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こども保険の財源問題。逃げちゃ駄目だ、小泉 進次郎さん

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出典:小泉進次郎氏のFacebookページ

小泉進次郎氏を中心とした自民党の若手議員が「こども保険」という政策を提唱している。社会保険料の値上げを原資に幼児教育や保育の無償化を実現しようというものだ。

こども保険は賛否両論が集まっている。その内容は主に「保険」という方式と、その財源である。小泉進次郎氏は財源について「消費税増税の議論から逃げているのでは無いか?」との批判は承知の上で「消費税増税は現実的でない」と訴え、まずは社会保険料の0.1%値上げを検討している。

そして、8月25日に朝日新聞に掲載された新浪剛史・サントリーホールディングス社長との対談では「富裕層が自主的に年金給付の権利を放棄し、その分を財源に加える」と提案した。この年金返上案にまた批判の声が集まっている。

私は何と言われようが、小泉進次郎氏には大変期待しており、応援している。将来は総理大臣を狙える器だと思っている。だからこそ、こども保険についてはきちんとした批判を行いたい。

こども保険を実現したいなら、その財源は消費税増か、社会保険の支出カットしか無い。全国から批判が殺到し、全国民を巻き込んだ議論になるだろう。

だが、逃げちゃ駄目だ、小泉 進次郎さん。あなたしか、この議論を乗りなせる人はいないんだ。


こども保険の理念には賛成。保険であろうが無かろうが、どうでも良い

こども保険を巡っては、その理念には多くの人が同意している。私も賛成だ。

少子化が進んで稼ぎ手がどんどん少なくなる日本では、もっと若者に投資しなければいけない。そうして経済や文化を活性化させていかないと、財政も社会保険も破綻してしまう。

こども保険にはまず、「保険はふさわしく無い」との批判がある。病気・怪我に備える健康保険、仕事をクビになった時に備える雇用保険、老後に備える年金と違って、こども保険は子どもがいない人には備える必要が無いため、「保険」と名乗るのはふさわしく無いというものだ。

小泉進次郎氏はこども保険の理念を「子どもを社会全体で支える」と説明している。私もこの説明に納得している。

こども保険は別に保険であろうが無かろうが、私はどうでも良いと思う。別に名前が「こども手当」や「こども給付金」と、何であったとしても同じ事だ。現在、高齢者に集中している財政支出を、日本の将来を支える若者への比率を高めていこうというものだ。名前が何であっても別に構わないと思っている。

そのターゲットが幼児教育、保育の無償化であるというのもイカしている。Fランク大学に入学して4年間を無駄にし、就職する事も困難な若者を大量発生させる大学無償化より遥かに素晴らしいと思う。

やはり問題は財源である。別に自分が負担する事になるのは構わない。しかし、一部の人間に負担が集中したり、持続可能でない財源では制度が実現しないので反対なのである。

社会保険料の値上げは、日本人の3割に負担を押し付けている

こども保険は「子どもを社会全体で支える」のだから、やはり消費税や社会保険の支出カットで賄うのが筋である。これならば、私を含めて子どもがいない働き手や、多額の社会保険を受け取っている高齢者、果ては地下経済で稼いでいるヤクザからだって徴収できる。

しかし、小泉進次郎氏は

現実を見てほしい。消費税率8%にするのに何年かかり、いくつ政権を必要としたか。10%への引き上げも2回延期した。2年後に上げても、そこで生む財源は先食いずみ。つまり消費増税でこども向け財源を作るなら税率11%以上が必要だ。いったいいつになるのか。それを待っていたら少子化は止まらない。

と、消費税増で財源を賄うのは現実的で無いとしている。そして、まずは社会保険料を0.1%値上げして3,400億円の財源を確保する考えだ。将来的には0.5%までの値上げを拡大し、完全な幼児教育・保育の実現を目指している。

私は元サラリーマンとして、社会保険料の値上げは恐ろしく不公平であり負担が大きいと確信しているため、反対である。

まず、現在の社会保険料の対象者は、全国で給料を貰いながら働いているサラリーマンたちだ。この人数は2015年で3,686万人である。また、給料の平均は年収438万円である。

この時点で、値上げの対象者は日本の人口1億2709万人の29%しかいない。子どもを社会全体で支える」の理念に真っ向から反している。

さらに、0.1%値上げもまやかしだ。社会保険料は会社と労働者の折半という名目になっている。0.1%値上げとは、年収の0.2%値上げなのである。

実際、3,686万人の給与総額は161兆4468億円であるが、この0.1%は1,614億円だ。0.2%で3,229億円となり、3,400億円の財源確保に一致する。

いろんな方が言っている事であるが、社会保険料の会社負担はまやかしだ。会社にとって売り上げから人件費に回せる総額は決まっている以上、社会保険料の会社負担は結局は見えない形で労働者が負担しているのである。こども保険のために0.1%が値上げされれば、昇給やボーナスが抑えられる形で会社は帳尻を合わせるだろう。

そして、値上げは「年収」に比例するのも大きい。平均年収438万円(月額36万5千円)の人が月に使うお金は20万円と言ったところか。社会保険料が最終的に0.5%値上げされれば、月に3,650円の負担増だ。月20万円の支出においては、消費税2%に相当する。

つまり、社会保険料の0.5%値上げとは、日本人の3割しかいないサラリーマン限定の消費税2%増であるのだ。

サラリーマンは現在、社会保険料だけで給料の30%を毎月天引きされている。金額にすると月に11万円である。そして残った給料から、さらに所得税や住民税、消費税を納めているのだ。サラリーマンは毎日頑張って働いているのに、ここまで搾り取られているのだ。

社会保険料の値上げは、多額の資産を持った高齢者、プロ野球選手や芸能人のように大金を稼いでいる人、大勢の自営業者、フリーランス、こういう人たちが全く負担が無い中、サラリーマンだけがさらに苦労する仕組みだ。このどこが「子どもを社会全体で支える」なのか。

年金返上は意外に高額。でも消費税増や年金カットから逃げちゃ駄目だ

小泉進次郎氏ももちろん、この批判は理解しているのだろう。だから「富裕層が自主的に年金給付の権利を放棄」とのアイデアを発表したのだろう。

このアイデアには「そんな多額は集まるはずがない」という批判があるが、私は財源の規模としてはかなりのものになると思う。問題はその不確かさだ。

年金を返上する程、生活に余裕があると感じられる金額としては、60歳以上で夫婦で1億円以上の貯金がある富裕層と定義しよう。これに該当する世帯は121.7万世帯である。この内60歳以上は70%であるので、85.2万世帯である。

厚生年金の平均支給額が月額14万8千円、国民年金の平均支給額が月額5万6千円であるので、世帯平均を厚生年金(夫)+国民年金(妻)とすると、月額20万4千円である。

よって、富裕層への年金支給額は年間2兆810億円となる。

確かにこの富裕層が全員、年金を全額返上すればサラリーマンの負担はほぼゼロにできる。それだけ日本の金融資産は高齢者に集まっているし、現在の年金支給額は多い。

しかし、本当にどれくらいの人数が年金を返上してくれるかなんて、予想ができるのか。半分が善意で応じてくれれば凄い事だと思うが、それでも1兆円の財源不足になる。兆円単位の予算を善意に期待するというのはとても危ない。

私は多くの人が批判するよりは、小泉進次郎氏はこども保険の財源について真剣に考えていると思うし、数値的根拠もあるのだと思う。でもやはり、消費税増か社会保険の支出カットか、持続性が高い方式を議論して欲しい。

日本の年金支給の総額が54兆6千億円、医療費が40兆円にもなるので、社会保険の2%をカットすれば2兆円になる。また、消費税増ならば1%のUPで2兆円の税収増になる。

富裕層に負担して欲しいならば、資産に応じて年金支給額を減らしたり医療費を全額自己負担にするなど、確実なシステムを議論して欲しい。持続的な財源が実現しなければ、結局はその負担は子どもに行くのだ。

小泉進次郎氏は現在日本で最も選挙に強い政治家であり、高齢者人気も抜群である。世代間格差を本気で是正する事ができる政治資本を持っている、数少ない、いや唯一の政治家とも思っている。

その小泉進次郎氏が消費税増や社会保険の支出カットから逃げてしまえば、他に実現できる政治家は現れないと危惧している。小泉進次郎氏にはこども保険の財源問題で、逃げずに立ち向かって欲しいと、切に願う。

参照:朝日新聞BuzzFeed News厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」野村総合研究所三井住友信託銀行

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author : 宮寺達也

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