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任天堂がマリカーを訴えた「真意」を分析してみた

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出典:YouTube 今日は19台が連なる楽しそうなレンタル公道カートの「マリカー」

2月24日、世間はプレミアムフライデーに対して微妙な対応をしているころ、任天堂が公道カートのレンタル会社「株式会社マリカー」を不正競争行為および著作権侵害行為の差し止めと、損害賠償1000万円を求めて東京地裁に提訴した(参照:任天堂プレスリリース)。

このニュースを見て真っ先に感じたことは、「えっ、マリカーって許可取って無かったの?裁判したら絶対負けるよ」である。

今回、任天堂が提起した裁判で考えることは、「任天堂か、株式会社マリカーか、どっちが勝つのか?」ではない。任天堂が勝つのはわかっている。

「任天堂が訴訟を起こした本当の目的は何か?」

がポイントだ。


マリオのコスプレをして、公道をカートで走ることは合法

株式会社マリカーは、マリオカートそっくりなミニカーと、マリオのキャラクターのコスプレ衣装をレンタルし、公道で実際にマリオカートをしているような体験を提供する。冒頭に引用したYouTubeは渋谷で走行中の模様を撮影したものだが、ここ数年、マリオのコスプレ姿の集団が都内の公道で走るのを見かけた人も多いことだろう。

実は、このような体験は株式会社マリカーの専売特許では無い。マリオカートそっくりなミニカーはX-Kartという車であり、れっきとした普通自動車である。普通免許を持っていれば、誰でもレンタル・購入し、運転できる。

例えば、株式会社マリカーとは別にアキバカートというX-Kartのレンタル会社もある。アキバカートが主催している「リアルマリオカート」というイベントでは、アキバカートがX-Kartを提供し、参加者が自分でマリオのキャラクターのコスプレ衣装を準備して、公道マリオカートに興じている。

最近、首都圏でリアルなマリオカートが目撃されたという情報が動画サイトやSNSに多数アップされている。それが自前コスプレならば違法である可能性はほとんど無い。著作権法第三十条で「私的に使用する範囲で、著作物を複製する」ことはOKだからだ。

では、株式会社マリカーは、一体何を失敗したのだろうか。

「マリカー」という会社名そのものから間違えていた

任天堂がプレスリリースで、「マリオカートの略称である「マリカー」という標章をその会社名等として用いており」と指摘しているように、明らかに任天堂の「マリオカート」と混同させる名前を使用したことが、株式会社マリカーの最大の間違いである。

実は、株式会社マリカーは「マリカー」の商標を取得している。商標:第5860284号「マリカー」という自動車に関連した商標を申請しており、登録されている。また、「MariCAR」という商標も申請中である。

任天堂は「マリオカート」「MARIO KART」という商標は登録していたが、「マリカー」という略称では登録していなかったようだ。

だが、心配はいらない。株式会社マリカーが「マリカー」という「マリオカート」と混同するような商標を登録し、独占的に商品・サービスとして使用する場合、商標法に違反するからだ。

PPAPの商標騒動の記事でも書いたが、他人の尻馬に乗るような商標は認められない。

商標法第4条第1項10号で、「需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似するもの」は商標を受けることができないと定められている。また、商標法第4条第1項15号で、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は商標を受けることができないと定められている。 従って、任天堂以外の企業が「マリカー」という「マリオカート」と混同する恐れのある商標を登録するのは15号に違反するので、独占的に商品を使用することはできない。

実際、任天堂は2016年9月27日に、特許庁に「マリカー」の商標の異議申し立てを行っている。任天堂は裁判を提起した5か月前から「マリカー」の存在を問題視していたことがわかる。

「マリオのコスプレ」で商売の違法性は小さい

さらに、株式会社マリカーはリアルなマリオカートを体験してもらえるよう、マリオのコスプレ衣装をレンタルするサービスを提供している。また、公式サイトでマリオのコスプレ衣装を掲載したり、コスプレしたユーザーの画像や動画を公開している。

任天堂は、これを著作権侵害行為として問題視している。著作権法は21条で「複製権」を、23条で「公衆送信権」を保障している。そのため、第3者が勝手にマリオの衣装(やそれに類似したもの)を複製して販売・レンタルしたり、画像をインターネットで公開することはできない。

株式会社マリカーの公式サイトは、明らかに「公衆送信権」を侵害しているので、違法であることは間違いない。

しかし、任天堂はコスプレについては、大きく問題視はしていないだろう。

実際、マリオのコスプレ販売はAmazon楽天で検索すると、山のように出て来る。これらの業者が全て公式に利用許可を得ているとはとても思えないので、多くが違法だろう。しかし、任天堂は見て見ぬ振りをしている。

なぜなら、ファンは任天堂の作品を愛するが故にコスプレ衣装を購入するわけであり、そのコスプレは任天堂作品への愛を強めることになり、任天堂にとって損は無い。何よりも任天堂が自らコスプレ衣装を製造・販売しているわけではないので、任天堂の売り上げが減る恐れも無い。そのため、違法ではあるがWIN-WINの関係であると考え、放置している。

今回の訴訟の損害賠償は1000万円であり、任天堂の事業規模からすれば雀の涙だ。任天堂の法務部が裁判をすれば、人件費だけで1000万円は軽く吹っ飛んでしまう。

株式会社マリカーが勝手にマリオのコスプレで商売をしていたことは違法であり、確実に賠償金を支払えとの判決が出るだろうが、任天堂は赤字である。コスプレの著作権侵害は、今回の問題の本質では無さそうだ。

「マリオカート」のイメージダウン防止が目的か

今回の訴訟で注目するところは、任天堂が「不正競争行為の差止」を主張していることだ。これは「株式会社マリカーは、マリオカートで商売するならお金を払え」ではなく、「株式会社マリカーは、マリオカートで商売することを止めろ」とはっきり言っている。

不正競争防止法第2条で「他人の商品として需要者の間に広く認識されているものと同一または類似の商品を使用する」ことを禁止しているが、この内容で損害賠償を請求するならば著作権法違反で十分である。不正競争防止法まで持ち出すのは、損害賠償だけでは済まさない、サービスを潰す場合だ。

株式会社マリカーが、任天堂の商品であるマリオカートを勝手に使用して商売していることは間違いないが、任天堂が「公道でマリオカート」のサービスを提供しているわけではない。そのため、株式会社マリカーがどれだけ売り上げを上げても、それはコスプレと同様に任天堂の売り上げが減る恐れは無い。使用ライセンスを結んで、WIN-WINの関係を結ぶこともできたはずだ。

だが、任天堂は株式会社マリカーの公道マリオカートを許可せず、潰すつもりだろう。「裁判で損しても構わない。マリカーという名前は使わせない。公道でマリオカートは許さない」という強い意志が感じられる。

任天堂は過去に、ニンテンドーDS用マジコン差し止め訴訟でも不正競争防止法を根拠に勝訴した。マジコンは任天堂の正規のソフト販売に悪影響が出るので、本気で潰しに行くのはわかる。しかし、株式会社マリカーは任天堂の売り上げには影響しないので、潰しに行く理由は金銭では無い。

「今後、公道マリオカートで交通事故が発生し、マリオカートのイメージが悪化することを危惧した」と推察する。「マリオカートで交通事故」となれば、「任天堂に関わるすべての人を笑顔にする」という任天堂の理念に大きく反する事態だ。

今回の任天堂の訴訟は、節操の無い公道マリオカートの商売に歯止めを掛け、不幸な人が出る前に公道マリオカートのファンに注意喚起を促したいというのが最大の目的では。

実際、動画やSNSを見ると、リアルにマリオカートを体験するのは凄く楽しそうだ。だが、これはゲームでは無い。クラッシュすれば人が死ぬ、コンティニューもリスタートもリセットもできない。事故が起きれば、愛するマリオが悲しんでしまう。

リアルマリオカートは、大人としての節度とマリオへの愛を胸に、安全に楽しもう。


※この記事は、2017年02月25日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也




                                                                                                 
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  1. […] まだ審査中であるが、私は登録される可能性が高いと見ている。PPAPやマリカーの記事にも書いたが、商標は登録が認められない場合がある。 […]

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