著作権

人気漫画のネタバレサイト摘発。なぜ今になって?

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出典:いらすとや

今、日本で最も人気のある漫画は何かご存知だろうか?

1位「ONE PIECE」、2位「進撃の巨人」、3位「HUNTER×HUNTER」

という感じである(単刊の売り上げから)。こういう人気漫画は感想サイトや2chコメントのまとめサイトが雨後の筍のように乱立している。

さらには雑誌の最新話を待ちきれない人たちのために、雑誌発売日の2〜3日前に最新話の内容をネタバレする「ネタバレサイト」も多数存在している。もちろん出版社や作家の許可なんか取っておらず、著作権法違反である。

9月6日、そんなネタバレサイトの管理人が逮捕されたというニュースが飛び交った。「最新ジャンプネタバレ ワンピースネタバレ速報」と「ワンワンピースまとめ速報」という2つのサイトが、週刊少年ジャンプの発売前に「ONE PIECE」の全容がわかる文章や画像を無断で掲載したとして、管理人が逮逮捕されたのだ。

このニュースを見た人は、こんな疑問を持ったのでは無いだろうか。

「ああいうネタバレサイトが著作権法違反なのはもちろんわかるけど、ずっと放置していたのに、何で今になって逮捕したんだろう?」

この答えは、ネタバレサイトを巡る作家・出版社の苦労と、著作権法の改正にある。パテントマスターとしてネタバレサイト摘発までの流れと、今後の展望を解説したい。


ネタバレサイトを摘発するのは、作家のデメリットが大きかった

漫画のネタバレサイトの歴史は、2ちゃんねるが開設された1999年から始まったと言って良い。2ちゃんねるの「アニメ・漫画ニュース速報板」では各漫画や雑誌ごとにスレッドが建てられ、「フラゲ」(発売日前に雑誌を購入する事)した人が内容を書き込んでいた。

一体どうやってフラゲするのかというと、発売日の2〜3日前に雑誌を店頭販売している店があるので、そこで購入するとのことだ。(月曜発売のジャンプなら土曜日とか、もちろん禁止行為)

2ちゃんねるでは主に文章だけのネタバレであった。だが2002年ごろからブログが普及すると、文章に加えて雑誌をスキャンした画像も一緒にアップするネタバレサイトが増えていった。

発売日前のアップなので、当然「引用」なんていう言い訳が通用する訳もなく、真っ黒な著作権侵害であった。しかしネタバレサイトはほとんど摘発される事なく、AmazonアフィリエイトやGoogleアドセンスによる収入を確保し、勢力を拡大して行った。(しかし、Googleアドセンスは審査は厳しいくせにこういうサイトは放置するよな)

00年代においても、これらのネタバレサイトを摘発しようと思えば法律的には簡単なはずだった。しかし放置されていたのは、「訴える側」にとってデメリットが大きかったからである。

当時のインターネットにおける著作権は著作者(漫画の作家)が持つ複製権と公衆送信権であり、出版社が持つ出版権は及んでいなかった。そのため、ネタバレサイトに著作権違反を訴えることができるのは漫画の作家本人だけとなる。

当然ながら、数多くネタバレされる作品は「ONE PIECE」「HUNTER×HUNTER」と言った、コミック1巻で100万部を売り上げるような大人気作品である。そのためネタバレサイトがどれだけ著作権侵害しても、作家は印税で何億円も稼いでいるので問題視する必要が無かった。

さらにはそんな人気漫画家は週刊連載で非常に忙しい。そんな作家にとって、わざわざ時間と手間を掛けて訴えるのはデメリットの方が大きかったのである。

(もし、休載中の富樫先生がネタバレサイトを訴えてくれていたら、状況は違ったかもしれないが)

2015年の著作権法改正で、インターネット上の出版権が認められた

しかし、作家や出版社もネタバレサイトの存在を良しとはしていない。心血注いで作った漫画・雑誌を発売前に勝手にスキャンして、荒稼ぎしているのだ。苦々しくて仕方なかっただろう。

作家や出版社はネタバレサイトを何とかできないか、虎視眈々と反撃の方法を考え、少しづつ行動していたのである。

その動きが表面化したのが2014年である。ジャンプ作品のネタバレサイトであった「ナルトちゃんねる(ネタバレ注意!)」が、「出版社との相談の結果、詳細なネタバレを削除し、サイトを更新しない」と発表した。

ジャンプを発行する集英社が、必要ならば法的措置も辞さない姿勢でネタバレサイトを監視している事がわかったのだ。この事実が公になり、ネタバレサイトに閉鎖の動きが見られた。この時「ONE PIECE速報」というサイトもネタバレ記事を削除した事が分かっている。

しかし、ネットの世界は広い。集英社の脅威が判明しても、ネタバレサイトの総数はほとんど変わらなかった。そんな中、ある著作権法改正が成立する。それが今回の逮捕に繋がっていく。

2014年4月25日に「電子書籍に出版権を認め、出版社が著作権違反者を訴える事ができる」著作権法改正が成立した。電子書籍の普及を背景に、これまで紙媒体にしか認められていなかった出版権をインターネットにも認めるものである。

ちなみに出版権とは、著作者(漫画の作家)から著作物を複製する権利を引き受け、出版のために複製する事ができる権利である。

この著作権法改正は「インターネット上の著作権を有する電子データ」が対象であるので、電子書籍用だけでなくネタバレサイトもその対象に含まれた。集英社はこれを利用して、さらなる大反撃を開始したのである。

2015年1月に著作権法改正が施行される。すると早速、出版権を侵害したとして「mangapanda」という「ONE PIECE」のネタバレサイトの管理人が逮捕された。その時に集英社は「引き続き海賊行為に関しては厳正に対応していく」とコメントを出しており、次の逮捕も時間の問題であった。

しかしそんな集英社の本気に気がつかず、大多数のネタバレサイトは通常営業を続けていた。そして、2016年7月に「最新ジャンプネタバレ ワンピースネタバレ速報」と「ワンワンピースまとめ速報」という2つのサイトの出版権侵害の証拠を掴み、今回の逮捕に至ったのだ。

ネタバレサイトが摘発されたと発表されたのはつい先日の事であるが、逮捕に至る捜査活動はかなり前に終わっていたと見るべきだ。つまり、これから新たなネタバレサイトの摘発、管理人の逮捕がどんどん続いていく可能性が高い。

これまで油断してネタバレサイトを運営していた管理人も流石に事態の重さに気づいただろう。逮捕される恐怖にガクブルしている人が多そうだ。現に、発表の翌日の9月7日には「ONE PIECE」と「HUNTER×HUNTER」のネタバレサイトとして有名だった「超マンガ速報」と「ONEPIECE速報」が早速閉鎖されてしまった。

漫画を語るのは本当に楽しい。公式なネタバレサイトを作るのはどうか

しかし、私はネタバレサイトは減ってはいくだろうが完全には無くならないと思う。ネタバレサイトは「簡単に、もの凄い儲かる」からだ。

今回逮捕されたネタバレサイトの管理人は約3億円の広告収入を得ていたと明らかになっている。この事からも改めてはっきりしたが、ネタバレサイトは本当にアクセスが凄い。

3年で3億という事は、1ヶ月で約800万円。1PVあたりの広告収入を0.5円とすると、少なくとも月間1600万PVはあった事になる。

これって簡単に言うと、アゴラより遥かに多いのである。池田信夫氏を始め、都議会議員、衆議院議員、各分野のスペシャリストが練りに練った記事がたくさん載っているサイトが、雑誌をスキャンしてアップするだけの、誰にでもできるサイトにアクセスで負ける。これがインターネットの現実だ。

実際、人気漫画の続きは本当に待ち遠しく、気になる。大人になって我慢できるようにはなったが、私は今でも「HUNTER×HUNTER」の続きが気になってしょうがない。子どもの頃は、火曜日(富山県のジャンプ発売日)はダッシュで家に帰り、先にジャンプを読んでいる弟を「まだかまだか」とずっと睨んでいたものだ。

なので、漫画がある限りネタバレサイトを楽しみにしている人は減らない。逮捕されるというリスクが明らかになっても、その圧倒的需要が存在する以上ネタバレサイトは無くならない。

また、2ちゃんねるの漫画・アニメの投稿をまとめている「まとめサイト」についても、そこに無許可の画像を追加したりしており著作権違反の問題がある。

実はネタバレサイトはネタバレ記事とまとめ記事を混ぜているものが多く、両者の境界は曖昧だ。ネタバレサイトが減ったとしても、依然として著作権侵害の記事で広告収入を狙う輩は減らないだろう。

ならばいっその事、集英社や講談社、小学館、KADOKAWAといった出版社が公式のネタバレサイトやまとめサイトを運営するのはどうだろうか。

例えば、定価に100円を上乗せすれば発売日の1日前に電子書籍が買える仕組みを導入するとか、公式の素材を使って思う存分、好きな漫画やアニメの話題をやり取りできるサイトを運営するというものだ。

Youtubeやニコニコ動画と一緒で、違法動画を全て監視してもゼロにはならないし、経費だけがかさんでしまう。それよりも公式チャンネルで最新話や過去作の配信を拡大する事で、動画サイトはWIN-WINの関係に近づいていっている。

アゴラの執筆者でも、私と松本孝行さんなんかは漫画が大好きで、よくtwitterで漫画談義に花を咲かせている。ドラゴンボール、スラムダンク、幽☆遊☆白書、HUNTER×HUNTER、北斗の拳、魁!!男塾、るろうに剣心、、、このあたりは今でも何時間でもしゃべれる自信がある。

ネタバレサイトやまとめサイトは誰でも簡単に3億円が稼げるコンテンツだ。だから出版社ならばもっと簡単に、みんなが漫画談義を楽しめるサイトを作れて、もっと稼げるのではないだろうか。

そうして出版不況を少しでも乗り切る事ができ、これからも面白い漫画が読めるなら、こんなに嬉しいことはない。

P.S.
9月発売の最新の漫画で、私がオススメする作品がこれだ!必ずブレイクすると思うので、今からチェックして将来自慢しよう。

「保安官エヴァンスの嘘 〜DEAD OR LOVE~」

参照:NHK NEWS WEB朝日新聞ITmedia・2014/03/06ITmedia・2014/04/28ITmedia・2015/11/13ニコニコニュース


アゴラに掲載されました(2017年09月09日)

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author : 宮寺達也

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