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法律 知的財産 著作権

円谷プロの憂鬱。中国版ウルトラマンは合法かも?

投稿日:

出典:「鋼鐵飛龍之再見奧特曼」発表会

突然であるが、私はアニメ・特撮が大好きだ。

私が好きな作品のジャンルは多岐に渡るが、最も長く愛しているのがウルトラマンである。小学生の頃に父親に連れられて借りたレンタルビデオをきっかけにどハマりした。

さて、そんな愛すべきウルトラマンが中国企業にパクられようとしている。

ネットで話題になっているのでご存知の方も多いだろうが、中国のCG会社「広州藍弧文化伝播有限公司」がウルトラマンを利用した映像作品「鋼鐵飛龍之再見奧特曼」(ドラゴンフォース さようならウルトラマン)の製作を発表した。

まあ「威力棒Vii」とか「ガンガル」とかいつもの通り、中国企業の違法なパクリと思った人がほとんどだろう。だが、ウルトラマンに限っては話はそう単純では無いのだ。

海外におけるウルトラマンの著作権には複雑な事情があり、円谷プロは長きに渡る裁判戦を強いられ、疲弊している。そう、地球を狙って侵略してくる宇宙怪獣と戦い続けるウルトラマンのように。


中国版ウルトラマンは正式な著作権契約を結んでいる

7月10日に北京で中国のCGアニメ映像制作会社「広州藍弧文化伝播有限公司」が、「鋼鐵飛龍之再見奧特曼」(ドラゴンフォース さようならウルトラマン)という映像作品を発表した。

しかし、「お前、猪木か?」と言いたくなるしゃくれ過ぎたアゴが特徴のダサいフォルムに、日本はもちろん中国のネットユーザーからも「権利を守る行為を支持する」「権利侵害行為は恥ずべきこと」「これは日本企業の味方をするわ」「他人の成果を盗んじゃいけないのは当然のこと」と批判の嵐である。

ウルトラマンの産みの親である円谷プロは7月19日、

本件発表について、当社は一切関知しておらず、本件映像作品は当社の許諾・監修等なく製作されているものです。また、当該発表会及び映像におけるウルトラマンキャラクターの利用方法、態様等は、ウルトラマンブランドを著しく毀損し、断固として非難すべきものであり、到底認められるものではありません。

一部報道等のとおり、ウルトラマンシリーズの初期映像作品(「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンエース」「ウルトラマンタロウ」)に関する日本国外における利用権の取り扱いに関しては、長期間に亘り、複数の国において係争が続いております。もっとも、これまでに出されたいずれの判決においても、一貫して、当社がすべてのウルトラマンシリーズの製作者であり、その著作権を保有している点が認められております。

また、本件映像作品のような新規著作物の製作、ウルトラマンシリーズキャラクターの翻案・改変等の権利は当社のみに帰属するものです。

上記を受け、当社といたしましては、あらためて本件発表を行った中国企業、および本件映像製作に関与している者に対し法的措置を含む断固とした措置をとってまいる所存です。

と強い口調で中国のCG会社を非難するプレスリリースを出した。

しかし、中国のCG会社は「正式な著作権契約を結んでいる正当なウルトラマン作品だ」と主張している。そして、この主張が無視できないのだ。

中国のCG会社が著作権契約を結んだ会社は日本企業のユーエム社であり、「ウルトラマンシリーズの海外における著作権を、円谷プロから譲渡された」となっている会社なのだ。

円谷プロとチャイヨー・プロダクションの長きに渡る戦い

この円谷プロのウルトラマン海外著作権問題は、ウルトラマンファンや著作権ビジネスでは有名な話である。興味ある人は記事末の参照サイトを読んで欲しい。

ここでは簡単に現状を整理したい。

1960年代、かの円谷英二氏から特撮技術を学んだソムポート・セーンドゥアンチャーイというタイ人がいた。1976年、資金繰りに窮した円谷プロは「ウルトラQ」から「ウルトラマンタロウ」までの初期6作品(正確には「ジャンボーグA」を含む7作品)の海外における著作権をソムポート氏が代表であるチャイヨー・プロダクションに譲渡した。

この著作権の譲渡が長きに渡る戦いの大元である。円谷プロは著作権譲渡は無効であると主張し、日本とタイでそれぞれ裁判を行なった。その結果としてはなんと、2004年に日本の最高裁で円谷プロの敗訴が確定してしまった。

しかしその後2008年、チャイヨーの本国であるタイにおいては契約書が偽造であると認定され、円谷プロが勝訴した。

このタイと日本のねじれ判決により、海外の初期ウルトラマンの著作権がどちらのものか確定せず、これ以降の訴訟合戦に繋がってしまった。

無論、今回新作が発表された中国でも訴訟が繰り広げられている。広東省の裁判では円谷プロが勝利したが、なんと2013年の最高裁判決で円谷プロが敗訴してしまった。

なお、チャイヨーは2008年にウルトラマンの権利を日本企業のユーエム社に譲渡した。先ほど出てきた中国のCG会社が契約を結んだという会社である。

そのため2017年現在、中国における初期ウルトラマンの著作権は日本企業のユーエム社が保有している事になっている。そのため、中国のCG会社の言い分も理があるのだ。

しかしまたややこしい事に、チャイヨーはユーエム社に権利を譲渡する前の1998年、日本企業のバンダイに著作権の一部、「配給権」、「広告権」、「複製権」を1億円で売却している。

そのため、海外の映像会社がユーエム社と契約を結んだとしても、初期ウルトラマンのビジネスは事実上不可能である。また、譲渡した著作権はあくまで初期ウルトラマンのものであり、今回のような「ウルトラマンの新作」に適用できるかどうか、これにはまた新たな裁判所の判断が必要である。

実際、タイでの裁判では2007年に「新作の制作権はチャイヨーに無い」と判断が下されている。そのため新作の制作権はあくまで円谷プロのものであるという主張は説得力がある。

だからこそ、円谷プロも「これまでに出されたいずれの判決においても、一貫して、当社がすべてのウルトラマンシリーズの製作者であり、その著作権を保有している点が認められております」と強気なコメントを出したのだろう。

正義は円谷プロに有っても、裁判で闘う苦労を強いられる円谷プロの憂鬱

このように、円谷プロは過去に初期ウルトラマンの著作権を譲渡した(事になっている)ため、特に初期ウルトラマンの海外展開で非常に苦戦していた。しかし、初期ウルトラマン以降、ウルトラマンパワードなどの新作を意欲的に制作する事で何とか世界展開を頑張っている。

また、譲渡契約の中身やこれまでの裁判結果を考えても、新作の制作の権利は円谷プロに有ると見るのが妥当だ。

しかし問題の本質は、「裁判で新作の制作権を争ったら、円谷プロが敗訴する可能性が存在している」事だ。

円谷プロが「新作の制作権は円谷プロのものだ」と考えていても、裁判で徹底的に争われ、円谷プロが敗訴する可能性がある。特に海外の著作権であるため、その制作会社のホームで争わなければいけない。

円谷プロには慣れない国での裁判であるし、司法制度が未熟な国では露骨な自国有利の判決が出る可能性もある。またこれまでにも複数の外国で裁判を起こされており、訴訟費用は莫大だ。

まさに円谷プロは、本当ならば無限に戦える力を持っているが、地球上では太陽の光が少ないため3分間しか戦えないウルトラマンのようだ。異国で本来の力を発揮できず、さぞ悔しい思いをしているだろう。

今回の中国のCG会社の作品も、中国で「そもそも新作に当たるのか」「新作ならば、制作権はどちらか」と裁判で争われるだろう。

裁判の決着までは数年の時間、数千万〜数億円の裁判費用が予想される。中国版ウルトラマンが制作される事で出そうな被害額を考えれば、無視しても良いとさえ思えてしまう。

私は本当にウルトラマンが大好きだ。小学校の頃はレンタルビデオを頻繁に借りるのが難しかったので、夏休みにやっていた福井テレビの再放送を楽しみにしていた。遠く離れた富山県では非常に電波が弱く、砂嵐混じりの酷い画面であったが、それでもウルトラマンを鑑賞してからプールに行くのが日課であった。

殿堂入り第1位のエヴァンゲリオンには敵わないが、間違いなく人生のベスト10入りしている作品だ。なんならエヴァンゲリオンもウルトラマンのオマージュであるので、原点と言っても良い作品だ。

そんな作品を産み出してくれた円谷プロには感謝しかない。なので私は中国版ウルトラマンに対して円谷プロが裁判をして断固争っても、費用対効果を考えて無視したとしても、どっちも支持する。

円谷プロには、とにかく新しくて面白いウルトラマンを作る事に専念して欲しいと願うばかりだ。

参照:AV WatchWikipedia(チャイヨー・プロダクション)アディクトジャーナルRecord ChinaJ-CASTニュース


アゴラに掲載されました(2017年07月25日)

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-法律, 知的財産, 著作権
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author : 宮寺達也




                                                                                                 
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