が多数集まった場合もいきなり罷免とかではなく、降格や一定期間の資格停止など軽い処分からスタートするのも良いだろう。

裁判員制度なんかより、よっぽど司法への信頼向上に繋がると思うのだ。

参照:Wikipedia 最高裁判所裁判官国民審査裁判所Yourpedia 東京・三鷹バス痴漢冤罪事件東京・三鷹バス痴漢冤罪事件日本経済新聞朝日新聞・2017/3/28HUFFPOST裁判員制度

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author : 宮寺達也

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