教育

奨学金をチャラにしても人生そんなに変わらない

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出典:YouTube JASSO

朝日新聞に

「奨学金返済、人生の重荷 子ども少なく結婚も遅れがち」

という記事が掲載されていた。大分大学の川田菜穂子准教授らの調査によると、奨学金の返済によって結婚が遅くなったり、子どもが少なくなったりと、人生に悪影響が出ているとのことだ。

そのため川田准教授は「授業料の減免など早急に対策をとらないと、少子化や消費などに大きな影響が出かねない」と指摘している。安倍政権は高等教育無償化の検討を進めており、大学の授業料の無償化や、給付型奨学金の拡充を推進するための根拠になるデータだろう。

しかし、ニュースにで出ている数字をちょっと見ただけで、この調査にほとんど意味が無いと思った。この調査で、奨学金返済のせいで結婚が遅れており、子どもが少ないと言われている人たちは、全国平均を遥かに上回る恵まれた人生を歩んでいるからだ。


全国平均を遥かに上回る年収650万円の奨学金返済者

川田准教授の調査結果は、

・回答者の平均世帯年収は約650万円
・奨学金返済者は約2割
・奨学金返済者の子どもの数は0.55人、返済が無い人は0.98人
・未婚率は35~44歳の男性が目立ち、奨学金返済者は57.1%、返済が無い人は42.7%

との事である。確かにこれだけ見れば、奨学金返済者は苦しんでいるように見える。

しかし、「平均世帯年収は約650万円」と言う所がすごい引っ掛かった。

国税庁の調査によると、2015年の日本人の平均給与年収は420万円である。平均年収600万円超は、17.5%の上位層である。

調査結果は世帯年収であるので全く同じにはならないだろう。また、調査結果に記載が無いが、奨学金返済者と返済が無い人でも年収には差があるかもしれない。

厚生労働省の調査によると、2014年の日本人の平均世帯年収は529万円である。平均年収約650万円は、30%の上位層である。

しかし、この数字を見るだけで奨学金返済者が生活に苦しんでいるようには思えない。もしかしたら、調査結果に記載が無いだけで奨学金返済者と返済が無い人でも年収には差があるかもしれないが。

日本学生支援機構によると奨学金の平均借入額は288万円との事である。これは約17年、203ヶ月を掛けて返済すれば良い。年利を固定の0.27%としても月々の返済額は約1万5千円である。

年収650万円の世帯に、そこまでの負担とは思えない。

(※ 8/24 16:19 給与年収から世帯年収での考察に修正)

結婚率はサンプルデータに偏りがあるのでは?

ただ、少し気になったのは結婚の差である。

「未婚率は35~44歳の男性が目立ち、奨学金返済者は57.1%、返済が無い人は42.7%」となっているが、この数字は気になる。

内閣府の調査によると、35〜39歳の未婚率は男性が35.0%、女性が23.9%である。従って、調査サンプルが結婚していない人にかなり偏っているようだ。

また、サンプル全体の中で「大卒・大学院卒は56%」「奨学金を借りたことがある人は、全体の2割ほど」となっている。そのため、返済が無い人の半分以上は高卒が多く含まれいているはずだ。

生涯未婚率のデータによると、最終学歴が高卒より大卒の方が生涯未婚率が小さくなる。つまり、奨学金を借りても大学を卒業した人の方が結婚に有利と言う事だ。

また、さらに近い傾向を示すデータが年収と生涯未婚率である。年収と生涯未婚率の相関を示すデータによると、40代後半の男性において未婚率は、年収400万円は19.8%であるが、年収600万円は11.9%である。男性の場合、年収の増加に確実に比例して結婚が可能になっている。

調査結果によると、奨学金を返済している人とは35~44歳の時点で返済が完了していない人との事である。つまり、平均より多額の奨学金を借りたが、収入が少なくて返済が順調で無い人が多く含まれている可能性がある。

15%の差は大きいが、これは奨学金を借りたからどうこうよりも、サンプル全体の中でも35歳になって収入が少ない人を抽出してしまった結果ではないだろうか。

これについては詳細なデータが明らかになったら、また分析したい。

大切なのは新しい高収入への道を見つける事

確かに、35〜44歳になってまだ奨学金の返済が終わっておらず、月々の返済に苦しんでいる人はいるだろう。そう言う人は結婚がなかなかできず、苦労している。

しかし、では奨学金が存在しなかったらどうだったのだろう?

今回の調査結果の平均世帯年収が、奨学金返済者を含んで650万円と言うことは、多くの人が奨学金のおかげで大学を卒業できて、好条件の企業に就職できた事を示している。

奨学金が無ければ高卒で働いていた事になり、その場合は日本の平均である世帯年収529万円くらいになっていた可能性が高い。結局は奨学金の返済に苦しむ事は無いが、収入の低さに苦しむ事になっていたかもしれない。結局、奨学金を借り無かった方がもっと悲惨だったのでは。

また、奨学金をチャラにしたり、大学の授業料を無料にしたら解決するとも思えない。奨学金や大学の授業料がチャラになったとしても、その額は個人レベルでは人生で300万円程度である。平均年収に換算したら年10万円程度だ。結婚についても、年収400万円と年収600万円の生涯未婚率の差が約8%であるので、10万円なら0.4%。誤差みたいな数字だ。

その年10万円で年収200万円がUPするのだったら、これ以上無いお得な投資ではないか。

やはり問題の根本は奨学金や大学の授業料ではなく、「何のために大学が存在するのか?」と言う事に尽きる。

世間で言うところの「奨学金が返せなくて悲惨」と言う話は、「月々1万5千円の返済が辛い」ではなく、「大学を卒業したのに、月々1万5千円を捻出できない程、収入が低い」であろう。

今も昔も、大学に進学する本音は「卒業したら好条件の企業に就職できるから」である。奨学金を借りた人は一時数百万円の借金をしても、卒業後の人生でもっと多く稼げると思ったのだ。そして、かつてはそれが機能していた。

現在、奨学金が機能していないのは「卒業しても好条件の企業に就職できない大学が増えた」からである。卒業しても分数ができないとか、授業で割り算を教えているとかのFランク大学の存在である。

このようなFランク大学を卒業しても、高卒と変わらない評価をされて碌な就職口が見つからない。お金を払って4年間を無駄にすると言う最悪の行為だ。

奨学金をチャラにしたり大学の授業料を無料にする事は、このようなFランク大学を存続させ、より不幸な若者を増やすだけでは無いだろうか。

今必要なのは「どこでも良いから大学に入学さえしてしまえば、後は4年間遊んでいても、卒業後は好条件の企業に就職できる」という神話の崩壊をみんなで認識し、「どんな努力をしたら、高い収入を得る事ができるか」の21世紀版のロールモデルを構築する事だろう。

参照:朝日新聞国税庁Abema TIMES日本学生支援機構内閣府厚生労働省

-教育

author : 宮寺達也

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