出典:fnn-news(
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00372216.html)
第48回衆議院選挙の告示日である10月10日が迫ってきた。衆議院解散を発表してからわずか1週間で希望の党が結党したり、民進党が壊滅したり、立憲民主党が誕生したりと、かつてなくめまぐるしい政局が繰り広げられている。
そんな政局の大トリになりそうなのが、希望の党代表・小池百合子氏の衆議院選挙への出馬である。小池百合子氏はこれまであらゆるマスコミの取材に対して「出馬は無い」と断言している。
しかし、その発言を額面通りに受け止めている人はいない。希望の党は民進党も飲み込んで勢力を拡大し、「政権選択選挙か?」と言われだした。初の女性総理を狙っている小池百合子氏は出馬する気が満々のハズだ。
だが、どうも希望の党を巡る世論は小池百合子氏の思惑とは外れて来ており、出馬に赤信号が灯りつつある。
小池百合子氏。さあ、東京都知事を辞任して衆議院選挙に出馬するのか、しないのか、どっちなんだい?
小池百合子氏が描いた衆議院出馬への理想的な流れ
そもそも小池新党とは、側近である若狭勝氏と民進党を離党した細野豪志氏が中心になって立ち上げる若狭・細野新党に、小池百合子氏が顧問もしくは共同代表として就任すると言われていた。
自らが顧問を務める都民ファーストの会や、日本維新の会における松井一郎大阪府知事のような立ち位置である。小池百合子氏は東京都知事に就任したまま、所属議員を応援するという形であった。
しかし大方の予想を裏切り、新党・希望の党は小池百合子氏が自ら立ち上げ、代表に就任する正真正銘の小池新党であった。さらに代表就任時に「リセットして、私自身が立ち上げる。直接、絡んでいきたいと思っている」と宣言した。
この時点で希望の党は40〜50議席を獲得する程度の観測だった。若狭・細野新党よりは議席を伸ばしただろうが、どっちにしろ政権交代には程遠い。なのに、小池百合子氏は明らかに国政への関与のギアを1段上げて来た。直前に公明党に「国政に進出したら、都民ファーストの会との連携を解消する」との警告を受けてまでである。
これは国政に強く関与したいというより、東京都政から逃げ出したいという判断であると思われる。
小池百合子氏が東京都知事に就任して1年しか経っていないが、豊洲市場移転の延期問題やオリンピックの準備遅れの問題が山積みになっており、1兆円とも2兆円とも言われる損失を出そうとしている。
このまま都知事を続けた所でどんどん不支持は拡大し、ジリ貧になるのは目に見えている。そもそも都知事に就任したのも国政でのステップアップと見られていた。都知事を辞任して国政に戻るには最適というか、ここしか無いタイミングだ。
もちろん都知事を辞任する事への批判は予測しただろうが、モリカケ問題で安倍政権が支持率を落とし、民進党も山尾志桜里氏の不倫問題で支持が低迷している。批判以上に国政の救世主として、
「きゃ~、小池さ〜ん。東京だけじゃなく日本を改革して~」
声援が送られると読んだのだろう。
問題山積みの東京都政からは逃げ出せるし、自公連立政権に食い込めば日本初の女性総理の可能性も出てくる。小池百合子氏にとっては、これ以上ない理想のストーリーだったはずだ。
民進党の合流は想定内。自らの不支持拡大と立憲民主党の設立が想定外
希望の党を立ち上げてから3〜4日は小池百合子氏にとっては、笑いが止まらない展開だっただろう。
9月27日に前原誠司・民進党代表が「民進党は候補者を立てず、全員、希望の党に合流する」という希望の党による民進党の吸収合併が発表されたからだ。これで希望の党は野党第1党になり、注目度も圧倒的に拡大した。本気で政権交代が出来るのではという空気も高まり、日本初の女性総理は目の前だ。この時は間違い無く、衆議院選挙に出馬する気100%だったはず。
しかし、そこから状況はどんどん下がっていく。9月30日の読売新聞の世論調査では、「小池百合子氏は、都知事の仕事に専念すべきだ」が62%でトップになった。希望の党の支持は東京が中心であり、その東京都政を投げ出す事は有権者が許さなかったのだ。
そして民進党との合流が上手く行かない。リベラル派を選別しようとした小池百合子氏のやり方が性急だったのか、全員合流できると思っていた前原氏の考えが甘かったのか、真相は2人の中だが合流は上手く進まなかった。
ついには枝野幸男氏を中心とし、両院議員総会で一度は希望の党行きに賛同したはずの民進党リベラル派議員を中心として新党「立憲民主党」が立ち上がってしまった。
こうなると小選挙区で野党候補の一本化は不可能であり、希望の党はかなり議席を減らす。とても政権交代は不可能だ。側近の若狭氏はテレビ討論番組で「政権交代の見通しがあれば(小池氏が)国政に出ることもあり得る」「次の次ぐらいの時」と事実上の敗北宣言までしてしまった。
小池百合子氏は出馬する気満々なのに、味方からどんどん背中を撃たれてる。小池百合子氏は若狭氏に「もうテレビに出るな」と言ったらしいが、発言は取り消せない。
こうして希望の党の勢いが弱まるにつれて、小池百合子氏の出馬に逆風が吹き始めた。ついには小池百合子氏の都知事辞職・出馬への反対は72%まで拡大してしまった。
この状態で小池百合子氏が出馬しても批判の声が殺到する。「ふわっとした民意」だけが取り柄である小池百合子氏にとって、人気低下は致命的である。当初は100%出馬すると思われていたが、逆に「100%出馬できない」と言われるまでになってしまった。
小池百合子氏は出馬しても終わり、出馬しなくても終わり
さて、では公示日の10月10日までに小池百合子氏は都知事を辞任し、衆議院選挙に出馬するのか?
はっきり言って、さっぱりわからない。
舛添元都知事はこの状況について、
小池都知事、衆院選に出れば勝って首相になる可能性。出なければ、首相候補を持たぬ希望の党は敗北。不出馬の代表の責任。都政は首相ポストへの踏み台にすぎず、豊洲など難問続出で投げ出したいところ。都政で成果は上げられず、職員の評価も低い。政治家生命は終わる。だから出馬以外の選択肢はない。
とツイートし、出馬を予告している。
私もこの見立ては非常に論理的だと思う。小池百合子氏が東京都知事を続けても、国政政党の代表という二足の草鞋が加わって、間違い無く破綻する。足元の都議会でも都民ファーストの会で2人が離党を表明し、公明党も離反し、もうボロボロだ。
希望の党も勢いが無くなったとはいえ、結党時の50議席程度の予測を大きく上回る事は確実だ。状況だけ見れば、結党時の予定通りに出馬するのが論理的だ。
しかし、小池百合子氏に論理は通用しない。
自分ファーストとも野望ファーストとも言われる小池百合子氏が、一度は日本初の女性総理が見えたのに今さら少数野党の代表で満足するとは思えない。実際、「ただの国会議員なんて、私はもういい」と側近の都議に漏らしたようである。
極めて非論理的だが、小池百合子氏はこの「日本初の女性総理じゃなきゃイヤ」という時系列も論理のへったくれも無い感情に身を任せるのではないか。
というわけで、非常に難しい予想だが、私は衆議院選挙に出馬しないと思う。
しかし、どちらにしても小池百合子氏の政治生命は確実に終了に向かう。
問題を山積みにして都知事を1年で放り出すのも、自ら国政政党を立ち上げて代表になったのに仲間を見捨てて出馬しないのも、どちらも無責任である。
この状況を、自民党の小泉進次郎氏は、
あえて単純に今回の選挙の構図を言えば、「責任対無責任」の戦いだ。
小池百合子・東京都知事は無責任。都知事選、いつやったか。去年だ。衆院選に立候補すれば都政を投げ出す無責任。
逆に、出なければ出ないで無責任。なぜか。せっかく民進党をなくしたのに、出てくれないんですか。
出ても無責任、出なくても無責任の、「無責任のジレンマ」に陥った。
と演説した(https://twitter.com/YES777777777/status/914503482631086081)。極めて的確に現在の状況を表している。小池百合子氏はどちらの無責任を選ぶのだろう。
参照:日本経済新聞、産経新聞・10/3、産経新聞・9/29、J-CASTニュース・10/2、J-CASTニュース・10/3、JX通信社 衆院選第2回情勢調査、毎日新聞、朝日新聞・10/2(http://digital.asahi.com/articles/ASKB15JDQKB1UTFK00J.html)、朝日新聞・10/1(http://www.asahi.com/articles/ASKB16R02KB1UTFK015.html)