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私はJASRACが嫌いだ。だがしかし

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出典:写真AC

ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について、JASRACが年間10〜20億円の著作権料を徴収するというニュース(参照:朝日新聞)が流れてから、ネットはJASRAC批判で溢れ返っている。

また、歌手の宇多田ヒカルさんや、(私も大好きな)「新世紀エヴァンゲリオン」の主題歌の作詞家の及川眠子さんらが「音楽教室から著作権料を徴収して欲しくない」と声を上げたことで、JASRAC批判の声はますます高まっている。

「私の曲は無料で使って」 宇多田ヒカルの意見は現実的には困難 (スポニチ:Livedoor NEWS)

私もJASRACに対しては正直、良い印象を持っていない。はっきり言えば、嫌いだ。だが、今回の音楽教室からの徴収に関してはJASRACに利があると思っている。


JASRACが嫌われる理由

JASRACはアーティストにとって負担になる著作権料の徴収を代行しており、アーティストのために活動している組織である。しかし、ネットでは「カスラック」「著作権ヤクザ」とも呼ばれ、すこぶる評判が悪い。

その理由はいろいろあるだろうが、一番は「音楽に無関係な老害が、利権を貪っている」というイメージによるものではないだろうか。

今回の音楽教室に対する著作権料の徴収も、「CD売上が減少して徴収額が減ったので、音楽教室に目をつけた」という「困窮したヤクザが新たなシノギを見つけた」というストーリーで非難されているように感じる。

タイトルにも書いたように私はJASRACが好きでは無いが、上記は事実に反すると思うので誤解を解きたい。

JASRACは利権を貪っているか?

JASRACの収支は、公式サイトに公開されている。それによると2015年の収支は、

徴収額 1116億7004万1471円
分配額 1115億9138万9624円
収支            7865万1847円

である。つまり、JASRACは徴収額の99.93%をアーティストに還元しており、アーティストの収入で利権を貪っているという批判は適切では無い。JASRACは徴収した著作権料を可能な限りアーティストに還元していると言える。

また、「JASRACの給料は高給ですよ。」という批判の声をいただいたので、そちらにもきちんと回答したい。

JASRACの職員の数、給与は公式サイトで公開されている。職員数が483人であり、2015年度の給与総額は33億7263万6789円である。

一人当たりの給与平均は698万2685円である。

確かに、2015年の日本人の平均年収は420万円であるので、高給という指摘は正しい。だが、一方で「知的財産」に携わる職種の平均年収は664万円であり、同職種と比較するとそこまで高くないことがわかる。私が勤務していたメーカーの法務・知財部署の社員の年収と比較しても、同程度である。JASRACが全国的に活動している組織であり、日本の音楽のほとんどを取り扱っている大組織であると考えた時に、私は普通の企業と同水準であり、妥当な給与水準であると考える。

こちらについては、JASRACの外部理事を務める玉井克哉氏も「普通の企業と同じでしょう。」twitterで証言しておられる。

普通の企業と同じでしょう。全国に転勤がある、支払いを求めて罵声を浴びるのはしょっちゅう、時にはこわいおにいさんが出てくることもある、急成長はしないし、したとしてもほぼ全てが分配に回る。かつ、「高すぎる」と何も知らないネット民から罵られる。という条件下で、です。

また、職員だけでなく一部の理事やトップが高給を貪っているとの批判もある。これについても役員報酬が公開されており、総額2億2875万2500円である。また、役員一覧も公開されており、35名である。

一人当たりの役員報酬は653万5785円である。職員の給与平均よりも小さい額であり、やはり高給を貪っているとは言い難い。

JASRACの職員や理事が、他人のふんどし(アーティストの楽曲)で、利権を貪っているというイメージは、確かに昔の私にもあった。しかし、公開されているデータを良く見ることで、それは誇張されたイメージであることがわかる。

JASRACは売上に困って音楽教室に目をつけたのか?

JASRACの徴収額の推移も、やはり公式サイトで公開されている。それによると、2006年から2015年までの10年間、安定して1100億円前後を推移している。むしろ、2007〜2011までダウントレンドにあった徴収額は2012年以降盛り返して来ており、「CD売上が減少して、JASRACの徴収額が減った」という指摘は正しくなさそうだ。

JASRACの外部理事を務める玉井克哉氏も「10年前から交渉していた」とtwitterで述べておられる。今回の件については、JASRACに問題があったとは思えない。

「放置」していたのではありません。こころよく払ってくださる事業者もあるのに、最大手で全国に何千もの教室を展開し、数百億の売上を挙げている事業者が「ビタ一文払わん」と頑強におっしゃる。十年以上お願いしても態度が変わらない。これでは正直者が馬鹿を見るので、腰を上げるしかったのです。

また、玉井氏は今回の問題をtwitterで根気強く回答しておられるので、疑問がある人は是非、覗いてみてほしい(参照先まとめ)。

私がJASRACを嫌う理由

ここまでの記事は、私がJASRACを擁護しているように見えるだろうが、私はJASRACにはまだ問題も多く、正直言って好きでは無い。

それは、私がエレキエンジニアであり、AV機器マニアであるため、「私的録音録画補償金制度」へ大きな不満があるからだ。

この制度は、著作権法でOKとされている音楽・映像の私的複製において、なぜかデジタル方式で録音・録画する場合は補償金を徴収するというものである。

なぜ法律でOKとされているものに対して補償金を払う必要があるのか?さらには、デジタル放送のようにコピーガードが施されていて複製不可能なものに補償金が必要なのか?私が私的複製を行なっても、なんの法律にも違反せず、誰も困っていないはずなのに、わずかとはいえお金を徴収される。これが納得いかない。

終わった話であるが、デジタル録画専用のHDDレコーダーに補償金を課そうとし、JASRAC側(正確にはSARVH)が裁判に負けている。また、2007年頃にコピーワンスの緩和を議論していたときには「緩和しても良いけど、メーカーが補償金を払え。たかが1000円程度だろ」という意見が著作権管理者側からあったりした。メーカーの血を吐くようなコストダウンの努力を軽視する意見は耐え難いものがあった。

JASRACは現在でも補償金について、「メーカーが支払義務者ではなく協力義務者とされ、制度が適切に機能する仕組みになっていない」と主張している(公式サイトより)。デジタル著作権技術が発達した現在において、この主張は時代遅れで、ユーザーの利便性を損なっているだけだと思う。

音楽教室の問題は、著作権法22条に違反するか否か

このように、今回の音楽教室への著作権料徴収はJASRACが関わることで関係の無い陰謀論や批判が混ざり、ややこしくなっている。しかし、問題の鍵は一点である。

音楽教室での演奏を聴いているのは、「公衆」か否か、である

著作権法22条で、「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。」となっている。

JASRACは、「音楽教室の生徒は、誰でも申し込むことができ、不特定多数の利用者をターゲットにして、楽曲を使用している。よって、「公衆」に聞かせている」と主張していると思われる。実際に、2004年に社交ダンス教室の顧客は「著作権法上「特定かつ少数の者」ということはできず」という判決が出ており、JASRACが勝訴している。

それに対して、音楽教室を運営するヤマハ音楽振興会などは「音楽教育を守る会」を発足し、「教室での練習や指導は特定の少数を対象にしており、公衆のための演奏には該当しない」と反論している。

どちらが勝つかは、法廷闘争の結果を待つことになるため、断言することは難しい。しかし、私はダンス教室の判例からも、JASRACが勝訴する可能性が高いと考えている。

私はJASRACが嫌いだ。しかし、今回の音楽教室の問題についてはJASRACは過去の判例にも基づいて主張しているので、正当な活動と考えている。

「音楽教室から著作権を徴収することは、音楽文化の発展を阻害している」という意見があり、気持ちはわかる。しかし、その要求の実現は著作権法の改正を持って実現するべきだと思う。その抗議はJASRACではなく、文化庁であり、国会議員に届けるのが正当だと思う。


※この記事は、2017年02月07日にアゴラに投稿・掲載された記事を再掲したものになります。

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author : 宮寺達也

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