政治

小池百合子代表「希望の党」の政策協定書を採点する

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出典:fnn-news

今回の衆議院選挙は、小池百合子氏が自ら代表就任を宣言した希望の党が中心となる事はわかっていた。しかし、自民党と民進党が多少議席を減らしつつも希望の党は40~50議席程度に終わり、与野党の勢力図を大きく覆すにはいたらないと思っていた。

そんな空気は、9月27日に「民進党は公認を出さず、民進党の議員は希望の党に合流して立候補」という前原代表の方針が明らかになると一変した。事実上の民進党の解党、希望の党への吸収合併とあって、土日のワイドショーは民進党の議員が希望の党に行くのか行かないのか、その悲喜こもごもで独占された。

たったの5日でここまで(野党だけとはいえ)政治情勢が変わったのはちょっと記憶に無い。歴史に残る数日を目撃している感じだ。

さて、民進党と希望の党の合流であるが、希望の党から出馬を望むもの、野田元総理のように無所属で出馬するもの、枝野氏が立ちあげた新党「立憲民主党」から出馬するものと、3分されている。

最初はほぼ全員が希望の党に移り、政権交代すら可能な巨大野党が誕生する勢いだったが、随分トーンダウンした感じだ。その理由の一つに、希望の党から立候補する民進党議員を、小池代表が「排除の論理」を適用して選別している事がある。

希望の党から立候補を望む民進党議員は、10項目からなる「政策協定書」にサインしなければいけない。だが、その内容が民進党のこれまでの政策と大きく異なる上、なかなか過激なものだった。まさに「踏み絵」を迫られている。

もしかしたら「希望の党の政策協定書がもう少し違ったら、あの時政権交代していたかもしれない」と未来で評価されるかもしれない。そこで、政策協定書が野党再編にふさわしいものであったか、採点してみよう。


希望の党の「政策協定書」の原案と最終案

希望の党が出した政策協定書は10月2日に明らかになったのだが、原案と最終案が有る。原案は民進党議員には政策の変更幅が大きすぎると言う事で、最終案では譲歩されている。

もちろん採点は最終案に対して行うのだが、原案があまりにもデタラメなので参考として紹介したい。

<希望の党 政策協定書(原案)>

希望の党 小池百合子代表殿

政 策 協 定 書

 私は、希望の党の公認を受けて衆議院選挙に立候補するに当たり、以下を順守すること、当選した場合には希望の党の所属する会派に所属して国会活動を行うこと、希望の党党員として政治活動を行うことを誓います。

1. 希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。

2. 限定的な集団的自衛権の行使を含め安全保障法制を基本的に容認し、現実的な安全保障政策を支持すること。

3. 憲法改正を支持すること。

4. 2019年10月の消費税の10%への引上げについては凍結を容認すること。

5. 外国人に対する地方参政権の付与については反対すること。

6. 政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。

7. 本選挙に当たり、党の指示する金額を党に提供すること。

8. 希望の党の公約を遵守すること。

年        月        日

第48回衆議院選挙 立候補予定者

—————————-

<希望の党 政策協定書(最終案)>

希望の党 小池百合子代表殿

政 策 協 定 書

 私は、希望の党の公認を受けて衆議院選挙に立候補するに当たり、下記事項を順守すること、当選した場合には希望の党の所属する会派に所属して国会活動を行うこと、希望の党党員として政治活動を行うことを誓います。

1. 希望の党の綱領を支持し、「寛容な改革保守政党」を目指すこと。

2. 現下の厳しい国際情勢に鑑み、現行の安全保障法制については、憲法に則り適切に運用する。その上で不断の見直しを行い、現実的な安全保障政策を支持する。

3. 税金の有効活用(ワイズ・スペンディング)を徹底し、国民が納める税の恩恵が全ての国民に行き渡る仕組みを強化すること。

4. 憲法改正を支持し、憲法改正論議を幅広く進めること。

5. 国民に負担を求める前に国会議員が身を切る改革を断行する必要があること及びいわゆる景気弾力条項の趣旨を踏まえて、 2019年10月の消費税の10%への引上げを凍結すること。

6. 外国人に対する地方参政権の付与に反対すること。

7. 政党支部において企業団体献金を受け取らないこと。

8. 希望の党の公約を遵守すること。

9. 希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。

10. 選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わないこと。

年        月        日

第48回衆議院選挙 立候補予定者

—————————-

(なお、最終案は荒鷲征二さんに情報提供いただきました)

さて、ざっと見て思ったのだが、これって「踏み絵」じゃなくて、「奴隷契約書」じゃないの?

希望の党の「政策協定書(最終案)」は、実は民進党の政策とほとんど同じ

希望の党の政策協定書は、原案の時点から「安全保障法制を基本的に容認」がピックアップされていた。民進党は安全保障法制には強硬に反対していたし、現在でもそのスタンスは変わっていない。

民進党が希望の党への合流を目論んだ背景には、北朝鮮情勢が逼迫しても護憲を唱える事しかしない「ガラパゴス左翼」の切り捨てという、前原氏・小池氏の共通の目的が有ったと言う見方がある。

私もその見方は合っていると思う。前原氏は現実的な安全保障政策の考えで知られているし、希望の党の結党メンバーである民進党離党組の細野氏、長島氏も近い考えである。「でも、あんたら党全体でプラカードまで出して強硬に反対しましたやん」とツッコミたくなるが、安全保障政策の転換を迫る踏み絵として機能しそうだ。

しかし、違和感が残る。民進党を消滅させるほどこだわった安全保障の内容について、なぜ原案と最終案で内容を変えたのか?

「集団的自衛権の行使を含めた安全保障法制を基本的に容認」と「憲法に則り適切に運用する」では天と地ほど違う。民進党の安全保障法制反対の論拠は「憲法違反の法律は存在から認められない」なのだから、「憲法に則り運用すればOK」ならば「そりゃどんな法律も一緒やん」となってしまう。極めて「あまぁ~い!」内容だ。

この内容ならば、民進党の基本的政策に書いてある「現実的な外交安全保障」とほとんど同じである。この内容への同意に躊躇する議員は少ないだろう。

他の項目も希望の政策や綱領と中身が被っているものが多く、「1. 綱領への指示」「8. 公約への遵守」で十分である。わざわざ個別の項目にした意味がいまいちわからない。

それにそもそも希望の政策綱領も極めてふわっとしている美辞麗句のオンパレードなので、反対する理由も少ない。

また「外国人参政権への反対」と「企業団体献金の禁止」は新しい項目だが、これも実は民進党の政策と一致している。

世間のイメージは違うかもしれないが、民進党の政策には「外国人参政権」は見当たらない。民主党時代の基本政策には有ったが、昔の話だ。民進党議員の真意はともかく、この内容への同意に躊躇する議員は少ないだろう。

さらには「企業団体献金の禁止」も民進党の政策にあるので、反対する理由は無い。さらに言うならば民進党の政策には「消費増税の前に身を切る改革」「脱原発」があるので、言葉は違えど民進党の政策と希望の党の政策はほとんど同じ内容である。

確実に違うのが「憲法改正」であるが、これも具体的な改正内容が全く書いていない。民進党の議員には憲法9条の護憲派が多いが、9条を改正ともどのように改正するとも書いていないため、やはり同意に躊躇する議員は少ないだろう。

そもそも政党に合流した時点で、綱領と政策には賛同したのと同じである。裏切る人は書面を残そうが裏切る。実際、落選しそうになると民進党をあっさり見限った人ばかりではないか。

従って、政策への忠誠など書面で残しても意味が無い。裏切りそうな人は最初から公認しなければ良い。希望の党の結党メンバーには民進党離党組がたくさんいるのだから、それくらいわかるだろう。

希望の党の政策協定書への世間のイメージは、民進党議員に「思想転向を迫る踏み絵」であるが、実態はほとんど民進党の政策と変わらないので、楽勝で踏みつけられるものだ。

という事は、希望の党の政策協定書の目的は「政策の同意を迫る踏み絵」では無く、違う点にあるのではないか。

希望の党の「政策協定書」は踏み絵と見せかけた奴隷契約書であり、選挙後の布石

やはり、希望の党の政策協定書で目を引くのが、

9. 希望の党の公認候補となるに当たり、党に資金提供をすること。

10. 選挙期間が終了するまで、希望の党が選挙協力の協定を交わしている政党への批判は一切行わないこと。

である。そもそも、政策協定書であるのにこれは「政策」じゃ無い。

改めてみると凄い内容である。金額を指定すること無く、「資金提供をすること」にサインを求められるのだ。実際は、供託金300万円と広報費100万円の計400万円、小池氏とのツーショット写真の撮影料3万円(せこっ!)の403万円であるらしいが、まだまだ増えるだろう。

自分の友人がこんな契約書にサインをしようとしていたら、殴ってでも止めるだろう。恐ろしい。

さらに、「選挙協力する政党への批判の禁止」も凄い。言論の自由を保障された日本で、また言論の先頭に立つ国会議員に立候補する人物の口を封じようとの発想はまったく「寛容」とは言い難い。

小池都知事が当選した2016年の都知事選では、自民党都連が「自民党が推薦する候補以外を応援したら、各議員(親族等含む)が処分の対象となります」という文書が出回り、批判の対象になった。

程度の差こそあれ、同じ発想の内容では無いか。わざわざ文書にして縛り付けるというのは、候補者を自分の駒としか見ていない独裁者のようだ。

つまり、希望の党の政策協定書は政策の擦り合わせでは無く、立候補者を金づるとし、発言を縛り奴隷化するようなものだ。政策協定書とは呼び難い。したがって、0点。

さらにはこの政策協定書は選挙後も見据えてのものであろう。憲法改正で同意を取り付けておけば、選挙後は「改憲勢力」とみなされる。少数野党であったとしても、憲法改正を狙う安倍政権にとっては、衆議院の2/3を占めるために無視できない存在になるだろう。

そうやって存在感を高め、連立政権への参加などを視野に入れているのでは。

希望の党の政策協定書は、小池百合子代表の野望ファーストで作られた極めて独裁的な、奴隷契約書とでも呼びたい代物である。これにサインしなければいけない候補者には同情するが、それも己の政策を信念と呼べるまで固めて来なかった、自分の責任であることは自覚して欲しい。

参照:共同通信時事ドットコム産経新聞日本掲載新聞民進党政策集2016民主党基本政策毎日新聞iRONNA

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author : 宮寺達也

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