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「王様は裸だ」と指摘することは、会社批判なのか?

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出典:写真AC

3月31日。社会人にとっての大晦日がやってきた。

私にとっては、ちょうど前職を辞めてから1年に当たる。去年の3月31日は新居への引越しで精根尽き果てていたのが懐かしい。前職を辞める時は普通に転職するつもりだったのだが、運命のいたずらによって今ではフリーランスとして活動しつつ、こうしてアゴラに記事を投稿させていただく体験をしている。1年前の自分に言っても信じないだろう。

さて、この記事を含めてアゴラには67個の記事を投稿してきた。ありがたいことに地元・富山、大阪大学、元メーカーの友人を始め、感想をいただく機会も増えてきた。ただ、その内容でちょっと気になることがある。

「そんなに会社(元メーカー)批判をして大丈夫なのか?」

というものだ。相手がどう感じているかは私にはどうしようもないので、大丈夫とはもちろん言えない。ただ、一つだけ誤解を説きたい。

私は会社(元メーカー)批判をしているつもりは無い。私はただ、「王様は裸ですよ」と指摘しているだけである。


私は企業を尊敬している

まず大前提として、私は企業を尊敬している。それが終身雇用・年功序列の古き良き大企業であっても、同様に尊敬している。もちろん、私を育ててくれた元メーカーには感謝で一杯である。

フリーランスになって改めて実感したことであるが、一人で何かを成すことは本当に難しい。資金の調達はもちろんだが、特に人材を確保することは至難である。

そんな中で、国内で1万人を超える数の社員を雇用し、毎月給料を支払い、定年まで面倒を見てくれる大企業の努力には頭が下がる。大企業がそうやって大勢の社員の生活を支えることによって、その子供たちも安心して勉強や部活に励むことができる。そして、企業活動によって発生する多額の税金・社会保険料によって日本社会が維持できている。

私は企業が果たしている社会貢献に対して、心から尊敬している。もちろん私が勤めていたメーカーも同じく尊敬している。何人か許し難いパワハラ野郎がいたが、私に仕事を与えてくれたこと、給料を払ってくれたこと、成長させてくれたことには感謝の気持ちで一杯である。

だからこそ、そんな愛する元メーカーが「見たまえ、私の服を。馬鹿には見えない服なんだ、素晴らしいだろう」と醜態を晒しているならば、心を鬼にして「いや、王様。あなたは裸です。服を着てください」と言っているのだ。

なお、私は現在記事で書いているような内容は全て、会社員時代に直接、上司に言っていた。おかげで人事評価が低かったのかもしれないが、親友Yのように、信頼できる友人・上司・仲間ができた。

この記事を読んでくださっている方に知って欲しいのは、ちゃんと信念を持って上司や会社に意見したのならばちょっと不遇をかこうかもしれないけど、誰かが見ていてくれるものである。

年功序列・終身雇用の会社があっても良い。なぜ嘘をつく?

私が元メーカーを含め、日本の大企業に「王様は裸だ」と強く感じるのは、「我が社は成果主義です。成果に応じて評価し、昇進・昇格させます」と嘘をついていることだ。

本当に自慢じゃ無いが、私はメーカー時代の人事評価は全てB/Bであった(S→A+→A→B+→B→B-→Cの7段階)。どんなに成果を出しても、逆にどんなにミスをしても、半期の評価はB/B。聞き飽きたので、フィードバック面談では毎回「どうせB/Bでしょ」と言ってきた。

はっきり言うが、納得したことなど一度も無い。

社内で最も多く特許を出したものを表彰する発明王を、新人から9年連続で受賞した。エレキ技術者に限れば史上最速ペースの特許登録数を誇っていた。もちろん特許だけでなく、機種開発、LSI開発、新技術開発でも多くの結果を残してきた。

主任時代には自分より年齢が10歳上で、資格が2段階上(主席係長)の人が完全にギプアップした仕事を、片手間で仕上げたこともあった。

自分がどこまで評価されるべきかと言うのははっきりとは言えない。だが、流石に仕事を投げ出した主席係長よりは高い評価を要求するのは当然では無いか。

繰り返すが、元メーカーは「我が社は成果主義です。成果に応じて評価し、昇進・昇格させます」という人事制度を明確に公表し、社員全員に周知していたからだ。

私は別に「我が社は年功序列です。どんなに成果を上げても、年齢順に昇進します」という会社が有っても良いと思う。企業がどんな方針で人事制度を定めるかは自由である。古臭い制度と言われようが、「年功序列が良い」と思っているならば、それで良いと思う。

だが、「本当は年功序列だけど、若手が腐ったら困るから、成果主義ということにしておこう」ということならば許し難い。それは会社と社員の契約において、会社が嘘をついて、会社に有利な契約を結んだということだ。民法94条の虚偽表示に当たるんじゃないかと思っている。

なお、どんなに「いや、ちゃんと社員の成果を評価している。だが、人間のすることだから、どうしても完璧ではない」との言い訳も何度も聞いた。だが、それもリストラで全部真っ赤な嘘だったとわかった。

2011年に実施したリストラでは、「35歳以上に早期割増退職金が支払われ、その額は年齢に応じて段階的にUPする。50代になると、1ヶ月単位でUPする」という明確な年齢差別が行われた。本当に成果主義ならば、年齢に関わらず、成果の低いものに退職を促せば良いはずだ!

人間も会社も、苦しい時に本性が出るものだ。「成果主義の正体見たりリストラで」である。

私は別に「成果主義が正義。元メーカーは成果主義にしろ」と言って来たわけでは無い。「成果主義と言ってるんだから、成果で評価しろ。年功序列なら、ちゃんとそう表明しろ」と言っているのだ。まさに「王様は裸なんですから、裸と認めるか、服を着てください」ということだ。

会社も個人も、「嘘・大げさ・紛らわしい」から卒業しよう

インターネット、特にSNSの普及によって、「嘘・大げさ・紛らわしい」情報はすぐに拡散する時代になった。ちょうど先日も、「てるみくらぶ」の内定者を無条件で採用しますという一見、慈愛溢れる会社が、「営業マンに昼休みなどあろうはずがない。せいぜい10分前後で良い」という労働基準法違反のツイートをしていることがバレたりした。

そんな時代にうわべを取り繕っても虚しいだけだ。元メーカーを含めた多くの大企業は成果主義なのか、年功序列なのか、はっきりするべきだ。もちろん、成果主義とは成果を上げた若手の昇給額を+1000円するようなみみっちいものではない。シャープのように、何万円も昇給させたり、ボーナスを200万円UPさせたり、数十万円の特別ボーナスを出すようなことだ。

そうしないと、私のように、10年くらい低賃金で我慢してもらいつつ経験を積ませて「よし、今からバリバリ頑張ってもらおう」という社員に逃げられてしまう。実際、私だけでなく、多くの優秀な同期が会社を辞めていることを知っている。

もちろん、これは個人も同じだ。アゴラに記事を書くようになって実感したが、ネットメディアでは「嘘・大げさ・紛らわしい」記事が多くのアクセスを集めていたりする。しっかりとファクトとロジックを重視して書いた力作がそんな記事に負けたりすると、「自分も、もっと大げさに」という欲望が湧いてくる。

そんな時は反面教師を見つめ直すことにしている。記者クラブに属しない自由な報道という理念を掲げていたが、いつのまにか福島第一原発の事故について悪質なデマを流しまくった人々がいた。官僚出身で、最初は自分の元所属していた官庁の問題点を鋭く批評していたが、どんどん批判が大げさになって先鋭化し、いつのまにか見なくなった人がいた。

「嘘・大げさ・紛らわしい」で集めた人気は長続きしない。最初は徐々であったとしても、本当の信頼を勝ち取るべく、正確な仕事と情報発信を心がけるべきだ。

2017年度も、ファクトとロジックを重視した記事を書き続けていきたい。そうして、少しでも読者が増えてくれたらこの上なく幸せだと思う。


※この記事は、2017年03月31日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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