キャリア

残業規制で所得8.5兆円減。生産性を向上してもただ給料が減るだけ

投稿日:

出典:写真AC

政府は働き方改革で、罰則付きの残業上限規制の導入を目材している。しかし、これが実現すれば残業代が最大で年間8兆5千億円減少し、国民所得が大きく減る可能性があると大和総研が試算をまとめた。

8兆5千億円といえば凄い数字だ。日本のGDPが532兆円であるので、約1.6%に相当する。また東京都の予算が6兆9,540億円なので、それを上回る規模だ。いかに日本人が長時間残業で稼いでいるか、改めて実感する。

さて、大和総研は「個人消費の逆風となりかねないだけに、賃金上昇につながる労働生産性の向上が不可欠となりそうだ」とまとめている。だが、生産性を向上する事で残業時間が減った分の仕事をこなしたとして、私たちの給料は維持されるのだろうか?


残業規制で最大月15万円の減収になる

さて、「8兆5千億円の減少と言われても、自分の給料はどのくらい減るのだろう?」とピンとこない人は多いだろう。

大和総研によると「繁忙期を含め年720時間、月平均60時間が上限」「労働者全体では月3億8454万時間の残業が減る」との事なので、残業時給は1842円である。対象者を正社員3,457万人の50%とすると1728.5万人。平均すると月約22時間の残業減、月約4万1千円の減収になる。

「なんだ大した事ないじゃ無いか」と思った人もいるかもしれないが、月4万円といえば「消費税20%増」に匹敵するといえばどうだろうか?見方が変わるのではないか。

そして、もっと大きな影響を受ける人たちがる。それが大企業で月平均80〜90時間働いている30〜40歳の非管理職である。

実際、私も会社員を退職する時の待遇が、35歳・係長・月平均80時間残業・年収800万円と言ったところであった。というわけで私の会社員時代の経験も元に試算してみた。

当時の給料明細を確認すると、

基本給:32万円
残業代:18万円
超過残業代:15万円

の総額65万円の月収であった。超過残業代は53時間以上の残業から発生するのもので、月平均約30時間と言ったところであった。残業規制が行われれば超過残業代はゼロになるだろうから月収は50万円、月15万円の減収になる。

ちなみにこの数字、わかる人には恐ろしくリアルな数字であるだろう。

「月収50万円ならば十分じゃないか」と言いたい人は多いだろう。だが、大企業のサラリーマンは、所得税・住民税・厚生年金・健康保険と多額の天引きが存在する。だいたい月平均20万円は引かれている。なので手取りは30万円といったところだ。

まあそれでも十分という声はあるだろうが、30〜40歳の非管理職は家賃・ローン、子どもの教育費など多額の出費が必要だ。急に15万円も月収が減ったらなかなかのピンチである。

生産性を向上したら15万円の収入UPになるか?

では残業規制で減ったしまった15万円。生産性を向上して、効率よく仕事をしたら取り戻す事ができるだろうか?

結論としては不可能である。

人事コンサルタントの城繁幸さんが頻繁に指摘している事であるが、「残業代を1分単位で支払う、コンプライアンス精神溢れる」大企業は、予め残業代を計算して基本給を抑えめにしている。

私の会社員時代の収入の内、基本給は半分程度であった事からも確かである。

では、実際にできるかどうかは置いておいて、これまで残業80〜90時間でこなしていた仕事を残業60時間で終わらせるように工夫したとしよう。その結果は「効率良く働いてくれたね、お疲れさん」の一言で終了である。

そもそも実態はどうであれ、建前は「仕事とは定時内で終了するものであり、どうしても定時で終わらなかった仕事については上司の指示で残業する」なのだから、残業が80時間から60時間に減っても、上司としては「そもそも定時で終わらすのが当然だろ」という理屈になる。だから、「効率良く働いてくれたね、ボーナスの15万円だよ」とは決してならない。

仮に「素晴らしい生産性だ。高く評価しよう」と上司が本気で思い、人事評価で最高点をつけても基本給は5000円UPすれば上出来である。大企業の基本給は年功序列でベースが決まっているので、それを大きく逸脱するUPは決して認められない。

つまり「残業を前提とした基本給」「年功序列を前提とした基本給」の仕組みでは、生産性の向上は全く評価されない。はっきり言うと、効率良く働いた分だけ、働き損なのである。

まあ、だからこそダラダラと長時間残業する癖が染み付くのだが。

成果に報いて報酬が変化する会社に転職するのが近道

これは「卵が先か、鶏が先か」と言う問題では無い。明確に「年功序列・終身雇用」が先で、その結果が「基本給を抑えて残業代で取り戻す」給与体系になっている。

年功序列・終身雇用を前提とすると65歳まで雇い続けなければいけないため、若手時代にどんなに凄い成果を出しても、将来ダメになってしまうリスクを排除できない。そのため、「おじさんになってもあまり給料は下げないから。その代わり、今はあまり上げられないけど我慢してね」となる。

それにもめげずに高い成果を出し続けた人は、40歳前後で管理職に抜擢される。そうなると、基本給40〜50万円にUPする。しかし、裁量労働制で残業代ゼロになり、なぜか30代で残業代30万円・総額65万円を稼いでいた頃より減収になってしまう。

基本給で60万円に届くのは、まあ部長クラスである。相当狭き門の上、気がついたら50代になっているだろう。全く持って報われない。

つまり、今の会社で働き続けている限り、残業規制により減ってしまった残業代は取り戻す事ができない。この事をしっかりと認識した上で、年収アップを検討するのだ。

結論から言えば、15万円月収UPする会社に転職するしかない。外資系はもちろん、年功序列・終身雇用ではない中小企業ならば成果で給料を支払ってくれるところはたくさんある。

もちろん私のようにフリーランスになるのも手だ。残業規制なんのその、好きなように働けるのは魅力的だ。

「生産性向上しろって言われても、どうせ給料上がんないんだろ」と嘆くあなた。その見通しは正しいが、愚痴っていても残業規制の流れは止まらないし、給料も上がらない。あなたの成果を正しく評価してくれる場所に移るしか、状況を変える術は無いのだ。

参照:時事通信「残業規制で所得8.5兆円減=生産性向上が不可欠-大和総研試算」

-キャリア

author : 宮寺達也

オススメ商品


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

次の電通過労自殺を防ぐため、普段から「逃げ力」を鍛えよう

  出典:ピープルズ 電通の新入社員の高橋まつりさんが過労自殺という痛ましいニュースが流れてから1週間あまり経ち、マスコミからネットまで、様々な記事、議論が飛び交ってきた。その中で、「自殺を …

電通の残業規制は逆効果。新しい働き方を提案する

出典:写真AC 電通の新入社員の高橋まつりさんが過労自殺した事件は、異例とも言える労働局の立ち入りに発展し、電通は「労働時間の上限を5時間引き下げ65時間にする」「全館午後10時消灯」とする残業時間規 …

「あたりまえ体操」で見抜くリーダーの資質

出典:YouTube COWCOW「あたりまえ体操#1」 これまで『「足りない情報」で決断するのがリーダーです』と『難しいけど、「部下を信じる」のがリーダーです』という、2つのリーダーの資質についての …

城繁幸さん。29歳の働く君は、35歳で独立しました。

出典:写真AC 今回はだいぶ個人的な記事です。 「逃げ力」の記事にも書いたが、私は2005年に24歳で大手の事務機器メーカーに入社し、35歳になった2016年に退職、独立した。現在はフリーエンジニアと …

理想の上司「ウッチャン」のわかってる感

出典:書籍「内村光良ぴあ」表紙 毎年、明治安田生命が発表している「新入社員の理想の上司」アンケートであるが、2017年は男性「内村光良」さん、女性「水卜麻美」さんがともに初のNo.1に輝いた。 私は「 …













2017年11月
« 10月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930