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内田樹さんの知らない確定申告

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出典:Amazon

つい先日、8月20日の事である。思想家として有名な神戸女学院大学名誉教授の内田樹(うちだ たつる)氏がツイッターで、

来年の確定申告のときは窓口で「領収書?廃棄しました。何に使ったか?解答を控えさせて頂きます」と言って税務署員を苛立たせる納税者が百万単位で登場すると僕は思います。もちろん、そんなことで税金をまけてくれるところじゃないけれど、それでも言いますよ。「なんで廃棄しちゃいけないの?」

と唐突に吠えていたのだが、あまりの無知に失笑してしまった。そこで、このツイートを引用して

まあ、いないとは思うけど、こういうバカには騙されないようにしようね。

確定申告では領収書を提出する必要は無いよ。窓口でこんなこんな事言っても相手にされないよ。

でも領収書は7年間の保存義務があるから、ちゃんと整理して保管しようね

ツイートしたところ、500を超えるRTになってしまった。

さて、この短いやり取りだけでは何のことかわからない人も多かったと思う。そこで、せっかくなので内田氏の発言の背景と、確定申告に必要な書類について解説したい。


佐川宣寿・国税庁長官に不満な人々

もう1ヶ月以上前の話であるが、第48代国税庁長官に佐川宣寿氏が就任した。本来ならば何ということも無いニュースである。佐川氏は財務省の理財局長を務めていたので、国税庁長官の有力な候補であり、まあ順当な人事と言えるだろう。

しかし、佐川氏は今年の春に騒動になった森友学園への国有地売却問題で、財務省の担当局長として何度も国会で証言をしていた人物である。そのため、いつのまにかかなりの有名人になってしまった。

佐川氏は森友学園を巡る答弁で、「不当な働きかけはなく、記録も残っていない」と答弁している。これが森友学園問題で政府を追及したい人達の癇に障ったようだ。市民団体「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」は、8月21日に佐川国税庁長官の罷免を訴える申し入れを、約1万人分の署名を添えて行なっている。

ネットでも、佐川氏の国税庁長官就任について、「脱税犯が『記録が残ってないんですよ~』って言ったら全部通っちゃうんじゃないの?」「修正申告を突っ撥ねることができるぞ」などの皮肉の声が起きているとのことだ。

内田氏も兼ねてから安倍政権に批判的な発言を繰り返していたので、佐川氏が国税庁長官にふさわしいかどうかではなく、単純に安倍政権に好意的な(と勝手に認定している)人が出世したのが気にくわないのだろう。

先ほどのツイートの続きでは、

とりあえず国民の納税意欲(などいうものがあれば、の話ですけれど)を著しく傷つける人事であったことは間違いありません。森友学園問題で「完黙」を貫いたことへの論功行賞人事にしても、どうして同じ財務省でも、「国民の目に触れないポスト」を用意しなかったのでしょう。

つぶやいており、内田氏の中では佐川氏は、森友学園を巡る土地取得で違法な行為に手を染めながら、安倍首相のために必死にそれを隠蔽した人になっているようだ。

まあ、森友学園を巡る問題では籠池夫妻が逮捕されており、まだまだ全容が解明したとは言えない。しかし、騒動発覚から半年以上も経って佐川氏が悪事に関与した証拠は何一つ出ていないのは確かだ。何の証拠も無しに、よくもまあ1人の人間をそこまで悪し様に言えるものだ。そういう人間にはなりたく無いと思うね。

内田樹さんの知らない領収書の取り扱い

で、真偽はさておき、内田氏は

「佐川氏は国税庁長官にはふさわしく無い。国税庁が文書を破棄するような連中なんだから、私たちも文書を破棄して良いはずだ。みんな、今度の確定申告では領収書を破棄したと窓口に言って国税庁に抗議しよう」

「領収書を破棄したと窓口に伝えれば、確定申告の処理が進まない。そういう抗議をする人間が百万人単位で登場すれば税務署はパニックになる。これは佐川氏への罰だ」

と言っているわけだ。二重三重で間違っていてどこから突っ込んだら良いのかわからない。しかし、万が一、こんなバカの言うことを鵜呑みにする人もいるかもしれないので、少しづつ解説したい。

まず、領収書は確定申告で税務署に提出する必要は無い。確定申告に提出する必要のある書類は、簡単にまとめると、

白色申告:収支内訳書、確定申告書B、添付書類台紙(源泉徴収票や各種控除の関係書類、電子申告の場合は不要)
青色申告:所得税青色申告決算書、確定申告書B、添付書類台紙(源泉徴収票や各種控除の関係書類、電子申告の場合は不要)

と言う感じである。詳しくは参照サイトを見て欲しいが、いわゆる経費の申請に必要な「領収書」は提出する必要が無いのだ!確定申告から7年間の保存義務が課されているので廃棄してはいけないが、窓口に持っていく必要は無い。

なので確定申告の窓口で

「貴様らの長官は書類を廃棄したんだってな。だから俺も領収書を廃棄したから提出しないぞ。さあ、困るだろう」

と脅して見ても、「はいはい。領収書は提出しなくて良いので大丈夫です。お疲れ様でした」と軽くスルーされて終了である。何のテロリズムにもならない。

なお、領収書を7年間保存存する義務がある理由は、将来、もし国税庁の税務調査が入った時に証拠として提出しなければいけないからである。

かと言って、「よーし、窓口が駄目でも領収書を廃棄すれば、国税庁を困らせる事はできるな。来やがれ、税務調査!」なんて思っていたら危険である。

税務調査が入った時に領主書を出すことができないと「推計課税」と言う制度が適用される。これは領収書などの資料が無い場合に、売り上げや粗利率などから「何となく」税金を決める事ができる制度である。

推計課税が適用された場合、当然だが経費はほとんど認められない。内田氏の言う「税金をまけてくれるところじゃない」なんてレベルじゃ済まない。多額の追徴課税は確実だ。

「書類を廃棄した佐川氏に抗議を」とのつもりで自分の領主書を廃棄してしまうのは、税務署の窓口にとっては何も困らないし、国税庁にとっては多額の追徴課税を徴収する事ができるので大歓迎されてしまう。極めて愚かな行為としか言いようがない。

社会に怒りを持つのは良いとして、無知な扇動には乗らないようにしよう

私は森友学園、加計学園の問題は何が悪かったのかさっぱりわからない。そんなどうでも良い事に時間を割くより、北朝鮮のミサイル問題や豊洲市場移転問題といった国民にとって重要な事に関心を持っていた。

しかし、まあどんな問題に興味を持ち、どんな感情を感じるかは個人の自由である。しかし、くれぐれも無知な扇動に乗ってしまうと自分が損するだけなので止めた方が良いと思う。

今回の内田氏の「領収書を破棄するテロ」を実際に行うと、恥を掻いた上で、多額の追徴課税を食らう羽目になる。そして、当の内田氏はあなたを扇動しただけで、決して自分は実行しないだろう。

そもそも「確定申告の窓口に領収書が必要」と言っている時点で、自分で確定申告をした事も無さそうだ。

また「百万単位」と言うのも浅薄な知識だ。確定申告を行う人数は2,152万人であるが、国税庁ホームページや確定申告ソフトで作成した資料を自宅からe-Taxや郵送するだけでもOKだ。自宅から確定申告する人は増え続けており、773万人に達している。私も初めての青色申告は「やよいの青色申告 オンライン」で作成し、郵送で提出した。

窓口に直接出向き、確定申告を行う人は半分強の1379万人である。さて、百万単位には1割以上の人が騙される必要があるのだが、とてもありえない数字だ。

内田氏は今回の発言だけでなく、かつて「江戸時代は偉かった。Back to Edo era!」と言ってネットでフルボッコにされたり、ずっと護憲を主張して来たと思ったら最近は「僕は天皇主義者に変わった」とバリバリの違憲発言を行なっている。

世間一般の評価は知らないが、普通に見て、全く信用のできない人物である。ネットを通じて社会に関心を持つ事は素晴らしいと思うが、中にはこう言う人もいるので注意して欲しい。しかし、彼に教わっている神戸女学院大学の学生が可哀想でならない。

参照:朝日新聞ORICON NEWS白色申告と青色申告の違い確定申告で提出する必要書類について確定申告で領収書を提出するの?税務調査の「推計課税」について税理士が徹底解説国税庁

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author : 宮寺達也

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